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青葉市子

青葉市子

@Harajuku-VACANT

Apr 8, 2012

文:菊地佑樹   写真:小林志翔   Apr 17,2012 UP

 4月8日、桜も満開に近づき、代々木公園ではお花見を楽しむ人たちに溢れるなか、僕は原宿の〈VACANT〉で定期的に開催されている青葉市子さんの独奏会に参加してきた。〈VACANT〉は原宿から連想されるそれとは大きく異なる、木と鉄をコンセプトにした、一種原宿から切り離された内装と、アットホームな空間が魅力的なフリースペースで、イヴェント・スペース、アート・スペース、ギャラリーなどの他にも、ショップやカフェも展開している。

 会場に入り、客席を見渡し、あらためてこの1年での変化にまず驚く。僕がはじめて青葉市子さんの演奏を見たのは去年の震災前の新宿タワーレコードのインストア・イヴェントで、当時お客さんも30人程度だったのに比べ、当日は100人近くのお客さんが集まり、以前よりも世代が分散されている事にも気づく(先日行われた新宿タワーレコードのインストア・イヴェントも数多くの人が集まっていた)。

 日が暮れ出しはじめた夕方の18時頃、ひっそりと会場に姿を現し、「こんばんわ」のひと言を言い終え、深く息を吸い込み、そして青葉市子さんの演奏は静かにはじまった。白いワンピース、クラシックギター、楽譜、いままでと変わらない風景も立ちこめるなか、彼女自身の変化にもじょじょに気づかされていく。演奏が続くなか、音と空間が交わり、声にも表情が見えはじめてきた頃、どこかあどけなさが残る印象の裏に、見えない自信と演奏を楽しんでいるさまが垣間見れ、当時僕が見た彼女のそれとは大きく異るものを感じさせられた。しかし、いままでと変わらない線の細い、しかしどこか力強い、声という楽器が奏でる音色と、優しく包み込むように奏でられるギターの音色が情景を鮮やかにし、透き通るまばゆい音の風景にお客さんたちは彼女の世界を旅し、深く入り込んで行く。目をつむって音を聴く人。何か答えを見つけるように深く考え聴き込む人、笑みがこぼれ、彼女を幸せそうに見つめる人、表情もさまざまだ。一部が終わり、二部が少しあいだを開けて開始される。

 途中のMCでは七尾旅人さんのカヴァーを少し披露したり、細野晴臣さんの"悲しみのラッキースター"(デイジーホリデイでも以前披露)、この日のために用意した妖怪人間ヴェムの曲などを披露。演奏中の間や、アレンジ、即興性、遊び心のある空間の演出などにもこの1年で培ってきた良い意味での余裕が感じられた。演奏も終盤に差し掛かり、サード・アルバム『うたびこ』からの楽曲、"奇跡はいつでも"、"ひかりのふるさと"を披露。いままで異なっていた表情もこの場面ではたくさん目をつむって聴き込んでいる様子が多く伺えた。ここで僕は以前彼女が演奏中のMCで、こんな難しい時代だからこそ、こういう場では自分を解放して欲しいと言っていたのをふと思い出した。
 アンコールを含む2時間弱の演奏全てが終わり、彼女は「終わりです」とだけ言い残し、ひっそりと独奏会は幕を閉じた。青葉市子さんの音楽は僕らの意識のなかに内在する音や感覚であって、こんな時代だからこそ信じたい、そして触れて欲しい音だなとつくづく思った。終了後、久しぶりに会う彼女にいくつか質問をしてみた。


お疲れさまです。

青葉:ありがとうございます。

いくつか質問していくのでよろしくお願いします。まず、〈VACANT〉で演奏会を開かれてますけど、〈VACANT〉を選ぶ意味とか理由とかありますか?

青葉:うーんと、なんというか、堅すぎず、緩すぎず、っが良いかなと。以前はクラシックホールなどで演奏していたんですけれど、自分がどういう場所で演奏したら良いのか当時は定まってなかったんですね。この期間いろんなところで演奏して、〈VACANT〉さんでも演奏させて貰った時に凄く音の響きが良くて、それで木で作ってあるから何か温かい音になるかなと。お客さんにも皆こう、ちゃっと椅子に座るんじゃなくて、伸び伸びしてもらいたくてここを選びました。

演奏中のMCでたまに同世代の方が今日はたくさん来てくれて嬉しいとおっしゃてたりするじゃないですか、青葉さんの周りには細野(晴臣))さんや、小山田(圭吾)さん、七尾(旅人)さんなど、比較的年上が多い気がするのですが、平成生まれだという意識とか自覚みたいなものはあったりしますか?

