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stillichimiya ツアー「生でどう。」ファイナル

stillichimiya ツアー「生でどう。」ファイナル

@渋谷WWW

Oct. 5, 2014

二木 信、矢野利裕   Nov 10,2014 UP
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このうえなくコミカルで、このうえなくヒップホップな夜 矢野利裕

 ヒップホップの醍醐味のひとつは演劇性にある、とつねづね思っている。エミネムが「Slim Shady」というオルター・エゴを持つように、ラッパーとしての表現は、ある部分においてはキャラクターを仮構することで獲得されている。
僕は、自覚があるかどうかはともかく、しっかりと演劇的に振る舞ってくれるラッパーが好きである。ハードコアな姿勢すらもコントとして捉えるような、強い演劇性を持ったラッパーに惹かれる。田我流を初めて聴いたのは『作品集 JUST』だったが、シリアスで強いメッセージ性を感じさせる一方で、どこかユーモアがあるところがとても気に入った。「墓場のDIGGER」のMVにおける田我流とBig Benは、まるで「B級映画のように」演劇性を発揮していた。さらにその後、「やべ~勢いですげー盛り上がる」のMVが最高だった。

 『死んだらどうなる』が発売される直前、stillichimiyaのライヴを初めて観た。山梨でマキタスポーツ(マキタ学級)とのツーマンだった。同郷ということで企画されたものだったが、音楽性とノベルティ性を高い水準で両立する者同士の対バンがとても楽しみだった。こういう組み合わせは、なかなかないのだ。そのライヴで、「生でどう?」の、あの往年の石橋貴明のような振付を観て、stillichimiyaから目が離せない、と思った。そして、発売された『死んだらどうなる』は、ノベルティ性も音楽性も期待を超えて高かった。けっこう感動した。BOSEとアニが、ザ・ドリフターズのように「ニンニキニキニキ」(“Get Up And Dance”)とラップした20年後、『死んだらどうなる』でstillichimiyaは、“ズンドコ節”のラップ・ヴァージョンを披露した。日本語ラップの側から、コミックソングへしっかりとアンサーをし、コミックソングとしての系譜を紡いだことは、とても重要なことだ。スチャダラパーの面々が『死んだらどうなる』にコメントを寄せていたことは、だから、とても感慨深いことであった。

 長々と書いてしまったが、ようするにstillichimiyaのコント仕立てのステージングが素晴らしかった、ということを言いたいのだ。エンタテイメントとしても素晴らしいし、音楽史的にも素晴らしい。10月5日、渋谷〈WWW〉でおこなわれたツアー・ファイナルは、Big Benが死後の世界に迷い込んだようなオープニング映像(スタジオ石制作)からはじまった。ヒップホップのライヴも、芸能の場所と考えれば、死者と生者が交歓する場所なのかもしれない。やはり、stillichimiyaはひとつの芸人集団なのだ。“うぇるかむ”に続く“Hell Train”のファンキーなトラックで、客も一気に異世界に持ってかれた。僕はほぼ最前列にいたが、冒頭からつづくテンションの高いパフォーマンスに客席は早くも興奮しており、“やべ~勢いですげー盛り上がる”でモッシュが起きた。前半数曲で、すでにへとへとだ。

 それにしても、Mr.麿という才能には惚れ惚れする。とくに、“やべ~勢いですげー盛り上がる”と“竹の子”の曲振りとなる一人コントは出色だった。あれだけ見事に、妄想の女性と踊ることができる人がいるだろうか。軽やかな身のこなし、表情の豊かさ、声のメリハリ――ラッパーというよりも舞台人としての身体性に、本当に目を奪われる。アンコールでは、なんとEXPOの曲まで披露してくれた。同じくアンコールの“莫逆の家族”で響かせた歌声も忘れがたい。
 ライヴが舞台演劇という側面を持つ以上、Mr.麿のような存在の重要性は疑うべくもない。いや、Mr.麿に限らずstillichimiyaは、誰もが舞台人としての魅力に富んでいる。これは、音盤では気づきにくい。Big Benは、ときには黒柳徹子に、ときには猫に扮してコミカルに振る舞う。すらりとしたMMMがラップをはじめると、(おもに女子の)歓声があがり気圧配置が変わる。Young-Gは、DJとラッパーの一人二役を伸び伸びとこなす。そして、田我流の華やかなラップ・スターぶり。この個性溢れる5人が横一列に並んで歌う“ズンドコ節”は、最高にヒップなコミック・ソングであった。ヒップホップに抱え込まれた芸能性が、このうえなく発揮されている。かつてノベルティ・ソングを歌った原田喜照も、だからこそstillichimiyaのライヴに召喚される。そういえば、MC時の、原田をからかうstillichimiyaとstillichimiyaに振り回される原田という構図は、完全にザ・ドリフターズといかりや長介の構図ではないか! 途中、原田の動きにYoung-Gが変な効果音を当てていたが、これも完全にコミック・バンドの文法である。この晩のハイライトは、やはり“土偶サンバ”か。サンバを器用に踊るMr.麿やMMMをわきに、ヒップホップ・ライヴの醍醐味ともいえるコール&レスポンスを煽る田我流。このうえなくコミック・バンドで、このうえなくヒップホップな、stillichimiyaの魅力が凝縮されていたようだった(“土偶サンバ”は事情により2回披露されることになったのだが、これはこれでstillichimiyaのノリがかいま見ることができて可笑しかった)。

 コミカルな面を強調したが、もちろんシリアスな面も変わらず存在している。というより、コミカルな面とシリアスな面を矛盾なく共存させることができるのが、ヒップホップの魅力でありstillichimiyaの魅力なのだ。田我流は、「土偶サンバ」に際して、現在の日本が抱える問題を語り、DIYの重要性を説いていた。たしかに田我流のリリックには、Back To Basic的なメッセージ性を感じる。しかし、一方でMr.麿は、『死んだらどうなる』について「メッセージ性ないからね」と発言している。メッセージ性は聴き手がそれぞれ受け取るとして、たとえば“だっちもねぇこんいっちょし”(原田喜照)から“You Must Learn”(KRS-ONE)まで、どんな内容でも放り込めてしまえるのがヒップホップの良さである。つまり、許容量が大きいのだ。stillichimiyaのライヴは、そんなヒップホップの許容量の大きさを存分に味わわせてくれるライヴだった。コミカルかつシリアス。ライヴ前は、DJ KENSEIによるstillichimiya関連のDJミックスが披露された。KENSEIらしく、アブストラクトなトラックと中毒的なフロウを引き立たせるような、選曲と2枚使いだった。そういえば、stillichimiyaはドープな曲も多いよね。なんせstillichimiyaは、幅広い魅力を持っているのだ。コミカルかつシリアスかつドープな夜で、おおいに満足した。まさか、「死んだらどうなる?」の答えが「土偶になる」だったとはなあ。

文:矢野利裕

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