ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Cornelius - 2022.7.30@Fuji Rock Festival (review)
  2. interview with HASE-T 人生が変わるような音楽 (interviews)
  3. Actress × Mount Kimbie ──アクトレスとマウント・キンビーがコラボレイト (news)
  4. Ebi Soda - Honk If You're Sad (review)
  5. Lianne Hall - Energy Flashback (review)
  6. black midi - Hellfire (review)
  7. Mary Halvorson - Amaryllis & Belladonna (review)
  8. Pan American - The Patience Fader (review)
  9. ダブ・パトロール - ──2022年上半期の推薦盤10枚 (review)
  10. interview with Cornelius 新作『Ripple Waves』を語る (interviews)
  11. Cornelius ——“変わる消える”の配信を再開したコーネリアス (news)
  12. interview with Superorganism 僕らが目指しているのはポップ・ミュージックを作るってことだけ (interviews)
  13. Brian Eno ──ブライアン・イーノのニュー・アルバムがリリース、ひさびさのヴォーカル作品 (news)
  14. Claire Rousay - Everything Perfect Is Already Here (review)
  15. interview with Wu-Lu 世界が変わることを諦めない音楽 (interviews)
  16. 새눈바탕/セヌンバタン(Bird's Eye Batang) - 손을 모아 /ソヌル モア(Flood Format) (review)
  17. 寺尾紗穂 - 余白のメロディ (review)
  18. interview with Cornelius 星の彼方へ (interviews)
  19. こんにちでもなお ガイガーカウンターを手にすれば「ラジウム・ガールズ」たちの音を 聞くことができる - ──映画『ラジウム・シティ~文字盤と放射線・知らされなかった少女たち~』、アルバム『Radium Girls 2011』 (review)
  20. Big Thief ──ビッグ・シーフの初来日公演が決定 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Avey Tare- Down There

Avey Tare

Avey Tare

Down There

Paw Tracks

Amazon iTunes

野田 努   Nov 05,2010 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 アニマル・コレクティヴでエイヴイ・テアーを名乗るデヴィッド・ポートナーにとっての最初のソロ・アルバムで、結論から言えば......、いや、結論は最後に書くべきだ。とにかく最高のモダン・サイケデリック・ポップが展開されているし、僕はかなり気に入っている。まず、アルバム冒頭の"ラフィング・ハイログリフィック(笑っている象形文字)"からして素晴らしい......というか間違いなくこれがベスト・トラックである。いわばエレクトロニック仕様のシド・バレットで、マーク・ベルが作ったトラックの上に『ザ・マッド・キャプ・ラフス』がミックスされていると想像して欲しい。IDMテクスチャーのトラックもさることながら、デヴィッド・ポートナーのエモーショナルなヴォーカルもなかなか味がある。2曲目の"スリー・アンブレラズ"はアニマル・コレクティヴの"マイ・ガール"と同じ系統に属する軽めのポップ・ソングで、3曲目の"オリヴァー・ツイスト"は子供じみた奇抜さを持ったIDMスタイル、そして4曲目の"グラス・ボトム・ビート"から"ゴースト・オブ・ブック"へとアルバムは奇行に走る子供のようにサイケデリックな度合いを高めていく......という展開だ。

 デヴィッド・ポートナーは、ブラック・ダイスのエリック・コープランドとのテレストリアル・トーンズによって実験性の強い作品を発表しているが、彼はこのアルバムでもそれぞれの曲でエレクトロニクスを活かしたユニークなサウンドを追求している。喩えるなら、エイフェックス・ツインやプラッド、LFOといった夢見る〈ワープ〉サウンドがブルックリンの動物農場で合唱しながら再生されているような感じだ。6曲目の"セメタリーズ(墓地)"はエイフェックス・ツインめいたアンビエント調のトラックにおぼろげな歌がミックスされるという、そう、まさに"入眠ポップ"である。7曲目の"ヘッズ・ハンモック"では、絡まった糸のように歌や音を捻り、引き延ばし、リスナーをわけのわからない世界へと連れて行く。8曲目の"ヒーサー・イン・ザ・ホスピタル"、そして最後の曲"ラッキー・ワン"に関しては、何も知らず曲だけ聴いたらアニマル・コレクティヴの新曲だと思うだろう。彼らの得意とするメロディのオンパレードだ、が、しかし、バックトラックのIDMテクスチャーがこのアルバムのすべてを代弁する。つまり、デヴィッド・ポートナーはチルウェイヴァーたちにこう話しかけていると想像して欲しい。どうだい、これもけっこう気持ちいいでしょう?

 はい、ご名答。これは、アニマル・コレクティヴからのチルウェイヴへのリアクションである......というのが僕の結論であり、誰かに訊かれたらそう答えている。いまではエイヴイ・テアーまでチルウェイヴにアプローチしていると。

野田 努