Home > Columns > Opinions > 続報:ウォール街デモ- ズコッティ・パークにて
Nov.24 (thu) thanksgiving & Occupy Wall Street
11月24日はサンクス・ギヴィング・ディ(11月の第4木曜日)。アメリカではいちばん大きなホリディ。クリスマスよりもサンクス・ギヴィング・ディに、みんな家族の元へ帰る。街はひっそり静まり返り、ニューヨークはゴースト・タウン化する。私の友だちはアパートのビルのなかで残っているのは私だけと嘆いている......。
この日は、家族や友だちでディナー・パーティを催す日で、ターキーの丸焼き、グレイビーソース、クランベリーソース、マッシュポテト、スタッフィング、コーンブレッド、温野菜、パンプキンパイなどなど、食べ物に溢れる、別名「ターキー・ディ」、とも呼ばれるくらいだ。実際、スーパーに買い出しに行くと、ターキーとじゃがいものコーナーは売り切れ。
私は今年は居残り組。昨日も街に出てみたが、ひっそりとしていたし、今日も寂しい感じだろうと諦め半分でウォール街に繰り出した。なによりも、先日インタヴューしたグレッグ・フォックスが語っていたウォール街のデモの中心地をこの目でたしかめたかったというのがある。
デモ(座り込み占拠)の中心となったズコッティ・パークは、11月14日の夜中(11/15の早朝)に警官によるデモ参加者の強制排除で200人以上が逮捕された。いちじ騒然とし、私たちのまわりのミュージシャンからも「いまウォール街で撤去作業が行われている!」などというツイッターが随時アップデートされた。(ちょうどインタヴューした、グレッグ・フォックスの翻訳が一段落したところだっ。)
今週月曜日(11/21、強制排除から一週間後)には、グレッグ・フォックスも経営に携わるブルックリンのシェア・スタジアムで、テッド・レオ、チータス・アンドロニカス、ソ・ソ・グロスのウォール街デモをサポートするベネフィットショーが開かれた。
壁にはOWS(ウォール街を占拠せよ)の文字が描かれ、バンドも観客も大いに盛り上がっていた。チータスの最後のほうのセットで、誰かがドリンキング・ソングをリクエストする。チータスは、「これはドリンキングでなく、公正の歌」と言ってザ・クラッシュで有名な"I Fought the Law"をカヴァーしたあと、テッドレオとソ・ソ・グロスのヴォーカリスト、アレックス・ディバインをステージに呼んで、こんどはビリー・ブラックの"To Have and To Have Not"をカヴァーする。この曲のコーラスは、「Just because you're better than me(だって君は君は僕より良い)/ Doesn't mean I'm lazy(僕が怠け者という意味ではなく)/ Just because you're going forwards(だって君は前に進んでる)/ Doesn't mean I'm going backwards(僕が後退しているっていう意味ではなく)」というものである。
話を今日に戻す。ウォール街の駅を降りると、すぐ横のトリニティ教会がある。それを左手にブロードウェイを北に上がると、2ブロックほど先に、ズコッティ・パークが見えてくる。強制排除と聞いていたのでガラーンとしているのかなと思いきや、意外にも人がたくさんいた。もちろん警察も大勢いるけど、その公園だけがわやわやしている。なかに入ろうとすると可愛らしい女の子に「お腹減ってる? 今日はサンクス・ギヴィング・フードを無料でサーブしてるの。ターキーがいい? ヴェジタリアンがいい?」と聞かれる。見れば、たくさんの人がフードラインに並んでいる。「thanksgiving line dinner start here(サンクス・ギビングのディナーの列はここからスタート)」というサインを持った男の人がせっせと列の整頓をしている。レストランや個人サポーターの協力により、5000人分を用意したらしい。私はもちろんターキーをリクエスト。「エンジョイ!」ときびきび働く元気の良い彼女。その横では、「nirvana positively pure 」というブランドの水もサーヴしていた。
ここで働いている人はみんなボランティア。サンクス・ギヴィングらしいことがここでできるとはまったく想像していなかったので、なんだか得した気分になった。メーシーズのサンクス・ギヴィングパレードにいくよりもサンクスギヴィングが味わえるかも。
公園のなかにはいると人びとが思い思いに、メッセージをいれたプラカードを掲げている。物を作って置いていたり、リーディングをしていたり、アコースティック・ライヴをしていたり、遊園地みたいになっている。リーダーというか中心になる人がいないので、どこに行って良いのかもわからず、横ではすでに誰かが警察官と言い合いになっている。誰かが逮捕されていたり、かなりカオス状態だ。カメラやマイクを持った報道陣も多く、まだまだ動きの真っ只なかなんだなと感じる。
私はせっかくなので、そこに座って、サーブしてもらったサンクス・ギビング・ディナーを食べてみた。ターキー(w/クランベリーソース、グレイヴィー)、マッシュド・ポテト、マッシュド・パンプキン、ブレッドが入っていて、きちんとしていた。
しばらく音楽を聞いたり、人びとと交流したり、様子を見ていたが、ヒッピーの聖地のような、すでに観光地のようにもなっている。この動きがどの方向に行くのかは人びとがひとつになって、どのようにこの困難な金融問題/貧困問題に立ち向かうのかにかかっている。時間も経っているし、そこにいるだけでなく何か具体的な、目に見える動きが必要だろう。それがないことには、このカオス状態はこのまま続くと思う。
その日は私たちのまわりのインディ・バンドたちはいなかったが、このあいだにウォール街のデモをサポートするミュージシャンのリストも増えてきているし、インディ・ミュージック・リスナーのなかでは今日のアメリカが抱えた金融問題、経済格差の問題への関心は高まっている。
11月29日には、ユニオンプールという会場で、ライアン・ソウヤー(トール・ファー、スタビング・イーストワードw/Tunde of TVOTR )、GDFX、サイティングスのショーがある。これもこの動きに何かを訴えるショーになる。人びとが未来のためにひとつになることを強く認識したとき、まだ混沌としているウォール街デモの動きにも光が見えるのかもしれない。