ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 変遷する阿部薫のサウンド像について ──録音受容史の素描 (columns)
  2. Porter Ricks ──ダブ・テクノの古典、ポーター・リックスのファーストが25周年記念盤となって蘇る (news)
  3. Digga D - Made In The Pyrex (review)
  4. Godspeed You! Black Emperor ──ゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラーの新作 (news)
  5. Columns R.I.P. 佐藤将 (columns)
  6. Hip Hop Anamnesis ──時代はメンタルヘルス、ということで「救済」をテーマにヒップホップを論じた本が登場 (news)
  7. R.I.P. Bunny Wailer 追悼:バニー・ウェイラー (news)
  8. Abul Mogard - In Immobile Air (review)
  9. Mia Doi Todd ──LAのシンガーソングライター、ミア・ドイ・トッドの新作 (news)
  10. こんにちでもなお ガイガーカウンターを手にすれば「ラジウム・ガールズ」たちの音を 聞くことができる - ──映画『ラジウム・シティ~文字盤と放射線・知らされなかった少女たち~』、アルバム『Radium Girls 2011』 (review)
  11. GoGo Penguin ──ゴーゴー・ペンギンが初のリミックス盤をリリース、コーネリアスやスクエアプッシャー、808ステイトらが参加 (news)
  12. IR::Indigenous Resistance Sankara Future Dub Resurgence - Anarchist Africa::When Visions Fall From Sky / IR::Indigenous Resistance Sankara Future Dub Resurgence - IR 58 Rising Up For The Dub World Within (review)
  13. R.I.P. Chick Corea 追悼 チック・コリア (news)
  14. interview with Smerz ミステリアスかつクール、彼女たちの北欧エレクトロニカ・ポップ (interviews)
  15. Heisei No Oto ──CD時代における日本のレフトフィールド・ポップスのコンピが登場 (news)
  16. Columns スピリチュアル・ジャズの名門〈Black Jazz〉の魅力とは (columns)
  17. Sun Ra ──地球よ、さらば。映画『Space Is The Place』日本初公開 (news)
  18. Apifera - Overstand (review)
  19. Andy Stott - Passed Me By + We Stay Together / Porter Ricks - Biokinetics (review)
  20. Columns J・ディラの名作『Welcome 2 Detroit』が7インチ12枚組ボックスセットとしてリイシュー、未発表音源やDJ MUROによるリミックスも (columns)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Maria Minerva- Sacred & Profane Love

Maria Minerva

Maria Minerva

Sacred & Profane Love

100% Silk

Amazon iTunes

Lindstrom

Lindstrom

Six Cups Of Rebel

Smalltown Supersound/カレンティート

Amazon iTunes

野田 努   Feb 15,2012 UP

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 負け犬といえば、自分が男だからだろうか、いや、勝ち負けの世界と言えば男の世界だといつの間にか相場が決まっているからだろうか、勝手に男性を想像していたが、考えてみれば同じように女性にも負け犬はたくさんいる。マリア・ミネルヴァは自らを「女の負け犬の研究者」であることを宣言している。
 1988年のセカンド・サマー・オブ・ラヴの年に生まれた彼女は、昨年、フェミニスト理論家、エルーヌ・シクススの名前を冠したアルバムを発表している。そのアルバム『キャバレ・シクスス』ではリヴァーブの深く効いた――チルウェイヴやヒプナゴジック・ポップとは地続きの――今日的なポップを展開しているが、年末に出回った12インチ「スケアド&プロフェイエン・ラヴ(神聖かつ冒涜的愛)」はいわゆるダンス・シングルとなった。だからまあ、やりたい放題のロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉傘下のダンス・レーベル〈100%シルク〉から出ているわけだが、これが実に抗しがたい魅力を秘めている。1980年代のオリジナル・シカゴ"ゲイ"ハウスの淫らさが今日のUSインディ・アンダーグラウンドと見事に出会ってしまったというか、それほどのハイ・レヴェルの妖しさがある。この週末、次号紙エレキングのために三田格が推薦する『ぼくのエリ』を遅ればせながら観て、そしてショッキングだったことのひとつは吸血鬼が実は「女の子ではない」という設定だった。それではあの少年と吸血鬼のプラトニック・ラヴは......。
 ベッドルーム音楽の文化自体は20年以上前からあるのでことさら新しいものでもないのだが、女性プロデューサーが性の揺らぎを主題とすることは近年のトピックである。「インターネット時代における女性らしさとその疎外」を主題としているというグライムスが20年前のエイフェックス・ツイン("カム・トゥ・ダディ"以降ですね)に喩えられる時代だ。マリア・ミネルヴァはジョン・マウスとともに『ピッチフォーク』からは学問界とポップ界の往復者と呼ばれているような存在なので、言葉がわかればもっと深く楽しめるのだろうけれど、彼女の音そのものがある程度のところまで表してくれている。
 それは声だ。なんてやわらかい、透明で、フニャフニャな声......。男ならそこでレトロなシンセサイザーの音色に酔ったりドラッギーな音色で決めるところを彼女たちは自分の"声"を武器にする。ダンス・ミュージックではないが、グライムスやジュリアンナ・バーウィックもそうだ。声、......彼女たちの声にはエルヴィス・プレスリーもミック・ジャガーもいない。パティ・スミスの"グローリア"(こちらはヴァン・モリソンのカヴァー曲)とマリア・ミネルヴァの"グローリア"(こちらはマリアのオリジナル)を聴きくらべれば、この40年弱の年月もあながち無駄ではなかったのではないかと思えてくる。

 こうしたダンス・ミュージックの真新しい潮流のかたわらで、ベテランのリンドストロームが3枚目のアルバムを発表した。彼の音楽が東京で最初に話題になったのは2004年で、彼が自身のレーベル〈Feedelity〉を発動させたのが2002年12月だというから、ノルウェーのコズミック・ディスコの王様もデビューから10年目を迎えていることになる。地中海をまったく感じないのに関わらず何故かバレアリックと呼ばれたりもした彼の音楽の良さは、ひと言で言えばぬるさに尽きる。一時期はリー・ペリーをも彷彿させたラジカルな"いい加減さ"、ダンス・ミュージックの真骨頂のひとつでもある。それは寛容さであって、20年前はそれをバレアリックと呼んだわけで、多幸感のことではない!
 とにかく『シックス・カップス・オブ・レベル』はコズミック・ディスコの王様の新譜である。バカみたいに大仰なイントロダクションからPファンクめいたビートのディスコへと、そしてギターが唸るロックの8ビートへと、まあ、よりファンキーと言えばファンキーな展開を見せている。相変わらず人を食った展開というか、思わせぶりだが無意味で、くだらないことに一生懸命になっているところはいかにもゼロ年代といったところ。このちゃらんぽらんさが懐かしいって? それでは竹内君、週末ぐらいは僕と一緒にバカになろう。

野田 努