「AY」と一致するもの

interview with Kassa Overall - ele-king

 一口に新世代のジャズ・ミュージシャンに括られる中でも、一際ユニークでほかにない個性を持つひとりがジャズ・ドラマーのカッサ・オーヴァーオールである。ジャズとヒップホップやエレクトロニック・ミュージックをミックスするミュージシャンはいまでは少なくないが、そうした中でもカッサのようにフリー・ジャズなど前衛的な手法を用いる者は異端で、言ってみればポップ・ミュージックと実験音楽を並列させてしまう稀有な存在でもある。そして、自身でラップもおこなうなど言葉に対しても鋭い感性を持つアーティストでもあり、自身の内面を赤裸々に綴る歌詞も彼の音楽を形作る重要な要素である。

 2019年にリリースされた『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』でカッサ・オーヴァーオールの名前は知られるようになり、ジャズの未来を切り開く新しいアーティストとして一躍注目を集める。ただ新しいだけではなく、女流ピアニストでコンテンポラリー・ジャズの世界に大きな足跡を残した故ジェリ・アレンのバンドで活動するなど、ジャズの伝統的な技法や表現も理解した上で、それらと新しい技法を融合するなど、常々実験と冒険を繰り返しているアーティストだ。『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』には故ロイ・ハーグローヴはじめ、アート・リンゼイ、カーメン・ランディなどベテランや実力者が多数参加しており、それら面々とのセッションからもカッサが伝統と新しさを融合することができるミュージシャンであることが伺える。

 2020年には『アイ・シンク・アイム・グッド』をリリースし、そこでは1960年代の黒人解放運動で勃興したブラックパンサー党に属し、社会活動家にして作家として活動してきたアンジェラ・デイヴィスがヴォイス・メッセージを贈っている。社会の抱える問題や不条理などにも向き合うカッサの内面を深掘りしたアルバムでもあり、同時に自身の病気や過去のトラウマなどにも対峙した、よりディープな内容の作品だった。その後、パンデミックなどで世界が激変し、当然彼の周りでも変化があったと想像される。そして、ようやく世界が以前の姿を取り戻しつつある2023年、カッサのニュー・アルバムの『アニマルズ』が完成した。カッサにとってコロナ禍を経てのアルバムであり、その間に長年活動してきたニューヨークから、故郷であるシアトルへと住まいも変わった。そうした中で作られた『アニマルズ』には、一体どのような思いやメッセージが込められているのだろうか。

僕の目標がアルバムごとに少しずつ、じわじわと自由に、そしてポップになっていくことなんだ。そのふたつって矛盾してるだろ? ポップ・ソング、つまりはよりキャッチーな曲を書けるようになりながら、よりアヴァンギャルドで、自由になりたいんだ。

2020年に『アイ・シンク・アイム・グッド』のリリースで来日したとき以来、2度目のインタヴューとなります。そのときはコロナのパンデミックが始まる直前で、その後世界各国でロックダウンがはじまり、ミュージシャンもツアーやライヴができなくなりました。あなたにとっても、パンデミックは大きな影響を及ぼしましたか?

カッサ・オーヴァーオール(以下KO):アルバムはうまくいったんだけど、リリースしたすぐあとに全てが閉鎖されてしまったんだ。だから、あのアルバムから本来得られるはずだったものが実現しなかった気がした。せっかくリリースまでたどり着いたのに、全てが降り出しに戻った気がしてさ。だからとにかく、やり直さなきゃと思った。で、パンデミックのときにミックステープの『シェイズ・オブ・フル』を作りはじめたんだ。あとはいろいろ練習をしたり、とにかく全てを自分ひとりでやっていた。それまでは、曲作りのときは他のミュージシャンと同じ部屋に入って作業していたけど、パンデミックのときは初めてネットでトラックを送り合ったんだ。パンデミックは落ち着いたけど、いまでもまだ少しその手法を活用してる。だから、それは影響のひとつだと思うね。

長年活動してきたニューヨークを離れ、故郷であるシアトルに戻ったのもパンデミックと関係があるのですか? これまでもシアトルとニューヨークをたびたび行き来してきたとは思いますが。

KO:ブルックリンのアパートに住んでたんだけど、休暇でシアトルにいたときにパンデミックでニューヨーク州が閉鎖されてしまってさ。あの期間はニューヨークにいる意味を感じなかったんだよね。ライヴも全然ないし、部屋で仕事をしているだけだったから。シアトルには芝生もあるし、水もあったし、木もあったし、山もあった。そう、つまりもっと自然があるから、あの時期の時間を過ごすのはシアトルのほうがよかったんだ。

いまでもニューヨークにはよく行くんですか?

KO:行くよ。ときどき行って、一ヶ月くらいステイするっていうのを続けてる。だから、シアトルとニューヨークどっちにもいる感じ。ツアーがたくさん決まってるし、いまは住む場所はあまり関係ないんだよね。家族もスペースもあるから、いまはとりあえずシアトルをベースにしてるだけ。

ニュー・アルバムの『アニマルズ』は〈Warp〉からのリリースとなります。〈Warp〉からリリースするようになった経緯について教えてください。

KO:前回のアルバムを出したあと、〈Warp〉の制作部から「ダニー・ブラウンのアルバムのためにビートを作れないか」ってオファーをもらったんだよ。で、ダニーのためにいくつかビートを作ったんだけど、その制作のスタッフが僕の音楽をかなり気に入ってくれて、そこから連絡を取り合うようになり、パンデミックの間もずっと話してたんだ。そして良かったのは、その会話の内容がビジネスよりも音楽の話だったこと。それが、契約するのに良いレーベルだっていうお告げだと思ったんだ。

『アニマルズ』はシアトルの自宅の地下室に作ったスタジオで制作されました。家という概念が『アニマルズ』には投影されていて、その表れが “メイク・マイ・ウェイ・バック・ホーム” という曲かと思います。この曲はどのようなアイデアから生まれたのですか?

KO:トラックを作りはじめたときは、アイデアなんて全然なかったよ(笑)。でも振り返ってみると、僕の場合は新しいサウンドのテクニックをいろいろと実験している中で最高の曲ができ上がることが多い。この曲はアルペジエーターを使って実験している中で生まれたんだ。コンピューターにコードをアルペジオにするアルペジエーターっていうプログラムやプラグインがあるんだけど、それを使って実験してるときにあのコード進行を思いついた。で、それを気に入って、その周りにドラムを乗せ、コーラスを書いた。そこまではすぐだったんだ。でも、そのあとあのラップを書くのに3年かかってさ(笑)。

なかなか納得いくものができなかったんですか?

KO:そう、十分に満足できるものが書けなかったんだよね。あの曲のためにはたぶん4つか5つラップを書いたと思う。

僕の全てのアルバムは全部集めてひとつの作品なんだ。それぞれのアルバムが、ひとつの大きな物語を語るための要素。だから、同じものは二度と作りたくないんだよね。

“メイク・マイ・ウェイ・バック・ホーム” ではシンガー・ソングライターのニック・ハキムと共演しています。彼は私個人もとても好きなミュージシャンなのですが、ニューヨークのジャズ/アーティスト集団のオニキス・コレクティヴで活動していたときに知り合ったそうですね。彼との出会いはいかがでしたか?

KO:彼に初めて会ったのは、オニキス・コレクティヴがロウアー・イーストサイドでプレイしているときだった。僕はオニキスでドラムを叩き、ニックは歌っていたんだ。それが初めて出会ったときの記憶。もう何年も前のことだから、僕が勘違いしていなければだけど。あれはたしかラッパーのウィキのミュージック・ビデオのリリース・パーティーじゃなかったかな。ウィキは僕のアルバムにも参加してくれてる。たぶんオニキスはあのときウィキのパーティーのために演奏してたんだと思う。

ニックの第一印象はどうでしたか?

KO:第一印象は、音楽に対してすごく熱心な人だなと思った。そして彼は、そのとき同じ日に別のショーがあって、サウンド・チェックに参加したあとほかのショーで歌って、そのあとこっちに戻ってきてまた歌ってた(笑)。僕もいつも音楽でバタバタしてるから、この人とは仲良くなれそうだと思ったね(笑)。

ニック・ハキムもそうですが、『アニマルズ』はこれまで以上に多彩なゲスト・ミュージシャンとのコラボがおこなわれています。ジャズ方面を見ると、前作にも参加したシオ・クローカー、ヴィジェイ・アイヤー、ビッグ・ユキ、サリヴァン・フォートナーなどのほか、サックス奏者のトモキ・サンダースやアンソニー・ウェア、ピアニストのマイク・キングといった面々がバンド・メンバーとなっています。中でもトモキ・サンダースはファラオ・サンダースの息子としても知られるのですが、どのように出会ったのですか?

KO:トモキ・サンダースと初めて会ったのは、「スモールズ」っていうニューヨークにあるジャズ・クラブ。ミュージシャンたちがジャム・セッションをやるために集まるバーなんだ。そこで彼を見かけるようになってさ。当時、彼がすごくブリムの大きな帽子をかぶってたのを覚えてる。で、たしか最初はシオ・クローカーが彼のことを紹介してくれたんじゃないかな。それでトモキと連絡をとるようになって、日本に行ったときに僕のショーに彼を呼んだんだ。

彼の第一印象は?

KO:彼って、ほかのミュージシャンに対してすごく謙虚なんだ。「会えて光栄です」みたいなさ(笑)。ほかのミュージシャンをすごくリスペクトしてるのが伝わってくるんだよね。

彼が参加した “スティル・エイント・ファインド・ミー” など、フリー・ジャズ的なアプローチも感じられるわけですが、実際に何らかの影響があったのでしょうか?

