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打楽器逍遙

打楽器逍遙

7 ムードとモード(2)

増村和彦 Mar 13,2018 UP

 いつか新宿ピットインの壁に掛かっていたエルヴィン・ジョーンズの写真を見ながら、アフリカ帰りの友人パーカッショニストAが言った。
「胸のあたりになんかあるやろ。ここで叩いている気しない?」
 言わんとしていることはなんとなくわかった。おでこのチャクラだけが先行してそれだけを頼りに音楽を聴いていた10代の頃から、ドラムを叩きながら同じようなものがへその下辺りにあることに気づき始めていた23歳くらいのことだったように思う。それを彼に伝えると、「それのバランスが大事やで。そしたらみぞおちの辺りで繋がってくる」と返された。エルヴィンのそれか。

 モードに入らないと何かを始めることはできないが、同時にモードは払拭するためにもある。2月前半から3月頭にかけて主に GONNO × MASUMURA と OLD and YOUNG の録音で大半を東京で過ごした。出発前、大分の山でアイデアと動きを温めて、体調を整えて、後悔のないように、なんていう気持ちで飛行機に乗り込んでいた。もしそのまま録音が終わっていたら、「やりきることができた」なんていう感傷主義に堕していただろう。
 確かに練習や経験が高まると、時に抽象的な気持ちよさを感じることができるが、そこに留まるとすぐに経験世界に逆戻りしてしまう。東京に着いて、まずGONNOさんとの録音に入り、セッティングを終え練習がてらセッションを始めた時、不思議とAの言葉を思い出した。みぞおちモヤモヤのリズム……スピリチュアルなことではなくて、誰しも叩いてて得も言われぬ気持ちよさを感じたことがあるに違いない。そして、どうやったらまた感じられるのだろうと思ってもなかなかもう一度やって来ないことも知っている。その要因のほとんどが、偶然、もしくは相手、だからだろう。音はもちろんのこと、GONNOさんが機械をいじっている姿自体に一箇のムードを醸し出される。相手は最高だ。僕はみぞおちで答えて、気持ちよくなりたくなった。恐らくこれが現時点での正解なのだろうと感じた。

 そういえば、森は生きているで初めて笹倉さんのスタジオへ行った際、彼が「まずセッティングだけしたらゆっくりしましょう。外人達はスタジオに来てもしばらく休んだり喋ったりしてなかなか録音を始めない。でも、録り始めたらすぐだ。」と言った。僕は、モードが準備や底上げだとしたら、ムードのためにならないとしょうがないことを知っているのだろうと受け取った。今は、充分なモード、少しの意識、リラックスが、ムードのファクターのように思う。GONNOさんとは少しの練習の中でトラックとクリックの関係に慣れたら、充分な休憩を設けて1テイクないし2テイクで録った。そんな環境を許してくれたエンジニアの葛西敏彦さんに感謝である。

 数日経って、笹倉慎介さん、伊賀航さんとの録音では、みっちりアレンジを練りながら8割程整ったところから録り始めた。そこから1テイク目、2テイク目がほとんどオッケー・テイクになった。それ以降のテイクで10割来たところは、自分がおらついてしまって、数テイクしか使えるものがなかった。まだモード自体が足りない練習不足というやつだろう。でも、寧ろムードの予感を感じるアンテナを常に敏感にしておくしかないとも思う。

 ムードの性質として、伝統を持たないもの、見ようとしたら隠れてしまうもの、ということが当てはまるように感じる。でも、音楽においての伝統の中には、一箇のムードを帯びているものがたくさんある。もしかしたら、10代の頃出鱈目な練習をしながらパーカッションに憧れていたのは、そのことに知らず知らず感づいていたからかもしれない。最近は、大分でサバールの練習会も始まった。レインボー・ディスコ・クラブまで大分を離れない予定なので、モードが去っていないうちに、山と部屋の往復を。

GONNO × MASUMURA
http://p-vine.jp/news/20180301-192700

OLD and YOUNG
http://recordstoreday.jp/item/old-young%e6%99%b4%e8%80%95%e9%9b%a8%e8%aa%ad/

Profile

増村和彦 増村和彦/Kazuhiko Masumura
大分県佐伯市出身。ドラマー、パーカッショニスト。2012年からバンド「森は生きている」のメンバーとしてドラムと作詞を担当。アルバム『森は生きている』、『グッド・ナイト』をリリース。バンド解散後は、GONNO x MASUMURA、Okada Takuro、ツチヤニボンド、ダニエル・クオン、水面トリオ、影山朋子など様々なレコーディングやライブに参加。

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