「IR」と一致するもの

interview with edbl - ele-king

 現在、もっとも音楽シーンが活気づいている街として注目を集めるサウス・ロンドン。ジャズ、ヒップホップやR&B、ロックやインディ・ポップ、フォークやシンガー・ソングライター系とさまざまな分野で新しい才能が次々と登場してきているのだが、そうした中で2019年頃より話題となっているのが edbl である。edbl とはエド・ブラックウェルによる個人プロジェクトで、もっぱら彼はプロデューサー/トラックメイカー/ギターなどの楽器演奏に徹し、ビート集からシンガーやラッパーたちとのコラボ作品をリリースしている。タイプとしてはネオ・ソウルやR&B、ローファイ・ヒップホップなどをサウンドの基調とし、ギター演奏が中心となるためにシンガー・ソングライター的なアプローチも交えている。同じサウス・ロンドンやロンドン全体で見ると、トム・ミッシュロイル・カーナージェイミー・アイザックあたりの次を担うアーティストと目される存在だ。

 シングル数曲がスポティファイの人気プレイリストにピックアップされるなどして注目を集めた後、2020年にビート集の『edbl ビーツ』第1集、2021年に同作の第2集を出し、一方でシンガーやラッパーたちとのコラボ集の『ボーイズ&ガールズ・ミックステープ』を2020年にリリース。こうしてイギリスのみならず世界中の早耳音楽ファンの注目を集め、これら音源をまとめた日本独自の編集盤として『サウス・ロンドン・サウンズ』を2021年にリリース。そして今回、昨秋に発表した新作の『ブロックウェル・ミックステープ』も日本でリリースされる運びとなった。そんな edbl に音楽をはじめたころまで遡り、どのようにして現在のスタイルを築き、新作を含めて様々な作品を作っていったのか、そしてこれからどこへ向かっていくのかなどを訊いた。

ギターは初心者でも入りやすい楽器だと思うんだ。トランペットやヴァイオリンは、良い音を出すまでに結構時間がかかるからね。ピアノもそうだけど、ギターは初めてのレッスンでコードをいくつか弾けるようになるところがいいと思う。

昨年リリースされた日本独自の編集盤の『サウス・ロンドン・サウンズ』に続き、日本では2枚目のアルバムとなる『ブロックウェル・ミックステープ』をこの度リリースしますが、まだあなたの経歴やプロフィールが広く伝わってはいませんので、改めて音楽をはじめたきっかけなどから伺います。もともとはリヴァプール近郊のチェスターという町に生まれ、7歳でギターを手にしたときからあなたの音楽人生はスタートしたそうですね。どんなきっかけではじめたのですか?

edbl:僕はチェスターで育ったんだけど、生まれたのは実はドイツのハイデルベルクという街なんだ。でもそこには1年くらいしかいなかったから、僕の地元はチェスターということになるね。ギターをはじめたきっかけとしては僕には3人の姉がいて、彼女たちはみんな幼い頃から楽器を弾いていたんだ。だから自分も取り残されないように、楽器を弾ける年齢になったらすぐに何かをはじめたいと思っていた。母親はギターが少し弾けて、姉のうちのひとりもギターを弾いていた。当時の僕はギター・サウンドのアーティストを聴いていてギターがかっこいいと思っていたからギターを選んだ。それがいまに至るというわけだよ。

いまも作曲はギターからはじめることが多いそうですが、ギターという楽器のどこに魅力を感じたのでしょう? また影響を受けたり好きだったギタリストはいますか?

edbl:ギターは初心者でも入りやすい楽器だと思うんだ。僕はギターの教師もやっているんだけど、教師をやっていて特にそう感じる。トランペットやヴァイオリンは、良い音を出すまでに結構時間がかかるからね。ピアノもそうだけど、ギターは初めてのレッスンでコードをいくつか弾けるようになるところがいいと思う。だからすぐに入り込むことができる。そういう点に魅力を感じたね。僕はあまり辛抱強いタイプではないから、ギターですぐに何かを演奏できるようになったときは感激した。すぐにギターが大好きになって、そこからいろいろと積み上げていった。
ギターを学び続け、周りの友人でもギターを弾いてる人がいたから社交的なつながりも生まれ、10歳くらいのときに友人と曲を作ったりしていたよ。遊びで作った曲だから酷いものばかりだったけどね。曲はすごく酷かったけど、作曲するのはすごく楽しかった。そういうギターの様々な魅力があったから僕はギターをずっと続けてきた。僕はいままでに素晴らしいギタリストたちと一緒に仕事をしてきたけれど、僕自身はギタリストにすごくハマっていたというわけではないんだよ。僕は幅広いポップ・ミュージックを聴いて育った。ロックを聴いていた時期も少しはあったけど、このギタリストが特に好きで聴いているとか、ギターのテクニックやバトルにすごく興味があるという感じではなかったんだ。自分が聴いている曲をギターで弾ければそれで良かった。

そうなんですね。では、最初は主にどんな曲を弾いていたのでしょう?

edbl:ギターを習う人なら誰でも最初に習う4~5曲を弾いていたよ。 ザ・モンキーズの “アイム・ア・ビリーヴァー” や、ボブ・ディランの “ノッキング・オン・ヘヴンズ・ドア”、ヴァン・モリソンの “ブラウン・アイド・ガールズ” など、ギターの名曲と言われるような曲だよ。もう少し大きくなってからはビューティフル・サウスというイギリスのバンドを聴いていたから、彼らの曲を弾いていた時期もある。それからアコースティック・サーフ系のジャック・ジョンソンも。当時の僕はそういう音楽がとても好きで、ジャック・ジョンソンの音楽はほとんどがアコースティック・ギターが基盤の曲だったから、曲を聴いて練習さえすれば彼のアルバムとほぼ同じようなサウンドが自分でも出せる。それができるのが楽しかった。

レーベルなどの情報ではティーンのときはブラーとかフォールズとか、主にギター・サウンド系のロック・バンドを聴いていたとあります。友だちとバンドも組んでたそうですが、やはりそうしたロックを演奏していたのですか?

edbl:うーん、ロックではなかったと思う。イギリス以外で人気があったかどうかわからないけど、当時はインディー・ポップというジャンルがイギリスにあって、僕たちのバンドもそういう音楽をやっていたんだ。ギター・サウンドも入っているけれどポップの要素も強くて、アメリカのバンドで近いものだとストロークスだと思うけど、ストロークスよりもっとポップな感じの音楽なんだ。ヴァンパイア・ウィークエンドやザ・シンズもインディー・ポップに入ると思う。アークティック・モンキーズはインディー・ポップではないけれど、僕たちのバンドは彼らの影響を受けていたね。そういう感じの音楽をバンドではやっていた。アップテンポなポップ・ソング。ウォンバッツというリヴァプール出身のインディーズ・バンドがいちばん近いかもしれない。

ロンドン全体に様々なシーンが散らばっていて、特定のエリアがR&Bやソウルに特化しているという感じはないと思う。ロンドン全体の素晴らしいところは、多数のクリエイターやアーティストが集まる坩堝だということなんだ。ライヴ・ハウスとかクラブなどのヴェニューもそう。小さな会場から大きな会場まで全てがロンドンにはある。

そのときはカヴァー曲をやっていたのですか? それともオリジナルの楽曲も作っていたのでしょうか?

edbl:最初はカヴァー曲ばかりやっていたけれど、オリジナルの曲も作っていたよ。作曲は主に僕がやっていたけれど、他のバンド・メンバーと一緒にやることもあった。とても楽しかったよ。誰かと一緒に音楽を作るという経験はあのときが初めてだったかもしれない。そしてでき上がった曲をライヴで披露していた。僕たちのバンドは別に有名でもなんでもなかったけど、バンド・メンバーと一緒に曲を作って、それをライヴで演奏するというのはすごく楽しかったよ。

その後リヴァプール・インスティテュート・フォー・パフォーミング・アーツ(LIPA)に進学して音楽を本格的に専攻するのですが、親友のアディ・スレイマンとの出会いがあり、あなたの音楽人生にも大きな影響を与えることになります。まず彼の影響でR&Bやヒップホップ、ソウル系のサウンドに嗜好が変わったそうですね。その頃は具体的にどんなアーティストを聴いていましたか? また自身の楽曲制作にもそうした影響が表われはじめたのですか?

edbl:もちろんだね! 大学に入って自分とは全く違う音楽の嗜好を持つ人たちと出会ったことは、ものすごく大きな影響になった。影響とか以前にとても楽しかったんだ。様々な種類の音楽を初めて聴くという体験は最高だったよ。その経験が僕自身の楽曲制作を形成していったと思う。大学に入学した当初はインディー・ポップやインディー・ロックを聴いていて、自分もバンドをやってそういう音楽を歌ったりしていた。さっきも話したけどアメリカだとストロークスとか、イギリスにはインディー・バンドがたくさんいて、ザ・ウォンバッツやザ・ピジョン・ディテクティヴズなど。当時はそういう音楽が大好きだった。大学には僕と全く違う背景だけれど、同じように音楽に対する熱意がある人たちばかりがいた。そのときにローリン・ヒルやエリカ・バドゥ、ディアンジェロといったアーティストたちを教えてもらったんだ。それまで僕は彼らのことを聴いたことがなかった。
 ヒップホップも同様で、それまで僕はヒップホップをそんなに聴いてこなかったし、ヒップホップがどういうものであるのかさえもよく知らなかった。でも大学で仲良くなった女友だちがいろいろ教えてくれた。当時はスポティファイ以前の時代だったから、ハード・ドライヴで音楽を保存していたんだ。だから大学ではハード・ドライヴを持ってお互いの寮の部屋を訪ねて音楽を交換していた。そのときにア・トライヴ・コールド・クエスト、ジュラシック・ファイヴなどのヒップホップを教えてもらった。僕はとにかく全てを吸収したよ。すごく楽しい経験だった。その頃からR&Bやヒップホップを好んで聴くようになったね。そして自然にR&Bやヒップホップを作曲したり制作することに喜びを感じるようになっていった。

また学生時代の最後はアディ・スレイマンのバンドにギタリストで参加し、アジア・ツアーもおこなったそうですね。楽曲も彼と一緒に作っていて、その頃の作品はエイミー・ワインハウスの影響が強かったそうですが、あなたにとってアディはどんなパートナーでしたか?

edbl:あの頃は本当に最高な時期だったよ。そもそもアディとの関係は友だちとしてはじまったんだ。大学がはじまって数週間のうちに、いろいろな人たちが集まって一緒にセッションをしていた。LIPA にはギタリストを必要としているシンガーがたくさんいるし、誰かのためにギターを弾きたいというギタリストもたくさんいるからね。大学がはじまったその週くらいにアディを見かけたから、「僕たちのセッションに参加しないか?」と彼を誘ってみたんだ。そこで彼の歌声を聴いた。それは当時もいまも素晴らしい声だ。いちばん近い表現として「男性版のエイミー・ワインハウス」と言えるかもしれないけれど、彼女の声とはやはり全く違うソウルフルでユニークな声をしている。そのときは確か2010年だったと思うけど、彼に「君のためにギターを弾きたい」と言ったのを覚えているよ。彼もそれを快諾してくれた。さっきも話したように、僕と彼は最初は友だちからはじまったんだ。だから一緒に遊びに行ったり、くだらない冗談を言い合ったりしていた。それから音楽を一緒に作るようになった。
 その後大学2年のときに彼と一緒に住むことになった。大学3年のときも一緒に住んでいた。音楽を作るようになったのは一緒に住みはじめてからだったね。一緒に住んでいたからとても自然な形で音楽制作ができた。家で彼が歌いはじめたら僕がそれに合わせてギターを弾くという、そんな感じだった。それがよかったんだと思う。彼の曲で “ロンギング・フォー・ユア・ラヴ” というのがあるんだけど、それは僕が作ったギターのループがガレージバンドという音楽アプリにあったから、それを彼に聴かせたんだ。そしたら彼は「すごくいいね!」と言ってその場でループに合わせて曲を作りはじめた。それが彼にとってヒット曲になったんだ。一緒に住んでいた頃は、そういういくつもの小さなセッションが自然に起こっていた。
 そして僕たちの音楽もお互いに上達していった。学生時代の最後はアディが音楽業界から注目されるようになって、僕たちが卒業する頃にはアディはマネージメント契約やパブリッシング契約、レーベル契約を結んでいて、彼は音楽をフルタイムでできるようになった。そして彼のチームに僕を招いてくれたから僕もフルタイムで音楽ができることになった。