KO:トモキはすごく自由なエナジーと溢れるような情熱をあの曲にもたらしてくれたと思う。たしかに、フリー・ジャズ的なアプローチは感じられるかもしれないね。というか、僕の目標がアルバムごとに少しずつ、じわじわと自由に、そしてポップになっていくことなんだ。そのふたつって矛盾してるだろ? ポップ・ソング、つまりはよりキャッチーな曲を書けるようになりながら、よりアヴァンギャルドで、自由になりたいんだ。僕はキャッチーさとクレイジーさを同時に手に入れる方法を探求しているんだよ。

かなり難しそうに聞こえますが(笑)。

KO:その通り(笑)。だからこそ、たくさん実験する必要があるんだ。いつもうまくいくとは限らないけど、ときにはうまくいくこともある。これだ!と心をつかむものが、その過程で生まれるんだよ。それを見つけ出すことが僕の目標のひとつなんだ。

初めからそこまで大きなヴィジョンを持って活動しているんですね。

KO:それはたぶん、僕がほかのアーティストのアルバムの歴史とディスコグラフィの大ファンだからだと思う。僕にとっては、僕の全てのアルバムは全部集めてひとつの作品なんだ。それぞれのアルバムが、ひとつの大きな物語を語るための要素。だから、同じものは二度と作りたくないんだよね。過去に戻るような作品は作りたくないし、前に進み続けたいんだ。ファンやリスナーの人たちが全てのアルバムを聴いたときに、「なるほど、こういうことだったのか」と気付けるような作品を作りたい。

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以前の僕は「ああ、僕はひとりなんだ」という感じだった。でもいまは、生きている人なら誰でも孤独や恐怖、人目を気にするということを何らかの形で経験し、その問題に対処しなければならないと思ってる。

メンバーは基本的にニューヨークを拠点とするジャズ・ミュージシャンが多いようですが、あなたがニューヨークに行って演奏した素材を、シアトルのスタジオに戻ってミックスする、というような作業だったのですか?

KO:演奏はニューヨーク。僕はいまでもよくニューヨークに行くからそれが理由でもあるし、もうひとつの理由は、アルバムの曲の中には長年温めてきた曲もあるから。つまり、ニューヨークに住んでいたときに作っていた曲もあるからなんだ。僕の音楽の作り方は、いろいろな時代のレコーディング・セッションの断片を引っ張りだしてきて、それを基に作っていったりもする。作っているものがそのとき作っているプロジェクトに合わなければ使わずそのまま置いておいて、後からまた準備が整ったときに使うんだ。

ミックスはどこで? シアトルのスタジオですか?

KO:いや、ミックスはニューヨークでやった。エンジニアのダニエル・シュレットと一緒にね。彼はストレンジ・ウェザーっていうスタジオをもっていて、そこで作業したんだ。そこは僕のファースト・アルバムをレコーディングした場所でもある。素晴らしいスタジオなんだけど、いま彼はミックスしかしてなくて、レコーディング用のスタジオは必要ないからもう閉鎖してしまうらしい。ダニエルとはもう何年も一緒に仕事をしてきた。彼は僕がやろうとしていることを理解してくれているんだ。

シアトルではどんな作業を?

KO:シアトルでは自分ひとりでの作業が多かった。シアトルのホーム・スタジオでは、材料が全て揃っている状態だったんだ。そこからそれを編集したり、歌詞を書き足したり、ファイルを送り合ったりしてた。バンドのレコーディング・セッションをシアトルでやることはほとんどなかったね。あと “スティル・エイント・ファインド・ミー” をレコーディングしたのはオークランドだった。

それはどういう経緯で?

KO:ツアーの終わりが西海岸だったから、まずオークランドでスタジオを借りて、それからロサンゼルスに行って、そこで “ザ・ラヴァ・イズ・カーム” とほか何曲かをレコーディングしたんだ。僕は結構どこでも曲を作ることができるから。

前作やその前の『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』でも、ジャズとヒップホップを融合した作品はいろいろ見られ、それらでは主にあなたがラップをすることが多かったと思います。今回もあなたがラップをする曲もありますが、同時にダニー・ブラウンとウィキをフィーチャーした “クロック・シッキング”、 リル・Bシャバズ・パレセズをフィーチャーした “ゴーイング・アップ” など、本職のヒップホップのラッパーたちとコラボするケースが目立ちます。これまでとは違う何か変化などがあったのでしょうか?

KO:僕自身がラップやヒップホップのファンだからだと思う。後はラッパーがどんなサウンドを奏でるのか、別のタイプのプロダクションや、前衛的で実験的なプロダクションで自分の音楽を聴いてみたいと思うから。たとえば今回のアルバムでは、リル・Bのラップの裏で僕がエルヴィン・ジョーンズみたいなドラムを叩いているわけだけど、良い意味でその組み合わせが僕を笑わせるんだ。ダニー・ブラウンと前衛的なピアニスト、クリス・デイヴィスの組み合わせもそうだしね。僕は異なる世界を結びつけるっていうアイデアが好きでさ。ヒップホップと繋がりがないような音楽をヒップホップと結びつけるっていうのは面白いと思う。そのアイデアがとにかく好きなんだよね。次のアルバムがどうなるかはわからないけど、とりあえずいまはそれが自分にとってクールな実験だったんだ。

人生を生きる人間として、僕はときに動物園やサーカスにいる動物のように感じることがある。人前に立ってパフォーマンスをして、オーディエンスを楽しませ、大きいけれど大き過ぎない動きをしなければならない。

スカタライツに参加してきたトロンボーン奏者のアンドレイ・マーチソン、タブー・コンボの創設者であるハーマン・ナウの息子のベンジ・アロンセなど、ラテン系のミュージシャンの参加も目を引きます。それが関係するのか、“スティル・エイント・ファインド・ミー”、“ザ・ラヴァ・イズ・カーム”、“ノー・イット・エイント” といった、ラテンのリズムや旋律を取り入れた楽曲があります。こうしたラテン音楽への傾倒は何か意識したところがあるのでしょうか?

KO:アンドレイとは大学が一緒だった。彼はラテン的なミュージシャンってわけではないけど、スピリチュアルな教会のようなエナジーをもたらしてくれたと思う。そしてベンジは、僕のライヴ・バンドのパーカッショニストなんだ。彼のパーカッションは父親の血を引いているからか、普通のアフロ・キューバンのリズムとは違って、ハイチの影響が混ざってる。それがすごくユニークなんだよね。

ニック・ハキム以外に、ローラ・ムヴーラ、フランシス・アンド・ザ・ライツ、J・ホアードと、それぞれ異なるタイプのシンガーたちが参加しています。これまで以上に歌に対する比重が強くなったアルバムであると思いますし、歌詞の重要性も増しているのではないでしょうか。そのあたりについて、あなた自身はどのように考えていますか?

KO:僕もそう思う。いまはヴォーカル・レッスンも受けてるんだ。曲をパフォーミングするという経験をすると、ヴォーカルがいかにリスナーにとって重要なものかがわかるようになる。コーラスは曲に大きな影響を与えるし、良いコーラスがあればリスナーとまた違う繋がり方で結ばれることができるんだ。

“レディ・トゥ・ボール” は成功や努力の対価としての精神の消耗について歌い、“イッツ・アニマルズ” は人前でありのままの自分を体現することのプレッシャーを描いており、音楽やエンターテイメントの世界で生きるあなた自身が投影された作品かと思います。あなたは『アイ・シンク・アイム・グッド』以降は特に顕著ですが、自身の体験に基づいて、内面をさらけ出すような作品を作ってきて、その傾向は『アニマルズ』でより強くなっているように感じますが、いかがですか?

KO:個人的なことをさらけ出しているのは昔から変わらない。どのアルバムでも、正直なところ僕はかなり多くのことをさらけ出していると思う。『ゴー・ゲット・アイス・クリーム・アンド・リッスン・トゥ・ジャズ』の “ワッツ・ニュー・ウィズ・ユー” って曲も、すでに強烈な別れの曲だったしね。でも前回のアルバムでは、内容が違っているんだと思う。あのときは精神的な病とそれとの戦いと向き合っていたから。そして今回のアルバムでは、自分自身の実存的なフィーリングを扱っている。まあもしかしたら、前よりも自分をさらけ出すことに心地よさを感じることができているのかもしれないね。最初のころはもっと大変だったと思う。でもいまは、自然とそれができるんだ。そして後から振り返って、自分がどんな心のつっかえを取ろうとしていたのかがわかる。前よりも意識して自分をさらけ出そうとしているというよりは、もっと楽にそれができるようになったんじゃないかな。

“ソー・ハッピー” と “メイビー・ウィ・キャン・ステイ” は、躁鬱病を患って入院や自殺未遂を経験したあなたが投影されたような作品です。『アイ・シンク・アイム・グッド』でも、そうした病気やメンタルヘルスについて扱った作品がありましたが、こうした作品はあなたがこれからも生きていくうえでテーマとなっていくものなのでしょうか?

KO:前回のアルバムと今回のアルバムの間には、興味深い鏡が存在していると思う。前作は自分と自分の個人的な闘いについてだったけど、今作では自分自身だけについてではなく、世界全体についても考えていて、誰もが抱えている精神的な問題という視点になっているんだ。以前の僕は「ああ、僕はひとりなんだ」という感じだった。でもいまは、生きている人なら誰でも孤独や恐怖、人目を気にするということを何らかの形で経験し、その問題に対処しなければならないと思ってる。だからこのふたつの作品は、異なる方法でお互いを映し出していると思うんだよね。壊れたレコードみたいに聴こえたくはないから、ずっと同じテーマを語るわけにはいかないし、自分でも今後どんなトピックに触れていくかはわからない。でも、このテーマを進化させていきたいことだけはたしか。人間として、毎回進化を続けていきたいからね。

『アニマルズ』は、あなたのエンターテイナーとしての人生のパラドックスを描くと同時に、黒人がどのように扱われているかについての声明も含んでいるそうですね。そうしたことを踏まえて、『アニマルズ』が持つテーマについて改めて教えてください。

KO:『アニマルズ』というタイトルに込められたテーマはいくつかある。そのひとつは、人間であるということはどういうことなのか?という問いかけ。動物ではなく人間であるということの意味だね。僕たちは自分たちを人間と呼び、信仰を持ち、より高い能力を持っているとい考える傾向がある。でも同時に、僕たちはよくお互いを動物のように扱ってしまっているんだ。合わなかったり、自分たちにとって都合の悪いことをすれば共存しない。でも人間であるなら、敵味方関係なく、お互いに共感できる部分を見つけることができるはずなんだ。そしてもうひとつのテーマは、エンターテイナーとしての自分の葛藤。人生を生きる人間として、僕はときに動物園やサーカスにいる動物のように感じることがある。人前に立ってパフォーマンスをして、オーディエンスを楽しませ、大きいけれど大き過ぎない動きをしなければならない。アクションが大き過ぎると人びとを怖がらせてしまうし、小さ過ぎれば相手にされないから。そして、みなやっぱり楽しませてもらうことを期待している。そういう状況下にいると、サーカスの猿じゃなくて僕も人間なんだって感じることがあるんだよね。それは、僕が対処しなければいけない感情なんだ。パフォーマンスをしていると、僕自身も人生というものを体験している人間のひとりであり、経験していることに対して自分がどう感じているかを表現したいだけなんだ、ということを忘れてしまう。僕は商品じゃないんだってことをね。この対立は必ずしも悪いことばかりではないんだ。ツアーも大好きなんだけど、そのエネルギーに流され過ぎてもいけない。来場者と握手もするし、挨拶もするし、写真も一緒にとるけど、自分は人間であって、一足の靴ではないこと、自分はあくまで “人間” というものを共有しているんだということを忘れてはいけないんだ。やるべきことが多過ぎたり、忙しくなると、ときにそれを忘れてしまい、その葛藤と戦うことになるんだよね。

ありがとうございました!

