「IR」と一致するもの

Sound Patrol 久々にやります - ele-king

Yosuke Tokunaga - ''''''' | .TOST

AmbientExperimental

E王

 ようやく涼しくなって過ごしやすくなってきたけれど、ここはむしろ氷点下の世界。なにもかもが凍りついている。2012年あたりから作品を発表しつづけている Yosuke Tokunaga は、いまだ謎に包まれているアーティストだ。どうやら東京にいるらしいこと、おもに自身のレーベル〈.TOST〉を足場にしていること、それくらいしかわからない。
 彼の存在を編集部に教えてくれたのはじつは、かのザ・バグである。ちょうど1年前にリリースされた『7 Patterns』についてケヴィンは、「ベリアルやDJクラッシュ、スコーンのように冷たい氷のカクテル。なんでみんなもっと彼のことを讃えないのかわからない!」と讃辞を送っている。
 最新作『'''''''』(なんて読めばいいんだ?)でもベリアル直系の凍てついたサウンドは健在で、日本からこのような表現が生まれてきたことがすばらしい。もうすぐ冬もやってくることだし、まさにこれから聴き込みたい音楽だ。

FLATPLAY - Slightedge | NATIVE ARCHIVES / BAYON PRODUCTION

Techno

 少しまえから90年代リヴァイヴァルはトレンドのひとつとして定着していたわけだけど、この極東の地もその機運としっかりリンクしていて、新たな才能が登場してきている。D.A.N. のサポート・メンバー、篠崎奏平のソロ・プロジェクトである FLATPLAY がもう、ストレートにデトロイティッシュなサウンドを響かせているのだ。
 D.A.N. のメンバーと同年代とのことなので、現在20代後半。リアルタイムではないその世代がデトロイト・テクノに影響を受け、みずからの音楽の糧としていることじたいが、いまの音楽シーンのある側面をよく物語っている。
 河村さんによるインタヴューによれば、若き時分にホアン・アトキンスを知ったことがそうとうデカかったようで、とくに『The Berlin Sessions』に大いに刺戟されたのだという。同記事ではデラーノ・スミスの名もあげており、いやこれはほんとうにデトロイト・サウンドにぞっこんなんだろう。
 かくして FLATPLAY は2018年、それこそ〈Transmat〉から出ていてもおかしくなさそうなトラックの詰め込まれたファーストEP「First Extended Play」をリリースすることになるのだが(D.A.N. の櫻木大悟と〈TREKKIE TRAX〉の andrew によるリミックスも収録)、つい先月、さらに洗練度を高めたシングル「Slightedge」が送り出されている。
 1曲目の表題曲からしてリスペクトのかたまりだ。キックとハットが確たるコンビネイションで土台を形成、ダビーなシンセが曲の色彩を決定し、どこかオリエンタルな、あるいは未知の「異国」を喚起させるヴォーカルがさりげなくオリジナリティを主張してもいる。2曲目 “Orpus” はよりダブ・テクノの要素を強めたスタイルでミニマリズムを探求しているが、こちらもメロディの部分に独特の悲哀が宿っている。3曲目の “Orpus (Altone rephrase)” はそのダブ・ヴァージョンで、ベーシック・チャンネル一派を想起させる仕上がり。
 一周、いや、もう二周まわったのかもしれない。このように20代後半の世代が、そしてDJのようにクラブを主戦場とするわけではないミュージシャンが、独自の要素を加えつつデトロイトやベーシック・チャンネルの遺産を継承していることは、素直に喜ぶべきことなのだろう。

XTAL - Aburelu | 813

Electronica

 90年代から活躍するDJ/トラックメイカーの XTAL (旧名義 CRYSTAL)が4年ぶりに発表した2枚目のソロ・アルバム。
 (((さらうんど)))JIN TANA & EMERALDS のメンバーでもあり、K404 とのユニット TRAKS BOYS として2016年まで川崎の工場の屋上でレイヴを開催していた彼は、本作でダンスとはべつの試みにチャレンジ。ときおりギターがシューゲイズ的なノイズを鳴らしたりもするが、基本的には美しさを追求したエレクトロニカ・サウンドが展開されている。

Various Artists - REITEN presents ENSō 2020 | REITEN

ExperimentalAmbientTechno

 ベルリンを拠点に活動するサウンド・アーティストの Kosei Fukuda も要チェック。レーベル〈REITEN〉を主宰し、すでに10枚以上の12インチを送り出している彼は、この4月に宇都宮で電子音楽のフェス《REITEN presents ENSō 2020》の開催を予定していたものの、COVID-19 の影響により延期に。このまま立ち止まっているわけにもいかないからだろう、7月24日に同名のコンピがリリースされている。
 レニック・ベルイヴ・ド・メイなど、フェス出演予定だった各国のアンダーグラウンドの精鋭たちが参加しており、エクスペリメンタルなテクノ~アンビエントの最前線を堪能することができる内容だが、なかでも先日紹介した YPY をはじめ、Fukuda 本人の手による本作全体のコンセプトを体現する2曲、ヴェテランの ENA、あるいは Katsunori Sawa や Yuji Kondo など、日本人アーティストたちが気を吐いている印象があり、各人の今後の動向が気になってくるコンピだ。