LIPA ではアコースティッキー・ギター・シンガー・ソングライター(Acoutic-y Guitar Singer Song Writer)という自身のプロジェクトをやっていたそうですが、これはどんなものだったのですか?

edbl:大学時代にアディと一緒に音楽制作ができたのは素晴らしいことだったけれど、僕は昔から自分だけの作曲もしてきて、オリジナルの曲を作ることも好きでやっていたんだ。だから大学では別のバンドにも所属していて、そこでも作曲をしていた。最初のころに完成された曲は先ほど話したようなインディー・ポップ調の曲が多くて、フル・バンドで演奏するようなものだった。でも、僕は自分ひとりでギターを弾いてフォークっぽい音楽やフィンガー・ピッキングをするギター音楽を演奏するのも好きだった。だから自分の本名である「エド・ブラック(ブラックウェル)」として音楽を公開しはじめた。それがフォーキーでシンガー・ソングライター寄りの音楽なんだよ。
 その名義でギグを何回かやって、楽曲もスポティファイに載っているけれど、そこまでの人気は出なかった。僕としても売れるために作っていたわけではなくて、楽しいからやっていただけだった。edbl もまさかここまで広まるとは思っていなかったけどね。edbl 名義の音楽とは全く違うけれど、僕はいまでもフォーキーな音楽を作るのが好きだから、去年も曲をひとつ公開したよ。「エド・ブラック」名義で少しプロダクション色が強いけれど、やはりフォーキーな感じの曲。まあ僕が好きでやっている個人プロジェクトみたいなものだね。

なるほど。では「edbl」というプロジェクト名は「エドブラ」と発音するのですね!

edbl:そうだよ!

当時はアディ・スレイマンとのコラボ、自身のプロジェクトのほか、さまざまなシンガー、シンガー・ソングライターとのセッションをおこなって自身の音楽を磨いていったわけですが、たとえばどんな人たちとセッションしていましたか? また、そうした出会いがいまに繋がって、あなたの作るトラックとシンガーとのコラボという現在のスタイルへなっているわけですよね?

edbl:その通りだと思う。でもコラボレーションの多くは大学時代以降のものが多いんだ。大学時代は音楽をプロデュースするということにあまり興味を感じていなかった。僕はライヴ演奏をするギタリストだったからギグをやるのが大好きで、いろいろな人たちと一緒に、もしくはあるバンドのギタリストとして演奏することが多かった。だから一時期は4つか5つのアーティストたちのギタリストをしていたこともある。ギグをたくさんやってすごく忙しい時期だった。いまでもギグは大好きなんだ。コラボレーションに関して言うと、LIPA では作曲の授業があった。他人と一緒に同じ空間で「じゃあ何か作ってみよう」という経験はそのときが初めてだった。全くのゼロからという状態で。そりゃ最初は不安だったけれど、徐々に慣れていったし、同じ大学の知り合いや顔見知りだったからそこまで違和感があったというわけじゃなかった。
 楽曲のプロダクションをはじめたのは、その後の時期に友人とポップ調の曲を作るようになってからだった。その曲をプロデュースする人が必要になって、僕たちはロジックというソフトウェアの基本的な操作を知っていたから、まずデモを作ってそこから曲を作り上げていった。ロジックはいまでも使っているよ。でも、これは大学を卒業してから数年経ってからの話なんだ。

では在学中はセッション・ギタリストとして、大学の仲間や他のアーティストたちとギグをやっていたということですね?

edbl:そうなんだ。アディとも一緒にやっていたし、僕はナイン・テールズというバンドをやっていて、そのギグもやっていた。それから『サウス・ロンドン・サウンズ』にも参加しているジェイ・アレキザンダーという人と一緒にギグもやって、音楽もリリースしていた。それ以外にもシンガーと一緒にギタリストとしてギグをやったり、バーのギグでカヴァー曲を演奏したりもしていた。だからいろいろな人たちと数多くのギグをこなしていたんだよ。

LIPA 卒業後はアディと一緒にロンドンに出てきて、彼のツアーに参加するほか、ソングライター、ビートメイカー、ミュージシャンとしての自身の活動も展開していきます。リヴァプールとロンドンではやはり環境も大きく変わりましたか?

edbl:確かに慣れるまでには時間がかかったね。実はアディと僕は、リヴァプールからロンドンに移る間にノッティンガムに引っ越したんだ。ほんの9ヶ月という間だったけどね。すぐにロンドンに移住するには少し抵抗があったけれど、リヴァプールには大学で3年間もいて遊びまくっていたから(笑)、まずリヴァプールを離れたいという思いもあった。だから静かに音楽の仕事ができる所ということでノッティンガムに移ることにしたんだ。でも実際のところ、最初はそう簡単に行かなかった。先ほど話したように、僕とアディが作曲をしはじめた頃は同じ屋根の下で暮らしていたから、セッションが自然に起きて作曲できていたんだけど、ノッティンガムに移ってからは「今日は曲を作ろう」と決めて作業をしようとしていたから、少し強制的な感じがあったんだ。僕たちはもともと友だち同士だからすぐに気が紛れてしまうし、あまり強制的に作曲することに慣れていなかった。だからノッティンガムにいる時期はそこまでたくさんの曲ができなかった。ノッティンガムはひとつの移行期だった。
 そしてロンドンに移った。ロンドンに移ったことは正しい選択だと思っているし、僕たちはロンドンに移ってよかったと思う。でもロンドンは大都市だし、僕はロンドンに知り合いがそんなに多くいなかったから最初は不安もあった。ロンドンでもアディと一緒に住んで、僕たちは作曲を続けていた。ロンドンに移ってよかったのは、僕が他の人たちとセッションしたり、音楽の仕事をするようになったということだね。ノッティンガムではアディとしかしていなかったから。ロンドンに移ってからは人脈を広げて、色々な作曲家などと一緒に仕事をするようになったんだ。イギリスのプロデューサーや作曲家の多くはロンドンに集まっているから、僕にとっては最適な街だった。

サウス・ロンドンのブリクストンを拠点にしていますが、デヴィッド・ボウイの生まれ故郷だったり、ザ・クラッシュの曲の舞台になったりと、ロックのイメージが強い街です。サウス・ロンドンの音楽の盛り上がりが日本にも伝わる昨今ですが、そのなかでもブリクストンのいまのシーンはどんな感じですか?

edbl:僕個人は特に影響を受けてはいないんだけれど、ブリクストンの歴史でもうひとつ加えるとしたらカリブ地域の影響が多々あるということだね。ブリクストンにはレゲエ音楽やカリブ料理屋がたくさんあって、カリビアンのコミュニティーがある。デヴィッド・ボウイの生まれ故郷でもあるけれど、そういう一面も大きい。サウス・ロンドンは最高だよ。僕はいままでにロンドンの3カ所に住んだけれど、その全てが南の街だからサウス・ロンドンには馴染みがあるんだ。
 ロンドンは都市自体がとても多様な都市だから、シーンについては答えるのは難しいな。たとえばハウス・ミュージックが好きな人がいたら、ロンドンの南にも東にも北にも、その人が楽しめるシーンがあると思う。それはダブステップやポップスや、僕のシーンとされているR&Bやソウルでも同じことが言えるんだ。ロンドン全体に様々なシーンが散らばっていて、僕の経験からすると特定のエリアがR&Bやソウルに特化しているという感じはないと思う。サウス・ロンドンというかロンドン全体の素晴らしいところは、多数のクリエイターやアーティストが集まる坩堝だということなんだ。それからライヴ・ハウスとかクラブなどのヴェニューもそう。小さな会場から大きな会場まで全てがロンドンにはある。全てが混在している都市なんだ。

最初はお互いのことをいろいろと話し合うことにしている。最低は1時間くらい、それ以上のときもある。アーティストにはそれぞれ違った個人の音楽的背景があるから、そういうストーリーに興味があるんだ。互いがどういう人間かというのを知っておくのはいいことだと思う。

あなたのキャリアに戻りますが、ソロ・アーティストとして2019年に “テーブル・フォー・トゥー” でデビューし、その後 “ザ・ウェイ・シングス・ワー” “ビー・フー・ユー・アー” “アイル・ウェィト” など精力的にシングル・リリースをおこないます。特にアイザック・ワディントンと組んだ “ザ・ウェイ・シングス・ワー” がスポティファイの人気プレイリストにいろいろピックアップされたことにより、あなたの人気に火がつきはじめます。ストリーミング時代ならではの露出の仕方かと思いますが、何か意識してアプローチしていったところはあるのでしょうか?

edbl:そうだね、ストリーミングは僕の場合は上手くいったけれど、ブレイクするのに苦戦するときもある。僕は自分の楽曲がいくつかでき上がってきた時点で、一般の人たちに聴いてもらうにはスポティファイかアップル・ミュージックに載せるのが妥当だと思った。フィジカルという形式で音楽を出すのもひとつの案で、僕は日本などでそれができたことを幸運だと思っているけれど、最近のリスナーはストリーミング・サーヴィスを使って音楽を聴いているからね。だからスポティファイに自分の音楽を載せることは当然の決断だった。幸運なことにスポティファイは僕の音楽に対して最初からとても協力的で、当時の僕は無所属のアーティストだったけれど、僕の音楽をスポティファイのプレイリストに加えてくれた。スポティファイの協力があったからこそ、僕のいまのキャリアを築くことができたと思う。

だいたい自宅のリヴィングで楽曲を作っているそうですが、まずギターでコードを弾き、それをロジックに落とし込んでビートを作っていくことが多いそうですね。それから、シンガーなどのゲストとはときに対面して、ときにはデータのやり取りでメロディや歌詞をつけ、それをまとめて楽曲を完成させるというスタイルですか?

edbl:いい質問だね。そうだよ。いまインタヴュー中の僕がいるのがちょうどリヴィング・ルームで、ここで作曲をしているんだ。作曲の流れもいま君が言った感じで合っているよ。具体的な作業はアーティストごとに違ってくるけれどね。大抵の場合、僕は3つの異なったスタート地点から作業をはじめるようにしている。まず、僕は一緒にやるアーティストのオリジナル楽曲を聴くんだ。デモやすでにリリースされているものなどをね。そしてギターかピアノを使ってコードのループを作ってみる。3つくらいのヴァージョンを作っておくことが多いかな。そしてアーティストがミーティングなどに来たときに、その3つのアイデアを聴かせると、そのうちのどれかひとつか、場合によってそれ以上を気に入ってくれる。ひとつもないときは、じゃあ他のことをやってみようということになるけど(笑)。たいていの場合はアイデアのうちのひとつは気に入ってくれて、それを基盤にして曲を作っていき、僕はビートを作っていく。
 でもメロディや歌詞に関しては、アーティストによって取り組み方が違うから僕も毎回アーティストに合わせて作業を進める。アーティストによってはひとりで座って、静かな環境でハミングしながら、スケッチを1時間くらい続けてから「よし、できた!」と言ってヴァースやコーラスを歌ってくれる人もいる。他のアーティストだと、僕に聴こえるように歌って、たくさんのヴォイス・メモを録音して、聴いている僕が「それいいね!」と言ったりする。そして僕が「この部分をこうやって、ああいうふうにやってみるのはどうかな?」と提案したりもする。こちらのほうがよりコラボレーション色が強い作業と言えるかもしれない。歌詞に関しても、作詞は僕の得意分野ではないから、アーティストに全てを任せて、僕はプロデュース面を強化する場合もある。
 でもアーティストによっては作詞がそこまで得意ではない人もいるから、そういう場合はふたりでテーブルに座ってお茶を飲みながら、一緒に歌詞を書き上げたりする。僕の関与度はアーティストによって違うんだけど、僕はアーティストであると同時にプロデューサーとしての視点が強いから、いつの場合もできる限りアーティストに融通の利く対応をしたいと思っている。アーティストはひとりひとり全く違う人たちだからね。