KO:こちらこそ、ありがとう。10月に来日するんだ。また日本に行けるのを楽しみにしているよ。

Kassa Overall Japan Tour 2023

JAZZ界の台風の目!!
革新的ドラマー/プロデューサー「カッサ・オーバーオール」が精鋭のバンドを率いて来日決定!!
最新アルバムでも解放したそのアヴァンギャルドな実験精神と独創的美学を体感せよ!!

Kassa Overall - カッサ・オーバーオール
Support act: TBC

TOKYO
2023.10.19 (THU)
WWWX

OSAKA
2023.10.20 (FRI)
Billboard Live Osaka

シアトル在住、卓越したスキルを持ったジャズ・ドラマーとして、また先鋭的なプロデューサーとして、リズムの無限の可能性を生み出し続けるカッサ・オーバーオールの来日公演が決定!! 進化するジャズ・シーンの行き先を見届けたいジャズ・ファンはもちろんの事、更にはヒップホップの拡張し続ける可能性を体感したい全ての音楽ファンが来るべきライブになること間違いなし!!
今年3月にはエイフェックス・ツインやフライング・ロータス、スクエアプッシャー等が所属する名門レーベル〈Warp Records〉との電撃契約を発表し、遂に5月26日にリリースされる最新アルバム『Animals』は、全ての楽曲でジャズとヒップホップとエレクトロニクスが絶妙に融合した新鮮な作品となっており、ジャズの新しい未来を切り開いてくれるような歴史に残るアルバムであることはもはや一聴瞭然だ。
そんなカッサ・オーバーオールの単独公演では、トモキ・サンダースやイアン・フィンク、ベンジー・アロンスなど豪華なミュージシャンがバンドメンバーとして集結!
ここ日本でも、世界を舞台に活躍するBIGYUKIや、ジャズ評論家の柳樂光隆らから大絶賛を浴びているカッサ・オーバーオール。アヴァンギャルドな実験精神と独創的美学が、ジャズの未来を切り拓く、まさにその瞬間を見逃すな!

東京公演
公演日:2023年10月19日(木)
会場:WWWX
OPEN 18:00 / START 19:00
前売 ¥7,000 (税込/別途1ドリンク代/オールスタンディング)
※未就学児童入場不可

チケット発売:
先行発売
★ BEATINK主催者先行
5月26日(金)10:00~
https://beatink.zaiko.io/e/kassaoverall
★ イープラス最速先行販売(抽選)
5月30日(火)12:00~6月4日(日)18:00
https://eplus.jp/kassaoverall/

一般発売:6月10日(土)~
● イープラス https://eplus.jp/kassaoverall/
● ローソンチケット https://l-tike.com/kassaoverall/
● BEATINK (ZAIKO) https://beatink.zaiko.io/e/kassaoverall
INFO: BEATINK [WWW.BEATINK.COM]

大阪公演
公演日:2023年10月20日(金)
会場:Billboard Live Osaka
開場/開演(2部制)
1部:OPEN 17:00 / START 18:00
2部:OPEN 20:00 / START 21:00
チケット:S指定席 ¥8,500 / R指定席 ¥7,400 / カジュアル席 ¥6,900

チケット発売:
主催者先行:5月31日(金)
一般発売:6月7日(水)
http://www.billboard-live.com/

INFO: Billboard Live Osaka http://www.billboard-live.com/

企画・制作:BEATINK / www.beatink.com

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【シン・ジャズ・キャンペーン】

~拡張するJAZZ~

ジャズの未来を切り拓く革新的ドラマー、カッサ・オーバーオールの最新作『Animals』発売を記念して、進化系ジャズの注目アイテムを対象にしたキャンペーンを開催!

ソウル、ヒップ・ホップ、ロック、ポップスといった他ジャンルと
クロスオーバーする新世代ジャズをピックアップ!

またキャンペーン期間中、対象商品をご購入頂くと先着特典として音楽評論家:柳樂光隆氏監修による「Kassa Overall Handbook」をプレゼント

*特典は無くなり次第終了致します

【キャンペーン期間】
2023年5月26日(金)~6月25日(日)迄

---------【対象商品】---------
※全フォーマット対象
(国内盤CD、国内盤CD+Tシャツ、輸入盤CD、輸入盤LP、輸入盤LP+Tシャツ)

・Kassa Overall『ANIMALS』(5/26発売)
・Louis Cole『Quality Over Opinion (新装盤)』
・Makaya McCraven『In These Times』
・Nala Sinephro『Space 1.8』
・Emma Jean Thackray『Yellow』

---------【特典詳細】----------
特典:冊子「Kassa Overall Handbook Produced by Mitsutaka Nagira」

「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者、柳樂光隆氏監修によるジャズの枠組みを逸脱する「異端児」の思想を読み解く

掲載内容
・カッサ・オーバーオール インタビュー
・BIGYUKI インタビュー
・トモキ・サンダース インタビュー
・カッサとジャズ人脈の交友関係
・カッサの音楽を彩るラッパー/シンガー
・UK最先端レーベルとジャズの関係
・新鋭ライターが語る越境するジャズ・ミュージシャン
・アーティスト/著名人が語るカッサ:藤本夏樹(Tempalay)/和久井沙良/MON/KU/竹田ダニエル

取り扱い店舗
タワーレコード:札幌パルコ、下田、盛岡、仙台パルコ、渋谷、池袋、新宿、町田、川崎、横浜ビブレ、浦和、津田沼、新潟、金沢フォーラス、名古屋パルコ、名古屋近鉄パッセ、鈴鹿、静岡、梅田NU茶屋町、なんばパークス、あべのHOOP、京都、広島、神戸、倉敷、福岡、若松、久留米、那覇、タワーレコードオンライン

HMV:札幌ステラプレイス、エソラ池袋、立川、ラゾーナ川崎、ららぽーと横浜、イトーヨーカドー宇都宮、イオンモール羽生、ららぽーと富士見、イオンモール太田、阪急西宮ガーデンズ

その他:代官山蔦屋書店、JEUGIA [Basic.]、エブリデイ・レコード、Hachi Record Shop and Bar

label: Warp Records
artist: Kassa Overall
title: ANIMALS
release: 2023.05.26

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13345

Tracklist
01. Anxious Anthony (feat. Anthony Ware)
02. Ready To Ball
03. Clock Ticking (feat. Danny Brown & Wiki)
04. Still Ain’t Find Me (feat. Tomoki Sanders, Bendji Allonce, Mike King & Ian Finklestein)
05. Make My Way Back Home (feat. Nick Hakim & Theo Croker)
06. The Lava Is Calm (feat. Theo Croker)
07. No It Ain’t (feat. Andrae Murchison)
08. So Happy (feat. Laura Mvula & Francis and the Lights)
09. It’s Animals
10. Maybe We Can Stay (feat. J. Hoard)
11. The Score Was Made (feat. Vijay Iyer)
12. Going Up (feat. Lil B, Shabazz Palaces & Francis and the Lights)

Meitei - ele-king

 先日G7サミットが開かれたばかりだが、その広島を拠点に活動し、日本文化をテーマに音楽制作をつづけているプロデューサーが冥丁だ。彼が飛躍するきっかけになったファースト・アルバム『怪談』の5周年記念盤が7月21日にリリースされる。ボーナストラック2曲を追加、初のCD化だ(LPも再発予定)。さらにツアーも予定されているとのこと。詳しくは下記より。

広島を拠点に活動するアーティスト・冥丁の2018年傑作デビューアルバム『怪談』が、ボーナストラック2曲追加した5周年記念盤として初CD化!
※LPヴァージョンは後日カラーヴァイナルで再発予定。

アーティスト:冥丁
タイトル:怪談(5th Anniversary Edition)
フォーマット:国内流通盤CD・デジタル配信
発売日:2023年7月21日(金)
品番:AMIP-0330
レーベル:Evening Chants / KITCHEN.LABEL
ジャンル:ELECTRONIC / AMBIENT
流通:Inpartmaint Inc. / p*dis
本体価格:3,000円(税抜)

TRACK LIST
01. 漣
02. 骨董
03. 塔婆
04. 地蔵
05. 青柳
06. 魍魎
07. 山怪
08. 障子
09. 筵
10. 九十九
11. 涙 (*Bonus Track)
12. 海峡 (*Bonus Track)

日本の幽霊話のジャンルの1つである怪談。その怪談の持つ闇の中の美しさや「Lost Japanese Mood」(失われた日本のムード)と称する雰囲気を、精巧な作曲構成に落とし込んだ冥丁の1stアルバム『怪談』(2018年)は、Pitchforkの「Best Experimental Albums of 2018」への選出をはじめ、Bandcamp、The Wireなど様々な海外メディアから賞賛され、世界のアンビエント~エクスペリメンタルシーンに冥丁の名を確立し、その後リリースされる『小町』『古風Ⅰ』&『古風Ⅱ』などの「Lost Japanese Mood」を主題にしたシリーズの最初のアルバムであり、冥丁独自の音世界と卓越した音楽性を示した重要作。

日本各地に伝わる伝説や幽霊話に独自の解釈を加えて文学作品に昇華させた小泉八雲の名作『怪談』は、本作の方向性に大きなインスピレーションを与えており、「漣(さざなみ)」「骨董」「障子」「筵 (むしろ)」などの楽曲は、小泉八雲作品へのオマージュと言える。また、漫画家・水木しげるからも影響を受けており、「塔婆」や「地蔵」は水木氏の漫画『ゲゲゲの鬼太郎』へのオマージュとして制作された。

