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KID FRESINO

Hip Hop

KID FRESINO

20,Stop it.

Dogear Records

Amazon

大前至 Mar 16,2021 UP
E王

 今年1月の頭にリリースされた KID FRESINO の2年ぶりとなるアルバム『20, Stop it.』。まだ年が明けて2ヶ月ほどしか経っていないが、間違いなく2021年の日本の音楽シーンを代表するアルバムであり、日本のヒップホップ・シーンの最先端かつ輝かしい未来というものを見せてくれる素晴らしい作品だ。

 2018年にリリースされた前作『ai qing』では、バンド編成を軸にトラックの制作をしながら、セルフ・プロデュース曲に加えて外部のプロデューサーも入り、ゲスト・アーティスト勢も含め、アルバム全体のディレクション/トータル・プロデュースという面でも素晴らしい才能を発揮した KID FRESINO。制作方法に関しては本作も前作と同じ流れの上にあるわけだが、約2年という月日の中でより研ぎ澄まされ、洗練されたサウンドへと発展している。ひと昔前はヒップホップとバンド・サウンド、あるいは他ジャンルとの融合というのは、あくまでもオルタナティヴなものであったり、完全には一体化しないズレみたいなものを楽しむ部分もあった。そんな時代と比べると、本作のようにここまでシームレスに混ざり合うのは驚きでもあるし、ジャンルの融合というものを意識することさえ野暮のように思える。これほどまでの完成度の高さは、ある意味、KID FRESINO 自身がひとつのジャンルとも言えなくもないが、そのバックボーンにはしっかりと “ヒップホップ” というものが存在している。しかもそれは最高級の “ヒップホップ” だ。

 先行シングル曲でもある “No Sun” や “Rondo” が本作の主軸となっているが、その一方でサウンドの面での振れ幅は非常に広い。その中でも最も激しく触れているのが1曲目の “Shit, V12” だろう。ロンドンを拠点に活動する object blue によるテクノとベース・ミュージックをミックスしたようなトラックの上に KID FRESINO がバイリンガルの高速ラップを乗せ、感覚的に発せられる彼のラップの絶対的な格好良さがストレートに伝わってくる。外部プロデューサーという意味では、前作から引き続き参加の Seiho が手がけた “lea Seydoux” のトラップやダブステップなど様々なテイストが入り混じったトラックに対する、KID FRESINO の乗りこなし方も実に見事だ。

 一方でこれらの曲とは全く異なる方向性で非常にエッジの効いているのが、バンド・サウンドが全面に出ている “Lungs” という曲で、ゲスト参加している Otagiri というラッパーの存在感は群を抜いている。彼のスタイルはラップというよりもポエトリーにも近いのだが、フロウや言語感覚が実に独特で、しかもバンド主体のトラックとも相性良く、KID FRESINO との掛け合いまで全てが完璧だ。ラッパーの参加曲としては Campanella をフィーチャしたトライバルなビートがめちゃくちゃ格好良い “Girl got a cute face” や “incident” (JAGGLA参加)、“dejavu” (BIM参加)といずれも素晴らしい出来なのだが、結局、“Lungs” を一番繰り返して聞いてしまっている。そんな中毒性がこの曲にはある。

 一方でシンガーをフィーチャした “Cats & Dogs” (カネコアヤノ参加)と “youth” (長谷川白紙参加)も本作の振れ幅の広さを象徴する曲だろう。フォーキーなテイストを持つ前者に、現代音楽とポップスを融合させたような後者と、それぞれテイストは全く異なるのだが、KID FRESINO のフィルターを通すことでそれぞれがひとつのアルバムの中で見事に溶け合っている。
 本作はヒップホップ以外のフィールドにいるリスナーにも間違いなく響く作品であるし、逆にヒップホップの中にいる人にも新たな刺激と気づきを与えてくれる作品に違いない。

大前至

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