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interview with GING NANG BOYZ (Kazunobu Mineta)

interview with GING NANG BOYZ (Kazunobu Mineta)

銀杏BOYZの世界/銀杏BOYZと世界、のその後

――銀杏BOYZ(峯田和伸)、インタヴュー 前編

磯部 涼    写真:寺沢美遊   Jan 16,2014 UP

たとえばフライング・ロータスがよかったからそういうものをやろうとしたって、無理じゃんそんなの。でも、その作品の匂いを覚えておいて、それを銀杏の結界の中で放ったら面白いかなって思ったの。

■さて、新作の内容について訊こうと思うんですが、『光のなかに立っていてね』の特徴は「ノイズ」と「打ち込み」だと思うんです。こうしたベクトルに向かっていったのはいつ頃からなんでしょうか?

峯田:まず、打ち込みに関して言うと、ライヴをやっていくなかで、いつからか、限界を感じはじめたというのもあったかもしれない。GOING STEADYの時代からずっと、肉体的に戦うことこそがライヴだと捉えていたんですよ。集まってきてくれたひとたちを、わーっと踊らせるのではなくて、何かに対して足掻いている姿を見せる場所。いま思うと、その空間はバンド・メンバーもお客さんもぐちゃぐちゃになった異常なものだったと思う。でも、そればっかりをやりつづけていると、身体がぶっ壊れたりだとか、喉を潰したりだとか、現実的な問題が出てきて。だから、どこかで、オレは肉体的なところだけではやっていけないと思った。いちばん理想なのはバンドを続けることであって、そのために、これまで10割肉体的なところでやってきたのを何割か……2割でも3割でもいいんだけど、非肉体的なところをスポイトで入れてあげないと、多分、もう、バンドはもたないなって考えたの。それが、2008年ぐらいかな。

■では、省エネといったら響きが悪いですけど、バンドの今後のことを考えた上での打ち込みの導入、という側面もあったんですかね?

峯田:ただ、それも、付け焼き刃ではだめで。デジタルを1回、自分たちの肉体に取り込んで、吐き出さないといけなくて。そのためには、1週間ではできなくて、どうしても時間がかかってしまったということなのかな。

■肉体性から離れるための打ち込みとは言え、打ち込みを肉体化するのにはそれなりの時間が必要だったと。打ち込みのドラムに関してはあびちゃんと村井(守/ドラム)くんが担当したと聞きましたが。

峯田:そう、リズム・トラックはふたりで。ウワモノはチンくんとオレ。基本的には、あびちゃんとチンくんが主導で、村井くんも意見を言って、最終的にはオレがジャッジ。「これは面白くない」とか「ここはもうちょっとこうしよう」とか。

■そこは、マニピュレーターは入れずに自分たちでやろうと?

峯田:やっぱり、結界の中から生まれるものが大事だから(笑)。

■結界の中に他人を入れたくないから、自分たちで打ち込まないといけないんだ(笑)。

峯田:打ち込みの音楽も好きだよ。とは言え、たとえばフライング・ロータスがよかったからそういうものをやろうとしたって、無理じゃんそんなの。でも、フライング・ロータスの音を再現するんじゃなくて、その作品の匂いを覚えておいて、それを銀杏の結界の中で放ったら面白いかなって思ったの。

■ただ、いちから勉強するところからはじめたわけですよね? 全然、省エネになってない(笑)。

峯田:だから、そっちの畑の人には絶対に勝てないんだよね。でも、うちらだけにしかできないこともあるはずで、本気になれば面白いものになるんじゃないかっていう確信も持っていた。たとえば、(“あいどんわないだい”の新しいヴァージョンの)“I DON’T WANNA DIE FOREVER”もあまりテクノの方には行かないで、もうちょっと、ゲーセンの音みたいな感じを取り入れられないかなって。あと、パチンコ屋の音とか。阿佐ヶ谷のパチンコ屋が、また、すげーうるさいんだよ!

■“I DON’T WANNA~”はガバみたいだと思ったんですけど、あの強烈なハイと、煽動的なリズムはパチンコ屋なんだ(笑)。

音楽ではなくて、生活の中にあるノイズがあてになっていて。震災のときはさすがにテレビを観ていたんだけど、(中略)その後ろで鳴っている、ゴーーーっていう地鳴りの音。津波に街が飲まれていく音。それが、どんなレコードよりも、どんなCDよりも強烈で。

峯田:オレ、全然、パチンコやんないの。でも、レコーディングの追い込みのときは他の音楽を聴きたくないからテレビもつけられなくて。あと、飯を食おうと思って店に入ってもジャズとか流れてるでしょ? あれすら気になって外に出たりしてたの。そうすると、どんどん、ストレスが溜まってきて。そんなときに、気晴らしにパチンコ屋に行くと、バーッて洗い流してくれるんだよ。

■ノイズで頭が空っぽになる。

峯田:そうそう。あれがいいの。だから、金は2千円ぐらいしか使ってない。音を浴びに行くの。

■じゃあ、前の2枚……『君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命』と『DOOR』は、“トラッシュ”の歌詞に象徴されるように、たくさんの音楽からインスパイアされていたと思うんですけど、今回のレコーディングの間は、他人のレコードを聴いていなかった?