このように、日本の重要な芸術から影響を受けた本作には、明らかな不気味な要素だけではなく、ユーモア、情緒、そして哀愁も、まるで霧で濡れた苔のように視覚的に表現されている。さらに、ローファイ・ヒップホップの新しい波に興味を持った冥丁はその要素を再編して絶妙に織り混ぜ、繊細なバランスで怪談の持つ和の雰囲気を構築した。

本5周年記念盤は、オリジナルリリース元のEvening Chantsと、『古風』シリーズをリリースしているKITCHEN. LABELという2つのシンガポールのレーベルによる共同リリースとして、ボーナストラック2曲を追加したCD盤が先行発売、その後、カラーヴァイナル(スモークヘイズ) の発売も予定されている。冥丁本人の曲解説が掲載された8ページブックレットも付属。マスタリングはテイラー・デュプリーが担当。

★7月後半より『怪談(5th Anniversary Edition)』のリリースを記念したジャパンツアーも各地で開催。(※詳細は後日発表。)


【冥丁 / MEITEI】
日本の文化から徐々に失われつつある、過去の時代の雰囲気を「失日本」と呼び、現代的なサウンドテクニックで日本古来の印象を融合させた私的でコンセプチャルな音楽を生み出す広島在住のアーティスト。エレクトロニック、アンビエント、ヒップホップ、エクスペリメンタルを融合させた音楽で、過去と現在の狭間にある音楽芸術を創作している。これまでに「怪談」、「小町」、「古風」(Part I & II)などによる、独自の音楽テーマとエネルギーを持った画期的な三部作シリーズを海外の様々なレーベルから発表し、冥丁は世界的にも急速に近年のアンビエント・ミュージックの特異点となった。日本の文化と豊かな歴史の持つ多様性を音楽表現とした発信により、The Wire、Pitchforkから高い評価を受け、MUTEK Barcelona 2020、コロナ禍を経てSWEET LOVE SHOWER SPRING 2022などの音楽フェスティバルに出演し、初の日本国内のリリースツアーに加え、ヨーロッパ、シンガポールなどを含む海外ツアーも成功させる。ソロ活動の傍ら、Cartierや資生堂IPSA、MERRELLなど世界的に信頼をおくブランドから依頼を受け、イベントやキャンペーンのためのオリジナル楽曲の制作も担当している。

Loraine James - ele-king

 喜びたまえ。出すもの出すものハイクオリティの快進撃をつづけ、昨年の来日公演でもすばらしいライヴを披露してくれたロレイン・ジェイムズが、新たにアルバムを送り出す。『やさしい対決(Gentle Confrontation)』と題されたそれは2年ぶりに〈ハイパーダブ〉からのリリースで、9月22日発売。サプライズもある。日本のマスロックからの影響をたびたび口にし、「とくに好きなのは Toe と mouse on the keys」と語っていたジェイムズだが、新作のCD盤にはなんと、その mouse on the keys をフィーチャーした曲がボーナストラックとして収録される。どんなコラボが実現されているのか楽しみだ。公開中の新曲 “2003” を聴きながら夢を膨らませておこう。

Loraine James

エレクトロニック・ポップ・ミュージックの新たな地平を開く、最高傑作が誕生!
ロレイン・ジェイムスが最新アルバム『Gentle Confrontation』をコード9率いる〈Hyperdub〉より9月22日にリリース!
新曲「2003」がMVと共に公開!

ジャズ、エレクトロニカ、UKベース・ミュージック、アンビエントなど、様々な音楽性を内包したクロス・オーバーな作風で人気を博す北ロンドンの異能、ロレイン・ジェイムス。昨年行われた初の来日ツアーが完売となり、ここ日本でも大きな注目を集める彼女がコード9率いるUK名門〈Hyperdub〉から3枚目となる最新アルバム『Gentle Confrontation』を9月22日にリリースすることを発表、アルバムからの先行解禁曲「2003」がMVと共に現在公開されている。

Loraine James - 2003
https://youtu.be/6gikGLeq6mc

Director & Editor - IVOR Alice
Art Direction & Set Design - Dalini Sagadeva
Lead Assistant (Camera, Lighting, & Set Design) - Charlie Buckley Benjamin
Clothing courtesy of Nicholas Daley

本作は、彼女の過去と現在をつなぎ、彼女自身にとっての新しい章を開く作品だ。この作品は彼女が10代の頃に好きだったドゥンテル(DNTEL)、ルジン(Lusine)、テレフォン・テル・アヴィヴ(Telefon Tel Aviv)のようなマス・ロックやエモーショナルなエレクトロニック・ミュージックを聴きながら制作が行われ、気だるさや楽しさ、様々なフィーリングを感じさせる仕上がりとなっている。シカゴ出身の新鋭シンガーKeiyaA、ニュージャージーのバンドVasudevaでギタリストとして活躍するCorey Mastrangelo、名門〈PAN〉からのリリースで注目を集めたピアニスト/SSWのMarina Herlop、ヴィーガン率いる〈Plz Make It Ruins〉から昨年リリースした作品が注目を集めたロンドンのGeorge Riley他、これまで以上に多くのゲストを起用している。『Gentle Confrontation』は、人間関係(特に家族関係)、理解、そして少しの優しさと気遣いをテーマにしており、水のような柔らかい質感のアンビエンスが漂う中で、ポリリズムやASMRなビートが広げられたエレクトロニック・ポップ・ミュージックの新たな地平を開く、彼女にとっての最高傑作が完成している。マスタリングはテレフォン・テル・アビブのメンバー、ジョシュア・ユースティス(Joshua Eustis)が手がけ、シャバカやキング・クルールを手がけるディリップ・ハリス(Dilip Harris)がミックスを担当した。

待望の最新作『Gentle Confrontation』は9月22日にCD、LP、デジタルと各種フォーマットで発売! CDには、LPに収録されないボーナス・トラック「Scepticism with Joy ft. Mouse on the Keys」が収録される。また、国内流通仕様盤CDには解説が封入される。

label: Hyperdub
artist: Loraine James
title: Gentle Confrontation
release: 2023.05.26

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13437

Tracklist
01. Gentle Confrontation
02. 2003 02:39
03. Let U Go ft. keiyaA
04. Deja Vu ft. RiTchie
05. Prelude of Tired of Me
06. Glitch The System (Glitch Bitch 2)
07. I DM U
08. One Way Ticket To The Midwest (Emo) ft. Corey Mastrangelo
09. Cards With The Grandparents
10. While They Were Singing ft. Marina Herlop
11. Try For Me ft. Eden Samara
12. Tired Of Me
13. Speechless ft. George Riley
14. Disjointed (Feeling Like A Kid Again)
15. I'm Trying To Love Myself
16. Saying Goodbye ft. Contour
17. Scepticism with Joy ft. Mouse on the Keys

Cantaro Ihara - ele-king

 ゴージャスさとそして色気を増した新作『Portray』が注目を集めているソウル・シンガー、イハラカンタロウ。リリース・ライヴの決定です。アルバムのレコーディング・メンバーが多数参加したバンド編成でのパフォーマンスが予定されているとのこと。当日の会場BGMには『Portray』に影響を与えた曲もピックアップされるそうで、「自分が好きな音楽を人と共有したいんです」と語る彼の、リスナーとしての側面も楽しめそうです。7月23日、渋谷7th floorにて開催。詳しくは下記をご確認ください。新作をめぐるインタヴューはこちらから。

70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリング、そして国内外のDJからフックアップされるグルーヴィーなサウンドで注目を集めるイハラカンタロウ最新アルバム『Portray』リリースライヴが決定!

ジャンルやカテゴリにとらわれない膨大な音楽知識や造詣の深さでFM番組やWEBメディアでの海外アーティスト解説やイベント、DJ BARでのミュージックセレクターなどミュージシャンのみならず多方面で活躍するイハラカンタロウの最新アルバム『Portray』リリースライヴがついに決定! Bialystocksの菊池剛(Keyboard)はじめレコーディングメンバーが多数参加したスペシャルなバンド編成でのライヴです! なお当日の会場BGMは、アルバム『Portray』に影響を与えた楽曲などイハラカンタロウ自らによるセレクション!開場から開演まで長めに取っておりますのでライヴ前のお時間もぜひお楽しみください!

interview with James Ellis Ford - ele-king


 ジェームス・フォードのことを優れた裏方として認識しているポップ・ミュージック・リスナーは多いだろう。エレクトロ・デュオのシミアン・モバイル・ディスコの片割れとしてニュー・レイヴの時期に台頭し(ニュー・レイヴを象徴する1枚であるクラクソンズ『Myths of the Near Future』(07)のプロデュースを担当している)、アークティック・モンキーズやフローレンス・アンド・ザ・マシーンといった人気アーティストの作品を手がけることで名プロデューサーとしての知名度を高めてきたフォードは、ある意味70~90年代にブライアン・イーノがポップなフィールドでデヴィッド・ボウイやU2に対して担ってきたことを現在請け負っているようなところがある。シミアン・モバイル・ディスコもまたニュー・レイヴ、ニュー・エレクトロの狂騒を離れて地道に作品をリリースするなかでよりストイックなテクノへと向かったわけで、きわめて職人的な立場を徹底してきたのがジェームス・フォードなのである。最近もデペッシュ・モードの新作やペット・ショップ・ボーイズの次作といった大御所とのコラボレーションが続いているが、そこでも彼は縁の下の力持ちの役割をまっとうするのだろう。

 だから、〈Warp〉からのリリースとなるジェームス・エリス・フォード名義の初ソロ・アルバムが、彼本人のパーソナリティを強く感じさせる内容に仕上がったのは嬉しい驚きだ。シミアン・モバイル・ディスコのパートナーであるジェス・ショウが病気になったことで活動休止を余儀なくされたことから生まれた作品だが、そのことでフォードは自分自身にフォーカスすることとなった。その結果、マルチ・インストゥルメンタリストとしてフルートやバスクラリネットやチェロといった管弦楽器も含めたすべての楽器を演奏して自身の手でミキシングしているのはもちろんのこと、公の場で歌ったことのないという彼が控えめながらはじめて歌声を披露しているのだ。そして、そのことがアルバムの人懐こい空気感を決定づけているところがある。
 音楽的にはオープニングのアンビエント “Tape Loop#7” に始まり、チェンバー・ポップ、サイケ・ロック、プログレ、ファンクなどをゆるくミックスした雑食的でストレンジなポップ作で、とりわけロバート・ワイアットの諸作のようなカンタベリー・ロックからの影響を強く感じさせる。イーノの『Another Green World』(75)を意識することもあったようだ。少なくともシミアン・モバイル・ディスコのようなテクノやエレクトロからは離れており、内省的でメランコリックだが同時にユーモラスで牧歌的なムードは、どこか懐かしいブリティッシュ・ポップを彷彿させる。派手さはないがそこここに遊びと工夫があり、パレスチナ音楽を取り入れるなど発想もオープンで、気取ったところがまるでない。ガチャガチャした音を方々で鳴らしながらゆるいグルーヴを立ち上げるリード・シングル “I Never Wanted Anything” は、フォードの遠慮がちだが落ち着いた歌声も含めて本作のチャーミングさを象徴する一曲だ。

