Home > Regulars > 編集後記 > 編集後記(2019年12月30日/野田努)
2019年のあいだ編集後記をほとんど更新できなかった理由を清水エスパルスの散々のていたらくに集約させてしまうのは、Jリーグに興味のない人にとってはさっぱり意味がわからない話だろうが、本当だからしょうがない。なんでこんなに弱くなっちまったんだろうと、試合を見ながら悲しくなるばかりだった。こうなると心に余裕が持てず、すべてがどうでもよくなってしまうのがサッカーファンのなかば病的なやばいところである。だから2020年は清水エスパルスに費やしている時間を減らすことを目標にしている。その分もっと音楽を聴いているほうがよほど建設的だ。
それはさておき、2019年個人的に嬉しかったことは、東京都内において、それも家からそれほど離れていない場所で野生のメダカの生息地帯を発見したことだった。じつはこれ、GW中にである。
話せば長い。ぼくは少年時代に釣りが好きでよく川に釣りに行った。中学生になるとその趣味は捨ててしまったわけだが、子供が生まれてから釣りが復活し、ここ10年あまりは多摩川および帰省すると静岡の川に子供を連れて出かけては魚を釣ってすごいだろと自慢していたのである。調理していっしょに食べたりもした。そして子供が親とは別行動を取るようになってからも、火が付いてしまった釣りへの情熱を隠しきれずにいそいそと川に行たりしていたのだった。釣ったオイカワなんかを家の水槽で飼ったりしていたのだが、あれはわりと大きくなってしまうので、ある程度のサイズになったら近所の熱帯魚屋さんに譲ったり、川に放流したり、それからまた暇があれば釣りに行ったり、そんなことを繰り返していた矢先、2019年は都内ではいまどき珍しい野生のメダカの生息地に遭遇してしまったというわけだ。(中略)その日から現在に至るまでの半年以上は、時間があればメダカの研究に費やしているのは言うまでもない。(あの大型台風の翌日もメダカたちの安否を確認しに行ったほどである)
もちろん2019年も良い音楽作品に出会えたことは、やはりぼくにとって最高の喜びである。個人的にもっともぐっときた曲はアート・アンサブル・オブ・シカゴの“ウィ・アー・オン・ジ・エッジ”だ。今年のベスト・ソング。レヴューでも書いたように、ムーア・マザーの言葉も素晴らしい。「私たちは厳しい状況にいる。勝利のために」──清水エスパルスに聴かせたい、この圧倒的な力を持った曲はspotifyでは聴けない。騙されたと思ってCDかアナログ盤を購入して聴いて下さい。これこそゴミの山から見つけた宝石です。
最後に、じつを言うとweb版でele-kingを再開して今年で10年経った。10年間も続けられたなんて、あまりにも実感がない。毎日毎日無我夢中で、気がつくと1年経ってまた気がつくと1年経ってという感覚でやってきているので、正直なところよくわからないのであるが、こうして続けられているのも面白がってくれる読者がいて、書いてくれるライターがいて、ここでは名前を書ききれないほど本当に多くの人たちの協力があってのこと。心の底からありがとうございます。
それにしても、初めて会ったときはまだ20代半ばだった木津毅君も数年前に30代を越えているわけだ。いろんな出会いがあることは、メディアをやっていて嬉しいことのひとつである。ele-kingでは、音楽について考えたり喋ったりすることがなによりも楽しいのだということを性懲りもなくこれからも主張していきたいと思います。音楽メディアとはリスナーの文化でもある。
なんでライターのなりたい人、音楽について書いてみたいと思っている人は、いつでもいいのでinfo@ele-king.net(ライター希望宛)にメール下さい。別に前衛音楽やマイナーな音楽について詳しい人を募集しているわけではないですよ。極端な話、ただその原稿が面白ければ主題はなんだっていいです。んなわけで、じゃ、良いお年をお迎えください。(野田努)