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Diamond Version

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EP 1 - 5

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Tough And tender

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三田 格   Jul 30,2013 UP

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 ドミューンのスウィッチング・ルームで宇川直弘が「顔がドイツ人だー、顔がドイツ人だー」とわかりきったことを言いながら画面を切り替えたり、エフェクトをかけたりしていると、いきなり本人=カールステン・ニコライがその顔をぬっと出した。「どんな感じだった?」と訊くので、「はじまる前から1000人ぐらい待機してたよー」とアバウトな数字を僕が告げると、彼はニコッと笑ってバーへと足を翻した。僕と宇川くんは「笑っても顔がドイツ人だー」と笑いが止まらない。観ていた人も多いと思うけど、アルヴァ・ノトことカールステン・ニコライとバイトーンことオラフ・ベンダーがシグナルとはまた別にスタートさせたダイアモンド・ヴァージョンが、ライヴの前に、まずはアルファ&ベータとしてDJタイムを設けたのである。適当にリズムをとっているベンダーとは対照的にニコライはまったく体を揺すらないので、どうしても顔に注意が集まってしまうのだろう。「クラフトワークにいてもわかんないよねー」とかなんとか(軽口は止まらない)。

 昨年9月にダイアモンド・ヴァージョンが〈ミュート〉からリリースした『EP1』はインダストリアル・エレクトロとでもいうような新境地だった。端正でムダがなく、SEが醸し出す雰囲気は完全にエイティーズのそれ(リエゾン・ダンジュオーズ以降、デトロイト・テクノ前夜というか)。『EP1』はロックド・ループを6本もプラスするほどダンス・オリエンティッドな性格づけがなされ、『クラックダウン』前後のキャバレー・ヴォルテールやジ・アンチ・グループ、あるいはグレーター・ザン・ワンに夢中だった頃をストレートに思い出させるものがあった(エレキング9号P.65)。"フォーエヴァー・ニュー・フロンティアー"で暴れまくるシンセサイザーや、同じく"ターン・オン・トゥモロー"など、『EP2』『EP3』と進んでも勢いはまったく衰えず、初めからEP5枚で完結すると宣言されていたシリーズは、なるほど『EP 1 - 5』として2CDにまとめられた(『EP5』は7月末リリース予定)。

 すでにデトロイト・テクノを知っている耳には"ゲット・ユアーズ"などはジェフ・ミルズに聴こえてしまうし、そもそも80年代のインダストリアル・エレクトロにはなかったグルーヴが周到に備えられた温故知新である。新しくなっているのはそこだけとは言わないけれど、仮にそれだけだったとしても、ニコライ&ベンダーによるトリートメントは抜群の完成度である。さらにはノイズの混ぜ方にはさすがとしかいいようのないものがあるし、何よりもこういった音楽を聴くときに時代背景が邪魔をしないという利がある。実際にドミューンでダイアモンド・ヴァージョンのライヴ・セットを聴いていて、キャバレー・ヴォルテールやクロックDVAがいま、ここで同じことをやってもここまでカッコよくはならないだろうと考えてしまったり......。

 この日、ダイアモンド・ヴァージョンのサポートには(〈ラスター-ノートン〉から『イッシュ』をリリースしている)キョウカが入っていて、彼女のパフォーマンスが終わるや否や宇川直宏は〈フリードミューン〉への出演を決めていたようだけれど、僕は彼女のリズム感はやや弱く、むしろドローンに寄ったときの方が冴えているなとは思っていた(リハ終わりで彼女が「寿司屋に行ってくる」というので、「寿司屋?」と思わず問い返したところ、「寿司命、なんで」と返されてしまった。むむむ)。

34423(ミヨシ・フミ)のデビュー・アルバムに驚いたのは、しかし、同じ女性という比較は意味を成さないとしても、それにしてもリズムがタイトで、ときにインダストリアルに近いものがあったからである。それだけでなく、細かいところでビート・フリークぶりを発揮し、さらには抒情的といえるほどメロディも豊富。淡白になりがちな日本人の傾向からすれば、かなり濃いなというのが第1印象だった(むしろイーライ・ウォークスへのアンサーといえるか?)。

 メロウであると同時に乾いたリズムが刻まれる"マスク"、オウテカとテリー・ライリーをジューサーで掻き混ぜたような"ドロップス"、コクトー・ツインズにジュークやダブステップをやらせたような"ノック"はアンディ・ストットへのアンサーなのか(?)、後半はデトロイト・テクノをイギリス独自に解釈したインフォネットや初期の100%ピュアを思わせるダンス・ナンバーへともつれ込んでいく。曲のイメージがどんどん変化していく"ティアーストーム"もいいし、混沌としたムードを崩さない"ジョイント"もよくできている。東京で活動しているということ以外、何も知らないけれど、もう少しでスウィングしはじめそうな"アトム"なんて、ほんとにシャレているし、エンディングの"フォッグホーン"ではラウンジ的なセンスまで零れ落ちてくる。ときに強迫的なまでのリズムを構築すること(=タフ)で、自在なメロディを遊ばせることが可能になっている(=テンダー)としたら、レイモンド・チャンドラーから取ったらしきアルバム・タイトルもなかなか言いえて妙である。これは期待しちゃいますね。

三田 格