 その “I Never Wanted Anything” では若さゆえの野心を失っていることをむしろ心地良く感じている心境を歌っているように、フォードがここで主題にしているのは年を取ること、もっと言えば「老い」だ。未熟なままで親になることなど、そこには不安や憂鬱もたしかにあるのだが、そのすべてをゆるやかに受容しようという感覚が貫かれていて、このアルバムの柔らかな響きと通じている。以下のインタヴューでフォードが語っているように、10代のときにあまり興味がなかった父親のレコード・コレクションの良さが年を取るとともにわかってきたというのもいい話だ。人気者たちを輝かせるために裏方として地道に働いてきたジェームス・エリス・フォードはいま、ささやかな人生の面白さや豊かさをじわじわと感じさせる愛すべきレコードを作り上げたのだ。

自分の音楽はいつも後回しにしてきたというか。「また今度やればいいか」っていう。でも「今度」って絶対ないんだよね。


『The Hum』を聴きました。ユニークで実験的であると同時に、フレンドリーでもある素敵な作品だと感じました。ただ、今日はプロデューサーとしての側面もお伺いしたいと思っているので、これまでのキャリアについても、まず少し聞かせてください。

 あなたは多くのミュージシャンのプロデュースを務めてきましたが、そのときにご自身のパーソナリティを極力出さないようにしているのでしょうか? それとも、ある程度あなた自身のキャラクターを出すようにしていますか? というのも、基本的にはプロデューサーはアーティストの作品にエゴは出さないと思うのですが、著名なプロデューサーが関わった作品を聴くと、彼らそれぞれの個性やキャラクターも作品に反映されていると思うんです。

ジェームス・エリス・フォード(以下JEF):前者かな。僕はつねに、誰かのヴィジョンを実現する手助けをするのが自分の仕事だと考えているから、必要とされているものを提供しようとしているし、ときにはそれが演奏だったり作曲だったり、ときにはシンプルに音的なことだったり、あるいは制作過程のガイド役的なことだったりする。僕にとって、それは彼らのレコードであり、自分はつねに手助けする立場であって……なんというか、あまり好きではないんだよ……もちろん例外はあって、ティンバランドやネプチューンズは大ファンだし、彼らの場合は自分の音楽をほかのひとのために作っているという意味合いが強いけどね。ただ、それってポップ・ミュージック寄りの慣習かもしれない。でも自分の領域では、プロデューサーのサウンドが立ちすぎているものはあまり好きじゃないかな。もちろん自分が下す判断によって自分っぽいサウンドになるとは思うけどね。でも誰かの音楽に自分のサウンドを押しつけるつもりはないんだ。

プロデューサーの仕事において、あなたがとくに重要だと考えていることは何ですか?

JEF:これまでやってきて学んだおもなことは、柔軟でいることと、平静でいること。制作過程ではいろんな意味で不安要素やストレスが多い場合もあるから。だからそうだね、着実に前に進んでいくことがもっとも重要だと思う。そして様々な状況における様々なひとのニーズを理解して、親切に対応することを心がける。僕がどう貢献するかという点では、ときには制作プロセスの終盤に入っていってミキシング的な作業をする場合もあれば、あるいはリック・ルービン流にドンと構えて自分は手を出さないこともある。そして正直なところ、これまで作った多くのレコードでは何でも屋で、曲を書いて楽器も全部演奏してそれを自分で録音して。なんというか、ピッチをシフトさせ、ギャップを埋めながら、いいレコードを作るために必要なことをするという感じかな。

シミアン・モバイル・ディスコのファースト・アルバム『Attack Decay Sustain Release』のタイトルが象徴的だと思うのですが、そもそもあなたは音楽制作において、音のパラメータの調整やサウンド・プロダクションに手を入れる作業にもっとも快感を覚えるタイプですか?

JEF:もちろん好きだよ。それって音楽の遊びの部分というか、ものすごく大事なものだと思う。音楽を作る過程にはいくつかの段階があるけど、まずは遊んだり、とにかくいじってみるというところから作り始めるわけだよね。そしてプロジェクトの終盤においては、細部にまでこだわるという部分でもある。EQやコンプレッションのパラメータ、技術的な部分はどこまでも深くいけるし、興味は尽きない。ただし細部に寄りすぎたら引くことを忘れずにいないといけない。「この部分にこだわる価値はあるか?」という。全体像を見失わないということも細部と同じく重要で。そのふたつのちょうどいいバランスを見つけるのが難しい場合もあるんだよね。

シミアン・モバイル・ディスコの活動が休止したことでソロを制作することになったそうですが、それ以前から、いつかソロ作品を作りたい気持ちはあったのでしょうか?

JEF:そうだな……僕はアーティストになりたいという気持ちはあまりないけれど、音楽を作りたいという欲望はつねにあるんだよ。それで、いろいろなひとといっしょに制作したり演奏したり曲を書いたりすることで、創作面の満足感を得られている。コラボレーションは大好きだからね。シミアン・モバイル・ディスコもすごく好きだったし。それでいくつかのきっかけがあって──まず、いま自宅のスタジオがあって、ドラムキットとかシンセサイザーとかたくさん機材が置いてあって。自分のスタジオを持つのがはじめてで、これができたことによって、夜だったり息抜きの時間に遊んだりいろいろ試したりできるようになったんだ。それから知っての通り、ジェスが病気になりいっしょにスタジオに入ることができなくなったこともあって。それからパンデミックが起こった。そういうわけで自分ひとりで作ることが増えて、それまでずっとスマホやパソコンにちょっとしたアイデアやスケッチを書き溜めていて、本当にしばらくぶりにそういったスケッチを開いて、自分ひとりでそこから先へと進めてみることにしたんだ。そしたら楽しくなってきて、気づくとアルバムができていた。どうしていままでやらなかったんだろうと思うけど、僕はいつも忙しくて、それはとてもラッキーなことだったんだよね。つねに次のプロジェクトが控えていて、次はこのひとと、次はあのひとと、という感じでオファーがあるから。いろんなひとと音楽を作るのは楽しいしさ。だから自分の音楽はいつも後回しにしてきたというか。「また今度やればいいか」っていう。でも「今度」って絶対ないんだよね。



ロバート・ワイアットやケヴィン・エアーズといった70年代前半のイギリスのプログレッシヴ・ロックなんかも大好きで。もちろんブライアン・イーノのソロ作も好きで、僕が趣味で聴くのはそういう感じのものなんだ。

あなたのように多岐にわたる音楽的知識や技術を持っていると、音楽性をフォーカスするのがかえって難しい側面があると思うのですが、『The Hum』の音楽面においてもっとも重要な課題は何でしたか?

JEF:たしかに僕はこれまで様々なタイプの音楽を作ってきた。今回もアンビエンドのレコードを作ることもできたし、メロディックなインストゥルメンタル・レコードにしてもよかったかもしれないし、もっと曲っぽい感じのレコードにすることもできたかもしれない。実際このアルバムのなかだけでも、すでにかなり多様なんだ。でもとにかく課題としては、作り続けて完成させることだったかな。あと僕にとっての一番のチャレンジは歌うことだったと思う。いや、歌うのはそうでもなかったけど、歌詞を書くことだったかもしれない。そもそも自分はプロデューサーであってシンガーではないしっていう頭があったんだよね。それで曲を作っているときもヴォーカルのメロディを書いて誰かに歌ってもらうかな、なんて考えていた。でも作っていくうちに「なぜ自分で歌わないんだ?」となってきて、頭のなかで自分を押しこめる枠を作っていたことに気がついた。だからその枠にとらわれず、自分自身に挑戦すべく歌ってみることにしたわけなんだ。そうやって新しい領域に自分を追いこんでみるという発想にすごくワクワクしたし、歌詞を書くというのは僕にとってまったく新しいことで、書く過程はとても楽しかった。やっぱり不安だけどね、とくにこれからライヴをやらなくちゃならないわけだし、歌詞について話さなきゃいけなくなるから。でも自分で安全地帯の外に出て、これは自分がやりたかったことなんだと自分に言い聞かせるんだ。

シミアン・モバイル・ディスコとはまったく違うことをやりたいという気持ちはありましたか?

JEF:一番の望みは、正真正銘これが自分だというものを作ることだったと思う。自分の音楽の趣味、これまで聴いてきたものだったり散歩のときに聴くもの、つまりは楽しみとして聴くものはかなり深遠だったり、かなり静かなものが多くて。ロバート・ワイアットやケヴィン・エアーズといった70年代前半のイギリスのプログレッシヴ・ロックなんかも大好きで。もちろんブライアン・イーノのソロ作も好きで、僕が趣味で聴くのはそういう感じのものなんだ。もともと僕の父がそういったサウンドに傾倒していて、それで僕もそれを聴いて育ったようなところがあるんだよ。DNAに組みこまれているというか。僕はこれまで作ってきた音楽はテクノ、ハウス、ポップ、フォーク、ロックと、あらゆるものが混ざっている。だから今回は本当にただ、自分自身の旗を立てて、これが僕の作る音楽だ、ということを示したかったんだ。

楽器の演奏も歌もエンジニアリングもほとんどあなたでコントロールしていますが、『The Hum』において「すべて自分で作る」のがなぜ重要だったのでしょうか?