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歌うことはできるんだ。でも edbl プロジェクトだと、ビートや音楽を作りはじめるとすぐにR&B/ソウル界隈の人たちのことが連想されて、「これは自分が歌うよりもあの人が歌った方が絶対いい曲に仕上がる」と思ってしまうんだ。

その後、2020年にビート集の『edbl ビーツ』第1集、2021年に同作の第2集を出し、一方でシンガーやラッパーたちとのコラボ集の『ボーイズ&ガールズ・ミックステープ』を2020年にリリースし、イギリスのみならず世界中の早耳音楽ファンの注目を集めます。これら音源をまとめて日本から『サウス・ロンドン・サウンズ』がリリースされ、昨秋にリリースした新作の『ブロックウェル・ミックステープ』もリリースされる運びとなりました。ロンドンに出てきてからすっかり世界的に注目される存在となったわけですが、これまでの自身の歩みを振り返ってどう思いますか?

edbl:とても驚いていると同時に感激しているよ。僕は大学を2013年に卒業したから、音楽業界に入って様々な活動を続けて10年近くになるんだ。アディのバンドや他のアーティストたちと演奏したり、作曲やプロダクションもたくさんしたし、バーでのギグやウェディング・バンドなど数多くの活動をしてきた。それは全て僕の旅路の一部であり、最高の経験だった。先ほどの質問にもあったように、僕は2019年の夏に4つの曲をリリースしたんだけど、当時は何の期待もしていなかった。フォーク・シンガー/ソングライター名義のエド・ブラックみたいな反応で、気に入ってくれる人はいるだろうけれど、何万人ものリスナーがつくとは思っていなかった。でも最初に edbl に対して比較的たくさんの人が好意的な反応を示してくれたときは、本当に勇気づけられたよ。最初はほんのわずかな人数だったけれど、ある程度のファンベースがあるとわかった時点で『edblビーツ』第1集のような作品を作ることに対して価値を見出せる、僕の音楽を聴いてくれる人がいるとわかっているほうが作曲の励みになるし、背中を押されている感じになる。まあ、僕の音楽を聴く人が誰もいなくても僕は音楽を作り続けると思うけれど……。
 しかも僕の成長はとても自然で段階的なものだったからよかった。たった1曲をリリースして一夜で有名人になる、というパターンではなかったからね。それはそれで楽しいと思うけれど(笑)、edbl プロジェクトの良いところは2019年以来、順調に上昇を続けてきている点だね。今後は edbl プロジェクト以外の仕事をやらなくて済むだろう。去年も数多くの edbl プロジェクト以外の仕事を止めることができて、edbl プロジェクトに集中することができたからね。それはとても嬉しいことなんだ。僕の夢は edbl プロジェクトだけをやっていくことだから、いまはまさに夢を実現しているところだよ。とても最高な流れで、自分はとても幸運だと思っている。

日本では同じロンドンのトム・ミッシュ、ロイル・カーナー、ジェイミー・アイザック、ジョーダン・ラカイなどに比較されることもありますが、あなたの場合は彼らのように自ら歌ったりせず、あくまでギターを中心としたマルチ・ミュージシャン/トラックメイカーに徹して、歌はゲスト・シンガーに任せるといった印象があります。そのあたり、何か自身のサウンドやスタイルに対するこだわりはありますか? また、自分で歌をやらないのには何か理由があるのでしょうか?

edbl:歌に関して僕は少し変わっているのか、僕はいままでバンドをやって歌っていたし、フォーク・サウンドのエド・ブラック名義では歌っているから、歌うことはできるんだ。でも edbl プロジェクトだと、ビートや音楽を作りはじめるとすぐにR&B/ソウル界隈の人たちのことが連想されて、「これは自分が歌うよりもあの人が歌った方が絶対いい曲に仕上がる」と思ってしまうんだ。だから edbl プロジェクトでは、当初から自分の歌よりも他の人の声を使っていた。僕もときにはビートに合わせて歌って、メロディを考えたりセッション中に何かを思いついて、それを曲に使ったりするんだけど、大抵の場合メロディを作曲したり歌詞を書いたりするということは、edbl プロジェクトとは全く違った次元のことだと僕は捉えているんだ。僕は自然に素敵なR&Bのメロディを思いつくことができないからね。少なくともいまの段階では。でも今後はそういう要素も edbl プロジェクトに加えていきたいと思っているんだ。
 それから僕の声は、シンガー・ソングライター寄りの声だと個人的に思っているところがある。それをもっと edbl プロジェクトのサウンドに合うような声になるようにしている最中なんだ。でも僕は歌うのが嫌いってわけじゃないんだよ。『ブロックウェル・ミックステープ』の “ネヴァー・メット” というニック・ブリュワーというラッパーが参加している曲は、僕がコーラスを歌っているんだ。それはクレジットに掲載していないかもしれない。大ごとにしたくなかったからね。最初は僕が歌ったものを録音して、他の人にこのパートを歌ってもらおうと思っていたんだけど、音源をミックスしたら自分の声でも悪くなかったから、そのまま自分の声を使うことにした。たくさんのゲストを起用するのも良いけれど、自分でできることが増えればそれに越したことはないからね。
 それから磯貝一樹という日本人のギタリストと作品をリリースする予定があって、その作品では僕が歌っているよ。作品の大部分がインストゥルメンタルなんだけど、それに合わせたメロディがいくつか思い浮かんだから、僕がヴォーカルを加えることにした。とても楽しい体験だったよ。だから自分が歌うということに関しては、まだ練習中で徐々にビルドアップしていきたいと思っている。いつか僕だけのヴォーカルが使われている曲を発表することができるかもしれない。そういう曲を作りたいとは思うけれど、サウンド的にマッチしているものでなくてはならないと思うんだ。

僕がずっと尊敬しているプロデューサーのひとりにスウィンドルがいる。彼もアーティスト兼プロデューサーとして活動しているけど、全てをライヴで演奏する人で、キャリアも結構長いね。彼の音楽はとてもソウルフルで素晴らしいサウンドなんだ。

それは楽しみですね! 『サウス・ロンドン・サウンズ』でもそうでしたが、『ブロックウェル・ミックステープ』もほぼ1曲ごとにシンガーやラッパーが入れ替わり、そうしたいろいろなコラボを楽しみながらやっている印象があります。こうしたシンガーたちとは日頃のセッション活動から交流を深め、それが発展して作品に参加してもらったり、コラボしているのですか?

edbl:コラボに至るには様々な方法があるよ。去年あたりからは面識のないアーティストとの連絡の取り合いがベースとなって、コラボに至ったケースが増えたね。その流れとしては、まずスポティファイなどで気に入ったアーティストを見つけたら、DMやメールなどで連絡を取りあう。その逆もあって、僕の音楽を聴いたアーティストが一緒に仕事をしたいと僕に連絡をくれるときもある。この時点では何の面識もない初対面同士だから、最初はお互いのことをいろいろと話し合うことにしている。最低は1時間くらい、それ以上のときもある。アーティストにはそれぞれ違った個人の音楽的背景があるから、そういうストーリーに興味があるんだ。それに、音楽を作る作業はときにはパーソナルなことも関わってくるし、心の痛みを伴うこともある。だからそのためにも、お互いがどういう人間かというのを知っておくのはいいことだと思うんだ。そういう意味での「セッション」、つまりメールやスポティファイやインスタグラムでのやり取りから関係性が生まれるときもある。
 でも僕がプロデューサー活動をはじめたばかりの頃は、全く別の方法でコラボレーションをしていたんだよ。自分が作ったビートがあったら、自分の知り合いのなかからそのビートに合う人で、僕のプロジェクトに参加してくれそうな人を考える。いまでは幸運なことに、僕にはある程度の土台ができているから、コラボレーションしてくれる人の幅も可能性も増えた。数字が全てというわけではないけれど、アーティストによっては僕のフォロワー数やリスナー数を見て、「この人はこういう活動をしてきて、成功しているな」と一目で分かりやすい方が、仕事をしたいと思う人もいるだろう。でも駆け出しの頃の僕はそんな実績もなかったし、フォロワーもいなかったから、知り合いのなかで誰がこのトラックに参加してくれるだろうということを考えていた。
 最初にリリースした4つのシングルもそういう流れで作られたんだ。“シンメトリー” という曲にフィーチャーされているティリー・ヴァレンタインは、僕が edbl プロジェクト以前に作曲やプロダクションのデュオをやっていたときに知り合ったんだ。だから edbl プロジェクトの数年前から一緒に作曲をしたことがあった。そして edbl プロジェクトをはじめたときに、この音楽のスタイルにはティリーがぴったりだと思った。そうやって彼女とコラボレーションすることになった。
 “ザ・ウェイ・シングス・ワー” で歌っているアイザック・ワディントンに関しては、実は当初はジェームス・ヴィッカリーというアーティストにこの曲を歌ってもらっていたんだ。イギリスの素晴らしいR&Bのアーティストだよ。でも僕がこの曲をリリースしたいと思った時期に彼はアメリカのマネージメント会社と契約を結んでいたから、契約上の都合で彼の音源はリリースできなくなってしまっていた。そこでまた振り出しに戻ってしまったんだけど、いろいろなタイミングが重なって結果的にとても良いものが生まれた。ちょうどその頃の僕はアディとツアーをしていて、マチルダ・ホーマーというアーティストがアディのサポート・アクトだった。そしてアイザックはマチルダのバンドでピアノを弾いていた。ふたりは恋人同士でもあったと思うけど、僕たちはみんなで一緒にツアーをしていて、僕はアイザックの声をすごく気に入っていた。そこでアイザックに、「僕が作ったビートがあるんだけど、この曲で歌ってくれないか?」と頼んだら彼もビートを気に入ってくれて曲で歌ってくれた。そんな流れだった。
 それから、“ビー・フー・ユー・アー” のジェイ・アレクザンダーは、先ほども話したけれど大学の友だちで、長いこと一緒に作曲をしていた。だから彼とのコラボレーションはとても自然な流れだった。そして4つ目のシングルでコフィ・ストーンが歌っている “アイル・ウェイト” は、アイザックのときと似たような流れで、コフィはアディのバーミンガム公演のサポート・アクトだったから、僕はコフィと知り合いになり、自分で作ったビートがあるからそれに参加してくれないかと彼に頼んだんだ。
 こんな具合に最初の頃はとても自然な流れでコラボレーションが生まれていた。僕自身も音楽活動を長く続けていたおかげで、アディとツアーする状況に恵まれ、その場にいた様々なアーティストたちに声をかけて曲に参加してもらうように頼むことができた。先にある程度の関係性が築けていたほうが、断然一緒に仕事をしやすいと思う。全く知らない他人から連絡を受けていたら、アイザックもコフィも「この人は誰なんだろう?」って思うかもしれないけれど、先に友人としての関係性ができていれば、彼らに「暇なときに家に来て、何か一緒に作ってみないか?」と気軽に誘うことができる。だから僕は当初からとても才能ある人たちと自然にコラボレーションするという機会に恵まれていたと思う。

『ブロックウェル・ミックステープ』ではヌビアン・ツイストのチェリース・アダムス・バーネットも参加していますが、他はまだあまり日本では知られていないシンガーが多い印象です。あなたから見て特にオススメのアーティスト、注目のアーティストがいたら教えてください。

edbl:このプロジェクトの魅力のひとつは、様々なアーティストとコラボレーションできることなんだ。『ブロックウェル・ミックステープ』でもある程度名の知れたアーティストから、ロージー・Pのようなまだ1曲しか曲をリリースしたことのない新人まで、幅広いアーティストたちに参加してもらっている。ロージー・Pはまだすごく若くて、とても才能がある。彼女は素晴らしいよ。僕はそういうアーティストたちに、このプロジェクトという基盤を提供してあげられることを嬉しく思っている。そうするとこのプロジェクトが彼らの旅路の一部になっていく。
 オススメのアーティストに関して言うと、edbl の楽曲に参加してくれたアーティストは全員聴いてもらいたいと思う。僕が彼らと一緒に仕事をしたのは、彼らが素晴らしいアーティストだと思ったからだし、彼らのオリジナル作品もとても素晴らしいからね。それに歌のスタイルも多様だ。ラップする人もいるし、オルタナ・インディーっぽい人もいるし、ジャズを歌う人もいるし、ソウルのヴォーカリストもいる。僕がいままで一緒に仕事をしてきたアーティストたちで、特に気に入っているのはチェリース、それから “シンプル・ライフ” で歌っているエラ・マクマーレイ。彼女も新人で、“テイク・イット・スロウ” というとても美しい曲をリリースしているからぜひ聴いてみて欲しいね。それはすごくオススメ。とにかく、edbl の楽曲に参加しているアーティストはみんなチェックしてもらいたいね。