Nas - ele-king

 90年代にデビューした年齢的にも現在40代後半以降のラッパーのなかで、いまもなおヒップホップ・シーンおよび広くアメリカ社会に対しても大きな影響力を持つアーティストとして真っ先に名前の挙がるのは、おそらく Jay-Z と Nas のふたりであろう。アーティストとしての活動だけでなく、ビジネスマンとしても(それぞれ規模の違いはあれど)大きな成功を収めているふたりであるが、自らのレーベルである〈Mass Appeal〉を通じてアンダーグラウンドなシーンのサポートなども積極的に行なっている Nas は、リリース作品に関しても年々よりストイックな方向性を貫いているように感じる。
 Kanye West をトータル・プロデューサーとして迎え、ソロ・アルバムとしては6年ぶりのリリースとなった前作『Nasir』に続く今回のアルバム『King's Disease』では、Jay-Z、Kanye West、BeyoncéASAP Rocky、Drake、Kendrick Lamar、Jay Park など錚々たるアーティストたちの楽曲を手がけてきた Hit-Boy が全曲のプロデュースを担当。様々なヴァリエーションのサウンド・スタイルでありながらも、そこには一本の真っ直ぐな芯が貫かれており、ワンパッケージのアルバムとして非常に完成度の高い作品に仕上がっている。
 先行シングル曲でもある “Ultra Black” は間違いなく本作を象徴する一曲であるが、タイトルが示す通り、BLMムーヴメントとも連動して、Nas の黒人としての高いプライドがこの曲には込められている。様々なヒットチューンを生んできた Hit-Boy であるが、この曲のサウンドはサンプリングを多用し、おそらく楽器も足しながら全体のトーンをコントロールして抑制を効かせることで、Nas のラップのなかにあるエモーショナルな部分を見事に引き出す。Lil Durk と共に黒人女性の持つ強さについてラップする “Til the War Is Won” や、さらに直接的に切り込んだ “The Definition” など、“Ultra Black” と同様にBLMと深くリンクした曲を盛り込む一方で、Big Sean をフィーチャした “Replace Me” や Anderson .Paak との“All Bad” では恋愛(および失恋)をテーマにしていたりと、このリリックのトピックの振れ幅も実に Nas らしい。そして、サンプリングと打ち込みのビートのバランス感が絶妙な Hit-Boy のトラックとの相性も実に見事だ。その反動というわけでもないだろうが、ボーナストラック的なラストチューンの “Spicy” では Fivio Foreign と ASAP Ferg というヤンチャな若手勢を引き連れながら、強烈なトラップ・ビートの上でダーティなストリート臭を思いっきり吐き出すのもまた痛快である。
 本作の最大のサプライズが、90年代に Nas が一時的に組んでいたスーパーグループ、The Firm のメンバーである AZ、Foxy Brown、Cormega が参加した “Full Circle” という曲だ。The Firm、あるいは Nas “Life's A Bitch” をリアルタイムに聞いていた人であれば、AZ が登場する瞬間、頭が20年以上前に持っていかれる感覚になるだろうし、Foxy Brown の相変わらずのラップの格好良さに身震いするだろう。さらにこの曲の最後にシークレットゲストとして The Firm のプロデューサーでもあった Dr. Dre がスピットする演出も実に見事としか言いようがない。
 ベテランならではの貫禄を見せながら、通算13枚目というアルバムでこれだけ強い満足感を与えてくれる Nas。まだまだ枯れることのない彼のクリエイティヴィティが今後も末長く続くことを期待したい。

Polygon Window - ele-king

 こいつはめでたい。1993年頭、エイフェックス・ツインがポリゴン・ウィンドウ名義で放った『Surfing On Sine Wave』、AIシリーズ初のアーティスト・アルバムであり、のちの『SAW2』への導線となった “Quino - Phec” を含むこの名作が、12月4日にリイシューされる。
 リチャード・D・ジェイムス本人が監修しているそうで、かつて一度2000年にリイシューされたとき(日本盤は未発売)にボーナストラックとして追加された “Portreath Harbour” と “Redruth School” の2曲はもちろんのこと、シングル盤「Quoth」に収められていた “Iketa”、“Quoth (Wooden Thump Mix)”、“Bike Pump Meets Bucket” の3曲も加えた計14曲、ポリゴン・ウィンドウ名義のトラックを網羅した「完全版」となっている。今回初めて聴くという方も、もう何度も聴いてきたというヴェテラン・リスナーも要チェックです。

POLYGON WINDOW
エイフェックス・ツインが初めて〈WARP〉からリリースした名盤中の名盤
ポリゴン・ウィンドウ名義でリリースされた全楽曲を収録!
その後のエレクトロニック・ミュージックの方向性を大きく変えた伝説のアルバム『Surfing On Sine Wave』が完全版としてリイシュー決定!
オウテカとワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの新作リリースも控え〈WARP RECORDS〉キャンペーンの開催も決定!

エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムス。若くして「テクノモーツァルト」の称号を得たエレクトロニック・ミュージック界の最高峰であり、誰もが認める〈WARP RECORDS〉の看板アーティストである彼が、初めて〈WARP〉からリリースしたアルバムは、エイフェックス・ツインではなく、ポリゴン・ウィンドウ名義で発表された『Surfing On Sine Waves』だった。当時22歳だったリチャード・D・ジェイムスによって世に送り出され、その後のエレクトロニック・ミュージックの方向性を大きく変えた伝説のアルバムが、オリジナル盤の9曲はもちろん、リチャードがポリゴン・ウィンドウ名義でリリースした全14曲を収録した完全版としてリイシュー決定!

商品詳細はコチラ
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=11467

〈WARP〉が1992年にリリースした革新的コンピレーション『Artificial Intelligence』の1曲目に収録されたリチャード・D・ジェイムスによる楽曲こそ “Polygon Window” だった(ただし同作における名義は The Dice Man)。その年の冬にエイフェックス・ツインの『Selected Ambient Works 85-92』がレコード店に並ぶ。それに続くように、年明けの1993年1月に本作『Surfing On Sine Waves』がポリゴン・ウィンドウ名義でリリースされている。アートワークにも、〈WARP〉が本作を『Artificial Intelligence』シリーズの第二弾として位置付けていることが明記されており、〈WARP〉がポスト・レイヴの新たなムーヴメントとして掲げた「エレクトロニック・リスニング・ミュージック」というコンセプトを最初に体現したアーティスト作品の一つであり、その魅力のすべてが詰まっていると言っても過言ではない名盤中の名盤。

