「ele-king」と一致するもの

interview with TNGHT (Hudson Mohawke & Lunice) - ele-king

 チョップされた音声とハンドクラップのループに導かれ、大胆不敵なホーンが飛びこんでくる。2012年にグラスゴーの〈LuckyMe〉と〈Warp〉から共同でリリースされた「TNGHT」は、トラップやジュークを独自に再解釈することで10年代初頭におけるポップ・ミュージックの最高の瞬間をマークした……とまで言ってしまうと褒めすぎだろうか。とりわけ同EPに収められた“Higher Ground”は強烈なインパクトを残し、トゥナイトを形成するルニスハドソン・モホークのふたりは大いに称賛を浴びることとなる。彼らの音楽にはフライング・ロータスのみならずカニエ・ウェストまでもが関心を示し、翌年ふたりは『Yeezus』に招かれることになるわけだけれど、スターへの階段をのぼりつめるまさにその絶好のタイミングで、突如トゥナイトは活動を停止してしまう。ビッグになりすぎると自由に音楽をつくれなくなってしまうから──どうもそういう理由だったらしい。EDMにたいする警戒もあったのだろうか。

 その後ソロとして着実にキャリアを重ねてきたふたりだけれど、ふたたび彼らがトゥナイトの新作にとりかかっていると報じられたのが2017年の6月。それから2年あまりのときを経て、ついにセカンドEP「II」がリリースされた(日本では「TNGHT」と「II」の全曲を収めた独自企画盤CDが発売)。変則的な拍子にクレイジーな犬の鳴き声がかぶさる“Serpent”を筆頭に、キャッチーな旋律がレゲトンのリズムのうえをまるで盆踊りのように舞い遊ぶ“First Body”、低音少なめの空間のなかでおなじく奇妙な旋律がくねくねと這いまわる“What_it_is”など、どの曲もこれまでの彼らの個性を引き継ぎながら、新たな切り口で素っ頓狂なサウンドを楽しませてくれる。モジュラーの音色を活かした異色の“Gimme Summn”なんかは快楽と居心地の悪さの両方を味わわせてくれ、もうやみつきである。
 彼らはなぜいまトゥナイトを復活させることにしたのか? その野心やアティテュードについて、ルニスとハドソン・モホークの両名が語ってくれた。


俺たちのアーティストとしてのゴールは、大きくなりすぎないことなんだよね。ビッグな存在になりすぎて、逆に自分を縛ってしまわないこと。知名度や観客の数が一定の規模に達すると、逆にできることが少なくなってしまう場合があるんだ。(ハドソン・モホーク)

まずは2008年にふたりが出会った経緯と、互いの第一印象を教えてください。〈LuckyMe〉の北米ツアーの際に出会ったのですよね?

ルニス(Lunice、以下L):そうだね。2008年にモントリオールで一緒にライヴをやったのが最初だった。ただ、その前にたしかスコットランドのグラスゴーでライヴをやった記憶があるけど。前からフェスでいつも顔を合わせる仲で、互いが住んでる街にも行ったりして。

ハドソン・モホーク(Hudson Mohawke、以下HM):きっかけはマイスペースだろ。

L:そういえばそうだ(笑)。僕がほかの〈LuckyMe〉のクルーとつながったのってマイスペースだ! SNSでつながって、いまに至る、だね。

なるほど。その後トゥナイトがデビューしたのは2012年です。なぜそのタイミングで? また、なぜ〈LuckyMe〉のほかの組み合わせではなく、このふたりでユニットを組むことになったのですか?

HM&L:とくに理由はないね。

HM:計画してはじめたようなものじゃないんだ。

L:最初に1回だけ、打ち合わせみたいなのはしたけどね。それから2年半ぐらいは何もしなかった。このプロジェクトがストレスになるのはいやだったし、無理に頑張ることもしたくなかったからね。自然に起こるのを待ってた。で、ロンドンにいたときだったんだけど、君が当時やってたトラックのプレミックスが終わって、僕はそのトラックを聴かせてもらってて、「ふたりでなんかやる? 手が空いたし」って話になったんだよね。

HM:そうそう。

L:それがはじまりだった。

HM:俺は、それまでほかのプロデューサーと組んでうまくいったことがなかったんだよね。誰かと一緒にやるのは難しいもんだなと思ってた。でもルニスと組んだら、全部がうまくいったんだよ。互いのやり方でやってるんだけど、相性がいいというかね。

トゥナイトは2013年にすぐ活動を休止してしまいましたが、その理由はなんだったのでしょう? 同年カニエ・ウェスト『Yeezus』の“Blood On The Leaves”に参加したことは、関係がありますか?

L:外的なことが理由だったというよりは、このプロジェクトじたいが理由になっているんだ。トゥナイトをはじめてから、物事が早く進みすぎたんだね。僕たちはふたりとも、徐々に、長い時間をかけて物事を進めていきたいタイプのアーティストなんだ。インスタントに、バズるだけみたいな音楽をつくるのは好きじゃない。まずは自分たちのためにつくりたいと思ってるからね。そうすれば、しばらくは残る音楽がつくれるんじゃないかな。それで当時は、オーディエンスの僕たちへの目線の向け方が僕たちが意図しているものとはズレてきていた。このプロジェクトのブランディングやディレクションという観点から考えた上で、少し距離を置く必要があると判断したんだ。

HM:正直に言って、似たような音楽がたくさん出てきて、俺たちの音楽が唯一無二のもののように感じられなくなると思った。人気が出てくると、どのシーンのアーティストにもおなじようなことが起こるものなんだ。まわりの期待が、つくりだされる音楽を他と似たようなものにしてしまう。俺らはそんなことは絶対にしたくなかったし、一辺倒な音楽しかつくれないループにいったん囚われたら、それがそのアーティストの賞味期限だ。

L:それはほんとに言えてる。

HM:クリエイティヴでい続けられるような環境に自分を置く努力をする必要がある。おなじ音楽ばかりつくっているんじゃなくてね。俺たちはあのとき、自由を得るためにトゥナイトから距離を置いた。オーディエンスの新しいリアクションを得るため、新しい実験をするためにね。ファースト・アルバムを出したあと、それができなくなると感じたんだ。おなじものを求められている気がして。それで、ちょっと時間を置くことにした。

L:競争率の高い世界だからね。みんなが1番になろうとする(笑)。でも僕らはそんなゲームは望んでない。本能的に、自分たちが楽しくいられる音楽をつくりたいだけなんだ。僕らのアルバムを聴いた人は、スタジオで楽しくやってる姿が見えるって言ってくれる。実際にそうなんだ。

では、今回トゥナイトを再開することにしたのはなぜ?

L:とくに理由はないよ。自然と「いまだな」っていうことで、そうなった。2017年だったはずだけど、ロス(・バーチャード、ハドソン・モホークの本名)がモントリオールのフェスでヘッドライナーをやったときに、ステージでコラボして“Higher Ground”をやらないかって誘ってくれて。オーディエンスがトゥナイトをステージで観るのは、それが5年ぶりになったね。あれはいいサプライズになったし、めちゃくちゃ楽しかった。でも当時は、トゥナイトの活動を再開するとまでは考えてなかった。そのステージのあとは、またそれぞれの活動に戻るつもりでいた。それで、2018年になってから彼がメールで「LAにいるからなんか楽しいものつくろうよ」って言ってきて。LAの日差しに当たって、綺麗な木に囲まれて、最高な環境で音楽をつくれるっていいよね。

HM:(笑)。

L:計画してたわけではなくて、ノリだよね(笑)。朝起きたらプールに入って。あーもう、ほんとうに最高だよ(笑)。ストレスフルな環境で制作するのとは大ちがいだ。

HM:ほんとに、フィーリングだったね。「音楽つくろう」、「いいよ」っていう。フィーリングが合わなければやる必要はない。楽しいっていう感情がいちばん大事。まわりに戻ってきてほしいって言われても、こっちがその気じゃなきゃね。俺たちが、楽しい、また新鮮な気分になった、って思ったのがあのタイミングだった。

お互いものすごくテンションが高くなっていて、「いまだ、いま全部やろう」って感じでどんどん進めていった。そしたら、犬が吠えはじめたんだ。スタジオの隣の家の犬がね。それもおもしろくて。その場で起こるものをそのままレコーディングに収めた。(ルニス)

“Higher Ground”のヒットは当時あなたたちに何をもたらしましたか?

