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interview with Levon Vinent

interview with Levon Vinent

大統領もホームレスも、そして君も同じハウスを聴く

──レヴォン・ヴィンセント、インタヴュー

取材・文:髙橋勇人    Dec 26,2016 UP

アンディ・ウォーホルは素晴らしい観察者でもあると思う。彼もまた俺が好きな人間だ。企業文化がもたらす均一化の二面性について、ウォーホルはかなり早い段階でコメントしているよね。それはまさに俺が言いたかったことだ。キャンベル・スープの作品にも表れているように、彼はその実践もしている。それに彼はニューヨーカーの持つ一面を体現しているとも思うんだ。

■2016年、あなたは自身のレーベル〈Novel Sound〉のコンピレーション『Rarities』を日本限定でリリースしました。リリースに至った経緯を教えてくれますか?

LV:日本のために何か特別なことをしたかったんだよ。俺は小さい頃、野球カードを夢中になって集めていた。いまはスケード・ボードやレコードのコレクターでもあって、集めることが常に好きだった。日本ではすごいレコード・コレクターにも会ったことがあるんだけど、あの国は集めることに対して特別な意識を持っていると思ったんだ。だから彼らに貢献できるようなことをしたかった。欧米ではディスコグスに載せるためだけにレコードを買う輩がたくさんいるけれど、日本では単純に好きだから買う人が多いという印象を受けたね。それもあって、過去にはシングル「Six Figures」の日本語表記バージョンをリリースしたこともあった。今回のコンピレーションも好評だったと友人たちから聴いているし、とても喜んでいるよ。

■どのような基準で曲を選んだのでしょうか?

LV:リスナーの反応が良く、かつ自分が特別だと思う曲のセレクションになっていて、曲同士のコンビネーションも重視した。それから未発表曲も入っている。

Levon Vincent – Revs/Cost


Levon Vincent
Novel Sound/Pヴァイン

HouseTechno

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Levon Vincent - Rarities
Pヴァイン

HouseTechno

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■“Impression Of A Rainstorm”のようなキラー・チューンはどのように生まれたんですか?

LV:あの曲は音楽の印象主義に基づいたものだ。暴風雨をシンセサイザーとノイズで表現したというわけさ。12年ほど前に作った“Air Raid”は爆弾の爆発を音で表している。ドビュッシーが“海”において、波がぶつかるのを表現するためにピアノを用いたようにね。彼は印象主義の最初期の例だ。ドナルド・トランプを表現するとしたら、馬鹿な喋り方する、というような感じさ。

■このコンピレーションには“Revs/Cost”が入っています。この曲はダブステップ・プロデューサーであるぺヴァラリストなど、ルーツがハウス/テクノではないDJにもプレイされてきました。曲がリリースされた2011年の前後は、ダブステップやその周辺のベース・ミュージックのプレイヤーたちがテクノへと幅を広げていった時期でもあり、彼らのミックスを通してあなたのことを知ったリスナーも多いです。

LV:ああたしかに。UKのダブステップ界隈から反応がけっこうあったんだよ。“Revs/Cost”をリリースしたとき、ベンUFOがやっている〈Hessle Audio〉や、ボディカも連絡をくれたね。2015年のアルバムは『Pitchfork』のようなロック系の媒体からもこれも評価されたんだけど、自分のコミュニティの外とクロスオーヴァーできるのはとてもクールなことだ。
 もちろん、俺はコミュニティの外の音楽もチェックしている。俺はずっとハウス/テクノをプレイしてきたけど、90年代にはヒップホップやドラムンベースもよく聴いた。そういったジャンルを別個として捉えているというよりは、ひとつのエレクトロニック・ミュージックとして理解していたよ。