『Artificial Intelligence』と同じく、本作においてもオープナーを務める “Polygon Window” には、まさに「エレクトロニック・リスニング・ミュージック」の醍醐味と特徴が集約されている。「学生時代に工事現場でバイトしたときの騒音がインスピレーションだ」とリチャードが語るのは、シングルカットされた “Quoth”。そして『Selected Ambient Works 85-92』の発展型、もしくは『Selected Ambient Works Volume II』への布石とも言える名曲 “Quino – Phec”など、若き日のリチャード・D・ジェイムスがその才能を見せつけたタイムレスな名曲たち。そして本作には、リチャード本人監修のもと、シングル盤「Quoth」からアルバムには未収録だった2曲(“Bike Pump Meets Bucket” と “Iketa”)と “Quoth (Wooden Thump Mix)”、2001年にホワイトレーベル盤でリリースされた当時未発表だった2曲 “Portreath Harbour” と “Redruth Schoo” がすべて収録されている。

リチャード・D・ジェイムスが初めて〈WARP〉からリリースした名盤『Surfing On Sine Waves』は、ボーナストラックと解説書付きで12月4日リリース! 盟友デザイナーズ・リパブリックがアートワークを手掛けた本作が紙ジャケット仕様でCDリリースされるのは、今回が初めてとなる。

なお、今回の『Surfing On Sine Waves [完全版]』発売決定のニュースに合わせて、オウテカ、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーという超強力アーティストの新作が続く〈WARP RECORDS〉のキャンペーンの開催も決定! 対象商品3枚以上購入して応募すると、オリジナル卓上カレンダーが必ずもらえる!

対象商品には、ポリゴン・ウィンドウ『Surfing On Sine Waves [完全版]』の他、エイフェックス・ツインと同じく、『Artificial Intelligence』に楽曲が収録され、記念すべきデビュー・アルバム『Incunabula』自体も『Artificial Intelligence』シリーズの一環として位置付けられているオウテカの最新作『SIGN』(10月16日発売)、今やメインストリームにもその名を轟かせるプロデューサーでありながら、イーノ、エイフェックス・ツインらとも感覚を共有し、〈WARP RECORDS〉のアート性や実験性を継承しているワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの最新作『Magic Oneohtrix Point Never』(10月30日)の3作を中心に、現在好評発売中のスクエアプッシャー『Be Up A Hello』と『Lamental EP』、イヴ・トゥモア『Heaven To A Tortured Mind』、ロレンツォ・センニ『Scacco Matto』、ダークスター『Civic Jams』の国内盤が加わる。また各新作タイトルの国内盤CDの初回生産分には、それぞれデザインの異なる〈WARP〉ステッカーが封入される。

WARP RECORDS CAMPAIGN 2020

開催期間:2020年10月16日(金曜)~2021年2月末日

特典ステッカー

ステッカー対象商品
10月16日発売:Autechre - SIGN *国内盤
10月30日発売:Oneohtrix Point Never - Magic Oneohtrix Point Never *国内盤
12月4日発売:Polygon Window - Surfing On Sine Waves [完全版] *国内盤
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特典卓上カレンダー

卓上カレンダー対象商品
発売中:Squarepusher - Be Up A Hello *国内盤
発売中:Squarepusher - Lamental EP *国内盤
発売中:Yves Tumor - Heaven To A Tortured Mind *国内盤
発売中:Lorenzo Senni - Scacco Matto *国内盤
発売中:Darkstar - Civic Jams *国内盤
10月16日発売:Autechre - SIGN *全形態(デジタルは対象外)
10月30日発売:Oneohtrix Point Never - Magic Oneohtrix Point Never *全形態(デジタルは対象外)
12月4日発売:Polygon Window - Surfing On Sine Waves [完全版] *国内盤
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応募〆切
2021年2月消印有効

キャンペーン応募券

応募方法
対象商品に貼付された応募券を集めて、必要事項をご記入の上、官製ハガキにて応募〆切日までにご応募ください。

キャンペーン詳細はこちら↓
https://www.beatink.com/user_data/warp2020.php

Katalyst - ele-king

 縁の下の力持ち──大物を陰で支えるミュージシャンたちが一堂に会したコレクティヴ、カタリストのデビュー作がリリースされる。
 故ロイ・ハーグローヴのRH・ファクターの一員であり、最近ではソランジュの世界ツアーに帯同していたブライアン・ハーグローヴを筆頭に、アンダーソン・パーク『Malibu』や(フローティング・ポインツの〈Eglo〉から出た)シャフィーク・フセイン『The Loop』、カマール・ウィリアムズ『Wu Hen』などに参加していた精鋭たちが集結、鮮やかなアンサンブルを聞かせるジャズ・アルバムに仕上がっている(各メンバーのバイオはこちらから)。
 日本盤はハイレゾ仕様とのことなので、チェックしておきましょう。

KATALYST
Nine Lives

ビヨンセやアンダーソン・パーク、ケンドリック・ラマーやソランジュ、ジェイ・Zといったビック・アーティストを支える大注目の精鋭ジャズ・コレクティヴ、カタリストによるデビュー作!! 確かなテクニックと絶妙なアンサンブルを聴かせてくれる、珠玉のアルバム。日本限定盤ハイレゾCD「MQA-CD」仕様にてリリース!!


Official HP : https://www.ringstokyo.com/katalyst

カタリストが掲げる “コンテンポラリー・インストゥルメンタル” は、ジャズのみならず、ヒップホップやR&Bのスターたちも魅了し、彼らはこれまで数々の重要なレコーディングやライヴに参加してきた。LAを拠点とする精鋭ジャズ・ミュージシャンたちによるコレクティヴが遂に完成させたデビュー・アルバムは、これまでの集大成であり、ここから始まる新たな変革を我々に聴かせてくれる。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト : KATALYST (カタリスト)
タイトル : Nine Lives (ナイン・ライヴス)
発売日 : 2020/11/25
価格 : 2,600円+税
レーベル/品番 : rings (RINC68)
フォーマット : MQA-CD

* MQA-CDとは?
通常のプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティのハイレゾ音源をお楽しみいただけるCDです。