L:驚き。ものすごい驚きだね(笑)。

HM:そのとおり。

L:聴く人に何が刺さるかって、つくる側では図れないものだなって痛感した。だからこそ、自分たちがやりたいこと、本能に従うことがいちばん大事なんだってわかったよね。何をつくったとしても、聴く側が気に入れば万歳、気に入らなければ残念、ただそれだけ。彼ら次第なんだ。それで、“Higher Ground”にかんしてはそれが顕著にあらわれた例だった(笑)。方程式なんてないんだなって思い知ったね。

HM:聴く人に何が響くかって、ほんとうに予想できない。“Higher Ground”をつくってる最中もつくったあとも、「これ売れる!」とかぜんぜん思わなかったからね。こっちでは予測できないんだ。だから、当たったときはマジで最高の気分になるんだよね。前もって「はい、これは当たります」って思って曲を出すわけじゃないからさ(笑)。たまにそういう曲ができる。で、結果的に当たったときはすごく嬉しい。

L:あの曲のおかげで、やっぱり自分たちの本能に従うのは大事なんだなって再確認したよ。

以前『RA』で〈LuckyMe〉の特集が組まれたときに、〈LuckyMe〉は「ビッグになりすぎずに成長すること」を心がけている、というような内容を読みました。それは現在でもそうなのでしょうか? だとしたら、その理由は?

L:それがまさに、トゥナイトが活動休止した理由だからね。ことが大きくなりすぎると、たいていの場合は結果的に、音楽のつくり方とか自分たちのプレゼンテイションがインスタントなものになってしまうと思うんだ。そのペースに、自分じしんがついていけなくなる。ちょうどいい規模の環境で制作ができれば、自由でありつづけられるし、余計なことを考えすぎず、自分たちが楽しめる状態のままで音楽をつくりつづけられる。それが、クリエイティヴでありつづけて、つくりだすものを生の状態でキープする秘訣だと思う。

HM:俺たちのアーティストとしてのゴールは、大きくなりすぎないことなんだよね。ビッグな存在になりすぎて、逆に自分を縛ってしまわないこと。俺らよりも断然、商業的に成功してる友だちもたくさんいるけど、「おなじようなものはもうつくりたくないのに」って現状を嘆いてたりする。知名度や観客の数が一定の規模に達すると、逆にできることが少なくなってしまう場合があるんだ。だから、ものすごく有名になったり経済的にものすごく成功したりすると、それまでのクリエイティヴの自由度が得られなくなってしまう。だから、俺たちが言う「ビッグになりすぎない」っていうのは、自分のクリエイティヴの自由度を守るっていう意味なんだよね。

[[SplitPage]]


誰かの作品を観たり聴いたりするとき、そのアーティストがつくったものだってわかるものがいい。俺はそこで、そのアーティストのクリエイティヴィティを判断する。自分のパーソナリティをどれだけ注ぎ込めるか。(ハドソン・モホーク)

あなたたちにとってトゥナイトのプロジェクトは、それぞれのソロとどのようなちがいがありますか?

L:僕のほうは、ソロ活動のほうではより自分自身にフォーカスして、ものすごく細かいところまで気にかけながら音楽をつくっている。トゥナイトのほうはそれとはちがって、自分の持っている情報はもちろん活かすけど、あえて細かいことを気にしすぎず、あまり深いところまでいきすぎないようにしている。誰かと仕事をしていく場合は、その場の衝動だったりケミストリーを活かす、というのがこれまでで僕が学んだことだね。ソロのほうは瞑想みたいな、自分と向き合うものだから。だから、できたものは精巧なものになる。

HM:たしかに。ソロのほうは自分のクリエイティヴの限界を探る感じだよね。トゥナイトだとものすごいシンプルな感じで、考えすぎず、直感のほうが先立ってる。それは、最初から頭に置いてたことだね。ソロは自分の深いとこまでいくんだけど、トゥナイトはもっと動物的。

L:最初のほうでもおなじようなことを言ったけど、トゥナイトでは自分を出すというよりは、もっとダイナミックに音楽をつくってるんだよね。ソロとトゥナイトとのそのちがいは気に入ってる。いいバランスがとれてるよ。

制作はどのようなステップで進められるのでしょう? 役割分担があったり、あるいはどちらかに主導権があったりするのでしょうか?

L:僕がまずメロディを考えて、彼にそれを聴かせて、いろんな楽器を加えていくっていう流れが多いね。オンラインでのやりとりはしないようにしてるんだ。必ずじっさいに会って作業する。その場で最初のメロディに肉づけしていく。たとえばアルバム(『II』)の1曲目の“Serpent”は最初に完成した曲だったんだけど、全部がその場のアドリブで進んでいった。お互いものすごくテンションが高くなっていて、ロスも「いまだ、いま全部やろう」って感じでどんどん進めていった。レコーディングさえも、その場のその勢いで休みなしでやったんだ。ビートを回してるそのままの状態で録音をクリックして、レコーディングをはじめた。そしたら、犬が吠えはじめたんだ。スタジオの隣の家の犬がね。で、その声が入ったから僕は笑ってしまったんだ。でもそれもおもしろくて、その音はそのままにしている。そんな感じで、その場で起こるものをそのままレコーディングに収めた。

HM:プロセスは毎回ちがうけど、おもしろいのが、俺たちが曲をつくってると頻繁に変なアクシデントが起こるんだよね。予想もしてなかったことが起こる。で、それがうまい具合にゾーンに入ってくれる。これとこれを組み合わせるとか思ってもみなかった、とか、こんな音になると思ってなかった、とか、いい驚きがいっぱいある。クソ、このアイディア最高じゃん、みたいなのが突然降りてくる。まだ3曲しかつくってないのに、アルバム1枚よりもインパクトを感じられるものになったりする。勝手にね。そのゾーンに入る感じをいちばん大事にしてる。

“First Body”や“What_it_is”のような、ストレンジかつキャッチーなメロディと強烈なビートとの同居がトゥナイトの真骨頂だと思うのですが、自分たちではトゥナイトの最大の魅力あるいは武器はなんだと思っていますか?

HM:武器ねえ。マシンガンかな(笑)。

L:なんだろうね。愛かな(笑)。

HM:その答え最高じゃん。魅力っていうと、俺たちはなかなかいいからだしてるからね(笑)。

L:でもほんとうに、ふたりの仲の良さみたいなのは役立ってるとは思うな。まじめな話、彼が無意識に持っている音楽にたいする向き合い方がもともと好きで、僕も彼のようなスタンスでいきたいと思わせてくれる。トゥナイトのプロジェクトをはじめたのも、意識をせずにハドソン・モホークの音楽ができあがっていくのをはたから見ていて、彼が彼らしい音楽をつくっていたからなんだ。自分らしい音楽をつくることって、じつはかなり難しいからね。そこがロスのいちばん好きなところなんだ。

HM:それは俺もルニスにたいして思ってる。俺らが大事にしてることだしね。誰かの作品を観たり聴いたりするとき、どんな類のアートだとしても、そのアーティストの過去の作品と作風がちがったとしても、そのアーティストがつくったものだってわかるものがいい。誰かが演奏してたとしても、「これはルニスがつくった曲だな」ってわかるもの。俺はそこで、そのアーティストのクリエイティヴィティを判断する。自分のパーソナリティをどれだけ注ぎ込めるか。

L:僕らは、互いをひとりのアーティストとして認め合っているし、その距離感をあえてつくってる。ひとつのユニットみたいになりすぎると、変だからね(笑)。おなじようなものしかつくれなくなってしまうと思うし、なんていうか、ボーイズ・バンドみたいなノリにはなりたくないからね(笑)。だから、個のアーティストがふたりで音楽をつくっているプロジェクトであるということはつねに意識している。それで、トゥナイトという名前にしているんだ。バンド名というよりは、イヴェント名みたいな響きだからね。

ボーイズ・バンドみたいなノリにはなりたくないからね(笑)。個のアーティストがふたりで音楽をつくっているプロジェクトであるということはつねに意識している。それで、トゥナイトという名前にしているんだ。イヴェント名みたいな響きだからね。(ルニス)

あなたたちの音楽は、スマホやノートPCのショボいスピーカーから鳴らされたときでもしっかりとインパクトが残るように設計されているように感じます。それは意図していますか?