JEF:ある意味コラボレーションしないという実験だったんだよね。なぜならコラボレーションは毎日のようにやっているから。それはそれですごく恵まれていて、とても楽しいものだけどね。でも、だからコラボレーションしなかったら何が起こるのかを知りたくなったのかもしれない。自分以外の人間が誰も関わらなかった場合に何が出てくるのか。幸い楽器もいろいろあるし、自分で演奏できるしね。それにおそらく15年前には自信がなかったかもしれないけれど、いまだったら前に進んでいけるという自信もあった。それにもともとはただこの小さな空間で実験しようとしていただけで、誰かに聴かせるつもりもなかったんだ。


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コラボレーションしないという実験だったんだよね。なぜならコラボレーションは毎日のようにやっているから。何が起こるのかを知りたくなったのかもしれない。自分以外の人間が誰も関わらなかった場合に何が出てくるのか。

『The Hum』は多楽器による音色の多彩さが魅力です。あれだけ多くの楽器を演奏できるようになるのは大変だと思うのですが、ほかのプレイヤーに頼るのではなく、自分自身で楽器を弾けるようになりたいというモチベーションはどこから来るのでしょうか?

JEF:新しい楽器を演奏するのが大好きなんだ。じつはバスクラリネットをeBayでかなり安く買ったことがきっかけでこのアルバムが始まったんだ。子どもの頃フルートを習っていたから多少は知っていたし。とにかくバスクラリネットの音が大好きだから取りあえず買ってみようと。クラシックのコンサートで素晴らしい演奏ができるわけではないけれど、メロディを奏でることならできるから。すごく刺激になるんだ。このスタジオには日本のシンセもあって、もちろん全部僕が理解できない言葉で書かれていて音階もちょっと違ったりするけれど、そういうちょっと違うものだったり、少し難しかったりするものが大好きなんだ。たぶんモジュラーシンセが好きなのもそれが理由だと思う。そのチャレンジにおいては普段やらないようなことをしたり、通常とは異なる判断をしたり、いつもとは違う場所へと追いこまれたりする。それはアイデアを生み出し、音楽に対する熱意や興奮を呼び覚ますのにいいと思う。パソコンで音楽を作ろうとすることもあるけれど、あまりにも簡単にできてしまったりするから、面白くするためには難しくする必要があるんだよ。

先ほどもお話しにありましたが、『The Hum』はいろいろな音楽的要素があるなかで、ロバート・ワイアットなどのいわゆるカンタベリー・ロックの要素をわたしは強く感じました。音楽家として、カンタベリー・ロックからの影響はもともと強かったのでしょうか?

JEF:そうなんだよ。父がそういったレコードを大量に持っていて……ジェントル・ジャイアント、キャラヴァンといったバンドがひと通りあって、それを聴いて育ったという背景がまずあった。10代の頃はあまり好きじゃなかったけど、年を取るにつれてある意味父親の趣味に回帰するというか。

そのカンタベリー・ロックもそうですが、雑食的な要素からブリティッシュ・ポップの系譜を感じさせるアルバムだとわたしは感じました。このようにくくることには語弊があるかもしれませんが、ポップ・ミュージックにおけるいわゆる「ブリティッシュネス」というか、英国から生まれる音楽の特色について考えることはありますか? そうだとすると、あなたの視点でポップスにおける「ブリティッシュネス」をどのようにとらえていますか?

JEF:僕も「ブリティッシュネス」が好きだよ。たとえばロバート・ワイアットの声は僕にとって非常にブリティッシュで、ほかのどこからも出てきようがないものだと思う。説明が難しいけれど、簡素というか何というか、若干控えめな感じというか、そこが本当に好きだね。それが不思議なほどエモーショナルなものに感じられるというか。過剰に歌いあげず、ドラマチックになりすぎない。僕はアイヴァー・カトラーの大ファンで、まあ彼はスコットランド人だけど、それと少し似ていて、そういうすごく独特な静かさが大好きなんだよね。とにかく僕もイギリス人だし、今作にも間違いなくブリティッシュネスはあると思う。

いっぽうで、“The Yips” でのパレスチナの音楽の要素も面白いですね。パレスチナの音楽のどのようなところに魅力を感じますか?

JEF:ロックダウン直前に旅行でパレスチナへ行ったんだ。もともと非西欧音楽はすごく好きで、日本にも素晴らしいものがたくさんあるし、いわゆる民謡と呼ばれるもの、インドの民謡やアラビア音楽だったり、その多くが西洋の12音階からは少し外れた音階やチューニングなんだよね。そこにものすごく惹かれるんだ。パレスチナに行ったとき、幸運にも現地のミュージシャンたちに会うことができて、オーケストラの演奏を聴きに行ったんだけど、その演奏に本当に胸が熱くなったし信じられないくらい素晴らしかった。だからたぶんそれも自分のなかに残っていたし、それから僕が大好きな〈Habibi Funk〉というレーベル(註:ベルリン拠点のアラブ音楽を発掘するレーベル)があって、そこは60年代、70年代の音楽を扱っていて、あの辺の地域の人びとがたとえばジェイムズ・ブラウンを真似していたり、でも音階が奇妙だったり、荒削りだったりするっていう。その辺のものが大好きなんだよ。あの曲を作りながら僕の頭にあったのはそういう感じのもの。

パソコンで音楽を作ろうとすることもあるけれど、あまりにも簡単にできてしまったりするから、面白くするためには難しくする必要があるんだよ。


『The Hum』の親しみやすさには、サウンドのユーモラスな感覚によるところも大きいように感じます。“Emptiness” のようなややビターな曲でもどこかファニーな感性があるように思うのですが、だとすると、あなたのユーモア感覚はどのようなものから影響を受けたものですか?

JEF:昔から少しユーモアがあるものが好きだったし、ユーモアと音楽には奇妙な関係があると思う。あまりにもシリアスすぎるものは好きじゃないかな。まあバランスが大事だと思う。同じように、あまりに綺麗すぎたりハッピーすぎるっていうのもね。僕にとっては最高の曲ってどれもメランコリックで、そこに悲しさがあり、明るさもあるというもので。そのふたつの間のバランスというのが興味深い部分なんだよ。さっき言ったアイヴァー・カトラーもそうで、彼の楽曲って僕的には本当に面白くて、完全にシュールで笑えて、ああいったユーモアが大好きだね。それから偉大な作詞家の多く、たとえばレナード・コーエンなんかもそうだけど、彼らの歌詞の下には、つねに小さなユーモアの輝きがあるんだ。

『The Hum』というアルバムで、ミュージシャンとしてあなたが達成した最大のことは何でしょうか?

JEF:これを作ったこと、完成させたこと自体が、もうそうかな。自分自身を乗り越えるというか。僕はこれまでプロデューサーとして、たくさんのひとにたくさんのことを要求したり、自分自身をさらけ出すように言ってきた。だから自分の作品を完成させること、ひとつのプロジェクトを終わらせること、全部が達成だよ。とくにひとりの場合は、誰かが知恵を貸してくれるわけでも背中を押してくれるわけでもないから大変なんだ。自分自身の意思の力で、自信を持って、何かを終わらせて世に送り出すこと自体が大きなチャレンジだったね。でも、常日頃自分がほかのひとにそういうことをやれって言ってることに気づけてよかったよ(笑)。だからやっぱり一番誇りに思うのはそこだね、作ったぞっていうさ。

HOUSE definitive 増補改訂版 - ele-king

始めにハウスありき……
全音楽ファンが知っておくべき、
ハウス・ミュージックの名盤900枚以上を紹介!

監修・執筆:西村公輝
編集協力・執筆:猪股恭哉/三田格
執筆:野田努/Nagi/島田嘉孝/DNG/Alex Prat/板谷曜子(mitokon)/Midori Aoyama/Shhhhh/Alixkun/水越真紀/SISI/小林拓音/木津毅

cover photograph by Bill Bernstein
装丁:真壁昂士
A5判/並製/オールカラー/304ページ

contents

改訂版序文 (西村公輝)

CHAPTER 1 Disco 1974–1983
CHAPTER 2 Chicago House 1984–1987
CHAPTER 3 Second Summer Of Love 1988
CHAPTER 4 Deep House 1989–1995
CHAPTER 5 French Touch / Detroit House 1996–2000
CHAPTER 6 Disco Dub / Nu Disco 2001
CHAPTER 7 Translocal 2002–2013
CHAPTER 8 Nu School / Multipolar Of House 2014–2022

INDEX

監修
西村公輝

90年代後半から輸入レコード業界にて働き始める。現在はLighthouse Recordsに所属。DJとしてはDr. NISHIMURAの名前で活動中。悪魔の沼の三分の一。

協力
猪股恭哉

1977年仙台市生まれ青森育ち。90年代中頃よりテクノを聴き始め、99年にディスクユニオンに入社、07年より渋谷クラブミュージックショップで中古買取とバイヤー業務を開始。14年よりハウスのメインバイヤーとして異動。23年現職。

三田格
ライター、編集。監修・編著に『AMBIENT definitive 増補改訂版』『TECHNO definitive 増補改造版』『永遠のフィッシュマンズ』ほか多数。

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Ryuichi Sakamoto - ele-king

 坂本龍一のソロ楽曲を集めたコンピレーション『Travesía』(英語で「journey」の意)が〈Milan Records〉からリリースされている。〈Milan〉といえば、これまで海外で坂本の『async』や『ASYNC - REMODELS』などをリリースしてきたUSのレーベルだ。
 キュレイターは映画監督のアレハンドロ・イニャリトゥ。『レヴェナント: 蘇えりし者』で共同作業をした際に、今回の選曲を依頼されていたという。当初はイニャリトゥ自身の誕生日のためのコレクションになるはずだったが、坂本の逝去を受け彼の回顧録として公開。収録されているのは下記の20曲。フィジカルでも2CD盤(RZCM-77722A)、2LP盤(RZJM-77720A)が5月3日に発売されている。

Travesía
Tracklist:
01. Thousand Knives
02. The Revenant Main Theme (Alva Noto Remodel) *未発表音源
03. Before Long
04. Nuages
05. LIFE, LIFE
06. Ma Mère l’Oye
07. Rose
08. Tokyo Story
09. Break With
10. Blu
11. Asadoya Yunta
12. Rio
13. Reversing
14. Thatness and Thereness
15. Ngo/bitmix
16. +Pantonal
17. Laménto
18. Diabaram
19. Same Dream, Same Destination
20. Composition 0919

Milan公式サイト:
https://www.milanrecords.com/release/travesia/
commmonsmart:
https://commmonsmart.com/collections/compilations

