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Avey Tare

Avey Tare

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野田 努   Nov 05,2010 UP
E王

 アニマル・コレクティヴでエイヴイ・テアーを名乗るデヴィッド・ポートナーにとっての最初のソロ・アルバムで、結論から言えば......、いや、結論は最後に書くべきだ。とにかく最高のモダン・サイケデリック・ポップが展開されているし、僕はかなり気に入っている。まず、アルバム冒頭の"ラフィング・ハイログリフィック(笑っている象形文字)"からして素晴らしい......というか間違いなくこれがベスト・トラックである。いわばエレクトロニック仕様のシド・バレットで、マーク・ベルが作ったトラックの上に『ザ・マッド・キャプ・ラフス』がミックスされていると想像して欲しい。IDMテクスチャーのトラックもさることながら、デヴィッド・ポートナーのエモーショナルなヴォーカルもなかなか味がある。2曲目の"スリー・アンブレラズ"はアニマル・コレクティヴの"マイ・ガール"と同じ系統に属する軽めのポップ・ソングで、3曲目の"オリヴァー・ツイスト"は子供じみた奇抜さを持ったIDMスタイル、そして4曲目の"グラス・ボトム・ビート"から"ゴースト・オブ・ブック"へとアルバムは奇行に走る子供のようにサイケデリックな度合いを高めていく......という展開だ。

 デヴィッド・ポートナーは、ブラック・ダイスのエリック・コープランドとのテレストリアル・トーンズによって実験性の強い作品を発表しているが、彼はこのアルバムでもそれぞれの曲でエレクトロニクスを活かしたユニークなサウンドを追求している。喩えるなら、エイフェックス・ツインやプラッド、LFOといった夢見る〈ワープ〉サウンドがブルックリンの動物農場で合唱しながら再生されているような感じだ。6曲目の"セメタリーズ(墓地)"はエイフェックス・ツインめいたアンビエント調のトラックにおぼろげな歌がミックスされるという、そう、まさに"入眠ポップ"である。7曲目の"ヘッズ・ハンモック"では、絡まった糸のように歌や音を捻り、引き延ばし、リスナーをわけのわからない世界へと連れて行く。8曲目の"ヒーサー・イン・ザ・ホスピタル"、そして最後の曲"ラッキー・ワン"に関しては、何も知らず曲だけ聴いたらアニマル・コレクティヴの新曲だと思うだろう。彼らの得意とするメロディのオンパレードだ、が、しかし、バックトラックのIDMテクスチャーがこのアルバムのすべてを代弁する。つまり、デヴィッド・ポートナーはチルウェイヴァーたちにこう話しかけていると想像して欲しい。どうだい、これもけっこう気持ちいいでしょう?

 はい、ご名答。これは、アニマル・コレクティヴからのチルウェイヴへのリアクションである......というのが僕の結論であり、誰かに訊かれたらそう答えている。いまではエイヴイ・テアーまでチルウェイヴにアプローチしていると。

野田 努