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interview with Jessica Care Moore

interview with Jessica Care Moore

いまは沈黙するときではない

──デトロイトの詩人ジェシカ・ケア・ムーア、インタヴュー

取材・文:野田努    通訳:魚住洋子   Jun 16,2020 UP

未来を考えることはいま現在起きていることを見つめることでもある。なぜならすべてはコネクトしているから。

■(小林からの質問)本作には宇宙に関係する語がよく出てきます。あなたにとって「universe」とはどのような意味を持っていますか?

ジェシカ:「Future Is Now」ですよね。未来を考えることはいま現在起きていることを見つめることでもある。なぜならすべてはコネクトしているから。
 ユニバースは私にとってはつねに円形だと思っています。今回のアルバム・カヴァーもアートワークが円形にくりぬかれていて、永久を表している。人生はすべてサイクルからできているし、過去を見ることはとても大切で、過去を見ることで前進できるという考えはもともと私はとくに信じていたわけではないのですが、今回のプロジェクトで未来を考えることを余儀なくされました。
 ジェフから「なぜ“いま”のことを詩にしているのか」と訊かれ「“いま”が私を必要としているから」と答えたのですが、それで未来も私を必要としているに違いないと思うようになりました。私の作品は現在の題材にしていることがほとんどですが、私の後から来る人たちが、私がそういう人たちのことも考えて制作していたということ、私の黒いボディが存在していたことは理解してもらいたいと思います。
 自分の住んでいる地区から一歩も出たことがないという人がアメリカにはたくさんいます。私は旅が好きで、一箇所にとどまるということはありません。いまは年老いた母がいるのでデトロイトに戻ってきましたが、ニューヨーク、ジャマイカ、パリ、どこでも住むことができます。私はガーナやアイボリーコースト(コートジボワール)など西アフリカに関して多くの作品を書きました。でも実は一度も訪れたことはありません。 想像のなかではなんども訪れていて、すでに1997年に22歳で最初に出版された本のなかでもこれらアフリカの国に関して書いているのです。
 ユニバースとはそういうことだと思います。ひとつの共同体の中に存在する。でも音楽などは時間や空間を超えて存在することを可能にする。
 ジェフとは“記憶”に関して面白い会話をしました。ある日目覚めて、すべての記憶を失っていてゼロから再出発しなくてはならないのと、逆にすべての記憶を忘れることができないのとどちらがいいかと。私は記憶を保っていたい、自分が何者なのかを子供に伝えたい、自分が経験してきたことがいまの自分を作っているということを忘れずにいたいと思います。父のことも忘れたくないし。人生のなかの大切な人を忘れたくない。私は前世や先祖の存在なども信じています。人は肉体的に死んでも、エネルギーは残ると思っています。これが質問の答えになったかわからないけれど(笑)。

■(小林からの質問)“The X” には「We are the future Afropologists finding Sanctuary in the meditation of sound waves」というフレーズが登場します。「afropologist」とは、アフリカ系の人びとの文化を掘り下げる人類学者、ということでしょうか? 

ジェシカ:「afropologist」は言葉の遊びです。「Anthropologist」と「Afrofuturism」を掛け合わせています。アフロフューチャリズムを考えつつ、過去を探すために発掘をする、というような意味です。

■最後に、フェミニズムについての意見を訊かせてください。

ジェシカ:私は自分は「Womanist」だと名乗っています。これはアリス・ウォーカーが提唱した言葉です。ウーマニズムに関して語ったベル・フックス(Bell Hooks/活動家)は私のヒーローのひとりです。私はフェミニズムには非常に若い年齢、小学校高学年で本を通して出会っています。フェミニズムは女性とその権利を守る運動です。私は男性が多い家庭、父の前の結婚での兄弟が3人、実の兄弟が2人のなかで彼らに守られて育ちました。いまの世のなかではフェミニズムでは十分ではありません。ジョージ・フロイドはフェミニズムによって守られてはいないから。それが私にとっては問題です。
 ウーマニズムは家族も含めるので、私にはよりしっくりきます。私には兄弟も父も大切です。女性の権利向上のためのマーチは素晴らしいです。でもファーガソンのプロテストに行ったときに犠牲者の母親に出会って、子供を失った母親の悲しみを目の当たりにしたとき、そこにフェミニストの活動家はいませんでした。私にとってはウーマニズムの考えの方がフィットしています。私は家族の観点から語ります。コミュニティ全体が大切です。そこにはもちろん女性が含まれます。
 もちろん女性の声をサポートしていくし、アメリカだけではなく世界では女性が声をあげられない国もたくさんあります。私が南アフリカに行ったとき、私が大きな声で力強く発言しているのを小さな女の子が宇宙人でも見るような目で見ていました。一緒に行ったヒップホップの男性アーティストと同等に私が語り、女性を代表している。とても重要なことですが、フェミニズムという言葉はちょっとトリッキーです。

■コミュニティのなかの個人みたいな感覚でしょうか?

ジェシカ:(フェミニズムは)男性を含まないから。グーグルなどで調べることもできると思うけれどウーマニズムはもっとコネクションを大切にします。アリス・ウォーカーはこう言いました。ウーマニズムはフェミニズムの紫色に比べてラベンダー色だと。ウーマニズムはジョージ・フロイドも話題として取り上げるでしょう。私にとって、黒人男性の命は非常に大切なことです。息子の母親として、息子が無事に生き延びていくことが重要です。もちろんフェミニズム賛成、女性賛成です。が、同時にファミリー賛成です。黒人女性として黒人男性とともに生きていくことはとても大切なことです。
 もちろん黒人女性は白人女性に比べて賃金が低いのは事実だし、まだまだ戦っていかなくてはなりません。ただウーマニズムの方が排他的ではないということです。

(6月10日、ZOOMにて取材)

取材・文:野田努(2020年6月16日)

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