MOST READ

  1. Dirty Projectors - Dirty Projectors (review)
  2. interview with Thundercat「ファンタジー」とソウル、その調和 (interviews)
  3. R.I.P マジック・アレックス,マジアレ(村松誉啓) (news)
  4. interview with Shota Shimizu10年目の情熱 (interviews)
  5. yahyel - ──この一風変わった名前のバンドをきみはもう知っているか? ヤイエルが500枚限定の初CD作品をリリース (news)
  6. Campanella - PEASTA (review)
  7. interview with Jeff Mills100年先の人びとへ (interviews)
  8. TAKKYU ISHINO×WESTBAM──STERNE15年目の夜、石野卓球×ウエストバム (news)
  9. Clap! Clap! - A Thousant Skies (review)
  10. interview with Bo Ningen - UK発ジャップ・ロック、その正体とは! (interviews)
  11. Gabriel Garzón-Montano - Jardín (review)
  12. Kan Sano――カン・サノ、全国ツアー決定! ツアー会場では数量限定のカセットも発売 (news)
  13. Arca──アルカが〈XL〉と契約、4月にニュー・アルバムをリリース、新曲も公開 (news)
  14. Shobaleader One──スクエアプッシャー率いる覆面バンドがアルバムをリリース、来日公演も決定 (news)
  15. MAJOR FORCE 25th ANNIVERSARY - メジャー・フォース25周年にリスペクトを (news)
  16. interview with Dirty Projecters - コンテンポラリー・ポップの知性 (interviews)
  17. Solange - A Seat At The Table (review)
  18. 『すべすべの秘法』The Secret to My Silky Skin (review)
  19. interview with Sampha心を焦がす新世代ソウル (interviews)
  20. Visible Cloaks - Reassemblage (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > SIMI LAB- Page2:Mind Over Matter

Album Reviews

SIMI LAB

Hip Hop

SIMI LAB

Page2:Mind Over Matter

Summit

■通常盤TowerHMVAmazoniTunes■初回限定盤TowerHMVAmazon

巻紗葉   Mar 27,2014 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 シミ・ラボの3年ぶりのセカンド・アルバム、『Page2 : MIND OVERMATTER』は素晴らしい作品だ。ラップ、リリック、トラックのどれもクオリティが高い。たとえば、2003年のMSC『マタドール』、2007年のNORIKIYO『OUTLET BLUES』、2011年のERA『3 WORDS MY WORLD』のように、先鋭的なトラックとリアルな言葉、ラップのエネルギーが調和した、この先も記憶されるべきマスターピースだ。

 トラックのベースは、OMSBによって作られている。よって、本作は彼のソロ・アルバム『Mr. "All Bad" Jordan』の発展型だとも言える。『ele-king vol.13』でのOMSBのインタヴューを読んでなるほどと思ったのは、影響を受けたトラックメイカーについて「RZAとプリモ(DJプレミア)ってでかくて。あとはJ・ディラ、カニエも大きい」と発言していたことだった。なんという、幅の広さ……。そしてヒップホップへのこだわり。ベスト・ソングとして挙げたい“Come To The Throne”──この曲は微妙にブレたビートの上に激しいサックスのブロウのサンプリングを複雑にかぶせたナンバーで、絶え間ない編集作業のなかから生まれた──をはじめ、OMSBのヒップホップへの情熱が具現化されている。

 新作には、OMSB、DyyPRIDE、QN、MARIAを中心にしたファースト・アルバムと比べて、参加ラッパーの人数が圧倒的に多い。それぞれの楽曲にテーマを据えて、各メンバーが大喜利的にストーリーテリングするさまはそれだけでも刺激なのだが、ブロークンなトラックの上で披露される“Karma”はとくに強烈だった。1ヴァースめを担当するOMSBは、ビートを無視しつつもさり気なく韻を踏んでいく。それに対して、2ヴァースめのUSOWAはがっつりビートに合わせて韻を踏んでいく。こうした構成上の工夫が作品の随所にある。スリリングで、聴いていて楽しい。

 とにかく、のびのびとやっているのだが、前述の通り、1曲でひとつのテーマを複数視点で展開しているので、ヴァースごとにメンバーの個性が如実に表れている。「Worth Life」では、冒頭でUSOWAが「今日の繰り返しがほら 来たるべき明日さ 回すKey Chain」と冷めた人生観を披露すると、JUMAは「難しい事は言えないけど太陽に手かざして血潮が見えれば life goes on !」とおおらかに歌う。さらにトリのDyyPRIDEは「不甲斐無え過去のてめえとおさらば」と現在の自分を讃え、明日への活力をみなぎらせる。ライムも言葉も十人十色で、若者たちの人生の縮図がそれぞれの曲に描かれているようだ。

 最近の日本のヒップホップ・シーンにはスターがいないと言われるが、そんなことはない。SIMI LABはもちろん、5lack、PUNPEE、サイプレス上野とロベルト吉野、AKLO、SALU、田我流、SEEDA、NORIKIYO、KOHH、MSC、ERA、Fla$hBackS……、彼らはストリートのスターである。『Page2: MIND OVER MATTER』を聴いていて、AKLOの「ダサいものと戦うのが俺のREBELだ」という発言をあらためて思い出した。ヒップホップへの情熱によって生まれたこのアルバムは、今日の日本のストリート・カルチャーの豊かさを証明するものであり、ヒップホップのリスナー以外にも聴いてほしい傑作である。

巻紗葉