L:わかるでしょ(笑)。意図してるかっていうと、100%意図してる(笑)。悪いスピーカーほど良い。最初は良い音響を使っていた時期もあったよ。思えば、これにかんしてもロスって素晴らしいなと思うんだよ。ロスのミキシングのスタイルはほんとに狂ってる。すごくふつうのやり方で、カシオのキーボードとか、ラップトップとか、アイフォーンとか、そこらへんにある何を使っても自分の音楽をつくれるんだよ。だから僕も、高い安い関係なく、どんな機材を使っても音楽をつくれるようにしている。

トゥナイトのふたりは、ユーチューブやサウンドクラウド直撃世代という印象があります。インターネットやSNSについてはどうお考えですか? たとえば90年代であれば、インターネットは人びとに夢をもたらすもの、いろいろなことを可能にしてくれるポジティヴなものだったのではないかと想像するのですが、今日のインターネットは、人びとにむしろ悪夢をもたらすもの、人間関係をぎくしゃくさせたり、知らないうちに大企業に情報を握られたり、さまざまな弊害を生むネガティヴなもののように見えます。

L:僕らはマイスペース世代だから、SNSとの最初の付き合いはマイスペースだったけど、その後ツイッターが出てきて、インスタグラムが出てきた。僕はいま両方使っているけど、写真もやるからインスタグラムのほうをよく使っている。自分でつくった動画を投稿したりね。でも、SNSはクレイジーだから、没頭しすぎないようには気をつけてる。

通訳:90年代とはちがって、ネガティヴな方向に偏ってきているのも事実ですよね。

HM:まえから思ってたけど、フェイスブックにしてもツイッターにしてもインスタグラムにしても、みんなクソみたいなことばっか言ってるだろ。それはずっと思ってた。ただ、その考えがこのアルバムを出してちょっと変わったんだよね。自分が心の底からほんとに良いと思ってるクリエイションをSNSで発表すれば、みんなサポートしてくれる。誰しも、本能的には誰かを支持したいと思ってるもんなのかなってね。クソみたいなことばっか言い続けたいって、本気で思ってるわけないからね。最低なこと言ってくるやつもいるけど、全員がそうじゃない。

L:優しい人もたくさんいるね。

HM:そう、優しい人もいるし、本気でエキサイトしてくれる人もいる。それに気づいたのは、自分でもおもしろかった。SNSなんてまじでクソだろって、本気でずっと思ってたから。

shotahirama - ele-king

 これが初のフル・アルバムというのは意外だ。これまで多くの作品を送り出してきたNY出身のノイズ~グリッチ・プロデューサー shotahirama が、昨日、配信限定の新作『Rough House』をリリースしている(Spotify / Apple Music)。特筆すべきはそれが、ターンテーブルを用いて制作されたヒップホップ・アルバムであるという点だろう。東京(12月28日)と京都をめぐるリリース・ツアーも決定(詳細はこちら)。驚きの変化と、しかし相変わらず丁寧に作りこまれた音の細部を楽しもう。

shotahirama
デジタル・サブスク限定配信の新作アルバム『Rough House』12月16日発売

Apple Musicリンク

https://music.apple.com/jp/album/rough-house/1490236369

トラックリスト

01. STOP FRONTING (3:44)
02. SLACKER (3:27)
03. SLACK HOUSE (5:40)
04. WHO INDA HOUSE (3:24)
05. ROUGH HOUSE (3:06)
06. PAYDAY IS BLISS (3:48)
07. OKTOBER (4:43)
08. FLAVA (4:12)
09. DAILY BASIS (5:12)
10. FOOLS PARADISE (11:41)

ノイズ・グリッチ・ミュージックの奇才 shotahirama がターンテーブルを楽器に用いたヒップホップ・アルバムをリリース!

shotahirama の2年半ぶりにしてキャリア初となるフル・アルバムはターンテーブルを楽器に用いたサンプルベースのビート・ミュージック。丹念に作り込まれ、しかし複雑過ぎない音楽を意識したという本作にはシカゴ・ハウスやファンク、ヒップホップからの大きな影響とユーモアがふんだんに散りばめられている。ノイズとダブ・ミュージックを掛け合わせた衝撃的な前作に続き、飽くなき挑戦心が“止まらない進化”をさらに加速させる。

YouTubeリンク
https://youtu.be/HgplFGmQZo8

shotahirama プロフィール:

ニューヨーク出身の音楽家、shotahirama (平間翔太)。中原昌也、evala といった音楽家がコメントを寄せる。畠中実(ICC主任学芸員)による記事「デジタルのダダイスト、パンク以後の電子音楽」をはじめ、VICEマガジンや音楽ライターの三田格などによって多くのメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell 等のジャパン・ツアーに出演。代表作にCDアルバム『post punk』や4枚組CDボックス『Surf』などがある。

 ディヴィッド・バーンが2018年のアルバム『アメリカン・ユートピア』リリース後、大ホールでのツアーを終えて、新しい形/インティメイトなスタイルでハドソンシアターにやって来た。
 ハドソンシアターは1903年にプレイハウスとしてはじまったブロードウェイのイーストサイドにある劇場で、2017年にリニューアル・オープンをしている、1000人弱を収容できる大型ヴェニューだ。
 私は、ディヴィッド・バーンがセント・ヴィンセントとコラボレイトしてからより注目するようになった。昔はトーキング・ヘッズもよく聞いたし、彼がやっている政治的なWEBサイトreasons to be cheerful(https://davidbyrne.com/explore/reasons-to-be-cheerful/about)(https://reasonstobecheerful.world)にも共感できるところがあるし、彼のイベントにもよく行った。そうえいば、数年前のセント・ヴィンセントのプロスペクトパークのショーに、ディヴィッド・バーンは彼のトレードマークである自転車で乗り付けていた。

 彼の新しい挑戦が、シアター・ヴァージョンの『アメリカン・ユートピア』だ。ディヴィッド・バーンとその仲間たち、12人のミュージシャンがシャンデリアカーテンのステージを使い、人間にできる究極のミュージカル・エンターテイメントを突き詰めるというもの。ステージにはワイヤーがなにもないので、ミュージシャンは自由にステージを動き回る。バーンはグレイのスーツに裸足、頭にはヘッドセットマイクをつけていた。そして一人きりでテーブルに座ると、人間の脳みそを持って歌いはじめる。
 すると同じスーツを着たダンサー、ミュージシャンたちが登場し、曲ごとにすべて違ったアプローチで演奏する。ときにはサークルにマーチ、ときには真っ暗のなあスポットライトのみの演出。
 バーンは曲間にオーディエンスに語りかける。政治的な内容も多かったが、このステージにおいて結局何が重要かなど人間についても語っていた。この公演でバーンは投票にいくことを呼びかけいたが、その場でレジスターもできる。

 曲ごとに演奏する楽器もライトアップも違い、ミュージシャンたちの演奏力や演技力のほか歌唱力も重要で、究極なところでは楽器を持たずアカペラだけで歌う場面もあった。ソプラノからアルト、テナーまでが交わり、さながら美しい天使の歌声が響く。『アメリカン・ユートピア』は優れたミュージカルでありながら、社会について考える貴重な空間である。

 この日は、ディヴィッド・バーンのソロ曲、トーキング・ヘッズの曲、ジャネール・モネイの曲などを含む21曲+アンコールが演奏された。10月からはじまったシアター・ヴァージョンの『アメリカン・ユートピア』だが、好評によって公演日は来年の2月までと引き延ばされている。

