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4人のOPNファンが綴るOPNコラム

4人のOPNファンが綴るOPNコラム

青野賢一、池田桃子、ChatGPT、樋口恭介、若林恵 Oct 06,2023 UP

彼の作るものが “規格外” であることは一貫して変わらない

池田桃子
by Momoko Ikeda

ライター、エディター、プランナー。2007年よりNY在住。今年からは東京にも拠点を構えて企業に向けたマーケティングコンサルも行っている。OPNの曲の中で一番好きなのは “Chrome Country”。2018年にNYで行われた『Age Of』ライヴでボーナスで演奏された際、観客たちがキターーと言わんばかりに湧いた姿が印象的だった一曲でもある。

 幸運なことに、今まで5回もOPNことダニエル・ロパティンにNYでインタヴューさせてもらう機会があった。当時の新譜『Age Of』や『Magic Oneohtrix Point Never』のこと、また彼が拠点とするNYという街の持つ魅力について、さらにはサントラを担当した映画『GOODTIME』について監督の一人であるジョッシュ・サフディも参加しての対談というスペシャルな時もあった。

 取材する度にダニエルの持つ知識の広さと深さ、そしてストイックな制作スタンスに毎回刺激をもらっているが、特に印象的だったのはやはりカルト的人気を誇るサフディ兄弟監督の出世作となった映画『GOODTIME』におけるサントラ制作秘話だ。監督であるジョッシュからも「ダンは概念的にこの映画の一つのキャラクターを演じているようなものだ」と言わしめるほど、音が映像を効果的にリードする印象的な作品だが、その制作はそう容易くなかったようだ。

「当初僕らは9日間もスタジオに籠もったけれど蓋を開けたら15分の音しかできてなくて。しかも完成形の音でもなかったから、最終的にはさらに3日かかった。『なんてこった、これは長くなりそうだ』と思ったよ(笑)」とジョッシュが語り、ダニエル自身も「全然色気のあるものじゃないんだよ。座ってがむしゃらに作るマイクロな作業さ。特にジョッシュはフレーム一つ一つ丁寧に作る人だから、すべての動画部分に対して共感しないといけない。複雑な生き物を理解するようなプロセスで、こんな風には音楽を作ったことがなかったね。ジョッシュはスタジオに毎日のように来るんだ。制作中の1ヶ月半ずっとね(笑)」と、その大変さと二人の親密さを語ってくれた。

 複雑な作業の果て紡ぎ出された音は、OPNらしいサイバー感も健在で、ファンの期待を全く裏切らない仕上がりだったことはみなさんもご承知の通りだろう。(ついでにカンヌ映画祭ではサウンドトラック賞も受賞)
 アンダーグラウンドの要素を取り入れるOPNが、どんどんとメインストリームへと斬り込んでいく姿をNYでリアルタイムに追いかけてきたわけだが、どんなプロジェクトであろうとも彼の作るものが“規格外”であることは一貫して変わらない。

 かつてジョッシュが、車のフォード社の創業者であるヘンリー・フォードの「If I had asked people what they wanted, they would have said faster horses.」(もし私が人々に何がほしいのかと尋ねていたら、《当時の》人々は《自動車が欲しいとは言わずに》、より速く走る馬がほしいと言ったことだろう)という言葉があると教えてくれたことがある。車の存在を知らない消費者は今あるものの延長でしかものを見れない。でも車というものがあると提案する人や会社が現れたら、世界が変わる。そういうモノづくりはOPNの存在を説明するのにとてもしっくりくる。今までの概念とは違うこの全く新しい世界に出会ってしまったからには、もう後には引き返すことができない。OPNの音を聴くということは、私にとって自分を覚醒させていく体験である。

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