ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Nkisi ──新世代テクノの急先鋒、キシ来日直前インタヴュー (news)
  2. Ash Walker - Aquamarine (review)
  3. WXAXRXP Sessions ──〈Warp〉30周年を記念したシリーズ作品が発売、豪華面子が勢ぞろい (news)
  4. Kelela & Asmara - Aquaphoria (review)
  5. interview with Joe Armon-Jones 深化するUKジャズの躍動 (interviews)
  6. Headie One - Music x Road (review)
  7. Bon Iver ──ボン・イヴェールの来日公演が決定 (news)
  8. interview with (Sandy) Alex G 塩と砂糖の誘惑 (interviews)
  9. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  10. Laraaji ──ララージがまさかの再来日、ブライアン・イーノとの名作を再現 (news)
  11. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  12. interview with For Tracy Hyde シティ・ポップ・リヴァイヴァルから「シティ」を奪還する (interviews)
  13. Leo Svirsky - River Without Banks (review)
  14. Aphex Twin ──エイフェックス・ツイン最新公演のライヴ・ストリーミングが決定 (news)
  15. Nkisi - 7 Directions (review)
  16. Random Access N.Y. vol. 119:玄人インディ・ロック界の王子たち Deerhunter and Dirty Projectors @webster hall (columns)
  17. Squarepusher, Oneohtrix Point Never & Bibio ──〈Warp〉30周年イベントが開催決定! スクエアプッシャー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ビビオが一挙来日 (news)
  18. interview with Yosuke Yamashita 誰にでも開かれた過激 (interviews)
  19. For Tracy Hyde - New Young City (review)
  20. interview with The Comet Is Coming ボリス・ジョンソンの名を言うだけで口が腐る (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Maria Minerva- Sacred & Profane Love

Maria Minerva

Maria Minerva

Sacred & Profane Love

100% Silk

Amazon iTunes

Lindstrom

Lindstrom

Six Cups Of Rebel

Smalltown Supersound/カレンティート

Amazon iTunes

野田 努   Feb 15,2012 UP

このエントリーをはてなブックマークに追加

 負け犬といえば、自分が男だからだろうか、いや、勝ち負けの世界と言えば男の世界だといつの間にか相場が決まっているからだろうか、勝手に男性を想像していたが、考えてみれば同じように女性にも負け犬はたくさんいる。マリア・ミネルヴァは自らを「女の負け犬の研究者」であることを宣言している。
 1988年のセカンド・サマー・オブ・ラヴの年に生まれた彼女は、昨年、フェミニスト理論家、エルーヌ・シクススの名前を冠したアルバムを発表している。そのアルバム『キャバレ・シクスス』ではリヴァーブの深く効いた――チルウェイヴやヒプナゴジック・ポップとは地続きの――今日的なポップを展開しているが、年末に出回った12インチ「スケアド&プロフェイエン・ラヴ(神聖かつ冒涜的愛)」はいわゆるダンス・シングルとなった。だからまあ、やりたい放題のロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン〉傘下のダンス・レーベル〈100%シルク〉から出ているわけだが、これが実に抗しがたい魅力を秘めている。1980年代のオリジナル・シカゴ"ゲイ"ハウスの淫らさが今日のUSインディ・アンダーグラウンドと見事に出会ってしまったというか、それほどのハイ・レヴェルの妖しさがある。この週末、次号紙エレキングのために三田格が推薦する『ぼくのエリ』を遅ればせながら観て、そしてショッキングだったことのひとつは吸血鬼が実は「女の子ではない」という設定だった。それではあの少年と吸血鬼のプラトニック・ラヴは......。
 ベッドルーム音楽の文化自体は20年以上前からあるのでことさら新しいものでもないのだが、女性プロデューサーが性の揺らぎを主題とすることは近年のトピックである。「インターネット時代における女性らしさとその疎外」を主題としているというグライムスが20年前のエイフェックス・ツイン("カム・トゥ・ダディ"以降ですね)に喩えられる時代だ。マリア・ミネルヴァはジョン・マウスとともに『ピッチフォーク』からは学問界とポップ界の往復者と呼ばれているような存在なので、言葉がわかればもっと深く楽しめるのだろうけれど、彼女の音そのものがある程度のところまで表してくれている。
 それは声だ。なんてやわらかい、透明で、フニャフニャな声......。男ならそこでレトロなシンセサイザーの音色に酔ったりドラッギーな音色で決めるところを彼女たちは自分の"声"を武器にする。ダンス・ミュージックではないが、グライムスやジュリアンナ・バーウィックもそうだ。声、......彼女たちの声にはエルヴィス・プレスリーもミック・ジャガーもいない。パティ・スミスの"グローリア"(こちらはヴァン・モリソンのカヴァー曲)とマリア・ミネルヴァの"グローリア"(こちらはマリアのオリジナル)を聴きくらべれば、この40年弱の年月もあながち無駄ではなかったのではないかと思えてくる。

 こうしたダンス・ミュージックの真新しい潮流のかたわらで、ベテランのリンドストロームが3枚目のアルバムを発表した。彼の音楽が東京で最初に話題になったのは2004年で、彼が自身のレーベル〈Feedelity〉を発動させたのが2002年12月だというから、ノルウェーのコズミック・ディスコの王様もデビューから10年目を迎えていることになる。地中海をまったく感じないのに関わらず何故かバレアリックと呼ばれたりもした彼の音楽の良さは、ひと言で言えばぬるさに尽きる。一時期はリー・ペリーをも彷彿させたラジカルな"いい加減さ"、ダンス・ミュージックの真骨頂のひとつでもある。それは寛容さであって、20年前はそれをバレアリックと呼んだわけで、多幸感のことではない!
 とにかく『シックス・カップス・オブ・レベル』はコズミック・ディスコの王様の新譜である。バカみたいに大仰なイントロダクションからPファンクめいたビートのディスコへと、そしてギターが唸るロックの8ビートへと、まあ、よりファンキーと言えばファンキーな展開を見せている。相変わらず人を食った展開というか、思わせぶりだが無意味で、くだらないことに一生懸命になっているところはいかにもゼロ年代といったところ。このちゃらんぽらんさが懐かしいって? それでは竹内君、週末ぐらいは僕と一緒にバカになろう。

野田 努