■この曲名はニューヨークのグラフィティ・アーティストのレヴスとアダム・コストの名前から取られていますね。

LV:その通り。俺が子供の頃、住んでいたマンハッタンの近所は彼らのグラフィティだらけだった。俺が10代の頃、確実に彼らに影響されたね。16歳の頃、ウェスト・フォースのタワーレコードで働いていたときのことだ。そこから自分のフラットへの帰り道、「Revs Cost」の文字が本当に至る所にあった。フラットの向かいのビルなんか、その文字で全体が埋め尽くされていたね。

■そういった意味でも、あなたはベルリンにニューヨークを見出しているのかもしれませんね。

LV:ああ。それから現在のベルリンにはスコッター(廃墟となったビルや家屋の不法定住者)がたくさんいるんだけど、それも昔のニューヨークに似ているんだ。当時のロウワー・イースト・サイドはスコッターが多かった。現在のニューヨークからはそういった文化が消えてしまったんだけど、グラフィティと同様にそれがいまもベルリンには残っている。

■あなたはアイルランドのプロデューサー・デュオのテリアーズに、ベルリンでの滞在費を与え、その間彼らが楽曲制作に集中できる環境を提供しました。その意図とは何だったのでしょうか?

LV:音楽ビジネスとは、そこに関わる人びとが何をするかによって作られている。ビジネスに「誠意が欠けている」とか「コマーシャルすぎる」とか不平を言うミュージシャンが多くいるけれど、自分たちで良いビジネスを作ることは可能なんだ。でも、新しい世代のミュージシャンたちの多くは、まず何をどうすればいいのかわからない。そこで大きな企業に頼る者もいる。企業文化は人間にとって共通のものだからそれを否定するつもりは全くないけれど、人間性が均一化されてしまうこともある。もちろん均一化によって、人々の生活の質も均一に保たれ、誰もが同じものに接することができるという利点もあるのも事実だ。そこでセルフ・プロデュースの点で納得がいかないんだったら、自分たちで状況を変える工夫をすればいい。

■あなたはフロアの先を読むような的確な選曲センスでも知られています。DJにおいて何を重視しますか?

LV:自分のDJセットがひとつの物語になるようになって、フロアの人びとに何かしらのインパクトを残すよう心がけているよ。ダンス・ミュージックは偉大なイコライザー(平等をもたらすもの)だ。ゲイ、ストレート、ブラック、ホワイト、リッチ、プア……、多様な人びとがひとつの部屋で同じ活動をする。デヴィッド・マンキューソがそう言っていた。彼にはフロアにおける社会変革の促進という理念があっただろ。マンキューソには常に親しみを感じていたね。尊敬していたDJのひとりだ。

■そういえば、ある写真であなたはアンディ・ウォーホルのTシャツを着ていますが、彼も同じようなことを言っています。「大統領がコカコーラを飲む、リズ・テーラーがコカコーラを飲む、そして考えたら君もコカコーラを飲むわけだ。コークはコーク、どれだけ金があっても街角のホームレスが飲んでいるものよりおいしいコークなんて買えない。コークはどれもおんなじでコークはぜんぶおいしい」。これは先ほどの均一性の話にもつながりませんか?

LV:ははは! その通りだね。ウォーホルは素晴らしい観察者でもあると思う。彼もまた俺が好きな人間だ。さっき言った企業文化がもたらす均一化の二面性について、ウォーホルはかなり早い段階でコメントしているよね。それはまさに俺が言いたかったことだ。キャンベル・スープの作品にも表れているように、彼はその実践もしている。また彼はニューヨーカーの持つ一面を体現しているとも思うんだ。

■ロンドンのクラブ、ファブリックの閉鎖についてうかがいます。もともと10月のロンドンでのDJであなたはファブリックでプレイする予定でしたが、閉鎖を受けて別のクラブで開催されたファブリックを支援するイベントに出演しました。閉鎖のニュースを受けてどう思ったのでしょうか?