ありがとうございます。では、あなたのミックステープにはいないアーティストで最近注目のアーティストがいたら教えてください。

edbl:もちろん! 最近の注目というか、僕がずっと尊敬しているプロデューサーのひとりにスウィンドルがいる。彼もアーティスト兼プロデューサーとして活動しているけど、全てをライヴで演奏する人で、キャリアも結構長いね。彼の音楽はとてもソウルフルで素晴らしいサウンドなんだ。彼はロイル・カーナーやジョイ・クルックスといった、僕も大好きなアーティストたちともコラボレーションをしてたりする。彼も去年とても素晴らしいアルバムを出したね。

『ブロックウェル・ミックステープ』の楽曲は、いままでの流れからのネオ・ソウルやローファイ・ヒップホップ調のものがある一方で、“ネヴァー・メット” や “レモネード” のようなディスコとジャズ・ファンクがミックスしたスタイルが出てきているのも印象的です。このあたりはアンダーソン・パークキートラナダ、トム・ミッシュなどにも通じる流れですが、新しいスタイルへの挑戦と捉えてもいいですか?

edbl:その点に気づいてくれて嬉しいよ。僕が音楽を作ると、自然にローファイ・ヒップホップ調のBPMが90~100くらいのものができるんだ。そこが自分の心地よい領域というか得意分野なんだと思う。でもときにはハウスやディスコに近いものを作るときもある。そういうスタイルも大好きだからね。でも自分の得意分野から少し外れたスタイルに挑戦して自分を追い込むのもいいことだと思うんだ。そういう楽曲を作るのは楽しかった。そこで今回の “ネヴァー・メット” や “レモネード” のような曲ができたときに、マネージャーにそれを送ってこの edbl プロジェクトに合っているか尋ねてみたんだ。マネージャーは新しいスタイルの曲はテンポが速かったり、コードの感じが少々違うかもしれないけれど、edbl らしいサウンドの要素は十分入っているから、プロジェクトとの一貫性はあると言ってくれた。これらの曲ができ上がったエピソードも面白いんだよ。
 “レモネード” は僕がフォローしている、素晴らしいプロデューサー/マルチ演奏者でカウントという人がいるんだけど、その人がビート・チャレンジという企画をしていて、彼の作ったドラム・ループを無料でダウンロードして好きに使えるように提供したんだ。僕はそれをダウンロードして “レモネード” のトラックを作った。そして以前も一緒に仕事をしたキャリー・バクスターにそのトラックを聴かせたら、ヴォーカルで参加したいと言ってくれたので、彼女は僕の家に来て “レモネード” の歌詞を書き上げたんだ。
 そして、ニック・ブリュワーが参加してくれた “ネヴァー・メット” のときはまた違ったアプローチで、僕とニックは音楽的な背景が全く異なっていた。むしろ共通点がほとんどなかったくらいだった。だから話し合いの時間を長くとって、お互いが納得する妥協点を探ろうとした。すると僕たちはマック・ミラーが大好きだということがわかり、マック・ミラーにはアンダーソン・パークと一緒にやっている曲で “ダング” というのがあって、僕はその曲がすごく好きだったからそれをニックに聴かせたんだ。ニックもその曲を気に入ってくれたから、その曲が “ネヴァー・メット” の基盤になったんだよ。この2曲は自分の得意分野より少し外れたものだったけれど、普段とは違うスタイルに挑戦するのは楽しかったし、そういう挑戦を今後も続けていきたいと思っている。

自分の得意分野から少し外れたスタイルに挑戦して自分を追い込むのもいいことだと思うんだ。

“アイ・エイント・アフレイド・ノー・モア” “B.D.E.” “ブレス・サムシング・ニュー” のようなボサノヴァを取り入れた曲もあなたの魅力のひとつです。“ブレス・サムシング・ニュー” はロージー・Pの歌声が少しトレイシー・ソーンを彷彿とさせるところもあり、エヴリシング・バット・ザ・ガールのようなネオ・アコを想起させました。ギター・サウンドを特徴とするあなたならではですが、特にボサノヴァやブラジル音楽の影響を意識したところはありますか?

edbl:影響はあると思うけれど、それはおそらく無意識的なものだと思う。僕はトレイシー・ソーンもエヴリシング・バット・ザ・ガールも知らないから、いまメモしておいたよ。このインタヴューの後にチェックしてみるね。僕はアコースティック・ギターが昔から大好きで、子どもの頃からアコースティック・ギターを学んでいて、クラシック・ギターの練習もしていたから楽譜を読むこともできる。エレクトリック・ギターをはじめたときは、クラシック・ギターが嫌いになったことも一時期あったけど、親にやめないように説得させられて続けていた。でも続けて本当に良かったと思っている。右手と左手のテクニックがとても流暢になるからね。そのおかげで僕はフィンガー・ピッキングやリズム基調のギター演奏が得意になったんだと思う。
 それからアディと一緒に活動していたとき、彼はエイミー・ワインハウスにすごくハマっていて、AOL Sessions という動画(https://www.youtube.com/watch?v=OTpcLir9pQo)を見せてくれたんだ。エイミーはまだとても若くて、バンドはついているんだけどアコースティックな演奏で、ナイロン・ストリングのギターがメインになっている。僕もナイロン・ストリングのギターは昔から持っていて、いまでも使うことがあるよ。エイミーのギタリストを務めているフェミという人は素晴らしいギタリストで、非常にリズミックでもある。僕はその影響を受けて、自分自身もリズミックなギタリストであると自覚している。僕はギター・ソロやリード・ギターなどはあまり得意ではないというか、できることはできるけれど、自分の強みだとは思っていない。昔からリズミックなギターの演奏が好きで、ギターをドラムのように叩いたりするときもあるくらいなんだ。そういう影響からボサノヴァ調のリズムや楽曲が生まれたんだと思う。意識的にブラジル音楽を聴いてきたわけではないんだけど、ブラジル音楽などのリズムは昔から大好きだった。

ではネオ・アコやフォーク系のアーティストからの影響はいかがでしょうか?

edbl:edbl のサウンドにはあまり影響していないと思うけど、影響は確かに受けていると思う。僕が大好きなフォーク・ギターのアーティストはベン・ハワード。それからボンベイ・バイシクル・クラブというバンドも大好き。インディー・ロックのバンドなんだけど、彼らの2枚目のアルバムはアコースティックで見事だった。それからダン・クロールという LIPA の先輩で素晴らしいシンガー・ソングライターや、マリカ・ハックマンも好き。マイケル・キワヌカのソウルフルなフィンガー・ピッキングも大好きだし、ボン・イヴェールのようなオルタナティヴなフォークのサウンドにも大きな影響を受けている。いまでもそういう音楽は大好きだよ。edbl プロジェクトに影響を与えているとしたら、おそらく無意識的なところから来ていると思うけれど、多様な音楽的背景があるのは大切なことだと思うからね。

“B.D.E” や “ブレス・サムシング・ニュー” ではホーンとの見事なアンサンブルも披露しています。シンガーだけではなく、こうしたホーン・プレイヤーがあなたのサウンドに彩りをもたらしているわけですが、彼らのようなミュージシャンとも日頃からいろいろセッションしているわけですか?

edbl:そうなんだ、僕はトランペットの音が大好きでね、理由はわからないけれどジャズの影響からかもしれない。それにアディも昔から自分の音楽にホーンを取り入れていて、僕たちがフル・バンドとギグをやりはじめた頃からずっとトランペット演奏者を入れていた。僕は以前にもホーン・プレイヤーとセッションをしたことはあったけれど、ツアーしたのはあれが初めてだった。音色がとても素敵で、シンプルな表現をしているときでも、その場の雰囲気を盛り上げてくれる。トランペットやサックスを吹く姿も様になっているし、音も最高だ。
 アディのツアーに同行していたのはマーク・ペリーという演奏者だった。そして僕が『edbl ビーツ』第1集の制作をはじめたとき、僕はこの作品にミュージシャンに参加してもらいたいと考えていた。幸運なことに僕はアディのツアー・バンドの素晴らしい演奏者たちを知っていたから、マークに声をかけて参加してもらった。でも実はマークにはかなり過酷な労働をさせてしまったんだよ。1日で7曲か8曲分の演奏をしてもらったからね。トランペットという楽器は実際にあまり長い間演奏することができないらしい。長時間演奏すると口が痛くなってくるそうなんだ。だから彼の貢献にはとても感謝しているよ。彼にはあの日かなり無理をさせてしまったけれど、結果としてとてもいいものができた。
 それからジェイミー・パーカーというピアニストともよく一緒にセッションをしているよ。彼も最近オリジナルの作品を作るようになって、僕も一緒に作ったりしているんだ。それも楽しみなプロジェクトだ。だから僕は様々なミュージシャンたちと日頃からセッションしているよ。トランペットのマークとは edbl プロジェクトを開始した当初から一緒に仕事をしてきて、いまでもその関係は続いているんだ。

いまはコロナもあったりしますが、普段はライヴ活動もおこなっているのでしょうか? アルバムではゲスト・シンガーも多いので、メンバー集めも大変そうですが……

edbl:2020年の初めの頃に「今年は edbl のライヴができたらいいな」と思っていたんだけど、パンデミックが起こってしまったから実現できなくなってしまった。でもパンデミックは edbl プロジェクトにとっては良いことだったと振り返ってみれば思うんだ。その当時、僕はまだたくさんのギグやバーでのライヴをやっていたんだけど、その全てがパンデミックの影響で中止になった。それは残念なことで、僕は手持ち無沙汰になってしまったけれど、同時に edbl プロジェクトやプロダクション作業に集中する時間ができたということだった。僕のスケジュールに変更がなかったら、これほどまでの時間はなかったからね。ある意味で不幸中の幸いだったのかもしれない。パンデミックがあったから僕は毎日自宅にこもり、パソコンでビートを作り続けていた。そして徐々に技術的にも上達していった。
 でもライヴ活動はつねに頭の片隅にあるよ。自分が音楽に夢中になって、音楽で生計を立てていきたいと思ったのもライヴ音楽からの影響だからね。だから edbl のライヴをやりたいとは思っていたし、どうやって再現するのかも考えていた。
 そして去年はブッキング・エージェントと契約を結び、来年の3月にイギリスでヘッドライナーとしてのライヴをおこなうことが決定したんだ。ものすごく楽しみだよ! でも同時に、これが edbl としての初ライヴだから不安もあるけれどね。アーティストは最初にライヴを重ねて知名度を上げて、曲のレパートリーを増やしていくパターンが多い。アディと僕がライヴ活動をはじめた頃は5曲くらいしか持ち歌がなかった。ライヴで演奏する曲を増やすためだけにアディが作曲していた時期もあったんだよ。ライヴの日までに書いている途中の曲を完成しなければいけないというときもあった。でも僕のいまの状況はそれとは真逆で、僕はすでに90曲以上の楽曲があるけれど、3月のライヴが初のライヴとなる。それはそれで自分が最も得意な曲を選んで演奏できるからいいんだけど、ヘッドライナーですでにチケットが完売しているライヴが、自分にとって初めてのライヴというのは緊張するよ。最高な体験になるのは間違いないと思うけどね。
 ライヴのセッティングに関しては、なるべく多くのゲスト・アーティストたちに参加してもらって、曲ごとにステージに上がってもらって、僕と共演する形にしたいと思っている。ライヴ・バンドがついているから、僕はギターに専念して演奏できるし、アーティストもライヴ・バンドと共演できる。いろいろなゲストたちに自分の歌う曲の番になったらステージに上がってもらって、次の曲はまた別のゲストにステージに上がってきてもらうという感じにしたいんだ。ツアーをするときはヴォーカリストひとりに同行してもらうことになると思う。大勢のゲストをツアーに同行させたい気はもちろんあるけれど、それは何かと大変になってしまうからね。

