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Bomb The Bass

Bomb The Bass

Back To Light

!K7 / Octave-lab

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渡辺健吾   Feb 25,2010 UP

 マッシヴ・アタックの新作に比べて、復活第二弾となるボム・ザ・ベースの新作はあまりにも話題になっていないな。湾岸戦争が勃発したころは、どちらも「戦争を想起させるから」というよくわからない理由で改名を強制されてたくらい影響力のあるアーティストだったんだけどな。まぁ自分も08年にやはり〈!K7〉からリリースした復活作のことはまるで知らなかったし、長年裏方に徹してしまった人が再度スポットライトを浴びようというのは容易ではないのだろう。

 ボム・ザ・ベースことティム・シムノンは、87年のデビュー曲「Beat Dis」や、プロデュースしたネナ・チェリー「バッファロー・スタンス」の印象が強すぎて、洗練されたサンプリング魔術師、UKヒップホップ~アガれるDJミュージックの第一人者といまだに思われているところがある。しかし、実際には91年のセカンド・アルバムあたりからもうどよーんとした雰囲気やダブ趣味、それにとってつけたようなR&B歌唱が乗るというありきたりな路線になってしまい、まぁそういうのだったらブリストル勢とかほかにいくらでもいいアーティストがいるという時代に突入していくなかで急速に人気が陰っていく。一方で、プロデューサーとしてはビョーク、シンニード・オコナー、ギャヴィン・フライデー、カーヴ、デペッシュ・モードなどを手がけ、お、これはフラッドとかマイク・ステントとかみたいな職人の道を歩むのか......などと思っていたら、いつのまにかそっちの道も途絶えてしまっていたようだ。

 なんの情報もインプットせずにCDをプレイヤーに入れて再生すると、いきなりきらびやかな歌ものエレポップが流れてきて、驚かされる。元はエレポップなデペッシュ・モードをプロデュースしてもかなりダークな『Ultra』になっちゃったティムなのに、なんなのこの変貌ぶりは。いや、たしかに日本だけじゃなく、世界中でエレポップ風の打ち込みトラックバックにして女性ヴォーカルが唄うスタイル、流行っているよ......しかしここまで開き直ってもいいのかね。――と半分くらいまで到達して、箸休めもなにもなく全曲その調子なので資料に手を取って再度びっくり、なんとプロデューサーがギ・ボラットではないか! その昔、まだ彼が注目される前に〈Kompakt Pop〉から出た歌ものエレクトロな「Like You」がものすごい好きでずっとDJバッグに入れていた者としては、ティムのようなポップ職人でありDJミュージックのパイオニアが現在のフロアの最前衛でさらに西洋的音楽観だけでない素養を持つギ・ボラットにアルバム全体を任せるなんて、と少し泣けてしまったよ。で、改めてCDを頭までリワインドして正座して聴き直してみる。

 ポール・コンボーイ、リチャード・デイヴィス、ケリー・ポーラーら哀愁を帯びた男性ヴォーカルを聞かせるゲストを起用し、アッパーになりすぎず繊細なアレンジワークを展開。昨今、巷に腐るほどあるただの手法としてなんとなくデケデケシンセ鳴らしてみましたという類とはちがい、ヴィンス・クラークやジョン・マーシュ(The Beloved)あたりのかつての仕事のように、エレクトロニクスへの偏愛が生みだしたプラスチックの宝石みたいに安っぽさはあっても愛おしい輝きに満ちている。正直、これがボム・ザ・ベースの作品である必然性はまったくない気もするが、例えばミス・キティンあたりが当初のチープさを脱しよう脱しようとして、プロダクションに力を入れれば入れるほど魅力を失っていったのとは真逆で、ハイ・プロダクションの世界からストリート的猥雑さ、シンプルさにおりてきて、なおかつ本来のポップとしての質を失っていないというのは、なかなか思い切った挑戦だ。しかし、売れるフックが欲しかったとはいえ、10年前のボツ曲に違いない、マーティン・ゴアの参加した陰鬱なインスト曲で最後を締めるのはどうなのかと。別に悪い曲だとは思わないけど、どう考えてもここだけ違和感があるんだよね。

渡辺健吾