Brian Hargrove: Piano (Roy Hargrove’s The RH Factor, Solange)
David Otis: Sax (Mac Miller, SiR, Theo Crocker, Anderson Paak, Shafiq Husayn, Kendrick Lamar)
Corbin Jones: Bass, Sousa-phone & Tuba (Beyoncé, Jay-Z, Lupe Fiasco, Kendrick Lamar)
Jonah Levine: Piano, Trombone (Anderson Paak, Kanye West, Chance the Rapper)
Emile Martinez: Trumpet (MNDSN, SiR, Van Hunt, Iman Omari, Shafiq Husayn)
Greg Paul: Drums (Gary Bartz, Roy Ayers, Joao Donato, Kamaal Williams)
Marlon Spears: Bass (SiR, Lonnie Liston Smith, Kamaal Williams)
Brandon Cordoba: Piano
Ahmad DuBose: Percussion

Tracklist :

01. WhatsAname
02. FreeHand
03. BBB
04. Leimert Day
05. Leimert Night
06. Fitted
07. Fresh: Earth
08. Fresh: Fire
09. Fresh: Wind
10. FITTED Fitted
+BONUS TRACK 追加予定

KMRU - ele-king

 ケニア・ナイロビ出身のKMRU(ジョセフ・カマル)は、2017年ごろからDJ活動とアーティスト活動を開始し、翌2018年には「Resident Adviser」の「15 East African Artists You Need To Hear」にも選出された。

 活動初期は現在のようなエクスペリメンタルな作風ではなく、シンガーとのコラボレーション・トラック/曲を発表し、ケニアのエレクトロニック・ミュージック・シーンでは知られた存在だったという。トラックメイカー時代(?)のジョセフ・カマルはドイツのレーベル〈Black Lemon〉からジョン・トーマスとのコラボレーションEP「Eternal Summer」をリリースしたり、ポエトラ・アサンテワとのコラボレーション曲 “Round Pegs” を生みだしたりするなど精力的な活動を展開していた(https://soundcloud.com/poetra-asantewa/round-pegs)。

 やがてジョセフ・カマルはアンビエントなサウンドへと変化を遂げ、本作のリリースへと行き着く。あえていえばそのサウンドはまるで別物といっても良い(サウンドの変貌は彼のバンドキャンプで発表されたトラックを追いかけていくと分かってくるだろう)。
彼はウィリアム・バジンスキーからステファン・マシューの系譜に連なるアンビエント・アーティストへと生まれ変わったのだ。本アルバムのマスタリングをステファン・マシュー/Schwebung Mastering がおこなっていることは象徴的に思える。

 ナイロビ出身のジョセフ・カマルが生み出すアンビエントには、深い安息への渇望があるように聴こえてくる(もしかするとナイロビの治安も関係しているのかもしれない)。その「安息への渇望」への感覚が、アンビエント・リスニングにおける現代的な「チル」の問題について考えるときに重要なテーゼを投げかけてくれるように思えるのだ。
 現在、アンビエント・ミュージックはいわゆる「環境音楽」から、自宅・自室のリラックスした環境で聴く「安息の音楽(チル)」としての側面が強まっている。その「ホームステイ」的な聴取・生活は、コロナ・ウィルス以降の世界においてより現実的になってきたが、しかし一方でコロナ禍以前から「チル」な音楽は一定の浸透力を持っていたことも事実だろう。なぜだろうか。
 ここでひとつの私見・私論を蛇足ながら述べさせて頂きたい。それは「こうまで00年代末期から20年代にかけてチルな音楽が広がった時代背景には世界的な経済不況と治安悪化の問題が根柢にあるのではないか。だからこそ安心できる家にいるときに過剰にくつろぎたい/安息したい欲望が高まったのではないか?」である。このように考えてみると2020年代的なチルな音楽、そしてアンビエント音楽が希求され浸透した背景には、そういった過酷な現代社会と表裏一体の関係にあったかのかもしれない。

 本作『Peel』はKMRUが現代実験電子音響の聖地〈Editions Mego〉からリリースしたアルバムである。しかも『Peel』リリースの翌月には『Opaquer』を立て続けに発表した。さらに9月にはデジタル・リリースで「while we wait」をリリースする。どれもアンビエントの楽曲であり、彼の創作意欲はとても高まっているのだろう。
 あえて簡単に分類するなら『Opaquer』の方がクラシカル、ミニマルなどの音楽的な要素が多く、音楽家/作曲家としての彼の力量を聴くと満喫できる仕上がりとなっていた。一方『Peel』は彼の特有の「チル」な感覚が全6曲・70数分に渡って持続し、アンビエントの現代性を体現するような稀有な仕上がりになっている(「while we wait」は『Peel』の音を融解したようなドローンと環境音を基調とした38分強の長尺トラックだ)。
 『Peel』にはこの時代の「空気」が濃厚に漂っているように感じられた。それもそのはずだ。カナダ・ケベック州モントリオールへと旅していたジョセフ・カマルだったが、新型コロナ・ウィルスの影響で国境が閉鎖され、ナイロビへの帰国を余儀なくされ、母国ケニアへと帰国、自宅に籠って48時間で完成させたアルバムというのだ。1曲目が “Why Are You Here” という曲名なのも本作を象徴しているように思えてくる。

 コロナ禍のロックダウン的状況のなか制作された『Peel』は、同時に体を休息し、安息へ導くアルバムである。やわらかい電子音に空気のなかを漂うかのごときノイズ、時間をかけて生成し変化するアンビエンスには「親密さ」があり、深い睡眠のように無時間的な「安息」の感覚もあり、家族たちとの穏やかな時間の記憶のような音色の色彩に横溢していた。
 1曲目“Why Are You Here” の静謐な始まりから、穏やかな波のように持続する2曲目 “Well” と3曲目 “Solace”、次第にサウンドが拡張され聴覚と知覚に浸透していくかのごとき “Klang”、夢の中のミニマル/ドローンのごとき “Insubstantial”、そして22分に及ぶアルバム最終曲 “Peel”。全6曲がシームレスにつながり、70分におよぶ音の波を生成する。なかでも “Peel” はアルバム全般を統合したような長大な曲であり、透明な空気と濃厚な霧が交錯するような美しさに満ちている。