では最後に今後の活動予定や、何か新しいプランがあればお願いします。

edbl:僕はこれからもいろいろなアーティストたちとコラボレーションをしていくから、今後はさらにビッグなアーティストたちと一緒に仕事ができたらいいと思う。ロイル・カーナーやジョイ・クルックスなどは僕が聴いてきたアーティストで、いつかぜひ仕事をしたいと思っている人たちだから、彼らのようなビッグなアーティストたちとも仕事をしたいし、より幅広い分野の人たちと仕事をしていきたいと思っている。それから先ほども話したけれど、日本人ギタリストの磯貝一樹とのコラボレーション作品をリリースする予定で、それは日本でもリリースされると思うよ。とても楽しみだ。
 また今年は比較的短い作品をリリースしようと考えているんだ。ビート集やミックステープを作るのも楽しいんだけど、かなりの作業量で、ビート集は19曲ずつ収録されているからミックスの作業が結構大変なんだよ。だから今年はもっと短い、EPのような作品をリリースしていこうと思っている。EPにつきひとりのアーティストとコラボレーションをして、4、5曲を収録するような感じで、そういうのをいくつかやろうと思っている。楽しみだよ。あとはライヴ活動だね。最初のライヴは3月にあって、6月にはブロックウェル・パークという公園のフェスティヴァルに出演するよ。この近所にある公園なんだ。だから今回のミックステープは『ブロックウェル・ミックステープ』というのさ。今年はそれ以外にもいくつかライヴができたらいいと思ってるよ。

誰だって傷ついている
そんな個人的なことが
政治につながる

女性議員、活動家らが自らの人生と政治理念を語る──
吉田はるみ、大石あきこ、五十嵐えり、福島みずほ、三井マリ子、田村智子、石嶺香織、辻元清美

好評のエレキング臨時増刊シリーズ第五弾は、女性政治家たちへのインタヴュー集!

菊判/192頁

目次

呪文という序文──期待と期待外れと絶対の信頼について (水越真紀)

 現場で聞く声
吉田はるみ 「成長」より「分配」が先です
大石あきこ 多数派でなくてもやり方次第で物事は動かせる
五十嵐えり 「自己責任だから貧困でも我慢しなさい」は不正義

 世界につなぐ声
福島みずほ 「生きづらさ」は社会を変える契機にもなる
三井マリ子 ノルウェーに学んだ「ジェンダー平等」社会
田村智子 ジェンダー問題を通して資本主義を乗り越える

 闘う歌の声
石嶺香織 生活と政治はこんなにもつながっている
辻元清美 経済成長を促すカギは女性政策にある

「女がいないと1日も社会は回らない」 (土田修)

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Cantaro Ihara - ele-king

 70年代ソウルのマナーを取り入れたグルーヴィなサウンドで注目を集めるミュージシャン、イハラカンタロウ。彼によるウェルドン・アーヴィンのカヴァー「I Love You」が7インチで2月2日にリリースされる。イハラ本人による訳詞が印象に残る、メロウな1曲です。ミニライヴも予定されているとのことなので、下記をチェック。

 ちなみにウェルドン・アーヴィンはニーナ・シモンのバンド・リーダーだったキイボーディストで、ブラック・アーツ・ムーヴメントとリンクした“To Be Young, Gifted and Black” の作詞者として知られている。90年代にはモス・デフとコラボ、2002年の死の後にはマッドリブが丸ごと1枚トリビュート・アルバムをつくったり、Qティップがその名をシャウトしたりするなど後進への影響も大きい(ドキュメンタリー「Digging for Weldon Irvine」にはジェシカ・ケア・ムーアも登場しコメントを述べている)。

Weldon Irvineによるレア・グルーヴ~フリー・ソウルクラシック「I Love You」を日本語カヴァーした“イハラカンタロウ”最新シングル解禁! 完全限定生産7インチシングルの発売も記念してタワーレコード渋谷店でのインストアライヴも決定!

70年代以降のソウルやAORをベースに幅広い音楽スタイルやエッセンスを吸収したサウンドで現代のクロスオーヴァー・ソウルを体現する“イハラカンタロウ”。本日解禁となるWeldon Irvineの名曲「I Love You」日本語カバーは、全国各地のラジオ局でパワープレイも続々決定するなど現代のジャパニーズ・ソウルとも言うべきメロウ&グルーヴィーなサウンドで好評を得ています! さらに極上のメロディと洗練されたアレンジやコードワークで聴かせる自身の新曲「You Are Right」と「I Love You」とのカップリングによる7インチシングル発売を記念して、2/6にタワーレコード渋谷店でのインストアライヴも決定、お見逃しなく!

・「I Love You」(Official Audio)[日本語歌詞字幕付き]
https://youtu.be/dMyNM4NzAT4

イハラカンタロウ インストアイベント
■日時:2月6日(日) 15:00~
■会場:TOWER VINYL SHIBUYA(タワーレコード渋谷店6F)
■内容:ミニライブ&サイン会
■参加方法:観覧フリー

詳細はこちら
https://p-vine.jp/schedules/145605

【リリース情報】
アーティスト:イハラカンタロウ
タイトル:I Love You / You Are Right
7inch Single (2022.2.2 Release)
レーベル:P-VINE
品番:P7-6291
定価:¥1,980(税抜¥1,800)

[Track List / Digital Single]
・I Love You (2022.1.19 Release)
・You Are Right (2022.2.2 Release)

[Purchase / Streaming / Download]
https://p-vine.lnk.to/T4f5Ij

【イハラカンタロウ プロフィール】
1992年7月9日生まれ、作詞作曲からアレンジ、歌唱、演奏、ミックス、マスタリングまで手がけるミュージシャン。都内でのライヴ活動を中心にキャリアを積み2018年に1st EP『CORAL』を発表、聴き心地の良い歌声やメロディ、洗練されたアレンジやコードワークといったソングライティング能力の高さで徐々に注目を集めると、2020年4月に1stアルバム『C』(配信限定)、同年12月にはアルバムからの7インチ「gypsy/rhapsody」をリリースし各方面から高い評価を受ける。またギタリスト、ミックス&マスタリングエンジニアなど他アーティストの作品への参加など幅広い活動を行なっている。

Twitter:https://twitter.com/cantaro_ihara
Instagram:https://www.instagram.com/cantaro_ihara/

Burial - ele-king

文:小林拓音

 周知のようにブリアル*は2007年の『非真実(Untrue)』を最後に、アルバム単位でのリリースを止めている。なのでこの新作「反夜明け(Antidawn)」はおよそ14年ぶりの長尺作品ということになるわけだが……2ステップのリズムを期待していたリスナーは大いに肩透かしを食うことになるだろう。本作にわかりやすいビートはない。もちろん、これまでも彼はシングルでノンビートの曲を発表してきた。今回はその全面展開と言える。
 厳密には、冒頭 “Strange Neighbourhood” の序盤、聴こえるか聴こえないかぎりぎりの音量で4つ打ちのキックが仕込まれている。それは “New Love” の中盤でも再利用されているが、そちらではより聴取しやすいヴォリュームで一瞬ハットのような音がビートを刻んでもいる。あいまいで、小さく、すぐに消えてしまう躍動。間違ってもフロアで機能させるためのものではない。それらは数あるパッチワーク素材のひとつにすぎず、うまく思い出せない遠い記憶のようなものだ。

 明確なダンス・ビートの不在を除けば、変わっていないところも多い。トレードマークのクラックル・ノイズ。もとの素材がわからなくなるまで激しく加工されたヴォーカル。サウンドトラックなどから引っ張ってきたと思しき上モノたち。“路上生活者(Rough Sleeper)”(2012)以降のブリアルを特徴づけてきた、聖性を演出するオルガン。
 あるいは、しゃりしゃり/かちゃかちゃと鳴る金属的な音。咳払い。雨の音。虫の歌。謎めいたキャラクターの震え声。その他いくつかの、あたかも具体音のごとく響く断片たち。その大半はおそらく(フィールド・レコーディングではなく)ヴィデオ・ゲーム(の、さらに言えばユーチューブにアップされた動画)からサンプルされたものだろう。とりわけ強く印象に残るのは “Antidawn”、“Shadow Paradise”、“Upstairs Flat” の3曲に忍ばせられた、ライターで火をつける音だ。

 コラージュはブリアルの音楽を成り立たせるもっとも重要な技法である。今回もそのうち元ネタ特定合戦が開始されるにちがいない。たとえば最後の “Upstairs Flat” で二種類の音色に分散されて奏でられている旋律。下降時の音階が異なるので間違っているかもしれないが、たぶんこれ、エイフェックス『SAW2』収録曲(CD盤でいうとディスク2の8曲め、通称 “Lichen”)じゃないかと思う。直前に挿入されるたった2音のパーカッションも “Blue Calx” に聞こえてしかたがない。
 ダンスを出自とするブリアルの音楽がアンビエントとしての可能性を秘めていることはあらためて確認しておくべきだろう。クラックル・ノイズを過去性の刻印として解釈するのもいいが、それは無個性かつ無展開であるがゆえ周囲に溶けこむ音にだってなりうる。

 静寂はそして、ことばを引き立たせる。ブリアルを特徴づける闇夜と孤独は、冒頭 “Strange Neighbourhood” ですでに十分すぎるほど表現されている。「通りを歩く/夜になると/行き場がない/どこにもない/通りを歩く(Walking through the streets / When the night falls / There is nowhere / Nowhere to go / Walking through the streets)」。この「行き場がない(Nowhere to go)」は、「ひどい場所にいる(I'm in a bad place)」とのフレーズが印象的な表題曲 “Antidawn” でも繰り返され、「夜になると(When the night falls)」のほうも “Shadow Paradise” でふたたび顔をのぞかせている。どうしようもない閉塞感。それを、まったく出口の見えない資本主義と接続したくなる気持ちもわからなくはない。

 が、ポイントはそこではない。「Antidawn」にはまとまった長さが与えられている。ゆえに各曲のことばは照応し、シングルでは発生しようのなかった相互作用が際立っている。
 たとえば “Shadow Paradise” では、孤独に抗うかのように何度も「ちょっとだけ抱きしめさせて(Let me hold you for a while)」というフレーズが繰り返されている。「こっちに来て、愛しいひと/暗闇のなかへ連れていって(Come to me, my love / Take me to the dark)」「いっしょに夜のなかまで連れていって(Take me into the night with you)」と、つねにだれかの存在がほのめかされているのだ。
 この「you」はほかの曲にもこだましている。“Strange Neighbourhood” では「あなたがこっちにやってきた(You came around my way)」と、“Antidawn” では「あなたが入れてくれたら(If you let me in)」と、“Upstairs Flat” では「いちばん暗い夜のどこかにあなたがいる/そこに行きたい(You're somewhere in the darkest night / I wanna be there)」というふうに。

 最大のテーマであるはずの闇夜や孤独を凌駕するほど、本作には「あなた」が横溢している。そしてそんな「あなた」を「わたし」は求めている。「あなた」とはライターであり、星だ。「あなた」がいれば暗闇のなかでも歩いていける、と。
 いやもちろん、2007年の “Archangel” も「あなた」を求めていた。でもそれは2ステップのリズムの勢いに任せて放たれる、「きみを抱きしめる/ひとりじゃ無理、ひとりじゃ無理、ひとりじゃ無理」という、幼く、ひとりよがりで、一方的な願いだった。「Antidawn」はちがう。今回の「わたし」はどこか控えめだ。大人になったということかもしれない。なにせあれから14年のときが過ぎているのだ。
 ダンス・ビートの放棄、静けさの醸成、ことば同士の照応。かつてとは異なるアプローチで「あなた」と出会いなおすこと。いまブリアルは初めて本格的なアンビエント作品に取り組むことで、ほんとうの意味で他者に出会おうと努めているんだと思う。多くのひとが内省にとらわれたパンデミック以後の世界にあって、外からやってくるものへと向かうその姿勢はきっと重要な意味を持つにちがいない。

* 日本では「ブリアル」と表記されることが多いが、実際の発音は「ベリアル」のほうが近い。

HYPERDUB CAMPAIGN 2022
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文:キム・カーン
翻訳:箱崎日香里

 ブリアルのブルータリストなネイバーフッドにようこそ──「Antidawn」はブリアルのこれまでで最も無防備で生身の作品だろうか?

