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Camilla George

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Camilla George

The People Could Fly

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小川充   Nov 20,2018 UP
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 前回紹介したマイシャにはヌビア・ガルシアが在籍しており、彼女はいま話題のテナー・サックス奏者だが、アルト・サックス奏者で着目すべきはカミラ・ジョージだろう。彼女はザラ・マクファーレンやヌビア・ガルシアと同じくトゥモローズ・ウォリアーズ出身で、ジャズ・ジャマイカでも演奏していた。コートニー・パインの呼びかけによって、トゥモローズ・ウォリアーズ出身の女性ミュージシャンが集まったヴィーナス・ウォリアーズというプロジェクトにも参加し、ヌビア・ガルシアやベテランのジュリエット・ロバーツのほか、ヌビアと同じくマイシャのシャーリー・テテ、彼女たちと共にネリヤという6人組女性バンドを組むロージー・タートン、メルト・ユアセルフ・ダウンのルース・ゴラーらと共演している。テナー・サックスのヌビアがコルトレーンやファラオ・サンダースの系譜を受け継ぎ、カマシ・ワシントンを引き合いに出されるのに対し、アルト・サックスのカミラはチャーリー・パーカーの系譜を受け継ぎ、現在ならケニー・ギャレットを想起させる。ちなみに、カミラのバンドにはもうひとりサラ・タンディというプレイヤーがいて、ジャイルス・ピーターソンジョー・アーモン・ジョーンズがいま注目のピアニストとして彼女を絶賛している。彼女はアコースティック・ピアノからエレピまで演奏するが、エレピのプレイは往年のスティーヴ・キューンを彷彿とさせるようだ。

 カミラ・ジョージは自身のカルテットで2017年に『アイサング』というアルバムをリリースしたが、このときのメンバーはサラ・タンディのほかにベースのダニエル・カシミール、ドラムスのフェミ・コレオソ(彼はエズラ・コレクティヴのメンバーでもある)で、ザラ・マクファーレンもゲスト参加して1曲歌っていた。基本的にはネオ・バップ~モード的な正統派ジャズ・アルバムだが、ところどころでカリブやアフリカ的な要素が顔を出し、カミラがトゥモローズ・ウォリアーズ出身者であることを裏付ける内容だった。ケニー・ギャレットの曲とスタンダードの“夜は千の目を持つ”をカヴァーしたほかは全てカミラの作曲で、彼女のコンポーザー、バンド・リーダーとしての才能を見せるアルバムだった。それから一年ぶりの新作『ザ・ピープル・クドゥ・フライ』はカルテットから拡大した編成となり、ギターでシャーリー・テテ、トランペットでクエンティン・コリンズらが参加するほか、ヴォーカルではUKソウルの大御所のオマーと新進女性シンガーのチェリース・アダムズ・バーネットがフィーチャーされる。チェリースもトロープやアシュレイ・ヘンリーのリ・アンサンブルで活躍するなど、注目の若手女性のひとりである。カミラ、サラ、ダニエル、フェミ、シャーリー、チェリースというラインナップは、〈ジャズ・リフレッシュド〉などのライヴの常連で、現在の南ロンドン・ジャズを象徴するセッションと言えるだろう。なお、プロデュースのアンドリュー・マコーマックもトゥモローズ・ウォリアーズ出身のピアニストで、ジェイソン・ヤードやシャバカ・ハッチングスなどと共演する。そして、ミックスと録音はロビン・マラーキーとベン・ラムディンがエンジニアリングするなど、随所にUKジャズの重要人物が関わっている。

 『アイサング』がバップやモード・スタイルだったのに対し、『ザ・ピープル・クドゥ・フライ』はいろいろな音楽要素が融合したフュージョン的色彩が強い。こうしたフュージョン化の要因として、シャーリーのギターが加わっていることが大きく作用している。“タッピン・ザ・ランド・タートル”はチェリースのチャント風コーラスをフィーチャーし、全体にアフリカン・テイストを帯びたフュージョン・ナンバーとなっているが、シャーリーのギターはこうした野趣溢れるムードにとても相性がいい。『アイサング』でも随所にアフロ・カリビアンなプレイを見せたカミラだが、“タッピン・ザ・ランド・タートル”はその方向性をより強く打ち出したナンバーと言える。同様に表題曲の“ザ・ピープル・クドゥ・フライ”は、アフリカ音楽の牧歌的なムードを取り入れたジャズとなっている。『アイサング』と同じカルテット演奏もあり、ネオ・バップの“キャリング・ザ・ランニングス・アウェイ”ではカミラのソロに加え、サラのピアノやダニエルのベースもスイング感のある見せ場を作る。“リトル・エイト・ジョン”はチェリースの美しいヴォーカルをフィーチャーしたモーダルなバラード。この曲や“ヒー・ライオン、ブラー・ベア、ブラー・ラビット”での抒情性に富む演奏を聴くと、カミラやサラがオーソドックスなジャズのマナーも身につけ、地に足の着いたプレイヤーであることがわかるだろう。“ザ・モスト・ユースフル・スレイヴ”はかつての奴隷制度をモチーフとした曲で、足に繋がれた鎖の音のようなSEが混ざる。カミラの演奏はブルース色が強く、サラのピアノはメアリー・ルー・ウィリアムズとかニーナ・シモンなどを彷彿とさせる。

 一方でニュー・ジャズ的なナンバーもあり、オマーが歌う“ヒア・バット・アイム・ゴーン”はカーティス・メイフィールドのカヴァー。フェミがタイトなビートを叩き出し、シャーリーのギターがグルーヴィーに並走するという、ダンス・サウンドとしても非常に優れたものだ。“ハウ・ネヘミア・ゴット・フリー”は聖書のネヘミア記をモチーフとした作品だが、ブギーとブロークンビーツを咀嚼したようなビートが斬新。こちらのドラムはフェミではなく、アシッド・ジャズ期からバッキー・レオのバンドなどで長い活動を誇るウィンストン・クリフォードによるもの。アルバム全体でも彼がドラムを担当するナンバーが多く、オマーも含めてアシッド・ジャズ世代と今の若いジャズ世代がうまく融合したアルバムと言える。

小川充