ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Grouper - Shade (review)
  2. Interview with Phew 音が導く、まだ誰もみたことのない世界 (interviews)
  3. Saint Etienne - I've Been Trying To Tell You (review)
  4. interview with BADBADNOTGOOD (Leland Whitty) 彼らが世界から愛される理由 (interviews)
  5. interview with Parquet Courts (Andrew Savage) 都市の喧騒が聞こえる (interviews)
  6. Columns 進化するクァンティックの“ラテン” ──雑食的な魅力たっぷりの新作をめぐって (columns)
  7. Phobophobes - Modern Medicine (review)
  8. Moritz Von Oswald Trio - Dissent (review)
  9. Lucrecia Dalt & Aaron Dilloway - Lucy & Aaron (review)
  10. Autechre × Humanoid ──オウテカがヒューマノイドのレイヴ・アンセムをリミックス (news)
  11. Abstract Mindstate - Dreams Still Inspire (review)
  12. Cleo Sol - Mother (review)
  13. Dub Meeting Osaka Soundsystem Special ──大阪で大型サウンドシステムによる重量級低音ダブのイベント開催 (news)
  14. interview with Jeff Mills + Rafael Leafar 我らは駆け抜ける、ジャズとテクノの向こう側へ (interviews)
  15. Ryoji Ikeda ──東京では5年ぶりのソロ・ライヴ開催、作品「superposition」の上映もあり、さらにCDも限定リリース (news)
  16. interview with Lucy Railton 〈モダーン・ラヴ〉からデビューした革新的チェリストの現在 (interviews)
  17. Little Simz - Sometimes I Might Be Introvert (review)
  18. Marisa Anderson / William Tyler - Lost Futures (review)
  19. Pa Salieu - Send Them To Coventry (review)
  20. Tirzah - Colourgrade (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Scout Niblett- The Calcination Of Scout Niblett

Scout Niblett

Scout Niblett

The Calcination Of Scout Niblett

Drag City

Amazon iTunes

野田 努   Feb 12,2010 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 この10年、いわば退廃的な女性シンガーというのが顕在化していて、ホープ・サンドヴァル、キャット・パワー、あるいはエマ・ルイーズ"スカウト"ニブレットあたりがその代表と言えよう。彼女たちはまるで......とくに在米イギリス人のスカウト・ニブレットは、スティーヴ・アルビニと組んだサード・アルバム『アイ・アム』(2003年)以降は、温かいブルースと激しいのソウルのミックスジュースで、エレガントなバラードを歌うかと思えば、ローファイ・ノイズ(エレクトリック・ギターとドラムによる)が爆発する曲もある。牧歌的なフォークもあるし、天文学についての曲もある。だが、いずれにしてもニブレットの本質とはブルースなのだ。それもまた、傷ついて、疲れ、すり減った心が歌う勇敢なブルース。彼女がいまだに熱心なファンを逃さないのは、彼女の音楽にはどうしようもなく魂を揺さぶられるような瞬間があるからである。

 〈トゥ・ピュア〉を離れ、〈ドラッグ・シティ〉からのリリースとなった通算6枚目のアルバム『ザ・カルシネーション・オブ・スカウト・ニブレット』は、ウィル・オールダムとのデュエットなどに象徴されるような3年前のフォーキーな前作とは打って変わって、よりハードに、よりノイジーに、よりシンプルに、ニブレットのブルースが強調されている。エレクトリック・ギターのみで弾き語られる"I.B.D."のようなバラード、"ベルジン"のような美しいブルースは彼女の独壇場で、彼女のこの手の曲はいつ聴いてもうっとりさせらる......が、このアルバムはこれまでの彼女のキャリアのなかでもっともハードな作品になっている。

 アルバムはまるでストゥージズのように、彼女の強烈に歪んだギターからはじまる。そして2曲目の"ザ・カルシネーション・オブ・スカウト・ニブレット"や"ルーシー・ルシファー"のような不機嫌なブルース・ロックがアルバムの方向性を浮かび上がらせる。アルバムの後半も穏やかさと激情が交錯する"リップ・ウィズ・ライフ"、ひときわノイジーな"ストリップ・ミー・プルート"(彼女が好きな天体をモチーフとしている)といった曲が続く。

 ニブレットの歌は、間違いなく研磨されているようである。彼女のなかの激しさは自分の理性によってコントロールされ、アルバムでは彼女の新しいスタイルが作られようとしている。それはいわばローファイ・オルタナティヴ・ブルース・ロックで、長年のパートナー、スティーヴ・アルビニの手によってあたかもライヴハウスで聴いているような音になっている。その驚くほどの生々しさが、彼女のエモーショナルな音楽をさらに特別な響きにしている。

TrackList

  1. 1. Just Do It!
  2. 2. The Calcination of Scout Niblett
  3. 3. I.B.D.
  4. 4. Bargin
  5. 5. Cherry Cheek Bomb
  6. 6. Kings
  7. 7. Lucy Lucifer
  8. 8. Duke of Anxiety
  9. 9. Ripe With Life
  10. 10. Strip Me Pluto
  11. 11. Meet and Greet

野田 努