 彼の最新作──45分という長尺を考慮すればもはやアルバムと呼ぶべきに思えるが──で、唯一聞こえてくるビートは、ポトポトという雨音だけだ。これまでのブリアル作品でもお馴染みのこの音は、彼が毎日のように雨が降り続くイギリス出身であることを物語っている。

 ひとたび「Antidawn」の世界に足を踏み入れると、その舞台セットに飲み込まれる。1曲目 “Strange Neighbourhoods” が女性の咳払いとともに幕を開けると、たちまちひとつの物語のはじまりが告げられる。いわば、ブリアルのロックダウン・サーガとでも呼べるだろう。

 「You came around my way(私のところに来たんだね)」というささやきが荒涼とした景色の中に一陣の風をかき立てたのち、きらめくチャイムに招き入れられて、共感覚によってグレーに彩られた、物語の舞台となるとある地区の姿が現れてくる。トラックは中ほどでブレイクダウンに入り(ブリアルのダンス・ミュージックのバックグラウンドがまだ完全に消失してはいない証だろう)、そのあとに聞こえる「my love」の哀しげな呼びかけが、本作の主人公と思われる人物の感情を揺さぶる。

 続くタイトル・トラックは Ronce を思わせるASMRではじまり、主人公に新たな試練が降りかかる。

I'm in a bad place / with nowhere to go
(まずい状況にいる/行く先もない)

 不穏なシンセの暗闇の中を、ときおりチャイムの輝きが照らす。

you're one of them / I'm not your kind
(あなたは彼らの仲間だ /私はあなたたちの仲間じゃない)

 ここから登場人物たちのコミュニケーションがはじまると、少しずつ物語が肉付けられてゆく。チャイムのきらめきの緊張感が高まっていく先には、ブリアルが構築したこの不毛の地の中の小休止が見えてくる。

 “Shadow Paradise” で響くオルガンの音は、ロックダウン中にブリアルは教会をよく訪れたのだろうかと想像させる。曲はブリアルが変化していくのと同じように多幸感に満ち溢れている。そこに随伴するのは管楽器風のシンセ音や母性的なヴォーカルだ。次の箇所は故ソフィーのトラックに入っていても違和感がないであろうし、まるで生温かい抱擁のようだ。

There's one / alone in our reverie / ...I'll be around
(誰かがいる/たったひとりで私たちの幻想のなかに/……わたしはそばにいる)

 登場人物たちが新たな愛(New Love)を見つけると同時に、「Antidawn」の物語も動き出す。

ever since I was young / I wanted to get away / free beyond everything / for you
(幼い頃からずっと/ここから離れたかった/全てから解放されて/あなたのために)

 若い恋人たちの逃避行を、「For you」の反復の間にちりばめられたメロディーの断片が彩る。無限に増大するような重層的な音のテクスチャに、チャイムの閃きと、そこここで鳴るヴァイナルのクラックル・ノイズが重なり合う。次の瞬間、シーンはシンプルなアンビエント・パッドの音に合わせて無邪気に踊る主人公たちへと切り替わり、やがてトラック中盤でブレイクダウンに入る。「Come unto me / Come on come on」と手つかずの野原を奔放に跳びはねるふたりの蜜月はここでピークを迎えて終息へと向かい、オルガンの厳粛な響きがシンセのアルペジオをかき消すと、ふたたびブリアルの雨が降ってくる。

 「New way / my way」の声が響く “Upstairs Flat” は傷心の主人公を映し出し、呼吸音とクラックル・ノイズが細心の注意をもって重ねられた低いドローン・シンセが、新しいフラットの未知の環境を照らし出す。

I won't be there / when you're alone
(私はそこにいない/あなたがひとりのとき)

 甘くほろ苦いヴァイオリンのメロディーが闇に響く。「Come get me」の声で曲は静まり、雨音とともに終わりを迎える。

 私たちはディストピア世界のサバービアを描いたひとつの物語を聞き終え、すべての登場人物に出会い、彼らのストーリーや名前を知り、そして彼らが一礼して舞台を去ったのち、静寂のなかに取り残される。ひょっとしたら、ビートがないブリアルは、それを失う前のブリアルと同様に素晴らしいのではないか。そんな思いを巡らせながら。

 パンデミック以降の世界で、ペリラ(Perila)やウラー(Ulla)スペース・アフリカといった多数のアーティストがサウンド・コラージュやASMRをアンビエントのフィールドに持ち込む中、ブリアルの「Antidawn」はこのアンビエント界における新世代の蜂起を静かに補完している。

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Text: Kim Kahan

Welcome to Burial’s brutalist neighbourhood. Is this Burial at his most vulnerable yet?

The only beats we really hear on his newest EP - although at a meaty 45 minutes it can be considered an album at this point - are the pattering of rain, typical of Burial’s output to this point. Telling that he’s from England, where it rains everyday.

Heading into Antidawn, we’re struck by the mise en scene. A feminine clearing of a throat signals the beginning of the first track, "Strange Neighbourhoods". At once this appears as the telling of a story, potentially the Burial lockdown saga.

Whispers “you came around my way” stoke the wind that swirls around a barren landscape. Chimes twinkle as they welcome us to the neighbourhood which my inner synaesthesia unanimously agrees is grey. The song enters a breakdown halfway (it becomes apparent that Burials’ dance music background has not disappeared just yet) before emerging with a plaintive voice calling out “my love”, stirring emotion for what we presume is the protagonist of the album.

The title track "Antidawn" begins with a Ronce-esque ASMR fumbling and another trying time for our character “I’m in a bad place / with nowhere to go” and ominous synth is punctuated by chiming that glimmers in the darkness. We then start to see the story fleshed out with conversations as the character begins to communicate “you’re one of them / I’m not your kind”. Twinkling intensifies and we start to see the hint of respite in this barren land of Burial’s construction.

"Shadow Paradise" welcomes organs and we wonder if Burial visited church much during lockdown. The song is about as euphoric as Burial gets, with piping pads and a maternal vocal “there’s one / alone in our reverie / ...I’ll be around” which wouldn’t be out of place on a Sophie (RIP) track and feels like a lukewarm hug.

The story of Antidawn moves on as they find "New Love", “ever since I was young / I wanted to get away / free beyond everything / for you”, snatches of melody intersperse the “for you”s as the young lovers elope through the track. Vinyl crackles back and forth as chimes twinkle over a million multiplying textures. The next moment sees them dancing along innocently simple ambient pads before heading down to a breakdown mid-track. Bounding through fields of wild abandonment “come unto me / come on come on” as the lovers enter the post-honeymoon phase and it winds down, arpeggio synth disappears as the organ solemnly ploughs on and the rain comes down in true Burial style.

"Upstairs Flat" sees the protagonist post-heartbreak, “new way / my way”, entering the unknown of a new flat as deep, droney synth kicks in, breaths and crackles layered carefully on top. “I won’t be there / when you’re alone” as the bittersweet melody of violin punctuates the darkness. “come get me” and the song calms down, as rain comes in and the song finishes.

We feel like we’ve just listened to an entire story about a suburban dystopia and met all the characters and learnt all their stories and their names and then they’ve bowed out again and we feel alone in the silence. And we think that maybe Burial without beats is just as good as Burial with them.

In this post-COVID world we have seen artists such as Perila, Ulla, Space Afrika and more bring sound collages and ASMR to the ambient landscape and Burial’s Antidawn quietly complements this modern ambient rebellion.

HYPERDUB CAMPAIGN 2022 https://www.beatink.com/products/list.php?category_id=3

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文:髙橋勇人

 COVID-19が猛威を振るう中でも、ソロ・シングル「Chemz / Dolphinz」(2020)、フォー・テットトム・ヨークとの12インチ「Her Revolution / His Rope」(2020)、ブラックダウンとのスプリット「Shock Power of Love E.P.」(2021)と、コンスタントに作品を出してきたブリアル/ウィル・ビーヴァンは、45分にも及ぶ「Antidawn」で2022年の幕をこじ開けた。
 発表に際して公開された写真には、降り頻る雪のなか、楽しそうに両手を広げる本人の姿がある。マスクをしていることから、これはパンデミック中に撮られたものであることがわかる。今作は彼からの「近況報告」なのだろう。
 「Antidawn」にはビートがなく、スタイルとしては2019年のシングル集『Tunes 2011-2019』でも顕著だったアンビエント的なサウンド・コラージュであり、楽曲や映画からサンプリングされたであろうスポークン・ワードが音の流れを牽引している。前述のシングルでは、レイヴ・スタイルのハードなビートで、フロアの期待に答えつつ、自身の表現の幅を増幅させていたのに比べると、今作には明瞭な新しさはない。
 現在、電子音楽シーンではエクスペリメンタル/アンビエントの新たな光が、緩やかな木漏れ日のように、意気消沈した世界へと降り注いでいるのに気づいている方は多いだろう。ウラーやペリラ、あるいは日本のウルトラフォッグの参加作品などで知られる、ASMR的感覚、牧歌性、ときにメタリックな美学を繋ぐドイツの〈Experiences Ltd.〉(最近〈3XL〉に改名?)。イーライ・ケスラーや主宰のひとりでもあるフェリシア・アトキンソンを擁する、ミュジーク・コンクレートやエレクトロニクス/アコースティックを行き来しサウンド/ソニックの可能性を探求するフランスの〈Shelter Press〉。アーティスト、レーベルとともに、この勢いは衰えを知らない。作風的には「Antidawn」はその流れに連なっている、といえる。

 今回もブリアルのインスピレーションは彼の周囲からやってきているようだ。過去作を振り返ってみても、路上生活者(Rough Sleeper)、ねずみ(Rodent)、盗まれた犬(Stolen Dog)など、ブリアルは(特にロンドンでは頻繁に目にする)日常の構成物から楽曲のタイトルを採用してきた(そしてイルカ(Dolphinz)など彼が好きなもの)。
 「Antidawn」が奇妙深いのは、「奇妙な近所(Strange Neighbourhood)」や「上の階のフラット(Upstirs Flat)」といった日常的アクターが、造語である「反夜明け(Antidawn)」、「影の楽園(Shadow Paradice)」、「新たな愛(New Love)」といった抽象的で幻想的な面をも醸し出すタームで繋がっているという点だ。
 ブリアルは『Untrue』(2007)収録の “In Macdonalds” などがそうであるように、日常風景にかすかに存在する非日常性を サウンドで描くのに長けたアーティストでもある。「Antidawn」をその尺度で考えるならば、これらのタームが放つ印象は、ロックダウンによる隔離生活によって、日常と非日常の境目が人連なりに曖昧になっていく世界/生活と違和感なく連想できる。45分はそのサウンドスケープであり、ここでは踏み込まないが、スポークン・ワードはそこに広がるドラマツルギーとして考え得られる。ジャケットのイラストはその住人なのかもしれない。
 ブリアルは今作において一層エモーショナルになっているようだ。雨の音で緩やかにはじまる1曲目は、荘厳なオルガンを経て、徐々に電気グルーヴの “虹” のシンセ・フレーズにも似た優美なメロディにまで展開する。2曲目ではドローン・サウンド上で言葉が舞い、彼のシグニチャー・サウンドであるフィルターがかかったノイズやウィンドチャイムを機に、その表情が変わっていく。一曲のうちにいくつもの楽曲が組み込まれているような構成であり、そのアレンジも「Antidawn」を起伏のあるドラマとして醸成している。