青葉:うーん、それは全然ないですね。ただやっぱり同じ時代を同じように成長しながら生きてきた人達と自分の音楽を共有できることはとくに嬉しいなとは思っています。

なるほど。

青葉:刺激を受けた時期が同じ人たちってやっぱり勘が鋭いというか、言いたい事をすぐキャッチしてくださったりしますし。でも平成生まれとして意識をして活動をする、みたいなことはとくにないです。

今日もたくさんいろんなアーティストさんの楽曲をカヴァーしてましたね(当日は細野さん、ユーミンさん、七尾さんなどをカヴァー)。去年の夏にお話したとき、あんまり意識して自分から音楽を聴かないっておっしゃってたのが凄く印象的だったんですが、あれ以降その意識とか変わったりしましたか?

青葉:変わってないですね。この曲を聴こうみたいなことがあんまりなくて。これはたぶん言っちゃいけないことなのかもしれないんですけど、貰ったCDとかもあまり聴かないんです。私は生で鳴ってる音が一番好きで、CDとかは、そこで鳴っているもの、という感覚しかどうしてもなくて。うーん、これは凄く難しいんですけど、私は目に見えないもの、例えば会話とかその場でしか起こらないもの、ライヴもそうですよね。そういうものが好きです。

今日の演奏でもすごく感じたことなのですが、以前よりも今おっしゃっていた、その場でしか起こらない、例えば即興性、MCなんかもそうなんですけど、青葉さん自身以前より楽しんで取り組んでいるのが凄く印象的で。

青葉:多少上手になったのかなとは思いますけど(笑)、うーん、そうだなあ、臨機応変の力っていうのは場数を踏んで、ちょっとは出来るようになってきたかなとは思うけれど、こう来たらこうしようみたいなのは全然考えてないです。

ずっと僕個人的に気になってたことがあって、SOUNDCLOUDに、Joe Meekみたいな打ち込みのエレクトロの曲とかをアップしてらっしゃるじゃないですか、ああいう曲をこれからもっと全面に押し出して、例えばアルバムに入れてみたり、ライヴでも取り入れてみたりとかは考えてたりはしないんですか?

青葉:おお、凄い。それどんなライターさんにも訊かれたことなかったです(笑)。アンテナが凄いですね。

やった(笑)!

青葉:実はそういうのは凄く興味があって、なんでもできるものはやりたいので、できればいいなーとは密かに思ってます。あれはMacのガレージバンドで適当に遊んだだけなんですけど(笑)。ちゃんと機材も揃えたいんですけど、まだお金が......(笑)。

そういうものは小山田さんとかたくさん持ってると思うので借りたらいいと思います(笑)。

青葉:ふふふふふ(笑)。小山田さん、要らないものがあればください(笑)。

そういうセットでも小山田さんとか、細野さんとかとライヴで絡めたら面白そうですね。新しい世界が広がりそうで。

青葉:私もそう思ってます。出来る事は全て取り入れたいと思ってるので。エレキギターとかもいつかまた使ってみたいなあとも思ってるので、是非楽しみにしててください(笑)。

なおさら今後も期待ができそうですね。楽しみにしております。お疲れさまです、以上です。短いインタヴューでしたが、今日はどうもありがとうございました。

青葉:なんかひっかき回されてすごく面白かったです(笑)。話を聞いてて、事務的な人が多いなかで、いまみたいなスタイルはとても楽しいし、そのスタイルを変えないで頑張って欲しいです。

は、はい! ありがとうございます(笑)。僕と世代がまったく一緒ですし、初めてのインタヴューが青葉さんで本当に良かったです。僕自身もすごく取り組みやすかったです。本当にありがとうございました。


 僕は去年行われた青葉さんとアミーゴさんが企画をしたイヴェントから、青葉さんをひとつの目標としてここまで頑張ってきたので、こういう形での再会は信じられないくらい嬉しくて、帰り道震えが止まらなかったです。

 青葉さんはこの演奏会の翌日、「RISING SUN ROCK FESTIVAL」への出演を発表。僕ももっともっと頑張らなくてはと強く思った。〈VACANT〉でのライヴは来月の5.12(土)も開催予定。素敵な空間で、彼女が言う、生の音はたしかに鳴っています。是非会場へ!

文:菊地佑樹