平井玄 × 酒井隆史 - ele-king

 この夏、文庫化されたことでふたたび注目を集めている本がある。酒井隆史『完全版 自由論──現在性の系譜学』(河出文庫)だ。もともとは2001年の9・11より前に刊行され、鋭く「新自由主義」を鋭く分析したこの本は、その後の時代が陥っていくことになる危機的状況を先どりしてもいて、文庫版では以降の情況を読み解く新たな考察が付加されている。著者は2004年にマーティン・ルーサー・キングやマルコム・Xらの思想を論じた『暴力の哲学』や、2011年に膨大な資料をもとに、知られざる大阪の都市改造の歴史を描き出した『通天閣』といった書を上梓してもおり、後者はサントリー学芸賞を受賞しているので、そちらでご記憶の方もおられよう。その酒井隆史が21日、渋谷勤労福祉会館にてトーク・イベントに出演する。
 聞き手は平井玄。フリー・ジャズなどの音楽と思想を媒介させながら、『破壊的音楽』『引き裂かれた声』『千のムジカ』といった数々の書を送り出してきた批評家だ(エレキングにも坂本龍一のレヴューセシル・テイラーの追悼文を寄稿いただいている。1月末刊行予定の別エレじゃがたら特集号にも参加)。このふたりが、フランスの黄色いベストや香港のデモなど、昨今の運動であまり見かけることのなくなった「旗」を入り口に、資本主義や国家について語り合う。いまわたしたちが生きているのはどんな時代なのか、そのヒントをつかむ良い機会になるだろう。なお同イベントは「赤と黒の連続講座」として今後も続いていく模様で、今回はその第1回となる。

【赤と黒の連続講座】section1


赤と黒のあいだのanti資本主義

 フランスで続く「黄色いベスト」運動や香港の「時代革命」デモでは黒や赤の旗は影が薄い。
 田舎の交差点で加速社会にストップをかけるベストの蛍光色は忘れられた身分の徴だ。エッフェル塔の前で広げられる三色旗も決して増えることがない。中環広場でもアメリカを頼る星条旗は黒い群れに紛れてしまう。その黒い塊たちも黒旗を掲げないのである。2014年に街を埋めた傘のパステルカラーさえ色褪せていた。
 街頭からあらゆる旗が消えていく!!
 100万人の大群衆が「旗のない不穏」を抱えて動く。これは左右のポピュリズムによるステルス戦術とばかりはいえないだろう。おぼつかない希望と不安が地球上のいたるところで沸き上がっている。そして旗は消えても資本は人間を串ざしにすることを止めはしない。これが40年におよぶ新自由主義の結末である。
 この混沌から、アメリカ南部連合旗やハーケンクロイツを掲げ、菊の紋を崇めては旭日旗を振り回す者たちがいくら湧いて出ようと、これから何が群がり起こるのか誰にもわからない。
 我々の旗はどこへいったのか?
 赤も黒も雑色も、20世紀の境界を踏み越えて「資本主義と国家」を問う時が来た。
 気を吐く3人の研究者たちと共に、まずはこの「旗のない不穏」を語り合うところから始めよう。

2019年12月21日(土)
14時~17時
資料代 500円
☆渋谷勤労福祉会館 2階 第1洋室

酒井隆史
(デイヴィッド・グレーバー『負債論』監訳(以文社)など。)

主催:赤と黒の連続講座/連絡先:090-1429-9480 LACC̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶

▶coming soon
2020年1月25日(土)
廣瀬純  (『資本の専制、奴隷の反逆』(航思社)など。)
2020年3月28日(土)
植村邦彦 (『隠された奴隷制』(集英社)など。)

Baauer × Channel Tres × Danny Brown - ele-king

 新作『uknowhatimsayin¿』が好評のラッパー、ダニー・ブラウンが『グランド・セフト・オート』シリーズに登場する。ゲーム内のラジオ局にてなんと、スケプタとともにホストを務め、選曲を担当。いずれも今年力作を発表しているデンゼル・カリーやエージェイ・トレイシーフレディ・ギブス&マッドリブなどをピックアップしている。
 またそのアナウンスにあわせ、本日〈LuckyMe〉よりコラボ・シングルがリリース。バウアー×チャンネル・トレス×ダニー・ブラウンという、驚き&歓喜の組み合わせが実現している。うひょー。

DANNY BROWN
『グランド・セフト・オート』シリーズにダニー・ブラウンが登場!
バウアー、チャンネル・トレス、ダニー・ブラウンのコラボ・シングル「Ready to Go」をリリース!

最新作『uknowhatimsayin¿』が話題のダニー・ブラウンが、人気ゲーム『グランド・セフト・オート』シリーズに登場! ゲーム内のラジオ局「iFruit Radio」でホストを務めることが発表された。特別ゲストのラッパー、スケプタと共に27曲を選曲している。

今回の発表に合わせて、バウアー、チャンネル・トレス、ダニー・ブラウンのコラボ・シングル「Ready to Go」がリリースされた。

“Ready to Go” by Baauer and Channel Tres feat. Danny Brown
https://www.youtube.com/watch?v=mZKi3ANavo8

選曲された楽曲には、ダニー・ブラウンやスケプタに加え、トラヴィス・スコットやスクールボーイ・Qの人気曲、YBNコーデーとデンゼル・カリーがコラボした未発表曲などが含まれている。

『グランド・セフト・オート』シリーズではこれまでに、フランク・オーシャン、フライング・ロータス、ジャイルス・ピーターソン、ブーツィー・コリンズら豪華なアーティストを音楽にフィーチャーしている。

label: LuckyMe / Godmode
artist: Baauer, Channel Tres, Danny Brown
title: Ready to Go
release date: 2019.12.13 FRI ON SALE

label: Warp Records / Beat Records
artist: Danny Brown
title: uknowhatimsayin¿
release date: 2019.11.22 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-617 ¥2,200+税
国内盤特典:歌詞対訳/解説書封入
国内盤CD+Tシャツ BRC-617T ¥5,500+税

TRACKLIST
01. Change Up
02. Theme Song
03. Dirty Laundry
04. 3 Tearz (feat. Run The Jewels)
05. Belly of The Beast (feat. Obongjayar)
06. Savage Nomad
07. Best Life
08. uknowhatimsayin¿ (feat. Obongjayar)
09. Negro Spiritual (feat. JPEGMAFIA)
10. Shine (feat. Blood Orange)
11. Combat

interview with Daniel Lopatin - ele-king

今回のサントラは『Good Time』とはぜんぜんちがっていて、ものすごく誇りに思っている。「これが僕なんだ」という気持ちになってね。人間としての自分に近いような作品に思えたんだ。

 監督は前回同様ジョシュア&ベニー・サフディ兄弟。製作総指揮はマーティン・スコセッシ。たしかに、外部の意向が大きく関与している。映画のサウンドトラックなのだから当たり前といえば当たり前なのだけれど、ジョエル・フォードしかり、ティム・ヘッカーしかり、彼は他人とコラボするとき、基本的にはOPNの名義を用いずにやってきた。そう、幾人ものゲストを招いた昨年の『Age Of』までは。だからむしろ、サフディ兄弟と初めてタッグを組んだ『Good Time』(17)がOPN名義で発表されたことのほうがイレギュラーな事態だったのかもしれない。ソフィア・コッポラ監督作『The Bling Ring』(13)もアリエル・クレイマン監督作『Partisan』(15)もリック・アルヴァーソン監督作『The Mountain』(18)も、ダニエル・ロパティンの名でクレジットされていたのだから。
 ときどき自分が人間であることを忘れてしまう──ダニエル・ロパティンはそう語っている。今回OPN名義ではなく本名で作品を発表することになったのは、その音楽がまさに自分のものだと思えたからだという。不思議である。サウンドトラックの制作でそのように感じるのは珍しいケースなのではないか。それに、パーソナルなのはむしろ、OPN名義のほうではなかったか。つまり今回彼は、サフディ兄弟とはもちろん、ゲイトキーパーや「MYRIAD」で仲間に引き入れたイーライ・ケスラーのような他人たちと仕事をすることによって、あらためてみずからの人間らしさや自分らしさを確認しつつも、あえてコラボの解禁されたOPNではなく本名のほうで作品を発表したということで、そこには何かしら他者にたいする意識の変化が……
 とまあ、そんなふうにいろいろと深読みしてみたくなっちゃうわけだけれど、DJアールアノーニをプロデュースしたときもOPN名義だったのだから、たぶん、本人は深く考えて使いわけているわけではないのだろう。思うに、そのようなある種のユルさにこそ彼の本質みたいなものが宿っているのではないか。それに振りまわされるかたちでわたしたちはいつも、「今度はなんだ?」と気になって、独自の分析や自説を披露したくなってしまうのではないか。ようするに、彼の音楽や振る舞いは、どうにも思考誘発性が高いのである。

