Home > Interviews > interview with Takeshi "Tico" Toki - 国立そよかぜ通り
自然そのものに憧れてたね。街を否定するわけじゃないけど、いちばん必要なのは、ありのままの自然。ベタだけど、俺、ホントにそう思うんだよね。自然のなかで遊ぶのが好きなの。
■表現者って自分が抱えた重たさを表に出す人と出さない人がいるけど、土生くんは後者だよね。
土生:重たいもの、別にないからね。
■はははは、、そんな事ないでしょう(笑)。そこにリトテンの、大袈裟に言えば哲学みたいなものを感じるんだよね。
土生:そんなこと考えてないけどね。
■そんなことないでしょ。
土生:そんな暗くないからね、俺。
■それは暗い暗くないって......。
土生:うん、わかるよ、言ってる意味は。俺は確実に後者だね。
■でも、自分で聴いてる音楽には、そうした重さを出してるものだってあるじゃん。
土生:もちろん。
■でも、自分が作る作品は絶対にそうはならないんだよね。
土生:性格じゃないのかな。
■ホントに性格的なこと?
土生:だと思うよ。
■ますますそうなってる感じもするんだよね。10年前はもうちょっと重たさを出していたじゃん。子供たちに歌ってもらったりとか(VOICES OF FLOWERS )。
土生:だから天然になったんだよね。天然の状態に近づいたんだと思うよ。
■はははは。
土生:マジで。
■なるほど。
土生:ジャンルもどうでも良くなった。
■それは音楽に出てるよね。
土生:ジャンル越えだね。
■リトテンの音楽は、もはやエキゾティックに聴こえないんだよね。この国の音楽に聴こえるんだよ。
土生:DNAから発してるからね。
■はははは、
土生:俺も演奏で出稼ぎが多いから、日本のいろんなところ行くしさ、そういうところでたくさん自然のヴァイブスや人の情けを受けるからね。
■おそらくリトテンが表象している日本とは、そういう日本なんだと思うよ。
土生:東京以外はホントに面白いね、日本。
■前も言ってたよね。
土生:そういうエキスが入っちゃってるんだよ。理屈や言葉じゃない世界だね。
■土生くんはさ、片目が見えないじゃない。そのことは土生くんのなかでどれくらいの......。
土生:忘れてたね(笑)。片っぽが見えてれば充分じゃねーの。
■はははは、去年、こだま(和文)さんが本(空をあおいで)を出したじゃん。そのなかに土生くんの話しが再録されているんだよね。タケシの話しとして。
土生:まあしょうがないよね。自分で勝手にやっちゃった話だから。
■こだまさんが、そういうことを引き留めなかった自分を悔やんだって書いてたけど。
土生:無理無理そんなことは。
■ふーん
土生:まあでも、半分死にかけたからね。
■どのくらい入院してたの?
土生:けっこう入院してたかな。路上に止まって駐車してた車にぶつかったんだけど、すぐに記憶なくなって、その車の人が救急車呼んでくれて。
■いい人だったね。
土生:仁義がある、すごくいい人だったね。
■相手は大丈夫だったの?
土生:その人は、車から出てたんだよ。
■じゃあ、土生くんがひとりで突っ込んじゃったわけか。
土生:そう。
■その経験はやっぱ大きかったわけでしょ?
土生:そりゃそうだよ。死にかけたからね。三途の川でバーベキューしてきたよ。
■どんな思いだったの?
土生:あんま覚えてねぇかな。
■ブライアン・イーノが交通事故に遭って、入院先の病室のベッドのなかで雨の音を聴きながらアンビエント・ミュージックのコンセプトを考えたっていうエピソードがあるけど。
土生:へー、いい話だね。
■きっとそういう大きな事故って、音楽で表現している人にとって大きな契機になるでしょ。『ラティチュード』の頃はまだ事故してないでしょ?
土生:いや、『ラティチュード』の頃かなぁ。たぶんその頃だと思う......だったような気が......。頭を強打したんで覚えてねぇな。
■それでスティールパンにしたの?
土生:事故ったからじゃなくて、その頃まだ玄さんが正式メンバーじゃなくて、アルバムにゲストで参加してもらったりしてて、俺、パンすごく好きだったけど金がなくて買えなかったんだよね。そんな話したら玄さんが中古で安く譲ってくれて、それが縁で、そっからこう、花が開いていった。
■練習はどこでやったの?
土生:家でやってたよ。ぜんぜん問題ないよ。近所のバアちゃんも、「綺麗な音ねぇ~」とか言って、みかんくれたりしてたから。
■でも、そういう死にかけたことって、自分にどんな変化をもたらしたと思う?
土生:どうかなー。......まだ余計なこと考えるしね。(小さな声で)合コンしたいとかさ
■え?
土生:合コンしたいとかさ!
■はははは、またそんなこと言って。
土生:だから事故した当時は煩悩を削ぎ落としていたんだよね。それでも俗世間に戻ってくると、人間とはバカなもので、煩悩が生まれてくるんだ、やっぱり。あれしたい、これしたい......って。
■『ロン・リディム』はそう言われると、いちばん澄んでるのかな?
土生:そうかもしれないね。言われてみれば、めっちゃピュアだったかもしれない。
■じゃあ、『ケダコ・サウンズ』ぐらいは?
土生:『ケダコ』ぐらいになると、もう煩悩まみれなんだよ(笑)。
■そうは言いながら、その煩悩を捨てたときの土生くんも残っているでしょ。
土生:残ってるよ。そのイメージはつねに持っている。なかなかそうはいかないんだけどね。
■合コンは照れ隠しでしょ?
土生:なかなか実現しないからね(笑)。
■はははは、
土生:ぶっちゃけ、そんな時間ないんだけど。
取材:野田 努(2011年7月05日)