峯田:うん。音楽ではなくて、生活の中にあるノイズがあてになっていて。震災のときはさすがにテレビを観ていたんだけど、何よりもショックだったのは、一般のひとが携帯とかで撮った映像も流れてたでしょう?

■あまりにも生々しくて、その後は流れていないようなものも多いですよね。

峯田:そうそう。その後ろで鳴っている、ゴーーーっていう地鳴りの音。津波に街が飲まれていく音。それが、どんなレコードよりも、どんなCDよりも強烈で。テレビを消しても、目を瞑っても、あの音から逃れられなくて。ただ、音楽をやっているオレからすると、どうしても、「あの音の原理は?」とか考えちゃうんだよね。ノイズを取り入れたのはそういうこともあったのかな。

■じゃあ、パチンコっていう通俗的なものだったりとか、地震っていう自然のものだったりとか、音楽以外のものが音楽を超えちゃっている状況があって、銀杏なりにそれに対峙するというか、それを越えるものをつくろうと考えたからこそノイズを取り入れたのだと。

峯田:かといって、アヴァンギャルドなものにはしたくなくて、ロックの定義が若い人に影響を与えることだとすれば、エンターテイメントのど真ん中に、自分がショックを受けたあの音をぶつけないと意味がないとも思った。

■個人的には、『光のなかに~』を初めて聴いたとき、銀杏BOYZとSTRUGGLE FOR PRIDEっていう、自分が2000年代半ばに衝撃を受けた2つのバンドが融合したように思えて、びっくりしましたけどね。

峯田:チンくんは、NERVESKADEとか、ノイズ・コアのライヴに行って、最前列でエフェクターのセッティングを見てたみたいよ。でも、オレは、そういったギター・ノイズをあまり聴かないようにしてた。オレまでハマると真似になっちゃいそうだから、あえて距離を取ってたの。

ロックの定義が若い人に影響を与えることだとすれば、エンターテイメントのど真ん中に、自分がショックを受けたあの音をぶつけないと意味がないとも思った。

■峯田くんがブログを熱心にやっていたときは、いつも、最後に「おやすみBGM」という項目があって、それを読めばいまどんな音楽に興味があるのかわかったけど、最近はそれすらも書かなくなっていたから、何を聴いているんだろうって気になっていたんですよね。

峯田:レコーディングの悪影響にならないために聴かないようにはしてたけど、でも、勝手に入ってくるものは避けられないよね。パソコンをつければYotubeの関連動画に目が行って、ふと観てみたりさ。「へー、最近、こういうのが流行ってるんだ」って。あと、たまにテレビをつけると、CMで流れてきたり。クリープハイプとか、「あー、いい歌だな」って思ったよ。ただ、自分たちの結界の中には持ち込まないようにしてた。

■フライング・ロータスの匂いの話にしても、結界の外と中の違いに関してはかなり意識的だったんですね。

峯田:まぁ、音楽は聴きたいって意志がなくても、勝手に入ってくるものじゃん? だから、そこまでしても聴こえてくるものはすごいなぁと思ってた。

■ノイズって情報量がゼロでもありマックスでもあるから、情報量が多かった前の2枚を振り切ってそっちに行くのはよくわかるんですよ。ただ、『光のなかに~』に他の音楽からの影響が感じられないかというとそうではなくて、さらに、新しい要素も入ってきてますよね。たとえば、“愛してるってゆってよね”はラップじゃないですか。

峯田:あれは、もともと、〈ザンジバルナイト〉(リリー・フランキー主催のイヴェント)にソロで出た際に、数曲、ギターの弾き語りで歌って、最後にカラオケを流して歌うために、カオシレーターでつくったんだよね。そのときは面白半分でやってたんだけど、メンバーが気に入って、もうちょっと格好よくしてアルバムにも入れようってことになったの。

■ここ数年は、Eccyだったり、オロカモノポテチだったり、広義のクラブ・ミュージックのアーティストたちとも共作していましたけど、彼らをゲストに入れるつもりはなかった?

峯田:うん。ノウハウはいろいろと教えてもらったけど、今回は、やっぱり、自分たちだけでやろうって。

取材:磯部涼(2014年1月16日)

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Profile

磯部 涼磯部 涼/Ryo Isobe
1978年、千葉県生まれ。音楽ライター。90年代後半から執筆活動を開始。04年には日本のアンダーグラウンドな音楽/カルチャーについての原稿をまとめた単行本『ヒーローはいつだって君をがっかりさせる』を太田出版より刊行。

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