 今回の『Uncut Gems』でキイとなるのはおそらく、初期の彼を思わせるアナログな触感から『AKIRA』的な発想と王道のクラシカルなアレンジとスムージィなサックスの奇妙な混合へとなだれこんでいく、冒頭“The Ballad Of Howie Bling”だろう。この曲から聴きとることのできる諸要素は、声楽を活かした8曲目やサックスの映える10曲目、やはり芸能山城組を思わせる13曲目、おなじくかつての音色で思うぞんぶん感傷の湯船につかる最終曲などに、分散して登場することになる。ほかにも、これまでの彼にはなかったクラシカルな旋律を聞かせる2曲目や4曲目、ブリーピィかつミニマルな7曲目、ライヒ的な9曲目など、今回のサントラもいろいろと分析したくなる魅力にあふれている。
 そのような誘発性をこそ最大の武器に、2010年代のエレクトロニック・ミュージックを代表する存在にまでのぼりつめたダニエル・ロパティン。去る10月末、《WXAXRXP DJS》のために来日していた彼だけれど、幸運にも取材の機会に恵まれたので、『Uncut Gems』についてのみならず、かつての作品のまだあまり語られていない部分についても質問を投げかけてみた。じっさいに対面した彼は、いわゆるアメリカ人らしい陽気なナイスガイといった印象で、そのサウンドやコンセプトから連想されるような気難しさや思弁の類はいっさい身にまとっていなかった。

音楽は苦しみから生まれたっていう考えがあるんだ。太古のむかし、ホモ・サピエンスが死に直面したときの恐怖感みたいなもの、そういう本能的なものから生まれたのが音楽なんじゃないかな、と。

いまも拠点はブルックリンですか?

ダニエル・ロパティン(Daniel Lopatin、以下DL):ああ、不幸なことにね。

それはなぜ?

DL:もう10年住んでるからそろそろ場所を変えたいかな。

先日ニューヨークのラジオ局WNYCの「New Sounds」という番組(*1982年の開始以来、積極的にエレクトロニック・ミュージックや現代音楽などを紹介してきた番組)が終わることになって、『ニューヨーク・タイムズ』紙がそのことを「NYはかつてほどクールではなくなってしまった」という方向で記事にしていたのですが(*それらの抗議の結果、番組は継続することに)、いまニューヨークのエレクトロニック・ミュージックのシーンはどうなっているのでしょう?

DL:物価が高くなって、アートやクリエイティヴィティみたいなものが薄くなってきているね。グレイなサイクルに入ってしまっている。豊かな歴史のあるところだから残念だよ。もちろん、そこから変わって新しいものが出てくる可能性はあるよ。僕自身は新しいアイデンティティの感覚がある場所に惹きつけられるね。ニューヨークはアイデンティティがもう決まりきってしまっているというか、そういうサイクルにあるのかなと思う。たとえばメキシコシティに行ったときは、すごく新鮮なものを感じた。新しいものが出てきている感じがした。だからいまは自分の拠点を変えることを考えたり、もう少しアメリカの外で何が起きているかとか、どういうところに何があるのかを考えたりするべき時期なのかもしれないな。

いまニューヨークでおもしろいことをやっていると思えるアーティストやレーベル、ヴェニューはありますか?

DL:ニューヨークでどんな新しいクールなものが出てきているか、何が起きているかという質問に答えるのに、僕はあんまり適していないと思う。よく知らないんだ。なぜかというと、僕は影響を受けることから隠れているからね。新しいものをスポンジみたいに吸収しすぎてしまうと、自分のものがわからなくなるようなことがあるから、いま何が起きているかということからは距離を置いているんだ。でも、友だちがやっていることはおもしろいと思うよ。たとえば〈RVNG〉をやっているマット・ワース(Matt Werth)。彼がキュレイトしたイヴェントやライヴはどれもおもしろいと思う。

前回のサウンドトラックはOPN名義でしたけれど、今回本名を用いたのはなぜですか?

DL:それはほんとうにたんなる思いつきだね。父と母がいて僕が生まれたということ、自分が人間であるということを忘れてしまうときがあるんだけど、そのことを少し思い出したんだ。今回のサントラは『Good Time』とはぜんぜんちがっていて、ものすごく誇りに思っている。だからこそ「これは良い作品だ」「これが僕なんだ」という気持ちになってね。人間としての自分に近いような作品に思えたんだ。まあ、思いつきなんだけどね。

人間であることを忘れるというのは、たとえば自分を「音楽機械」のようなものだと感じることがあるということでしょうか?

DL:たしかに、音楽をつくるマシーンみたいなところはあるね。でもそれはクールな機械で、自分でも気に入ってるんだ。他方でものすごく自己中心的な、自分だけの、誰も入れないような世界がある。自分がつくっているものはパーソナルな言語みたいなところがあってね。「ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー」は自分だけのコミュニケイションみたいな場所なんだ。でも今回はほかのひとたちとのコラボがあったり、監督との絆やコミュニケイションも含まれてるから、もうちょっとあたたかさがあるし、そういう意味では人間的だね。

過去にも何度かサウンドトラックを手がけていますけれど、おなじ監督と組むのは初めてですよね。サフディ兄弟の映像表現はあなたの音楽と相性が良いのでしょうか?

DL:今回は彼らの最高の作品だよ。もちろん彼らは友人だし、コラボレイションがうまくいく親密な関係性ができていると思っている。サウンドトラックをつくることには彼らも関わってくるからね。ただ、彼らと仕事をするのは2回目だけど、ほかにたくさんの監督と一緒にやったわけではないから、比べられる人がいないんだ。僕は、友情がなくても良い仕事はできると思っているから、将来的にはそうじゃない人とも仕事をしてみたい。ただ、ひとつ言えるのは、彼らみたいに友人で、かつアーティスティックな面でも共感できる人と働くのはすごく楽しいし、贅沢だということ。もし一緒に仕事をしなかったとしても、彼らの映画は好きになると思う。すごく良い映画をつくっているからね。一緒に仕事することになったきっかけは、2014年の『神様なんかくそくらえ(原題:Heaven Knows What)』なんだ。あの映画を観てすごく良いと思ったし、そのひとつ前の、レニー・クックというバスケットボール選手のドキュメンタリー(『Lenny Cooke』)も観ていたから、ぜったい良い仕事ができると思っていたんだよね。

今回もサウンドトラックに台詞が入っていますね。これはじっさいに映画のなかで使われている音声ですか?