 長々と言葉を連ねてきたが、何より「夜」の光景を捉えた印象的なアートワークが、本アルバムのムードを雄弁に表現していることはいうまでもない。深い夜にたちこめる霧の時のようなアンビエンス/アンビエント。まるで満ちる音の波のように、もしく音の空気のように70分強のあいだ濃厚なアンビエントが展開していくのだ。私たちは彼のサウンドを聴取することで、睡眠と覚醒のあいだにあるような不可思議な安息を得ることになるだろう。
 世界が危機的であればあるほど、人間には世界から隔離された睡眠のような時間が必要だ。現実には否応なく戻ることになる。人には休息が必要だ。KMRU『Peel』は、われわれにとって、そんなひとときの安息を用意してくれる美しいアンビエントだ。

YPY - ele-king

 コロナ禍により部屋にこもらざるをえない状況がつづいたためだろうか、ますます創作意欲に火がついているように見える。
 goat のようなエクスペリメンタル・ロック・バンドを率いる一方、行松陽介のパーティ《Zone Unknown》では Zodiak とともに実質的なレジデントを務め、コンサート《GEIST》や楽団 Virginal Variations では京都の前衛派チェリスト、中川裕貴を招くなど、大阪を拠点に多角的な文脈で活躍をつづけている日野浩志郎。彼による打ち込み主体のソロ・プロジェクトが YPY である。
 今年の頭、まだパンデミックが本格化するまえに彼は、同名義にて自身のレーベル〈birdFriend〉からダブにフォーカスしたカセットテープを2本リリースしているが、今度は〈BLACK SMOKER〉から新作が送り出されている。題して『Compact Disc』。丁寧に各曲の頭文字まで「CD」で統一されたこのアルバムは、まさにCDでしか聴くことができない。

 前々作『2020』や前作『Be A Little More Selfish』からはがらりと様子が変わっている。時流に乗ってこれまでよりもぐっとテンポを落とし、キックのパターンを固定、そのうえをいろんなノイズがフリーキーに乱れ舞う、というのが基本路線で、忘我の境地とでも言うべきか、ある種の逃避性を携えてもいる。
 その魅力を最大限に味わえるのが冒頭 “Cool Do!” だ。太い低音が牽引する力強いグルーヴは、彼が goat などのバンドや各地のプレイで培ってきた身体感覚に由来するのかもしれない。そのうえをシンセ・ノイズが縦横無尽に駈け巡る16分弱はまさしく電子音の狂宴といったあんばいで、いやでも恍惚とした気分になってくる。なかなかクラブに足を運べないこの時代に、これほど強烈なテクノ・トラックが生み落とされたことは素直に感嘆すべきだろう。ちなみに同曲を聴いた編集長は、「73~74年のドイツのコズミック・ミュージック、ベルリン・スクールのテクノ・ヴァージョン」「こころおきなくフリークアウトできる」と言っていた。つまりは究極の「トリップ」体験であると。

 おなじくランニング・タイムの長い終盤の “Collapse Dojo” も似たような感覚に浸らせてくれるが、こちらはより高い部分の音が暴れまわっている印象で、合成音声のごとくシンセがなにかを喋っているように聞こえるからおもしろい。
 一定に保たれたビートは時間感覚を狂わせる効果をもたらしてもいて、ゆえにリスナーの意識は展開よりも空間のほうへと誘導されることになる。たとえば “Cold Disc” などは極上のダブとしても享受可能だろう。本作中唯一4つ打ちの採用されていない “China Dynamic” や、ハンドクラップ~スネアの連打とおならのような電子音とのかけあいが楽しい “Cashout Dream” あたりも、レイヤー間のせめぎあいに惹きつけられる。
 バンド、ソロ、楽団とさまざまな試みを実践し、これまで幾度も自身の限界を更新してきた日野浩志郎。シンプルな機材とビートで、しかし無限の電子音の可能性を追求した本作もまた、彼のスタイルを拡張する1枚と言えよう。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 波紋を呼んだ前作『Age Of』から早2年。多作かつコラボ大王のダニエル・ロパティンはこの間もサントラの制作やザ・ウィークエンド、モーゼズ・サムニーの作品への参加など、絶え間なく音楽活動にいそしんできたわけだけど、ついに本体=ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーとしてのニュー・アルバムを10月30日にリリースする。
 なんでも、今回はこれまでのOPNを集大成したような内容になっているとのことで、期待も高まります。現在、アルバムから3トラックを収録した先行シングル「Drive Time Suite」が配信中、試聴はこちらから。

[10月14日追記]
 くだんの先行公開曲3トラックのうち、“Long Road Home” のMVが本日公開されている。監督はチャーリー・フォックスとエミリー・シューベルトで、エロティックかつなんとも不思議なアニメ映像に。OPN の原点の回想であると同時に最新型でもあるという新作への期待も高まります。

ONEOHTRIX POINT NEVER
集大成となる最新アルバム『MAGIC ONEOHTRIX POINT NEVER』から
先行シングル “LONG ROAD HOME” のミュージックビデオが公開!
過去作品のオマージュにも要注目!
アルバム発売は10月30日! Tシャツ付セットの数量限定発売も決定!

ライヒ、イーノ、エイフェックス・ツインからバトンを受け継ぐ存在としてシーンに登場し、今や現代を代表する音楽プロデューサーの一人となったワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、そのキャリアの集大成として完成させた最新作『Magic Oneohtrix Point Never』から、先行シングル “Long Road Home” のミュージックビデオを公開した。

Oneohtrix Point Never - Long Road Home (MV)
https://www.youtube.com/watch?v=w5azY0dH67U

