Home > Regulars > 編集後記 > 編集後記(2018年7月17日)
ホイッスル。試合終了。今日からまた憂愁の日々。みなさんもそうでしょう?
まとめてみよう。今回のW杯で、あらためてフットボールとは幸福なものだと認識した。大人も子供も夢中で観戦する。また、なかんずくW杯は政治とは無縁でいられないということもフランス対クロアチアの決勝戦がはからずとも証明した。
プッシー・ライオットの乱入。彼女たちの政治的な主張を尊重したうえで言えば、タイミングが悪すぎた。試合の流れをみないと。もうひとつ、プレーしている選手も観ている側も、その瞬間瞬間においてはまったく政治から切り離されている。かつて、ペレがプレーすると紛争中の国同士が休戦したというエピソードがあるくらいだ。愛の営みの最中には戦士だって銃をしまう。それから、彼女たちの乱入は攻めていたクロアチアにとっては不利に働いた。その事実についてもツイッターで触れるべきだった。
プーチン。とつぜんの雷雨に見舞われた表彰式で、ずぶ濡れのマクロン大統領とクロアチアのグラバルキタロビッチ大統領と横に並びながら、ひとりだけ傘のなかにいるところを生放送されてしまった。今大会を通じてロシアの国際舞台でのイメージ向上につとめたのだろうけれど、あの最後の失態には笑ってしまった。
クロアチア。それまでの試合ではピッチを駆け抜ける炎だったモドリッチだが、決勝戦では不完全燃焼だったように思えた。しかし、3試合の延長戦を勝ち上がってきたクロアチア代表の奮闘は、紛争によって分裂した旧ユーゴスラビアの多くの人たち(クロアチア人、ボスニア人、セルビア人)に偏狭なナショナリズム以上の、より平和的な融和の感情を持たせたようだ。
フランス。ポグバが最高。サッカーダイジェストの記事によれば、大統領宮殿の祝賀会において、この屈強なMFはマイクを握って「俺たちはすべてぶっ壊したってことだな! すべてぶっ壊したぞ! すべてぶっ壊したぞ!」と繰り返したそうだ。すると宮殿の庭では「ぶっ壊したぞ!」の唱和がはじまったという……これ、いかにもフランスらしいんじゃない? レイモンド・コパというフットボール・ファンにはよく知られているポーランド系移民の名選手は、68年5月のバリケードのなかにも参加したというけれど、歓喜に湧くシャンゼリゼ通りの様子もほとんど暴動みたいに見えた(笑)。喜びの暴動とでもいうのだろうか。抑圧されている日本人は、なんでも秩序の言うがままだが、ああいう騒ぎ方は見習ったほうがいいと思う。いまでは毎年のように、歪んだ形の暴力としてその反動が出てしまうのだから、なおさらスポーツは抑圧のシステムに加担しないでもらいたい。