DL:4つ入っているはずだけど、それらはとくに僕がとりつかれている台詞なんだ。僕にとって重要で、この映画のソウルを代表するような台詞を選んだ。ただ、それはちょっと変な台詞で、たとえば予告編に入れられるタイプの台詞ではないんだけど、自分にとってはすごく重要なもので。僕にとってこの映画の意味を象徴するような台詞だね。

[[SplitPage]]

ヴェイパーウェイヴは祈りみたいなものだと思う。自分を表現する、その瞬間を表現できる、そこに自分を捧げるような祈り。ループしているということは、その瞬間を永遠に続けられるということ、そこで自分が永遠に生きていられるということ。

今回のサウンドトラックにも声楽が入っていますけれど、これまでサンプリングだったり聖歌的なものだったり叫びだったり、あるいはチップスピーチを導入したり自分自身で歌ってみたり、毎度アプローチは異なれど、あなたは一貫して声にたいする高い関心を抱きつづけてきたのではないかと思うのですが、いかがでしょう。

DL:声はものすごくユニークな楽器なんだ。地球上でいちばん変な、ユニークな楽器で、ある意味人間のあり方とか音楽のあり方、ことばとしての音楽のあり方のキイになるようなものだと思う。これから言うことは僕のオリジナルな理論ではないんだけれど、音楽は苦しみから生まれたっていう考えがあるんだ。たとえば傷ついたときとか、死に直面したときのうめきだったり、音楽はそういうものから生まれたんだっていう理論があってね。太古のむかし、ホモ・サピエンスが死に直面したときの恐怖感みたいなもの、そういう本能的なものから生まれたのが音楽なんじゃないかな、と。だから、声ってものすごく変だし、いわゆる人間的といわれているものとはぜんぜんちがう、エイリアンのようなものだったりもするけど、でも同時にほぼすべての人が持っているもので、それが人を進化させてきた。人間ひとりひとりが声を持っている。それは全員が生まれつき持っているものでありながら、ひとりひとり異なるものだ。こんなに多様な楽器はほかにないよ。そういう意味で声はものすごく興味深いね。

なるほど。そのような声にたいするアプローチは、9年前のチャック・パーソン名義の作品でも、スクリュードというかたちであらわれていました。『Eccojams Vol. 1』はヴェイパーウェイヴの重要作とみなされていますが、日本ではなぜかいまになってヴェイパーウェイヴが再流行しています。ユーチューブに音源をアップしていた当時は、どのような意図があったのでしょう?

DL:はじめはシンプルだったよ。そのころはデスクワークの仕事についていて、時間を無駄にしていたんだ。与えられた仕事が来るまでコンピュータの前で何時間も何もしないようなときがあったりね。ものすごく落ち込む仕事だった。それで、その時間にループをつくりはじめたんだ。自分にとってはちょっとした詩みたいなもので、ポップ・ソングのある部分を切りとって、それをものすごくスロウダウンさせて、瞬間を引き延ばして、そのなかで自分がポエティックな瞬間を泳げるような感覚をつくりだした。だから、ものすごくパーソナルなものだったんだ。つくり方も簡単で。やり方を学べば誰でもつくれるものだから、それを大勢の人たちがつくって、フォークロア的なものになればいいなと思ったんだ。みんながつくることでそれがひとつのプラクティスになるようなね。だから、いま日本でヴェイパーウェイヴが人気になっていたり、もしかしたらほかの場所でも人気なのかもしれないけど、そう聞いて僕はすごく嬉しいよ。喜びを感じるね。自分がはじめたころはオリジナルなものだったから、とくにユニークなものだとも思っていなくて、単純で、プラクティスみたいなものだと思っていた。誰でもできるものになっていくと思っていたから、じっさいにいまそうなっているのは嬉しいよ。(ヴェイパーウェイヴは)祈りみたいなものでもあると思うんだ。それはべつにポップ・ミュージックの神さまにたいする祈りということではなくて、自分を表現する、その瞬間を表現できる、そこに自分を捧げるような祈り。ループしているということは、その瞬間を永遠に続けられるということ、そこで自分が永遠に生きていられるということ。そこでものすごく鳥肌が立つような感覚を得たりね。そういう音楽の瞬間をつくる。それは3分間でもいいし、300分間でもいいんだけどね。

『Eccojams』のアートワークとタイトルは、セガのゲーム『エコー・ザ・ドルフィン』のパロディですよね。イルカがサメに変更されていましたけれど、あのイメージを使ったのはなぜですか?

DL:いくつかレイヤーがあるんだ。「Eccojams」ということばは、もちろんゲームから出てきたってのもあるけど、「ecco」という文字の並びが好きだったってのもある。あと、ミニットメンっていう、いろんなことばをつくったカリフォルニアのパンク・バンドがいて、たとえば「マーチャンダイズ」のことを「マーチ」って言いはじめたのも彼らなんだ。いまでは誰もが「マーチ」って言っているよね。それで彼らは、「We jam econo」という言い方もしていて、「econo」は「economy」から来てると思うんだけど、高い楽器じゃなくて安い楽器でジャムってるんだぜ、って意味で彼らは「We jam econo」と言っていて、その「econo」を使ったってのもある。だから、すごくいろんな意味があるんだ。当初は「Econo Jam」だった気がするな。それを「Eccojams」に変えた気がする。(*このミニットメンのくだりは昨年すでに『Age Of』リリース時のインタヴューで語ってくれている。紙エレ22号の32頁参照。ここではイメージの意図を尋ねたかったのだが、残念ながらうまく伝わらなかった模様)

きみはシュルレアリストのコンセプトを信じられる? 信じられないよね(笑)。あれはただその美しさを楽しめばいいんだよ。

あなたの友人であるジェイムス・フェラーロもヴェイパーウェイヴの重要人物のひとりとみなされています。『Age Of』のコンセプトは彼との読書会をつうじて生まれたものだそうですが、それはほんとうですか?

DL:音楽界でいちばん古い友人だね。だからすごく仲はいいんだけど、彼はほんとうにミステリアスで変なやつなんだ。最後に彼と会ったのは、僕がたまたまパリでギャスパー・ノエ監督を訪ねていたときで。彼(ノエ)のアパートはものすごく人が行き来する道に面しているんだけど、ドアを開けたらなぜかジェイムスがいたんだよ! ジェイムスはパリに住んでいるわけじゃないんだけど、たまたまドアを開けたら彼がいたんだ。「なんだこれ、夢なのか?」って思いながら「何してるの?」って声をかけたら、「いまフランス革命のリサーチをしているんだ」って言っていたね(笑)。まったく理解できなかったよ(笑)。彼は魔法使いみたいにクレイジーなやつでね。僕はただふつうに生活している人間だけど、彼は魔術師みたい、ソーサラーみたいなんだ。ときどきテキストでやりとりをしたりするけど、じっさいに会ったのは何ヶ月も前だな。ほんとうに変わった人だよ。

最近の彼の作品は聴いています?

DL:つねに超フレッシュな人だと思う。彼の音楽はどの曲もぜんぶ聴いてるはず。ものすごくオリジナルで、彼の脳のなかに直接トランスミッションしているような音楽、それが彼の音楽だと思う。聴いているとまるで脳のなかに座っているような感覚になるんだ。良いアート作品にはつねにそういう部分があるものだと思うけど、彼はほんとうにオリジナルだと思うよ。

いま彼がやっているポスト・アポカリプティックなフィクションについてはどう見ていますか?

DL:彼のコンセプトを信じちゃダメだよ! ぜんぶしょうもないことを言っているだけだから(笑)。インタヴューで聞くぶんにはすごくおもしろいし、まとまりもあって、僕も思うところがあるけど、彼は彼自身を含め、まわりの人みんなに嘘をついている。バカにしているところがあるんだ。でもそれはまったく悪意ではなくてね。ものすごく美しくて、シュルレアリストみたいなものだよ。きみはシュルレアリストのコンセプトを信じられる? 信じられないよね(笑)。あれはただその美しさを楽しめばいいんだよ。

(わりと信じてますけど……と言いかけたもののお尻が迫っていたのでつぎの質問へと移る)『Age Of』ではCCRU(Cybernetic Culture Research Unit)の論集からインスパイアされたことがクレジットされていたため、いろんな憶測が飛び交いました。そのことについてあなた自身の口から説明してください。

DL:変な憶測だね。CCRUに影響されているのは“Black Snow”という曲だけ。ウェイバック・マシン(Wayback Machine)っていうウェブサイトをやっていた友だちが、サイバーパンクのアーカイヴのなかから一篇の詩を見つけて、僕に送ってきたんだ。その詩がまるでランディ・ニューマンの曲のように思えてね。それで少しことばを変えたりして、サイケデリックなランディ・ニューマンの曲みたいにしてつくったんだよ。ただそれだけのシンプルなこと。だから、ニック・ランドがいま言っているような政治のばかばかしいこと、それを僕は残念だと思うけど、それとはまったく関係ないね。

ニック・ランドや加速主義にシンパシーを感じているわけではない?