 ここにないものはビートなのだが、それはある種、ブリアルと現実のダンスフロアを繋ぎ止めていたダンスというリアルな身体性の欠如であるとも考えられる。言葉においても、孤独や救済に焦点が当てられるものの、肝心なそこで生きる者の顔は曖昧なままだ。
 対照的に、現在のシーンでは身体や自意識への回帰、あるいはその問い直しが顕著におこなわれている。例えばブリアルのホームである〈Hyperdub〉から、2021年にデビュー・アルバム『im hole』を出したロンドン拠点のアヤは、自分の出自をラップ/詩で歌い、複雑なポリリズムとプロダクションは、入り組んだ身体のようにその言葉を基礎づけている。
 同年、先の〈Shelter Press〉からアルバム『17 Roles (all mapped out)』をリリースしたテキサスの前衛ドラマー/電子作家のクレア・ロウセイが頻繁にテーマにするのは、自身の肉声と機械によるエッセイの読み上げと、涙腺を緩やかに刺激するアンビエントを経由した、身体とそこを横切っていく人間関係だ。
 世界に再び太陽が登ろうとする2022年、私たちが聞くべきなのは、待ち受ける関係性のしがらみを再び生き抜いていくヴァイタリティに溢れたそのようなサウンドではないか。閉じきった2020年のような「Antidawn」が位置している太陽が登らない世界は、そこからは少し遠いように思える。
 愛、ドラッグ、ジェントリフィケーション、移民、階級、リズム&低音の科学が渦巻くUKガレージやダブステップとの緊張関係のなかで『Untrue』生まれたように、アンダーグラウンド主義者ブリアルは何かの中心との距離をとりつつも、そこと呼応することができる作家だ。「Antidawn」がロックダウンの世界であるならば、次はそのアフターの世界になる。「上の階のフラット」で/から彼が何を見たのか、次の長編作にその答えを待つ意味は大いにある。

HYPERDUB CAMPAIGN 2022
https://www.beatink.com/products/list.php?category_id=3

ニッポンカレーカルチャーガイド - ele-king

世界有数のカレー大国──ニッポンのカレーがこれ一冊でわかる!

欧風カレーにインドカレー、スリランカ、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、タイ等々の多様なルーツ
カレー麺にスープカレー、スパイスカレーにご当地カレーなどの日本独自カレーの数々

4,000軒以上のカレー店を食べ歩いた著者による「奥深きカレー文化」と200軒以上の「おすすめ店」のガイドブックが登場!!

目次

はじめに
第1章 日本カレーのパイオニアたち
第2章 洋風・欧風カレー
 老舗洋食系カレー/大衆洋食系カレー/欧風カレー/欧風カレー(ボンディ系)/フレンチカレー/カツカレー/ドライカレー
第3章 カレーライス
 大手チェーン系/東京カレーライス/東京カレーライス(喫茶店カレー)/関西カレーライス/金沢カレー/ご当地カレーライス/焼きカレー/ダムカレー
第4章 カレーパン
第5章 和カレー
 カレーうどん/カレーそば/カレー丼/スパイス和食
第6章 中華カレー
 中華カレー(咖喱飯)/中華カレー(ネオ中華カレー)/カレーラーメン/スパイスラーメン
第7章 世界のカレー
 インド料理のカレー/パキスタン料理のカレー/バングラデシュ料理のカレー/ネパール料理のカレー/スリランカ料理のカレー/ビリヤニ/タイ料理のカレー/その他の国のカレー
第8章 スープカレー
第9章 クラフトカレー(スパイスカレー)
 大阪スパイスカレー第1世代/大阪スパイスカレー第2世代/大阪スパイスカレー第3世代/大阪スパイスカレー第4世代以降/京都クラフトカレー/神戸クラフトカレー/関東クラフトカレー(老舗系/印度カレー)/関東クラフトカレー(新世代/スパイスカレー系)/九州クラフトカレー/名古屋クラフトカレー /静岡クラフトカレー/東北クラフトカレー
第10章 スパイス居酒屋&BAR
第11章 肉料理店のカレー
第12章 カレー・イノヴェイティブ
第13章 レトルトカレー
第14章 カレー+カルチャーイベント
おわりに

オンラインにてお買い求めいただける店舗一覧
amazon
TSUTAYAオンライン
Rakuten ブックス
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ヨドバシ・ドット・コム
Yahoo!ショッピング
HMV
TOWER RECORDS
紀伊國屋書店
honto
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◇未来屋書店/アシーネ

Billy Wooten - ele-king

 今回Pヴァインの「VINYL GOES AROUND」が手掛けるのは、かつてマッドリブを魅了した70年代インディアナポリスのヴィブラフォン奏者、ビリー・ウッテンのTシャツ。〈Stones Throw〉の名コンピ『The Funky 16 Corners』(2001)に収録されたことでも知られる代表曲 “In The Rain” と “Day Dreaming” をカップリングした7インチ付きセットも限定発売される。カラーリングやサイズなど詳細は下記より。

ジャズ・ファンからソウル/レアグルーヴ・ファンまで魅了するBilly Wooten率いる、The Wooden GrassのTシャツをVINYL GOES AROUND限定で販売。「In The Rain」の7インチもセットも。

ジャズ・ファンからソウル/レアグルーヴ・ファンまで魅了するBilly Wooten率いる、The Wooden Grassのライヴ・アルバムのジャケットのデザインを使用したTシャツを株式会社Pヴァインの新規事業・VINYL GOES AROUNDにて販売することが決定しました。

Billy WootenはGrant Greenの"Visions"や、Richard Evansの"Dealing With Hard Times"のレコーディングにも参加しているヴィブラフォン奏者であり、自身でもいくつかの名盤を残したインディアナポリスのアーティスト。ライヴ・アルバムの他にも貴重な彼の演奏写真もT シャツにして同時販売。また、彼の代表的曲、「In The Rain」の7インチを限定生産でセット販売いたします。

哀愁のあるヴィブラフォンの演奏と、歪んだオルガン、マシーンの様に一定に刻む強烈なビートが奏でるザ・ドラマティックスのカヴァー「In The Rain」はかつてMADLIBも自身の作品で使用した曲。中盤以降の盛り上がりと、後半の繰り返されるフレーズがまるでHIP HOP的なサウンドで、多くの人を虜にした70年代のジャズの名曲です。カップリングにはソウルの女王、アレサ・フランクリンの名曲、「Day Dreaming」を収録。疾走感ある曲で、激しく演奏するヴィブラフォンが強烈なジャズファンク。本作はスペシャル・エディットを加えて45回転での収録となります。

・BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS with IN THE RAIN 7inch 販売ページ
https://vga.p-vine.jp/exclusive

[商品情報①]

商品名:BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS A
カラー:BLACK / CHARCOAL / NAVY
サイズ:S / M / L / XL / 2XL
品番:VGA-1012
価格:¥4,800(税抜)(税込:¥5,280)

[商品情報②]

商品名:BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS A with 7inch
カラー:BLACK / CHARCOAL / NAVY
サイズ:S / M / L / XL / 2XL
品番:VGA-1013
価格:¥6,400(税抜)(税込:¥7,040)

[商品情報③]

商品名:BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS B
カラー:BLACK / WHITE / STONE BLUE
サイズ:S / M / L / XL / 2XL
品番:VGA-1014
価格:¥4,800(税抜)(税込:¥5,280)

[商品情報④]

商品名:BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS B with 7inch
カラー:BLACK / WHITE / STONE BLUE
サイズ:S / M / L / XL / 2XL
品番:VGA-1015
価格:¥6,400(税抜)(税込:¥7,040)

[商品情報⑤]

商品名:BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS C
カラー:BLACK / WHITE / MILITARY GREEN
サイズ:S / M / L / XL / 2XL
品番:VGA-1016
価格:¥4,800(税抜)(税込:¥5,280)

[商品情報⑥]

商品名:BILLY WOOTEN ORIGINAL T-SHIRTS C with 7inch
カラー:BLACK / WHITE / MILITARY GREEN
サイズ:S / M / L / XL / 2XL
品番:VGA-1017
価格:¥6,400(税抜)(税込:¥7,040)

※期間限定受注生産(~2022年2月7日まで)
※商品の発送は 2022年3月上旬ごろを予定しています。
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※Tシャツのボディは ギルダン2000 6.0 オンス ウルトラコットン Tシャツになります。

DJ NOBU - ele-king

 パンデミック以降、海外のDJやアーティストの入国が困難になっているが、逆に言えば、国内の良いDJやアーティストのライヴを見れたりもする。コロナがなければ世界を飛び回っていたであろうDJ NOBUもそのひとり。1月の毎週金曜日はDJ NOBUのスペシャルな夜が待っています。

1/14(金)
Trilogies - DJ NOBU - episode 1
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Open 10PM
¥1000 Under 23 / Before 11PM ¥2000 Advance ¥3000 Door
【前売】 https://contacttokyo.zaiko.io/_buy/1rWT:Rx:70e21
【お得な3日通し券】https://eplus.jp/sf/detail/3555380001-P0030001P021001?P1=1221
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Studio:
DJ Nobu (Future Terror | Bitta)
Occa (Archive)

Contact:
Tasoko (DRED Records)
Yuzo Iwata (Butter Sessions | Sound Metaphors)
machìna
Qmico (QUALIA)
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『盟友との相乗効果が誘う次の深淵』

DJ Nobuが自身のパーティFuture TerrorやGONG、NTS Radioのプログラムで度々招いていたOccaがシリーズ第1回、Studio Xでの共演に決定した。札幌に拠点を置くOccaからも、自身のPrecious HallでのパーティArchivにDJ Nobuを招致しており、お互いに音楽の交差を重要視する関係にある。その相乗効果は、互いの刺激を深化から深化へと発展させる、エレクトロニックミュージックの更新と最深部の模索であり、オーディエンスの観点からみると、最高から次の最高への移行の連続が起こる狂気的なまでの高揚を目の当たりにすることになる。Contactフロアでも電子音楽の深化は絶え間なく、昨年、同じく沖縄をルーツにもつIORIが立ち上げた〈VISIONARY〉からのEPや、John Osbornが主宰する〈DRED Records〉からのアルバムなど制作面でも注目されるTasokoや、ベルリンでの滞在や海外レーベルからのリリース、Cocktail d’Amore等の著名なヴェニューに出演してきたYuzo Iwata。さらに、Bicepのトラック「Hawk」への参加や〈Tresor〉のコンピレーションへの楽曲提供をする、世界的なプロデューサーとなったmachìna、QUALIAを主催するQmicoなど、クリエイター気質のラインナップがメインフロアとは異なる色鮮やかさと疾走感をともなう緻密さでデザインされる。
Trilogies DJ Nobuは、モダンなサウンドと、アーバンなグルーヴが交錯する、ハイクオリティのダンスで開幕される。

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1/21(金)
Trilogies - DJ NOBU - episode 2
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Open 10PM
¥1000 Under 23 / Before 11PM ¥2000 Advance ¥3000 Door
【前売】 https://contacttokyo.zaiko.io/_item/345829
【お得な3日通し券】https://eplus.jp/sf/detail/3555380001-P0030001P021001?P1=1221
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Studio:
DJ Nobu (Future Terror | Bitta)
YAMA

Contact:
悪魔の沼
AKIRAM EN
0120
Torei (Set Fire To Me)
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『ダンスミュージックの理想郷の幻影』

第2夜の共演は、BOREDOMSの∈Y∋とともに伝説パーティeepのオーガナイズや、語り継がれるレジェンダリーパーティFLOWER OF LIFEへの出演、大阪のクラブ、聖地MACAOのクロージングパーティのトリを務めるなど、拠点の大阪はもちろん全国のパーティフリークスに、カルト的な人気を博すYAMAの登壇が決まった。Future Terrorを始め、CDリリース時のコメントの提供などDJ Nobuとは度々活動を共にしている。DJ Nobuとともにハウスセットでの共演というまたとない今回の機会は、紛れもなく何かが起こる儀式的なまでの危険で甘美な予感をほのめかしている。そのカルティックなフロアメイクはもう一方のフロアでも徹底されており、Contactに久しぶりの登場となる悪魔の沼や、AKIRAM ENによる、知覚とダンスの活性を誘う深いリスニング・デバイス。AI.UとEMARLE、双方の高い音楽性が深層で交わるDJユニット0120、そして、ビートや展開に対して他とは全く異なるイマジネーションを持つToreiなど、高い次元でのエクレクティックなサウンドの交錯が、アヴァンギャルドな情景を描く。
Trilogies DJ Nobu episode2はシリーズで最も現実から離れ、ダンスミュージック・ファンの理想に最も近づく可能性を秘めている。