 そしてもうひとつ、最新情報をお知らせしておこう。坂本龍一のマネージメント・チームにより彼の「最後のプレイリスト」が公開されている。自身の葬儀でかけるために生前、坂本本人が選曲していた33曲のコレクションで、バッハやラヴェル、ドビュッシーといった彼のルーツにあたる曲からデイヴィッド・シルヴィアンアルヴァ・ノトのような彼のコラボレイターたちの曲までをピックアップ。最後はなんとローレル・ヘイローで締められている。同時代の音楽への関心を失わなかった坂本らしいプレイリストだ。

NHK yx Koyxen - ele-king

 これまで〈Diagonal〉〈DFA〉〈Pan〉〈L.I.E.S〉〈Mille Plateaux〉〈WordSound〉〈Scam〉といった一癖も二癖もあるレーベルから作品を出しているNHK yx Koyxenこと松永コーヘイが、久しぶりにアルバムを出す。やった。ベルリンの〈Bruk〉から5月26日リリース予定の『Climb Downhill 2』は未発表音源集で、コーヘイのムズムズしたシュールなエレクトロニカ・ダンスの魅力がコンパクトに詰まったショーケースだ。聴こう。
 このアルバムを機に、完全なる新作もリリースされるかもしれない。わからないけど。

NHK yx Koyxen
Climb Downhill 2

Bruk
BRUKLP1
Release Date: May 26th
 

 すごい面子が揃ったものだ。ロンドン発のイヴェント「MODE」が5/25から6/2にかけ東京で開催されることになったのだが、エクスペリメンタルな実力者たちのオールスターといった気配のラインナップとなっている。5/25はイーライ・ケスラーカフカ鼾ジム・オルーク石橋英子山本達久)、パク・ジハ。5/28は伶楽舎。5/30はベアトリス・ディロンルーシー・レイルトンYPY(日野浩志郎)。6/1はメルツバウスティーヴン・オマリー。6/2はFUJI|||||||||||TAと、初来日のカリ・マローン+オマリー+レイルトン。貴重な機会のアーティストも多いので、下記詳細を確認してぜひとも足を運びましょう。

[5月23日追記]
 上記イヴェントにふたつのプログラムが追加されることが決まりました。ひとつは、エイドリアン・コーカー&渡邊琢磨、アキヒラ・サノによるサウンド・インスタレーション(「MODE」の初回プログラム・ディレクターを務めた故・坂本龍一と、デイヴィッド・トゥープによる作品も同時上映されます)。もうひとつは、ポスポス大谷、リキ・ヒダカ、エイドリアン・コーカー&渡邊琢磨ほかが出演する下北沢SPREADでの公演。強力なランナップがさらに堅牢なものとなりました。実験音楽に浸る初夏!

[5/23追加情報]

MODE LISTENING ROOM & POP-UP at DOMICILE TOKYO

Adrian Corker & Takuma Watanabe、Akhira Sanoによるサウンドインスタレーションがドミサイル東京・ギャラリースペースにて発表。

また同会場にて、MODE 初回プログラムディレクターを務めた坂本龍一氏への追悼企画として、Ryuichi Sakamoto & David Toop のパフォーマンス映像(2018)が、NTSとの共同企画により放映される。

詳細:
実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツを紹介するイベントシリーズ『MODE』 のプログラムの一部として、5月29日~6月3日の期間、原宿のコンセプトストア「DOMICILE」(渋谷区神宮前4-28-9)に併設するギャラリースペースにて「MODE LISTENING ROOM」と題し、Adrian Corker & Takuma Watanabeによる新作インスタレーション『The Impossible Balance』、Akhira Sanoによるサウンドインスタレーション『Magnify Cyte』が発表されます。またストアでは、先行して5月26日より、MODE関連アーティストの音源やTシャツなど限定アイテムを集めたPOP-UPが開催されることが決定しました。

さらには、MODEの初回プログラムディレクターを務めた坂本龍一と、David Toopによる当時のパフォーマンス映像『Ryuichi Sakamoto & David Toop (2018)』をロンドン拠点のラジオプラットフォーム「NTS」との共同企画により放映することが決定いたしました。同企画は先日 逝去された坂本龍一の意志を引き継いだ、氏の所属事務所や家族によって立ち上げられた植樹のためのドネーションプラットフォーム「Trees for Sakamoto」への寄付プロジェクトの一環として開催されます。

【開催日程詳細】

MODE LISTENING ROOM
会期:5月29日(月)- 6月3日(土)12:00‒20:00
会場:DOMICILE TOKYO 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-28-9 チケット料金:入場無料

参加アーティスト:Adrian Corker & Takuma Watanabe (エイドリアン・コーカー & 渡邊琢磨/UK,JP)
Akhira Sano(アキヒラ・サノ/JP)(
上映作品:Ryuichi Sakamoto & David Toop (2018)

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実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツを紹介するイベントシリーズ 『MODE』の追加プログラムが、
5月31日に下北沢SPREADにて開催決定。 Posuposu Otani、Riki Hidaka、Takuma Watanabe & Adrian Corkerが出演。

Posuposu Otani/ Riki Hidaka/
Takuma Watanabe & Adrian Corker ‒ The Impossible Balance
feat. Atsuko Hatano (vn), Naoko Kakutani (va), Ayumi Hashimoto (vc), Tatsuhisa Yamamoto (ds), Takuma Watanabe (cond)

スロートシンガーソングライターで口琴演奏家、倍音印象派のPosuposu Otani(ポスポス大 谷)をはじめ、ギタリストのRiki Hidaka(リキ・ヒダカ)、映画音楽を数 多く手掛け、デイヴィッド・シルヴィアン、フェリシア・アトキンソンらなど海外アーティストと の協業でも知られるTakuma Watanabe(渡邊琢磨)と、音楽家であり、レーベルSN Variations、Constructiveを運営するAdrian Corker(エイドリアン・コーカー)の新プロジェ クトThe Impossible Balanceが発表されます。ライブには、波多野敦子(バイオリン)、角谷奈緒子(ヴィオラ)、橋本歩(チェロ)、山本達久(ドラム)、渡邊琢磨(コンダクト)が出演。

【開催日程詳細】
公演日時:5月31日(水)19:00開場/19:30開演 22:00終演
会場:SPREAD 〒155-0031 東京都世田谷区北沢2-12-6 リバーストーンビルB1F
チケット料金:前売3,000円 当日3,500円 U23 前売・当日 2,000円[全自由・スタンディング] ※ZAIKOにて販売中

出演者:
Posuposu Otani(ポスポス大谷/JP)
Riki Hidaka(リキ・ヒダカ/JP)
Takuma Watanabe & Adrian Corker (渡邊琢磨&エイドリアン・コーカー/JP, UK)
波多野敦子(バイオリン)、角谷奈緒子(ヴィオラ)、橋本歩(チェロ)、 山本達久(ドラム)、渡邊琢磨(コンダクト)

33-33 x BLISS present MODE TOKYO 2023
2023年5月25日 - 2023年6月2日

実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツをフィーチャーする
ロンドン拠点のイベントシリーズ「MODE」が東京にて開催。初の来日公演となるカリ・マローンはじめ、スティーブン・オマリー、イーライ・ケスラー、ベアトリス・ディロン、カフカ鼾、伶楽舎、FUJI|||||||||||TAなど、全5公演、11組のラインナップを発表。

ロンドンを拠点とする音楽レーベル兼イベントプロダクションの33-33(サーティースリー・サーティースリー)が贈る、実験音楽、オーディオビジュアル、パフォーミングアーツを紹介するイベントシリーズ『MODE』が復活。
2019年ロンドンでの開催以来となる2023年のエディションが、日本を拠点として実験的なアート、音楽のプロジェクトを展開するキュレトリアル・コレクティブBLISSとの共同企画により、東京都内複数の会場にて開催します。世界のアート、音楽シーンで評価を受けているアーティストたちが集結し、9日間にわたって国際的なアートプログラムを実施します。
今回の東京開催の背景には、主宰の33-33と日本の芸術や音楽との長年にわたるコラボレーションがあります。2018年にロンドンで発表された第一回のMODEでは、日本の作曲家、ピアニスト、電子音楽のパイオニアであり、先日3月28日に惜しまれつつ逝去された坂本龍一氏がプログラムキュレーターを担当しました。敬意と追悼の意を込め、MODEは今回のシリーズを氏に捧げます。

※公演チケットは各プログラム限定数での先着販売となっております、追加販売予定はございませんのでお早めにお買い求めください。


【開催日程詳細】

@The Jewels of Aoyama *Co-presented with Bar Nightingale
公演日時:5月25日(木)18:00開場/19:00開演 22:00終演 
チケット料金:前売6,000円[スタンディング]※ZAIKOにて販売中
出演者:Eli Keszler(イーライ・ケスラー/US)、カフカ鼾(Kafka's Ibiki/US, JP)、Park Jiha(パク・ジハ/KR)
会場:The Jewels of Aoyama 〒107-0062 東京都港区南青山5丁目3-2

一連のイベントシリーズの幕を開けるのは、NY拠点のエクスペリメンタル・パーカッショニストEli Keszler。Jim O’Rourke(ジム・オルーク)、石橋英子、山本達久によるトリオ、カフカ鼾。そして初の来日公演となる、韓国の伝統音楽を主軸とした現代音楽家 Park Jihaが出演するプログラム。また、このプログラムは世界中のアーティストらに支持される会員制の実験音楽バー「Bar Nightinegale」との共同企画で開催される。

@四谷区民ホール ※関連プログラム
公演日時:5月28日(日)15:30開場/16:00開演
チケット料金:前売3,000円・当日3,500円[全席自由]
https://reigakusha.com/home/sponsorship/4403 参照
出演者:伶楽舎(Reigakusha/JP)伶楽舎雅楽コンサートno.40 〜芝祐靖作品演奏会その4〜
会場:四谷区民ホール 〒160-8581 新宿区内藤町87番地

1985年に発足した雅楽グループ伶楽舎による『伶楽舎雅楽コンサートno.40 〜芝 祐靖作品演奏会その4〜』をMODE 関連プログラムとして紹介する。伶楽舎は現行の雅楽古典曲だけでなく、現代作品の演奏にも積極的に取り組み、これまでに湯浅譲二、一柳慧、池辺晋一郎、猿谷紀郎、伊左治直、桑原ゆうなど多くの作曲家に新作を委嘱。日本を代表する現代音楽家、武満徹作曲の雅楽作品『秋庭歌一具』の演奏でも複数の賞を受賞。長らく音楽監督を務めた芝祐靖は雅楽の世界に新風を送り続けた人物で、MODEで紹介される現代音楽表現のルーツの一部を体験できるプログラムとなっている。