DL:そもそも彼についての知識があまりないね。ただ、2~3年前に彼の本を読んだときに、すごく美しくてカラフルでシュルレアリスティックなことばをつくる人だとは思った。詩人みたいな部分ですぐれたものを持っていると思う。でも、政治的なスタンスとかは、ものすごくヘイトに満ちた人だから、自分が彼とつながっている、彼に共感を持っていると思われるのはいやだな。彼が過去じっさいにそういうコレクティヴの一員だったことはたしかだけどね。僕はそれをよく知っているわけでもないし、そこに共感したということではないよ(笑)。

Get Loose - ele-king

 フレッシュかつ尖ったサウンドは、じつは、そこかしこに潜んでいる。来年1月11日、新たにスタートする《Get Loose》も、そんな“いま”を切りとったエキサイティングなパーティになりそうだ。KOHH や BAD HOP、Tohji らのトラックで知られる大阪のプロデューサー MURVSAKI、今年最高にすばらしいコンピを送り届けてくれた〈Night Slugs〉のマナラを招いてパーティを開催した Hibi Bliss、ヒップホップやレゲエを折衷する仙台の 1017 Muney、さまざまなジャンルを独自のセンスで横断する ryo、そしてグライムを軸に東京の地下を揺らし続けるわれらが Double Clapperz の計5組が出演する。“いま”のサウンドを聴きたければ年明け、まずはこのパーティに行こう。

《Get Loose》 at WWWβ 開催

この20年間でヒップホップやダンスミュージックをめぐる状況は様変わりし、ローカルに偏在していたオフラインの“ストリート”から、オンラインに遍在する“ストリート”へと一気に伝播した。とくにラップミュージックはスマートフォンで動画を見る形がもっとも主流となっている。

一方で、この音楽は祝祭的な身体性を常に秘めており、革新され続けている。ビートメイカーやエディットやブートレグを生み出してきたDJは、ラップミュージックやダンスミュージックの身体性を拡張し、音楽をレベルアップしてきた。“Get Loose”はそんなアーティストやDJにフォーカスしたパーティとなる。

第一回目となる今回は KOHH、Bad Hop、Tohji といった最先端のラッパーのトラックを作り出し、フロアを揺らし続けてきたプロデューサー MURVSAKI がDJセットを披露する。ヒップホップ・レゲエを中心にエクレクティックなセットをプレイする 1017 Muney、UKアーバンミュージックを軸とする Hibi Bliss、様々なジャンルを独自のセンスで架橋する Ryo、グライムDJの Double Clapperz がDJをつとめる。

ダンスミュージックとラップミュージックの垣根を越える一晩。ディレクションチームGRIDIN’がパーティをサポートし、オールナイトを盛り上げる。

“Get Loose” at WWWβ
1/11 (sat) 11pm-5am
〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町13-17 B1F シネマライズビル
ADV ¥1,000 @RA / DOOR ¥1,500 / U23 ¥1,000

出演者:
MURVSAKI
Hibi Bliss
1017 Muney
Ryo
Double Clapperz

ele-king vol.25 - ele-king

特集:21世紀DUB入門

いまやあらゆるエレクトロニック・ミュージックに浸透し、拡大しているダブ。
いまダブを聴かない手はない。いかにいまダブが熱いのか、その現在をレポート!

巻頭:リー・スクラッチ・ペリー
インタヴュー:Mars89/クルアンビン/ロウ・ジャック/1TA (Bim One Production)
ディスクガイド:21世紀のダブ必聴盤162枚

そして2019年のベスト・アルバム30枚も発表!!
識者が選ぶジャンル別ベスト10に加え、
アーティスト/DJ/ライター総勢31組による2019年個人チャートも!

目次

巻頭:リー・スクラッチ・ペリー

インタヴュー Lee “Scratch” Perry ダブは赤ん坊 (野田努)
コラム 21世紀のリー・ペリー (河村祐介)

特集:21世紀DUB入門

インタヴュー
Mars89 傷を舐めあって終わりにはしたくない──次の10年を担う才能が語る、ダブと社会 (小林拓音)
Khruangbin (クルアンビン) メロウ・ダブ・エキゾティカの魔術師 (野田努)
Low Jack (ロウ・ジャック) ダンスホール新世代の旗手が追い求める “音楽のまわり” (野田努+小林拓音)
1TA (Bim One Production) 抵抗飛行を続けること、サウンドシステムにこだわること (野田努)

ディスクガイド
──21世紀のダブ必聴盤162枚
(飯島直樹、小川充、河村祐介、小林拓音、野田努、三田格)
・ニュー・チャプター・オブ・ダブ
・ダブステップ/ジャングル/インダストリアル
・エクスペリメンタル/アンビエント/ロック/R&B
・ジャズ
・テクノ/ハウス
・ダンスホール
・ブリストル
・グローバル
・ニュールーツ/ステッパー
・リイシュー
・ヴェテラン

コラム
BS0 いまもっとも注目すべきパーティ&コレクティヴ (麻芝拓)
Dub Meeting Osaka ここにしかないヴァイブス (SAK-DUB-I)

2019年ベスト・アルバム30
──selected by ele-king編集部

ジャンル別2019年ベスト10

エレクトロニック・ダンス (髙橋勇人)
UKラップ&グライム (米澤慎太朗)
テクノ (佐藤吉春)
ハウス (Midori Aoyama)
USヒップホップ (大前至)
ジャズ (小川充)
インディ・ロック (木津毅)
日本語ラップ (磯部涼)
アンビエント/ドローン (デンシノオト)
インプロヴィゼーション (細田成嗣)
グローバル・ビーツ (三田格)

2019年わたしのお気に入りベスト10
──アーティスト/DJ/ライター総勢31組による2019年個人チャート

Midori Aoyama、天野龍太郎、飯島直樹 (DISC SHOP ZERO)、磯部涼、大前至、小川充、河村祐介、木津毅、Gr◯un土 a.k.a Ground、KEIHIN、Kenmochi Hidefumi (水曜日のカンパネラ)、Gonno、COMPUMA、佐藤吉春 (TECHNIQUE)、Chee Shimizu、高島鈴、髙橋勇人、田中克海 (民謡クルセイダーズ)、デンシノオト、德茂悠 (Wool & The Pants)、TREKKIE TRAX CREW、中村義響 (JET SET)、Koji Nakamura、James Hadfield、Gilles Peterson、細田成嗣、Mars89、Ian F. Martin、三田格、行松陽介、米澤慎太郎

マシューさんと振り返る2019年
──環境、ドラッグ、セクシー、そして宇宙人いなかった

ISSUGI - ele-king

 今年は 16FLIP 名義でジョージア・アン・マルドロウとコラボも果たした MONJU / DOWN NORTH CAMP の ISSUGI が、本日12月11日、久々のニュー・アルバム『GEMZ』を発売する。BUDAMUNK(SICK TEAM)、HIKARU ARATA(WONK)、KAN INOUE(WONK)、TAKUMI KANEKO(CRO-MAGNON)、MELRAW(DJ K-FLASH)が集結し、5lack、仙人掌、Mr.PUG、OYG、KOJOE、DEVIN MORRISON ら強力な面子を招いて制作された同作だけれど、そのリリースに合わせてなんと、キャリア初となるワンマンライヴの開催もアナウンスされた。日時は来年3月27日、会場は渋谷 WWWX で、『GEMZ』のバンド・メンバーたちが一堂に会する。これは見逃せない。いまから予定を空けておこう。

待望のニュー・アルバム『GEMZ』を本日リリースしたISSUGIが同作のバンドメンバーを伴って、初となるワンマンを来年3/27(金)に渋谷WWWXで開催!