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1/28(金)
Trilogies - DJ NOBU - episode 3
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Open 10PM
¥1000 Under 23 / Before 11PM ¥2000 Advance ¥3000 Door
【前売】 https://contacttokyo.zaiko.io/_item/345828
【お得な3日通し券】https://eplus.jp/sf/detail/3555380001-P0030001P021001?P1=1221
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Studio:
DJ Nobu (Future Terror | Bitta)
Kotsu (CYK | UNTITILED)

Contact:
Kabuto (DAZE OF PHAZE)
k_yam
Akie
discopants
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『DJ Nobuによる音楽の歓喜の解放』

シリーズ最終章、ワンフロア、ツーマンでは初となるCYK Kotsuとの共演は音楽の快楽を余すことなく味わう祝宴になりそうだ。2020年、拠点を京都に移してからもその活躍は全国に響いており、昨年末までに国内14都市からの招致を受けている。本来主体としていたハウスを概念として膨らませながらオーディエンスのハートに確実にヒットさせる卓越したスキルと発想は、DJ Nobuとのどのような化学反応を起こすか期待を抱かざるをえない。
Contactフロアには、スペシャリストKabutoを筆頭に繰り広げられる、国内テクノ/ハウスの、進化形でシーンの現到達点とも呼べるフロアデザインが施された。さらに、自身のパーティのREMEDYの卓越したキュレーションや、トラックのクオリティの高さ、DJでのイマジネーションの飛躍など層の厚い世代の中でも際立つk_yamがラインナップ。discopantsのハウスとエレクトロニクスの刺激的なクロスオーバーや、Akieのオルタナティブなハウスサウンドも、大阪の聖地newtone recordsの出身を感じさせる情感とエレクトロニクスの複層的な交わりをみせる。人の熱をもったファンクネスやUKマナーを独自のイメージで鳴らしてきたオリジナリティが、ダンスミュージックのハードリスナーをもノンストップで踊らせうるエレクトロニック・ジャーニーを展開させる。
Trilogies DJ Nobu 最終章は、episode 1, 2とはさらに違う面でのDJ Nobuの解放を味わう、音楽桃源郷で幕を閉じる。

Ian Wellman - ele-king

 イアン・ウェルマンは、カリフォルニア州ロサンゼルスを拠点とするサウンド・アーティスト、プロダクション・サウンド・ミキサー、フィールド・レコーディング・アーティストである。
 この『On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay』は、2021年12月に〈Room40〉からリリースされたウェルマンの新作だ。同レーベルからリリースされたロバート・ジェラルド・ピエトルスコ『Elegiya』と同じく薄暗い空気と微かな光のようなアンビエント・ドローン作品に仕上がっている。
 もちろん『Elegiya』と『On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay』は異なる作品だ。シネマティックなムードは共通しているが、『Elegiya』は幽玄な質感のドローンであり、『On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay』は、ノイズ音楽や生体音響学などに影響を受けたというイアン・ウェルマンらしいノイジーなうごめきに満ちたアンビエント/ドローンである。
 ウェルマン本人のライナーによると「怒り、不安、希望の間で揺れ動き、通常はディストーションやノイズに変化し」「世界中で起きている出来事に意味を見出そうとする試み」であったという。加えて「行き詰まった人生に対する私自身のフラストレーションを癒す方法」でもあったとも書いている(https://ianwellman.bandcamp.com/album/on-the-darkest-day-you-took-my-hand-and-swore-it-will-be-okay)。不穏な社会や不安定な個人を反映するかのようなサウンドであるのはこういった背景があるからだろうか。
 インターネットや現実で引き起こされる多くの社会問題や社会情勢はアンビエント・ドローン作品のような抽象的な音楽にも深く影響を与える。つまり時代が暗ければサウンドの質感にダークなものが増えるというわけだ(反対に過剰に癒しを放つものも増えてくる)。社会の無意識を写す鏡のような現代アンビエントだ。ちなみに現代アンビエント・ドローンの名手とはいえばヤン・ノヴァクであり、彼の霧のような美麗ドローンをまず思い出すが(彼の音響は本当に美しい。まるで空気を浄化するようなアンビエントなのだ)、イアン・ウェルマンの諸作品は、ヤン・ノヴァクのアンビエントとは異なる魅力を発している。
 イアン・ウェルマンのアルバムを聴いていると、世界の不安や不穏をスキャンしたサウンズの波を感じてしまうのだ。彼は社会/世界、世界の変化や状況にとても敏感かつ鋭敏な感性を持っている音楽家なのだ。尖っていて不安定な感覚があるのだ。音もセンシティヴである。この感覚は精神の沈静を追求するアンビエントの音楽家の中では稀だ。不意にリリース・レーベル〈Room40〉を主宰するローレンス・イングリッシュの音楽性を思わせもする。
 2018年にヤン・ノヴァクが主宰する現代アンビエント・レーベルの名門〈Dragon's Eye Recordings〉からリリースした『Susan's Last Breath Became the Chill in the Air and the Fog Over the City's Night Sky』、2019年に同じく〈Room40〉からリリースした『Bioaccumulation』もそのような世界の不穏さを反映していたように思う。
 2021年にリリースした本作『On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay』では、これまで以上に、不穏なアンビエンスに聴こえた。やはりコロナ以降の世界の反映だからだろうか。

 アルバムには全13曲が収録されている。どの曲も微かなノイズが刺すように鳴り、一方で溶け合っていくような持続音を聴かせてくれる。しかもトラックには4分台の曲多い(1分ほどの曲もある)。この種のアンビエント作品は一曲が長いものが多いのだが、その点からしても異質な作風である。
 本作は長い音の持続にじっくりと耳を澄ますタイプの作品はなく、ノイズのフラグメンツ(断片の数々)を摂取するようなアルバムなのだ。この断片性は聴く物に独特の不安感(と心地よさ)を与えてくれる。
 じじつ、このアルバムを聴くと気候変化や社会問題、事件、事故などが混じり合った、いまこの時代特有の集合的無意識を聴取するような独特の不安感があるのだ。ほぼ同時期にリリースされた『I Watched The World Burn Without Leaving My Home』と合わせて聴くと、さらなる孤立感や時代の無意識を感じることができる。いわば「社会」「世界」に抵抗しつつ溶け合っていくような聴取体験があるのだ(『I Watched The World Burn Without Leaving My Home』はどうやら世界各地の火災問題を扱っているようだ)。ノイズという厳しい現実と平穏というアンビエントが交錯し、彼の音楽として総体を形作っている、とでもいうべきか。
 そう、『On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay』は、まさに心と体と世界の境界が融解/溶解するようなアンビエント/ドローンなのだ。1年のはじまりに(でなくとも良いのだが)心身を調律するように聴き込みたい。

Trilogies - Mars89 episode 1 - ele-king

 レコード店「Disc Shop Zero」の店主、飯島直樹氏が永眠してはや2年、今年の2月で3回忌を迎える。彼の功績に敬意を表しつつ、彼が志した低音の美学とその広大なヴィジョンを継承すべく、2月11日(金)渋谷のContact Tokyoにて、飯島氏がオーガナイーザーでもあったポッセ〈BS0〉がパーティを企画する。「Disc Shop Zero」に行ったことがない人も、ぜんぜんウェルカム。足を運んで、力強いベースを感じて欲しい。

年明けのダンス・ミュージック5枚 - ele-king

 新年あけましておめでとうございます! 2022年も音楽についてたくさん書いていきたいと思います。2021年は、僕の力量不足ゆえ(単に怠けている日もある)に書けなかった作品がいくつもあった。今年は全て書く勢いでやるということで、そこを抱負に精進します。ということで新年一発目のサウンドパトロール、よろしくお願いします。


SW2 & Friends - Hither Green Glide / For The People | GD4YA

 EL-B の運営する〈GD4YA〉は、UKガラージのダークな側面を好む人ならチェックすべきレーベル。彼自身、90年代からいくつかのレーベル(Not On Label のホワイト盤も多数)からアングラでダークなUKガラージを提供してきたDJ。もちろん、〈GD4YA〉のサウンドはその焼き回しではなく、現代版へきちんとアップデートされており、さらにハズレもあまりないときた。今作は、〈Rhythm Section International〉などからリリースを重ねる FYIクリス、エズラ・コレクティヴの鍵盤奏者として知られるジョー・アーモン=ジョーンズなどが参加。あのダークなUKガラージの音(〈Tempa〉の『The Roots Of Dubstep』を聴くと良し)を踏襲しつつ、南ロンドンにおけるハウスとジャズの視点も加えている。かなり面白い。

Instinct – PAUSE LP | Instinct

 「UKガラージのダークな側面」なんて書いたので、こっちも紹介しないわけにはいかない。バーンスキ(Burnski)による、UKガラージ専用のインスティンクト名義でリリースされたフルレングス。連番でいくつかの12インチを出しており、それらをまとめたのが『PAUSE LP』。5番に当たる「Pstolwhip」は最高にオシャレなUKガラージで大好きだけど、今作には未収録……。流行り(?)の音数少なめでカラッと乾いた質感のUKガラージ・ビートがずっと続く、素敵な10曲入りLP。ベースは効いていてダークさはあるけど、なぜか凄くオシャレに聴こえる。個人的ベスト・トラックの “Apache” はサンプリングかと思うが、実弟によるヴォーカルのピッチをいじったもの。12インチの集成なのでそれぞれのツール感は否めないが、それでも聴きやすくまとまっていると感じた。

WILFY D & K–LONE - VITD004 | Vitamin D Records

 K-ローンといえば、ファクタと運営するロンドンは〈Wisdom Teeth〉でよく知られている。が、Wilfy D とコラボレーションした今作は、言ってしまえばらしくない、スイートでソウルフルなUKガラージに仕上がっている。“Str8 Up” なんて最高なチャラ系UKガラージでかなりのお気に入り。そもそも、90年代におけるUKガラージというジャンルにはかなり売れ線の曲もあって、そこそこチャラい側面があることを思い出させられる。ちなみに Wilfy D のほうは、自身の〈Vitamin D Records〉や〈Dansu Discs〉などでリリースしつつ、ブリストルのレコード店&レーベルの〈Idle Hands〉のスタッフとしても働いている模様。いま挙がったのは全てUKにおける現行のレーベルで、全てかっこいいので合わせてチェックしよう。

Joy Orbison - red velve7 | TOSS PORTAL

 2021年の個人的なハイライトのひとつ、それはジョイ・オービソンの『Still Slipping Vol.1』だった。本当にカッコ良かった。サウンドがカッコ良いのは当たり前だけど、何よりも「そこにい続けて……、もちろんいまもそこにいる」その姿勢がカッコ良いのだ。この曲は、ジョイ・Oによって突如ドロップされた未発表曲のうちのひとつ。ジャケは彼の祖母で、西ロンドンで音楽系のパブを祖父とふたりで経営していた方なのだそう。曲のリリースに際したインスタのポストによれば、「まだ始まったばかり」だと。これからも彼の動向には目が離せない。

Blawan - Woke Up Right Handed | XL Recordings

 相変わらず、〈XL〉のこのシリーズは良いリリースが多い。去年は LSDXOXO による猥雑なゲットー・ハウス「Dedicated 2 Disrespect」が最高だったし、その前だとジョンFMの「American Spirit EP」も良かった。そしてブラワンからの「Woke Up Right Handed」も、これまた半端じゃない一撃だった。数あるフライト(2019年は340回もあったそう!)に嫌気がさし、いまは拠点とするドイツで酪農により多くの時間を割いているそう。このEPから出てくる音がそんな生活から生み出されたものなんて……。“Under Belly” のホラーめいた異様なサウンドが酪農生活によるものだとは、にわかには信じかたいよね。

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