@WALL & WALL
公演日時:5月30日(火)19:00開場/19:30開演 22:00終演
チケット料金:前売4,000円[スタンディング] ※ZAIKOにて販売中
出演者:Beatrice Dillon(ベアトリス・ディロン/UK)、Lucy Railton(ルーシー・レイルトン/UK)、YPY(ワイ・ピー・ワイ/JP)
会場:WALL & WALL 〒107-0062 東京都港区南青山3丁目18−19フェスタ表参道ビルB1

実験的電子音楽に焦点を当てたこの日のプログラムは、前作『Workaround' (PAN, 2020)』が、The Wire紙によって’Album of the Year’に選ばれた、ロンドン拠点の作曲家・サウンドアーティストのBeatrice Dillonと電子音楽レーベル「NAKID」主宰し、バンド「goat」の中心人物で作曲家・音楽家の日野浩志郎によるソロプロジェクトYPYが共演。イベントのオープニングを飾るのは、先日オランダのフェスティバルRewireにて世界初公開され反響を呼んだ アーティスト・詩人のパティ・スミスによるプロジェクト『Soundwalk Collective & Patti Smith』や、今回初の来日公演となるKali Maloneの作品にも参加する、イギリス人チェリスト・作曲家であるLucy Railtonの日本初公演。

@Shibuya WWW
公演日時:6月1日(木)19:00開場/19:30開演 22:00終演(予定)
チケット料金:前売4,500円[スタンディング] ※ZAIKOにて販売中
出演者:Merzbow(メルツバウ/JP)、Stephen O’Malley(スティーブン・オマリー/US, FR)
会場:WWW 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町13−17 ライズビルB1F

20年以上にわたり、SUNN O)))、 KTL、 Khanateなど数々のドローン/実験的プロジェクトの構想や実行に携わってきたStephen O'Malleyと、説明不要の世界的ノイズ・レジェンドであるMerzbow a.k.a. 秋田昌美によるダブルヘッドライナーショー。

@淀橋教会
公演日時:6月2日(金)18:00開場/19:00開演 21:00終演 
チケット料金:前売6,000円[全席自由] ※ZAIKOにて販売中
出演者:FUJI|||||||||||TA (フジタ/JP)、Kali Malone(カリ・マローン/US, SE) presents: 『Does Spring Hide Its Joy』 feat. Stephen O’Malley(スティーヴン・オマリー/US, FR)& Lucy Railton(ルーシー・レイルトン/UK)
会場:淀橋教会 〒169-0073 東京都新宿区百人町1-17-8

今シリーズのフィナーレは、新宿区大久保の多国籍な街中に位置する淀橋教会にて開催される。パイプオルガンによる作品で知られる作曲家・サウンドアーティストのKali MaloneがStephen O'Malley、Lucy Railtonとともに、国際的に高評価を得て、Billboard Classical Crossover 4位を獲得した最新作品『Does Spring Hide Its Joy (2023)』を日本初公演にて披露する。ダブルヘッドライナーとして、近年日本を拠点にヨーロッパ、アメリカで高い評価を得ている自作のパイプオルガン奏者でサウンドアーティストFUJI|||||||||||TAが登場。

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About 33-33:
33−33(サーティースリー・サーティースリー)は、ロンドン拠点のレコードレーベル兼イベントプロダクション。年間を通してイベントプログラムを企画制作するだけでなく、33−33レーベルからのレコードのリリースや、アーティストとともに個別のプロジェクトを制作するなどしている。
33−33は、イースト・ロンドンの教会にて2014年以来開催されているイベント『St John Sessions』を機に発足。過去にはガーナ、東京、ベイルート、カイロでイベントを開催している。2018年には音楽、アート、パフォーマンスを紹介するフェスティバル『MODE』を設立。2018年には坂本龍一氏がキュレーションを行い、2019年にはLaurel Halo(ローレル・ヘイロー)がプログラムを構成した。

About BLISS:
BLISS(ブリス)は、2019年に日本を拠点として設立されたキュレトリアル・コレクティブ。アートと音楽の分野において、実験的な展覧会、イベントなど行う。抽象性が高く、実験的な表現を社会に発表、共有し続けることが可能な環境をつくることを目的としている。主なプロジェクトに、Kelsey Lu at Enoura Observatory (2019)、INTERDIFFUSION A Tribute to Yoshi Wada (2021)など。

Works of BLISS:
Kelsey Lu at Enoura Observatory
INTERDIFFUSION A tribute to Yoshi Wada

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SUPPORTED BY
アーツカウンシル東京
グレイトブリテン・ササカワ財団
大和日英基金

PARTNER
EDSTRÖM OFFICE

Debby Friday - ele-king

 音楽におけるジャンルというものは考えてみるとイメージを共有するために必要になるものなのかもしれない。新しい音楽を聞く足がかりとなる情報、あるいは他の誰かに伝えるときに必要になる道具、SNSが発展してそこで興味をかきたてられることも多くなった時代においてその情報はひとつのフックとして重要な働きを果たしているように思える。
 だが最近ではジャンルの枠を超えるアーティストや既存のジャンルではしっくりこないような活動をしているアーティストも多く出てきた。たとえばUKのラッパー、スロウタイの最新作『Ugly』は〈Speedy Wunderground〉のダン・キャリーのプロデュースで、ジョックストラップのテイラー・スカイやイーサン・P・フリン、フォンテインズD.Cが参加するなどサウス・ロンドンのインディ・シーンのツボを突くような陣容で、実際にインディ・ロック・リスナーからも高い評価を得た。この傾向はレーベル側にもあって、大きな注目を集めていたインディ・ロック・バンド、ブラック・カントリー・ニュー・ロードと契約した老舗〈Ninja Tune〉、あるいは〈Warp Records〉に所属していたジョックストラップが素晴らしいクラブ・チューンである “50/50” をひっさげて〈Rough Trade〉に移籍するなど、レーベルの既存のイメージとは離れた印象のアーティストと契約するというのも珍しくなくなった。これはアーティスト側がリスナーとして様々な音楽を聞き、そのアウトプットとして音楽を作るというアクションが反映された結果なのか、シーンというものに定まった服装や音楽的共通項を必ずしも求めない現代の感覚が出たものなのかはわからないが(彼らはみんなアティチュードで結びつく)、いずれにしてもSNS上のプロモーションとしてのわかりやすさが求められる一方で制作側のジャンルの意識は薄れ、その音楽はどんどん形容するが難しいものなっていっているように思える。

 〈Sub Pop〉から1stアルバム『GOOD LUCK』をリリースしたデビー・フライデーはまさにこの流れの中に存在するアーティストだ。「ナイジェリアに生まれ、モントリオール、ヴァンクーヴァー、トロント、カナダのあちこちに移り住んだデビー・フライデーの時空を巡る放浪は、太陽が沈んだときから始まった」と心が躍るようなプレス・リリースの文言があるように彼女の音楽はクラブ・ミュージックがベースにある。クラブで育ち、DJとして活動を始めそうしてすぐに自らの音楽を作ることを志したという彼女はジェイペグマフィアデス・グリップスをリリースするロサンゼルスのレーベル〈Deathbomb Arc〉から2枚のEPを出し、インディ・ロックの名門レーベル〈Sub Pop〉と契約しアルバムをリリースすることになる。

 そうしてリリースされたこのデビュー・アルバムは彼女の特徴であった暗く呪詛的な硬質なビートに加え、これまでの2枚のEPと比べてよりインダストリアル・ロックの要素やポップな側面が強く出ている。アルバムのオープニング・トラックでありタイトル・トラックである “GOOD LUCK” は漆黒のビートの重さを保ったまま、より軽やかに解放されたかのような彼女の声が響く。ヒップホップの要素とインダストリアルの要素が混じりあい、エレクトロニクスの痛みがやがて突き抜けた快感に辿り着くかのごとく変質していく。続く “SO HARD TO TELL” はこれまでのデビー・フライデーとはまったく違う甘いファルセット・ヴォイスが聞こえてくるユーフォリックなトラックだ。その声は甘く、決意を固めたかのように芯があり、挑みかかるようだったいままでの彼女の声とは違う魅力を見せる。孤独を抱えたメランコリックなエレクトロ・インディ・ポップとも呼べそうなこの曲はアルバムの中で異彩を放っているが、しかしこの曲こそがこのアルバムのデビー・フライデーを特別な存在にしているのかもしれない。かつて “BITCHPUNK” を標榜し牙を剥いていた彼女の違う側面、彼女の内に潜んでいたものが少しずつ溶け出して、それがより一層硬質なビートを輝かせている(それは漆黒の闇の中で輝く光がそれぞれをより引き立たせているようなこのアルバムのアートワークにも現れているようにも思える)。
 デビー・フライデーはそんな風にしていくつものジャンルを並列に並べ、異質を本質に変えていく。邪悪なポストパンクのような “WHAT A MAN” で電子音の世界からギター・ロックにアプローチするスケールの大きいロック・スター然とした雰囲気を見せかと思えば、“SAFE” では再び狭くて暗い地下室に潜り硬く小さいビートの中で自問自答を繰り返すといった具合に。

 このデビュー・アルバムにはデビー・フライデーが影響されてきた音楽の影がそこらかしこに潜んでいるのだ。そこにマッシヴ・アタックを感じデス・グリップスの影を見て、違う世界のイヴ・トゥモアの形を思い浮かべる。自分のようなインディ・ロック・リスナーの耳にも馴染みやすいのはこの音楽の中に様々な影を見ているからなのかもしれない。このハイブリッドな音楽はどの方向からも接続可能なアクセス・ポイントを持っていて、ジャンルの境界を意識させることなく越えていくのだ。ジャンルとは受け手が感じ取るもので、そこに隔たりなどなく、ただフックがその音楽の中に存在するだけなのかもしれない。デビー・フライデーのこのアルバムはそんなゆるやかに変わる世界の流れを感じさせる。そのうちにもっと感覚が変わって、ジャンルの枠を越えたなんて誰も言わなくなるかもしれない。

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