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Columns

4人のOPNファンが綴るOPNコラム

4人のOPNファンが綴るOPNコラム

青野賢一、池田桃子、ChatGPT、樋口恭介、若林恵 Oct 06,2023 UP

自問と考察を促す、独自のサウンド・テクスチャー

青野賢一
by Kenichi Aono

1968年東京生まれ。株式会社ビームスにてPR、クリエイティブディレクター、音楽部門〈BEAMS RECORDS〉のディレクターなどを務め、2021年10月に退社、独立。現在は音楽、映画、ファッション、文学などを横断的に論ずる文筆家としてさまざまな媒体に寄稿している。近著に『音楽とファッション 6つの現代的視点』(リットーミュージック)がある。目下のお気に入りのOPN楽曲は “Nightmare Paint” (アルバム『Again』)。

 思わず目が離せなくなる現代美術作品や、理解が追いつかないけれどとにかく圧倒された映画に触れたとき、なぜ目が離せないのか、どんなところに圧倒されたのかを自問しつつ、わたしたちはあれこれと考察しなんとかその作品を解釈しようと試みる。こうした自問や考察は、すっきりとした答えに到達できなかったとしても──そもそも正解などないのだが──、鑑賞者の感覚を研ぎ澄ますことには大いに役立つだろう。そんな鑑賞体験と対象への理解欲を刺激する作品が現代における広義のポピュラー・ミュージックにどれだけあるかといえば、あまり多くはないのかもしれない。流行にとらわれ、ファストにエモーショナルをかき立てるような音楽が目立つうえ、作り手がある程度わかりやすく説明してくれることも多いという状況を考えるとさもありなんだが、そうしたなかにあって、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下、OPN)の諸作は、自問と考察を繰り返したくなる不思議な、それでいて強烈な魅力があると感じている。

 きちんと聴き始めたのは『R Plus Seven』(2013)だったろうか。坂本龍一『エスペラント』(1985)にも通ずる、静謐でありノイジー、乱暴で端正、既存のジャンルに当てはめるのが憚られるその収録曲を聴いて、この人の頭のなかを覗いてみたくなった。その思いは新作がリリースされるたびに驚きや感嘆とともに湧き起こり、インタビューを読んだり、アルバムのカバー・アートに採用されているアーティスト──一連の素晴らしいアートワークは作品世界に近づく手がかりのひとつといえるだろう──について調べたり。そんなふうに思わせてくれるアーティストはそうそういない。

 ある程度ジャンルの枠組みのなかで活動しているアーティストであれば、新作であってもなんとなく楽曲のイメージは予測できるものだが、OPNの作品にはそれがまるでないばかりか、アルバム中の次の曲がどのようなものかも皆目見当がつかない。そして不思議なことに集中して繰り返し聴いても旋律やフレーズはあまり記憶にとどまらず、サウンドのテクスチャーが強く印象に残るのだ。OPNのシグネチャーともいえる圧倒的な音の質感は、それぞれの楽曲が収録時間の推移のなかに溶けていったとしても、しっかりと心に刻まれる。それこそがわたしがOPNに惹かれるひとつの理由かもしれない。

 ところで、デヴィッド・ロバート・ミッチェルの『アンダー・ザ・シルバーレイク』(2018)はご存じだろうか。LAのシルバーレイクを舞台に、ある女性の失踪事件を独自に追うオタク気質の青年がいつのまにか街の裏に蠢く陰謀にたどり着いてしまうというこの映画を観るたび、わたしはOPNの音楽の手触りを思い出してしまう。ニューエイジ思想を脱構築しつつその残り香を見事にクリエイションに生かしていることからだろうか。

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