アルバム発表と同時に、シングル・パッケージ「Drive Time Suite」として3曲を一挙に解禁した OPN ことダニエル・ロパティン。自身の作品だけでなく、映画音楽や、ザ・ウィークエンドの大ヒット作『After Hours』のプロデュースを経て、ポップと革新性を極めたサウンドに早くも賞賛の声が集まったが、今回ミュージックビデオが公開された “Long Road Home” は、その3曲の解禁曲の一つとなっており、メイン・ヴォーカルをロパティン本人が務め、元チェアリフトのキャロライン・ポラチェックが参加している。チャーリー・フォックスとエミリー・シューベルトの二人が監督した本ビデオは、異世界の不気味な二つの生物が、ロマンティックに絡み合う様子が描かれたストップモーション・アニメーションとなっており、人間の感情とエロティックなダークユーモアの間で展開する求愛の乱舞が、ファンタジーと現実の境を破壊していくストーリーとなっている。『R Plus Seven』のアートワークにも登場する、ジョルジュ・シュヴィツゲベルが1982年に発表した短編作品「フランケンシュタインの恍惚」へのオマージュとなっている点も楽しめる映像となっている。

これは愛と変質についてのロマンチックな寓話で、夏の間にダン(OPN)と交わした荒唐無稽で哲学的な会話から生まれたものです。グロテスクな、あるいは悪魔のような生き物を、求愛の儀式を通して、奇妙で愛らしく、また切なさを纏ったキャラクターに見せたいと思いました。親密さが切望され、同時に恐れられているこの時期に、突然変異体のような奇妙な歌声が響くこの曲に、完璧にマッチした映像だと感じました。心の底から素晴らしいと思ったし、それが滲み出てると思います。 ──co-directors Charlie Fox and Emily Schubert

これまでの OPN の音楽的要素を自在に行き来しながら、架空のラジオ局というコンセプトのもとそれらすべてが奇妙なほど見事に統合された本作『Magic Oneohtrix Point Never』は、OPN の原点の振り返りであり、集大成であり、同時に最新型である。

ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー最新アルバム『Magic Oneohtrix Point Never』は、10月30日(金)世界同時リリース。国内盤CDにはボーナストラック “Ambien1” が追加収録され、解説書が封入される。また数量限定でTシャツ付セットの発売も決定。アナログ盤は、通常のブラック・ヴァイナルに加え、限定フォーマットとしてクリア・イエロー・ヴァイナルと、BIG LOVE 限定のクリア・ヴァイナルも発売される。Beatink.com 限定のクリア・オレンジ・ヴァイナルとカセットテープはすでに完売となっている。

また、本日10/14より〈WARP〉からリリースされたワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの過去作品を対象としたポイント還元キャンペーンが BEATINK.COM でスタート! 会員登録をして対象タイトルを購入すると、次回の買い物時に使用することができるポイントが10%付いてくる。併せて、iTunes でも対象タイトルが全て¥1,222で購入できる期間限定プライスオフ・キャンペーンが本日よりスタート!

Boris - ele-king

 日本を代表するヘヴィ・ロック・バンド、ボリスの伝説的な初期作品が、元ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイト率いる〈サード・マン・レコーズ〉よりデジタルおよびアナログでリイシューされる。
 今回再発されるのは96年のファースト・シングル「Absolutego」と98年のファースト・アルバム『Amplifier Worship』。「Absolutego」は60分1曲入りの「シングル」として彼らの自主レーベルからリリースされた後、アメリカのドゥーム/エクスペリメンタル・メタル・レーベル〈サザンロード〉からボーナストラックを加えて過去にも再発されている。『Amplified~』は15分の長尺ナンバー3曲を含む5曲入りで、日本の〈マングローヴ・レーベル〉からリリースされた後、こちらも〈サザンロード〉よりアメリカ盤も発売された。
 〈サード・マン〉のプレス・リリースでも「21世紀のもっとも重要なメタル・バンド」と形容されている彼らだが、今回リイシューされる2作のいずれもドゥーム・メタル/ストーナーロックを中心に据えつつ、最初期の段階からノイズ、ドローン、アンビエントなど様々なジャンルを貪欲に取り込んだ実験精神溢れるバンドだったことが確認できる重要作だ。
 いずれもリマスターが施され11月13日発売、現在Borisのbandcampやレーベルのサイトなどでプリオーダー受付中。



『Absolutego』
https://boris.bandcamp.com/album/absolutego-2
https://thirdmanstore.com/absolutego-standard-black-vinyl
1. Absolutego
2. Dronevil 2


『Amplifier Worship』
https://boris.bandcamp.com/album/amplifier-worship
https://thirdmanstore.com/amplifier-worship-standard-black-vinyl

1. Huge
2. Ganbou-Ki
3. Hama
4. Kuruimizu
5. Vomitself

Brian Eno - ele-king

 ありそうでなかったブツの登場だ。これまでイーノが手がけてきたサウンドトラックから17曲を選りすぐった編集盤『Film Music 1976 – 2020』が11月13日に発売される(日本盤はユニバーサル ミュージックより)。
 イーノはこの50年のあいだに(テレビ含め)数々のサントラを担当してきているが、盤化されていないものも多く、聴く機会に恵まれない音源もそれなりにあった。今回、『トレインスポッティング』の “Deep Blue Day”(昨年リイシューされた『Apollo』収録)やデレク・ジャーマン『セバスチャン』の “Final Sunset”(『Music For Films』収録)などの既発曲も含まれてはいるものの、他方で映画を観ないと(orその映画のDVDを買わないと)聴くことのできなかった音源(デヴィッド・リンチ『デューン』など)もしっかり収録されており、かなり嬉しいリリースとなっている。
 発売に先がけ、現在『ラブリーボーン』からジョン・ホプキンス&レオ・エイブラハムスとの共作(『Small Craft On A Milk Sea』の時期の曲ですね)“Ship In A Bottle” が公開中、これも盤化されていなかったトラックだ。

BRIAN ENO

初のサウンドトラック・コレクション・アルバム
リリース決定!

ブライアン・イーノによるサウンドトラック作品を集めた初のコレクション・アルバム『フィルム・ミュージック 1976-2020』が11月13日に発売!

