ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  2. Sam Prekop - Comma (review)
  3. Shintaro Sakamoto ── 坂本慎太郎が新曲を7インチで2ヶ月連続リリース (news)
  4. Jun Togawa ──戸川純のユーチューブ再開 (news)
  5. interview with Diggs Duke 偽りなきソウルを追い求めて (interviews)
  6. ZOMBIE-CHANG - TAKE ME AWAY FROM TOKYO (review)
  7. Cuushe ──クーシェ、5年ぶりのソロ・アルバムが完成 (news)
  8. Bruce Springsteen ──ブルース・スプリングスティーンが急遽新作をリリース、発売日は大統領選直前 (news)
  9. Idris Ackamoor & The Pyramids - Shaman! (review)
  10. interview with galcid インダストリアル・レディ登場 (interviews)
  11. Opinion 政治で音楽を救う(音楽で政治を救う?) (columns)
  12. 電気グルーヴ ──完全復活! 新曲 “Set you Free” をリリース (news)
  13. RMR - Drug Dealing Is A Lost Art (review)
  14. ralph ──気鋭の若手ラッパーがファーストEPをリリース、プロデュースは Double Clapperz (news)
  15. interview with Phew いまは本当に、日常を繰り返すこと。それを自分に決めています (interviews)
  16. Special Interest - The Passion Of (review)
  17. WATERFALL ──吉祥寺で、アシッド・ハウスやデトロイト・テクノをモチーフにした服を販売中 (news)
  18. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  19. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第11回 町外れの幽霊たち (columns)
  20. Various Artists - Music In Support Of Black Mental Health / Various Artists - Nisf Madeena (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Maria Minerva- Cabaret Cixous

Maria Minerva

Maria Minerva

Cabaret Cixous

Not Not Fun Records

Amazon iTunes

野田 努   Oct 11,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 音楽的にも、そして文化的にも、今日のシンセ・ポップがたんなる"リヴァイヴァル"ではないことを証明する1枚で、まだレヴューしていないけれど性文化への揺さぶりという点では、リル・Bの『アイ・アム・ゲイ(アイム・ハッピー)』とも共振するアルバムなんじゃないかと解釈する......。
 ロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉レーベルが揺さぶりをうながすようなレーベルだ。低俗を装いながら、実験的でアーティで、ぶっ飛んでいるようで思想をほのめかす。「正解」を振りかざすような暴君から1億光年離れたところで、作品性という観点から言っても自由気ままにやっている。エストニア系のマリア・ミネルヴァ(音楽評論家の娘らしい)の音楽も、そうしたDIY音楽の今日的な自由のなかで生まれたひとつだと言えよう。

 『キャバレ・シクスー』――これはパリに「女性学センター」を立ち上げた先駆的なフェミニスト、エレーヌ・シクスーにちなんだタイトルだが、マリア・ミネルヴァは性(ジェンダー)の問題、つまり「男らしさ」「女らしさ」というこの手の変革可能な人工物の問題にを主題にしている。そして、『キャバレ・シクスー』にはタイトルが言うように、彼女のキャバレ・ヴォルテール(ポスト・パンク時代におけるダダ中毒)へのシンパシーとポスト・ライオット・ガールとしての視座、そしてポップへの情熱(アバのカヴァー)が詰まっている。
 それは彼女が『FACT』マガジンのために提供したミックスの選曲にも表れている。L.A.ヴァイパイアーズとクリス&コージー、ホアン・アトキンス(コズミックなデトロイト・テクノ)、シェ・ダミエ(セクシャルなシカゴ・ハウス)のトラックが並べられるそのミックスは、彼女の野心的な折衷主義、それから性文化への挑発と前向きさがよく出ている。
 『キャバレ・シクスー』を喩えれば、"ナグ・ナグ・ナグ"とベスト・コーストの残響音の融合、そしてファンカデリックとリー・ペリー、そしてドリーム・ポップとシカゴのゲイ・ハウスがブレンドされているようなズブズブの音で、この官能と皮肉が混じった彼女の型破りな音楽からは社会派と言われている音楽が見落としがちな自由を感じる(収録曲の"Soo High"のソフト・ポルノを用いたPVも面白い)。「居ることができる家があるというのに何故、出るの?」と、彼女はインナーで簡潔な言葉を用いてリスナーに問うている。「何故、安全な場所からわざわざ出たがるのかと、私は尋ねる。部屋に居ることができるのに、何故、こんな下世話な音楽を一晩中聴くんだろう。私の大好きな歌を聴いて下さい」
 マリア・ミネルヴァは今年〈NNF〉のサブレーベル〈100%シルク〉からも12インチ(しかもユーロビート!)を発表している。また、〈NNF〉からカセットテープでもう1枚のアルバムも出している。そっちの『Tallinn At Dawn』は、彼女の実験色がより強く出ている。

野田 努