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倉本諒   Aug 20,2014 UP

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 厳しい残暑がつづくなか、みなさんはサイケデリック・サマーをお過ごしであろうか。
 ときに先月発売されたマシューデイヴィッドの『イン・マイ・ワールド』は聴かれましたか。まだ未聴のかたもヘヴィロテのかたも、マシューの独自のグルーヴと世界観を深める2本のテープが、自身が主宰する〈リーヴィング・レコーズ〉より届いたのでお知らせしよう。

 マシューDの嫁、ディーヴァ・ドンペ(Diva Dompe)と出会ったのはたしか2009年頃だ。当時の彼女は妹のローラとの超絶美人姉妹バンド、ブラックブラック(Blackblack)で、現ベスト・コーストのベスが抜けてバンド編成として新生したポカホーンテッド(Pocahaunted)で、その類い稀な美貌をふりまきながら完璧なファンク・ベースラインで偽物のリッケンバッカーを鳴らしながら歌ったりしていて、貧乏臭い風貌で冴えない演奏をだだ漏らすヘボベーシスト(俺)の存在意義を華麗に全否定していた。それでいて彼女は全く気取らない、LAの自由を象徴するようなオープン・マインドの持ち主でもあったわけで、僕にとってまさしく未知との遭遇であった。彼女やマシューDはまさしくエイリアン(ALIEN。タイプできないのだけどドジャーズのLAロゴを左右反転して頭に置く感じ)、ラスG風に言えばエル・エーリアン(EL-AYLIEN)だ。彼女の世界観のひとつであるガチなチャネラー感もここに説得力を持つ。
 そういえば何年か前まで彼女は月イチでゴス・パーティを主催していて、そこにはLA中のカワイイ女子エイリアンがハシャギながらノイズをまき散らし、LA中の男子ローカル・アーティストが群がっていた。レジデントDJはディーヴァのお父さん(バウハウスのケヴィン・ハスキンス)というハイ・レヴェルな内容。

 彼女がホストを務める〈ダブラブ〉の同名番組をサブ・タイトルに冠するこのテープ『イアルメリック・トランスミッション』は、彼女いわく、愛に満ちた楽園、別次元異空間世界イアルメリックへサウンドを通じてアクセスする行為のようだ。彼女のソングライティングは年々インプロ色を増し、いつのまにか溶けてしまった。近年の彼女は超絶レアなシンセ等を用いた(お父さんのおふるのEDPワスプデラックス)映画、狩人の夜のセットのようなきらめくトラックにスピリまくったポエトリー・リーディングをのせて、聴者の精神の内と外を反転させる。ローズ・クオーツ付きの可愛らしいパッケージはスピり気味の彼女へのプレゼントに最適! ……って普段ならファーック! と言うところですがディーヴァなので許しちゃいます。

 もう一方はビート・メーカー/ラッパーとしてのマシューDではなく、アンビエント・ミニマリストとしてのマシューDと彼の元ルームメイトであったエリック・ミカエル・ヴァリーことEMVによる超ニューエイジ・インプロ・コラボレーション。EMVの過去作『リソリューションズ(Resolutions)』は個人的には〈リーヴィング・レコーズ〉の過去リリースの中でもピカイチなテープで、彼もまたマシューDと同じくゼロ年代のドローンじみたサイケ・フォークに感化されながらもよりダークに、オピウムっぽいズブズブな美意識のビートを構築していた。
 このジャムはじつは2010年9月22日に録られたもので、その日が20年に一度とやらのスーパー・ハーヴェスト・ムーンだったそうで、とにかく何かがメガ・パワーだったとか。詳しくはNASAに書いてあったので興味のあるあなたはこちらへ。
http://science.nasa.gov/science-news/science-at-nasa/2010/22sep_harvestmoon/

 これを読むかぎり、おそらくはふたりがそれぞれ太陽と月を演じ、360度に広がる夏から秋への黄昏の神秘をサウンドで形にしようと試みたのだろう……とか勝手に想像しながらパッケージを作ってみた。パッケージは僕です。手前味噌で申し訳ないけど。

 どちらも限定のデジタルなし。正直に言えば、近年の〈リーヴィング〉はビート色も薄れていて、好きじゃないバンドもけっこういてアレだなーと思うところもあるのだけれども、この夫婦はホント、雰囲気じゃなくて完全に本気でやっているので素晴らしい。過去5年間のLAのインディー・ロック/ビートを溶かしてつくったおいしい飲み物みたいな2本でした。

倉本諒