ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Tomoko Sauvage - Musique Hydromantique (review)
  2. Satoshi & Makoto - CZ-5000 Sounds & Sequences (review)
  3. interview with Bullsxxt 国家なんかいらねぇ (interviews)
  4. interview with Ian F. Martin アイデンティティの問題と、いまアイドルについて語らないこと (interviews)
  5. Giggs - Wamp 2 Dem (review)
  6. B12 - Electro-Soma I + II (review)
  7. BS0xtra with V.I.V.E.K ──低音のロンドン/東京・アンダーグラウンドを体験してくれ (news)
  8. talk with Takkyu Ishino × Stephen Morris - 特別対談:石野卓球×スティーヴン・モリス(ニュー・オーダー) (interviews)
  9. Hello Skinny - Watermelon Sun (review)
  10. Columns いまだ眩い最高の夜 ──ニュー・オーダーのライヴ盤『NOMC15』を聴きながら (columns)
  11. interview with IO - KoolBoyの美学 (interviews)
  12. SILENT POETS ──2018年2月、12年ぶりのオリジナル・アルバムをリリース (news)
  13. Yaeji - EP 2 (review)
  14. Takehisa Kosugi ──50年代から現在に至る小杉武久の活動を紹介する展覧会が開催、トークや上映会も (news)
  15. Phuture ──必見、フューチャー奇跡の来日! (news)
  16. Shuta Hasunuma ──蓮沼執太が最新シングルをリリース (news)
  17. interview with TOKiMONSTA ウサギおばけの帰還 (interviews)
  18. KANDYTOWN - ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)
  19. Columns ハテナ・フランセ 第12回 フレンチ・ヒップホップ編 (columns)
  20. BS0xtra XtraDub (chart)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Lindstrøm- It's Alright Between Us As It Is

Album Reviews

Lindstrøm

Cosmic Disco

Lindstrøm

It's Alright Between Us As It Is

Smalltown Supersound / Feedelity

bandcamp Tower HMV Amazon

小川充   Nov 29,2017 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 コズミック・ディスコの一大拠点である北欧。その中心はビョーン・トシュケプリンス・トーマス、リンドストローム、トッド・テリエらを輩出したノルウェーである。彼らのサウンドにはディスコ、ダブ、ハウス、テクノ、エレクトロニカ、レフトフィールド、バレアリック、シンセウェイヴ、チルアウトなどいろいろな要素が含まれているのだが、それらと同じくジャズの影響があることも見逃せない。コズミックの概念そのものが様々な音楽の融合・折衷であるので、ジャズやロックの要素が入り込むことも当然なのである。リンドストロームに関して言えば、最初のプロジェクトのスロー・シュープリームはフュージョン的な要素が強く、ブラジリアン・リズムを取り入れたヒット曲“グラナダ”は、当時2000年頃の流れでいくとフューチャー・ジャズの一種と見なされた(リリース元はオスロでジャズ・クラブを運営する〈ジャジッド・コレクティヴ〉だった)。その後、2000年代半ばよりプリンス・トーマスと共にコズミック・ディスコ路線を本格化するが、DJであると同時にドラム、ギター、ベース、キーボードなどを演奏するマルチ・プレイヤーでもあるので、彼の中にはジャズやフュージョンをはじめとしたミュージシャン的な感覚が最初から存在していたと言える(1990年代にはシルヴァー・ヴォイシズというゴスペル・ロック・バンドに在籍していたこともある)。現在の彼が拠点とする〈スモールタウン・スーパーサウンド〉は、ビョーン・トシュケ、プリンス・トーマス、トッド・テリエも属するノーウェジアン・コズミック・ディスコの最大手であるが、同時にヤガ・ヤシストからネナ・チェリー&ザ・シングをリリースするなど、そもそもジャズ~ロック~アヴァンギャルドに強いレーベルなのである。

 2010年代に入ってのリンドストロームは、アルバム『スモールハンズ』(2012年)やEP『ワインディングス』(2016年)のようなエレクトリック・ダンス作品の一方で、ジャズ・ロックや前衛的な要素の強い『シックス・カップス・オブ・レベル』(2012年)を発表したり、トッド・ラングレン、エミル・ニコライセンとコラボしてプログレ大作『ランダンス』(2015年)を作るなど、変幻自在さが増していく。そして『イッツ・オールライト・ビトウィーン・アス・アズ・イット・イズ』は、『スモールハンズ』以来5年ぶりのソロ・アルバムである。ジェニー・ヴァル、フリーダ・サンデモという北欧のふたりの女性シンガー・ソングライターが参加するほか、スキン・タウンというシンセ・ポップ・ユニットのシンガーであるグレース・ホールもフィーチャーされるが、彼女は2015年にリリースされたディープ・ハウスの“ホーム・トゥナイト”でも歌っており、それに続くコラボである。そのグレースが歌う“シャイニン”は、1980年代後半から1990年代初頭の雰囲気が漂う作品で、ヴォーカルの質感などを含めてケヴィン・サンダーソンのインナー・シティあたりを思い起こさせる。アルバム中では比較的ポップな作品で、スペイシーな高揚感に包まれた先行シングル・カット曲“テンション”、SF映画感覚に満ちたエレクトロ・ブギー“スパイアー”と共に、リンドストロームのダンサブルな側面を象徴している。“スパイアー”はジョルジオ・モロダーを彷彿とさせるサウンドで、フリーダ・サンデモが歌う“バット・イズント・イット”もそうしたミュンヘン・ディスコの流れを汲む。バレアリックな“ドリフト”も含め、これら作品はCDでは一連の流れの中で繋がっており、トータルで一種のサントラのような作りとなっている(リンドストローム自身はアルバムについて、「9つの連動したトラックからなる、ひとつの連続した流れ」と述べている)。“バングル(ライク・ア・ゴースト)”にはジェニー・ヴァルがフィーチャーされるのだが、彼女はノイズ~アヴァンギャルド系でも歌う人。そうした風変わりな歌もあって、レフトフィールド・ディスコ的な香りを漂わせる。中間にはアブストラクトなムードのピアノがフィーチャーされ、リンドストロームのジャズ・ミュージシャン的なセンスも露わになっている。これに続く“アンダー・ツリーズ”はアルバムを締め括る曲で、中間のピアノ・ソロは〈ECM〉の北欧ジャズに通じる透明感を持ちつつ、次第に混沌とした音のうねりの中に包み込まれていく。前述の『ランダンス』の流れを汲む実験的な作品で、『イッツ・オールライト・ビトウィーン・アス・アズ・イット・イズ』がダンサブルな側面とは真逆の要素も持っていることを示す。これら終盤の2曲にリンドストロームとジャズの結びつきが表われているわけだが、ダンス・ミュージックやエレクトロニック・ミュージックとジャズや前衛音楽との間を取り持つ彼のスタンスは、故アーサー・ラッセルに重ね合わせることができるかもしれない。

小川充