過去50年間でイーノが作ってきた有名曲から、知る人ぞ知る隠れた名曲まで全17曲を収録しており、そのうちの7曲は未発売音源。

CDのほか、2枚組LP(輸入盤のみ)、ダウンロード、ストリーミングのフォーマットで発売。
未発売曲 “シップ・イン・ア・ボトル”(『ラブリーボーン』2009年/監督ピーター・ジャクソンより)が先行配信中。

フィルム・ミュージック 1976-2020
Film Music 1976 – 2020

発売日:2020年11月13日
品番:UICY-15945
価格:2,500円+税
日本盤のみ解説付
UNIVERSAL MUSIC STORE 限定特典:A2サイズ・ポスター ※無くなり次第終了

▼予約・試聴はこちら
https://umj.lnk.to/brian-eno-filmmusic

【収録曲】
01. トップボーイ(テーマ)
『トップボーイ:サマーハウス – シーズン1』(2011年/監督ヤン・ドマンジュ)より
 ‘Top Boy (Theme)’ from ‘Top Boy’ – Series 1, directed by Yann Demange, 2011
02. シップ・イン・ア・ボトル
『ラブリーボーン』(2009年/監督ピーター・ジャクソン)より
 ‘Ship In A Bottle’ from ‘The Lovely Bones’, directed by Peter Jackson, 2009
03. ブラッド・レッド
『フランシス・ベーコン 出来事と偶然のための媒体』(2005年/監督アダム・ロウ)より
 ‘Blood Red’ from ‘Francis Bacon’s Arena’, directed by Adam Low, 2005
04. アンダー
『クール・ワールド』(1992年/監督ラルフ・バクシ)より
 ‘Under’ from ‘Cool World’, directed by Ralph Bakshi, 1992
05. ディクライン・アンド・フォール
『O Nome da Morte’』(2017年/監督エンリケ・ゴールドマン)より
 ‘Decline And Fall’ from ‘O Nome da Morte’, directed by Henrique Goldman, 2017
06. 予言のテーマ
『デューン/砂の惑星』(1984年/監督デヴィッド・リンチ)より
 ‘Prophecy Theme’ from ‘Dune’, directed by David Lynch, 1984
07. リーズナブル・クエスチョン
『We Are As Gods』(2020年/デヴィッド・アルバラード、 ジェイソン・サスバーグ)より
 ‘Reasonable Question’ from ‘We Are As Gods’, directed by David Alvarado / Jason Sussberg, 2020
08. レイト・イブニング・イン・ジャージー
『ヒート』(1995年/監督マイケル・マン)より
 ‘Late Evening In Jersey’ from ‘Heat’, directed by Michael Mann, 1995
09. ビーチ・シークエンス
『愛のめぐりあい』(1995年/監督ミケランジェロ・アントニオーニ)
 ‘Beach Sequence’ from ‘Beyond The Clouds’, directed by Michelangelo Antonioni, 1995
10. ユー・ドント・ミス・ユア・ウォーター
『愛されちゃって、マフィア』(1988年/監督ジョナサン・デミ)より
 ‘You Don’t Miss Your Water’ from ‘Married to the Mob’, directed by Jonathan Demme, 1988
11. ディープ・ブルー・デイ
『トレインスポッティング』(1996年/監督ダニー・ボイル)より
 ‘Deep Blue Day’ from ‘Trainspotting’, directed by Danny Boyle, 1996
12. ソンブル
『トップボーイ:サマーハウス – シーズン2』(2013年/監督ジョナサン・バン・トゥレケン)
 ‘The Sombre’ from ‘Top Boy’ – Series 2, directed by Jonathan van Tulleken, 2013
13. ドーバー・ビーチ
『ジュビリー/聖なる年』(1978年/監督デレク・ジャーマン)より
 ‘Dover Beach’ from ‘Jubilee’, directed by Derek Jarman, 1978
14. デザイン・アズ・リダクション
『ラムズ』(2018年/監督ゲイリー・ハスウィット)より
 ‘Design as Reduction’ from ‘Rams’, directed by Gary Hustwit, 2018
15. アンダーシー・ステップス
『ハンマーヘッド』(2004年/監督ジョージ・チャン)より
 ‘Undersea Steps’ from ‘Hammerhead’, directed by George Chan, 2004
16. ファイナル・サンセット
『セバスチャン』(1976年/監督デレク・ジャーマン)より
 ‘Final Sunset’ from ‘Sebastiane’, directed by Derek Jarman, 1976
17. アン・エンディング
『宇宙へのフロンティア』(1989年/監督アル・レイナート)より
 ‘An Ending (Ascent)’, from ‘For All Mankind’, directed by Al Reinert, 1989

イーノが手掛けた曲は、今までに、映画や、ドキュメンタリー、テレビなどで何百曲と使用されてきた。また、世界的にも有名な監督の元で全編を通してのサウンドトラックを20作品以上手がけている。今回の『フィルム・ミュージック 1976-2020』は、イーノの最も著名な映画およびテレビのサウンドトラック17曲を収録した待望の1枚となっており、イーノの膨大な作品群への究極の入門書でもある。

イーノの長年に亘る映画との関わりは、1970年にマルコム・レグライス監督の実験的な短編映画『Berlin Horse』のサウンドトラックを手がけたことがきっかけだった。1976年には、『セバスチャン』と、長く忘れられていたギリシャのB級ホラー映画で『The Devil’s Men』という別名でも知られている『デビルズ・ビレッジ 魔神のいけにえ』でもサウンドトラックを手がけ、その後、自身のアルバムである『ミュージック・フォー・フィルムズ』をきっかけにさらに精力的に映画音楽に取り組んだ。

初期のイーノによる映画音楽の代表曲は、デヴィッド・リンチ監督『デューン/砂の惑星』からの「予言のテーマ」、マイケル・マン監督『ヒート』からの「Late Evening In Jersey」、ラルフ・バクシ監督『クール・ワールド』からの「Under」、そして、ジョナサン・デミ監督『愛されちゃってマフィア』で、ウィリアム・ベルのソウル・クラシックを情感たっぷりにカヴァーした「You Don’t Miss Your Water」などがあげられ、今作に収録されている。