LV:率直にとても悲しかった。ファブリックが大好きだったからね。クラブ、DJブース、どれもお気に入りでホームだと思っている。多くの人々がサポートを表明しているし、支援金もたくさん集まっているから、次の新しい活動につながればと思う(注:11月、審議のもとファブリックは営業再開が決定した)。

■ロンドンの街を歩いていると、「#savefabric」のステッカーが多くの場所に貼られていて、多くの人びとが一丸となって問題に取り組もうという姿勢が伝わってきます。あなたは90年代のジュリアーニ市政を経験したわけですが、当時、クラブ文化を守るムーヴメントはあったのでしょうか?

LV:そういうわけでもなかったんだよ。議論もプロテストも起きなかった。ある日起きたら、街全体が突然変わってしまったような感じだったからね。それからニューヨークが変わってしまったのはジュリアーニの責任だけじゃなく、監視カメラが街に導入されたのも大きな要因だ。最初にカメラが導入されたとき、とても大きなデモが起きた。多くのニューヨーカーが望んでいなかったことだったからね。でも、その流れは止まらなかった。たしかに殺人事件の件数は下がったよ。俺がいた頃のニューヨークは殺人率がかなり高かったんだ。その一方で、カメラは文化的な活動にも作用し、街が変わってしまった。路上のすべてが監視される状況だ。間接的にしろ、当然それはクラブ文化の精神にも影響があったと思う。そのようにして善悪の両方がもたらされたというわけだ。議論もプロテストも起きなかったと言ったけど、俺の世代はタバコのボイコットとか、なんらかの運動は多くしていたよ。俺もいままで様々なチャリティに関わってきた。

■ 2017年、〈Novel Sound〉からエリック・マルツ(Eric Maltz)の作品が発表されます。あなた以外のミュージシャンが同レーベルからリリースするのは初めてですよね。その経緯を教えてくれますか?

LV:俺はエリックの音楽を長いこと聴いてきたんだけど、彼は素晴らしいミュージシャンだよ。理由はそれだけさ。彼のキャリアの新しい一歩に携わることができて光栄に思う。

Levon Vincent – Birds

■〈Novel Sound〉のラベルはスタンプからイラストに変わりましたが、あれは誰の絵なんですか?

LV:俺だよ(笑)。レーベルを24時間作り続ける技術について話したけど、それを応用していて、ひとつの絵から複数のラベルを1日もあれば制作できる。今年出したシングル「Birds/Tubular Bells」は鳥がテーマだから鳥の絵を描いた(笑)。“Birds”の曲自体も数百羽の鳥の鳴き声のような音が聴こえる。このシングルにはまだ遊び心があって、“Birds”はヒッチコックの『鳥』を、“Tubular Bells”は『エクソシスト』を表している。つまり両方ともホラー映画につながっているというわけさ。

■最後の質問です。すべてのミュージシャンがあなたのような活動をしているわけではありません。そのなかで、インディペンデントであり続けることがあなたに課せられた役割であると考えていますか?

LV:シーンやコミュニティでの俺自身の特別な役割があるとは思わない。アーティストとして働くこと。自分のやりたいことを100パーセントやること、これに尽きる。実験続きの人生さ。来年は俺に住む場所があるとは限らないだろう? だからとにかく仕事を続けることが目標だよ。その結果として、誰かをインスパイアできたら嬉しい。俺は意見を言うけれど論争をしたいわけじゃない。曲を作り上げるために、ミュージシャンは長い時間を孤独に過ごすから、その活動を持続させるためにも、何か言ってくれる人間が必要になる。それにDJが終わった後、「あなたのレコードが好き」って言われるのは本当に光栄なことだ。

■何かリスナーにコメントはありますか?

LV:本当に感謝しているよ。近いうちに日本に戻れることが楽しみだ!

取材・文:髙橋勇人(2016年12月26日)

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Profile

髙橋勇人(たかはし はやと)髙橋勇人(たかはし はやと)
1990年、静岡県浜松市生まれ。ロンドン在住。音楽ライター。電子音楽や思想について『ele-king』や『現代思想』などに寄稿。

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