Boldy James / Sterling Toles - ele-king

 いざレコ評などを書こうと思うまで自分が聴いている音楽をどんな人がつくっているとか、僕はとくには調べないし、それほど気にならない。つい最近も4年ぐらい前から好きで聴いていたポスト・ロックのユニットを『エレキング別冊 カン大全』で取り上げることになって初めて調べたらライムと同一人物がやっているとわかってかなり驚いた。ドローンからダンスホールに転じたユニットだったので、ポスト・ロックまでやっていたとは想像以上に多彩なんだなーと。スターリング・トールズも2005年にCDRでリリースされた作品が最近になってアナログ化されて……とか、そんなんことぐらいしか知らなかったので、ラッパーのボールディ・ジェームズと組んでリリースしたジョイント・アルバムについて、こうしてレヴューを書こうと思い、最初にウォーミング・アップでユーチューブで何か曲でも聴いてからと思ったら、彼がデトロイトの高校で音楽の授業を教えている光景が出てきてびっくり。え、学校の先生だったの? スターリング・トールズってユニット名か何かだと思ってたけど、人の名前だったの? と、ついそのまま見ていると、いい感じで授業が進んでいくじゃないですか。生徒たちみんなでインプロヴィゼーションをやってアルバムを1枚つくろうとか、そんな話し合いをしている。とんでもない勢いでドラムを叩き、鬼気迫る音楽をやっている人とは思えず、静かに崩壊していく自分がわかるというか。さらに追っていくと、スターリング・トールズがデトロイト・ヒップホップの歴史を語るという映像は800人しか観てない。クリフトン・ペリーとスターリング・トールズはヒップホップを変えたルネッサンス・メンだか話している「デトロイト・イズ・ディフェレント」は300人。同じ趣旨でもう一本は150人しか観ていない。何も知らない時は、音楽だけを聴いていてどんなスゴい人なんだろうと思いがちなものだけど、いやあ、どんどんイメージが変わっていくなー。過剰な情報は音楽そのものを殺しかねないなー。

 それでは『Manger on McNichols』を覗いていきましょう~。ラッパーのボールディ・ジェームズは10年前にはデビューしていて、今年はすでにアルケミストと組んだ『The Price Of Tea In China』という面白いタイトルのアルバムもリリースしているものの、実はこの人のラップにはぜんぜん興味がない。『Manger on McNichols』でもMCが主導している“Detroit River Rock”まではそんなに興味がわかない。俄然、面白くなるのはトールズのドラムがフリーキーに暴れはじめる“B.B. Butcher”からで、ここからの3曲は何度も繰り返し聴いている。トールズが2005年にCDRでリリースした『Resurget Cineribus』もフィールド・レコーディングやゲットーテックがぐちゃ混ぜとなり、実に混沌としたアルバムで、とくに印象に残るのが破天荒なドラミング。トールズの演奏がとにかくスゴいんだと漠然と何年も思っていた。そう、こうしてレコ評を書きはじめるまでは。デトロイト再建を意味する『Resurget Cineribus』は1967年のデトロイトをテーマとしたもので、トールズの父親、デニス・エドワード・トールズがマーヴィン・ゲイのレコードに合わせてたわごとを喋るという行為からスタートしたらしい。トールズは1967年のデトロイト暴動を楽譜に起こせないかと模索しはじめ、リサーチの段階でデトロイトを再建するスローガン「Resurget Cineribus」にたどり着く。それはもともと1805年に起きた大規模な火災からデトロイトから立ち上がるためにつくられたもの(Rebuilding Detroit→https://www.youtube.com/watch?v=M3sGZsQZx80)。彼の父親が依存症から回復しようとしている時にこのスローガンが彼のなかでなんらかの意味を持っていると判断したトールズは67年のニュース映像からサンプリングした音と父親が葛藤しながら吐き出し続ける言葉をスコア化するという方法で音楽をつくり進める。ミュジーク・コンクレートがポップ・ミュージックのフィールドに降りてくる直前の時期だったと思うけれど、トールズ自身もそれは意識し、オーネット・コールマンやジョン・ケージがやるようにデトロイトを表現し、デトロイトが持っている「美しく弾力のある精神(the beautiful and resilient spirit )」に「肉と顔を与えた(to give flesh and a face)」のだという。言葉がわからないので半分以上意味不明だけど→https://sector7grecordings.bandcamp.com/album/resurget-cineribus

 『Resurget Cineribus』を聴いたDJアゾールトとミスター・ディー(Mr. De)は「まるでインディーズ映画を見ているようだった」と感想を残し、この作品はデトロイトの活動家たちに愛され、カイル・ホールダキムのような「境界を突破しよう」と試行錯誤しているミュージシャンたちにインスピレーションを与えたと評価されている。そして、僕が漠然と「最近になってアナログ化された」と思っていたのは、それがデトロイト蜂起から50周年を記念していたということも初めて知った。なるほど。そういうことだったのか。さすがにこれを知ると、もっと身構えて聴くものだったという反省的な気分に。そして、『Resurget Cineribus』の作業が終わるのを待ちかねていたボールディ・ジェイムズがすぐに『Manger on McNichols』のレコーディングを開始しようと言い始め、そこからレコーディング作業は12年にも及んだという。「マクニコルズ」というのは鉄鋼メーカーのことのようで、アルバム・タイトルは格子状になっている鉄の上で食事をしているという意味か(?)。よくわからない。ジェイムズもトールズも音楽産業だったり、他人に聞かせることを目的とせず、自分たちのためにレコーディングしていたそうで、とはいえ、個人的なトラウマが集団的なカタルシスとして共有されることには疑問がなかったという。レコーディングが伸びまくっている間にベースを弾いていたアンプ・フィドラーの兄は亡くなり、トールズの説明は読むのが面倒なほど長く多岐にわたっている(ので省略)。ゲストはその間にかなりの数まで膨れ上がり、“Welcome to 76”で侘しげなサックスを吹いているのはマッド・マイク。同曲ではエレクトリファイン・モジョの声もサンプリングされている。全体を通して聴くと、デトロイト・ヒップホップという文脈しか存在せず、それ自体がどんなトレンドにも属していないといえ、クエル・クリスなどと同じく単独で独自のヒップホップをやっていますよという感じ。トラップは5秒と聴く気がしなくなっている僕としてはもちろん彼らの方が興味深い。

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