BUDAMUNK(PADS)、WONKのHIKARU ARATA(DRUM)、KAN INOUE(BASS)、CRO-MAGNONのTAKUMI KANEKO(KEYS)、MELRAW(SAX, FLUTE, TRUMPET, GUITAR)、DJ K-FLASH(TURNTABLE)がバンド・メンバーとして集結し、Red BullのサポートのもとRed Bull Studioを拠点にセッションを繰り返して作られたニュー・アルバム『GEMZ』を本日リリースしたISSUGIが、キャリア初となるワンマンライブを来年3/27(金)に渋谷WWWXにて開催! 同作に参加しているバンド・メンバーを伴ったデイタイムでの公演となりますので今からその日は予定を空けておいてください。また同公演の前売りチケット発売情報やその他の地域でのライブに関しては追ってアナウンスする予定です。

「ISSUGI 『GEMZ』 RELEASE LIVE」
日程:2020年3月27日(金)
会場:渋谷WWWX
※開演時間や前売りチケットに関しては未定です。

Members are…
RAP:ISSUGI / DRUMS:HIKARU ARATA(WONK) / BASS:KAN INOUE(WONK)/
PADS:BUDAMUNK / TURNTABLE:DJ K-FLASH / KEYS:TAKUMI KANEKO(CRO-MAGNON)
/ SAX, FLUTE, TRUMPET, GUITAR:MELRAW

https://www.ele-king.net/upimgs/img/5131.jpg
アーティスト: ISSUGI (イスギ)
タイトル: GEMZ(ジェムズ)
レーベル: P-VINE, Inc. / Dogear Records
品番: PCD-25284
発売日: 2019年12月11日(水)
税抜販売価格: 2.500円
https://smarturl.it/issugi.gemz

[トラックリスト]
1. GEMZ INTRO / prod BUDAMUNK
2. ONE RIDDIM / prod BUDAMUNK
3. NEW DISH / prod 16FLIP & BUDAMUNK
4. BLACK DEEP ft. Mr.PUG, 仙人掌 / prod 16FLIP
5. DRUMLUDE / prod BUDAMUNK
6. HERE ISS / prod 16FLIP
7. LIL SUNSHINE REMIX
8. FIVE ELEMENTS ft OYG, Mr.PUG, 仙人掌 / prod BUDAMUNK
9. 踊狂REMIX ft. 5lack / prod BUDAMUNK
10. OLD SONG ft DEVIN MORRISON / prod BUDAMUNK
11. HEAT HAZE REMIX ft Mr.PUG / prod ENDRUN
12. LOUDER / prod 16FLIP & DJ SCRATCH NICE
13. MISSION ft KOJOE / prod HIKARU ARATA
14. 再生 / prod BUDAMUNK
15. No.171 / prod BUDAMUNK
16. GEMZ OUTRO / prod BUDAMUNK

[PROFILE]
東京出身のRapper/Beatmaker。MONJU (ISSUGI / Mr.Pug / 仙人掌)、SICKTEAM (5lack /ISSUGI / Budamunk) としても活動し、16FLIP名義でBeatmakeもこなす。ソロを含めこれまでに複数のALBUMをリリース。

Worked with: 仙人掌, Mr.PUG, 5lack, Budamunk, BES, SEEDA,KOJOE, JJJ, KID FRESINO, FEBB, MASS-HOLE, YUKSTA-ILL, DJ SCRATCH NICE, GRADIS NICE, CRAM, ILLSUGI, YOTARO, GQ, DJ SHOE, ENDRUN, ILLNANDES, 弗猫建物 ,Devin Morrison, Roc marciano, Evidence, Tek of Smif-n-wessun, Twiz the beat pro, Roddy rod, Gwop sullivan, DJ FRESH, Illa J, DJ DEZ, Khrysis, John robinson, Eloh kush, Al B smoov, Mr.Brady, Planet asia, Georgia Anne Muldrow & more

NYクラブ・ミュージックの新たな波動 - ele-king

 NYダンス・ミュージック・シーンの10年代の変遷については前編で伝えたけれど、20年代が始まろうとする今のブルックリンのアンダーグラウンドはどうなっているのだろう?

 2012年、〈Mister Saturday Night Records〉によってその才能を見出された Anthony Naples は、それから7年経った今、もはやブルックリンのダンス・ミュージック・シーンを牽引するといっていいほど勢いのある存在だ。ヨーロッパを中心に毎週世界のどこかでブッキングされる人気DJの傍ら、2017年には、まだ発掘されていないNYの新しいアーティストにフォーカスするインデペンデント・レーベル〈Incienso〉をデザイナーの Jenny Slattery とともに設立。その第1弾としてフィーチャーされたのが、10年代のブルックリンのユース・カルチャー・シーンをともに歩んできた、“DJ Phython”こと Brian Piñeyro のデビューLP『Dulce Compãnia』だ。

 実は DJ Python のほかに、表現するモノによって DJ Wey や Deejay Xanax、Luis などの名義も使い分ける Brian Piñeyro は、DJ Python では〈Incienso〉の前身のレーベル〈Proibito〉時代からすでに、ディープ・ハウスやシューゲイザー、トランス、レゲトンなどをスローテンポにしたサウンドのうねりをゆったりサーフライドしていくような「ディープ・レゲトン」と呼ばれる新たなスタイルを打ち出してきた。この『Dulce Compãnia』のリリースは、オンライン・マガジン「ローリング・ストーン」における「2017年ベスト・エレクトロニック・アルバム」にランクインされるほど高く評価され、そのスタイルを確かなものにした。
 さらに、今年6月にはアムステルダムを拠点とするレーベル〈Dekmantel〉からEP「Derretirse」をリリース。『Dulce Compãnia』に続き2作目となる本作では、ラテンにルーツを持つ Brian Piñeyro らしく、南半球から生まれる陽気なパーカッションやリヴァーブ、ディープ・シンセのリズムとともにレゲトンとアンビエント、ポストIDMがよりメローに融合していくようなさらなる進化を遂げている。そんなブルックリンのアンダーグラウンドで育まれたオリジナルのサウンドが「ディープ・レゲトン」として世界に広まりつつある今、DJ Phython は、間違いなくこれから活動の場を外へ広げていくNYの新世代アーティストのひとりだといえるだろう。

「Derretirse」より“Be Si To”

 そして、〈Incienso〉の第2弾には、カナダの〈1080p〉やシカゴの〈Lillerne Tape Club〉からカセットテープを発表してきたダンス・ミュージック・シーンの新星 Beta Librae のデビューLP『Sanguine Bond』をフィーチャー。実はブシュウィックの「Bossa Nova Civic Club」がオープンした当時(2012)からプレイしている Beta Librae は、この「Bossa Nova Civic Club」で、女性特定のDJ集団「Discwoman」を主宰する同郷の Umfang とともに今のNYのアンダーグラウンドで重要なポジションを占める「Techno feminism」というパーティのレジデントDJを務めている。


Bossa Nova Civic Club 2013 flyer “Techno feminism”

 そんなバックグラウンドの片鱗を垣間見せるような『Sanguine Bond』では、アンビエントなディープ・ハウスにエレクトロニック・サウンドをレイヴ感たっぷりにミックス。この新しい質感こそがまさに“今のNYサウンド”だと思わせる、NYのダンス・ミュージック・シーンに新境地を切り拓くアルバムとなった。

『Sanguine Bond』より“Pink Arcade”

 レーベルについて、「ポリシーは、“私たちが真価を認めている人たちの、新鮮でおもしろさを見出せる音楽をリリースする”こと。これまでのリリースでは身近な友人だけをフックアップしてきて、これは絶対的なルールじゃないけど、その人のことを知っているからこそすでに彼らとの信頼関係があるのは制作においてかなりやりやすいの。そして、まだリリースのない人を紹介することが何よりもエキサイティング!」と、Jenny Slattery。
 その後〈Incienso〉は、CZ Wang と Joli B. のデュオ People Plus によるEP「Olympus Mons」や、まだ記憶に新しい工藤キキのEP「Splashing」、最新作には Sleep D によるLP『Rebel Force』など、レーベル設立からたった2年でコンスタントに7つのタイトルを発表し、NYナイズされた気鋭のダンス・ミュージックを発信し続けている。さらに、Jenny Slattery は、「最初はNYの友人たち、そして次は世界中の友人たちへ。レーベルを通じて作り上げたコミュニティとアーティスト自身の小さな世界をリンクさせていくのは楽しいし、それを続けていくことがこれからも楽しみ。2020年は、DJ Python のセカンドLPから始まり、これまででいちばん有望な年になりそう」。


L to R: People Plus, Kiki Kudo, Sleep D

 そんなアンダーグラウンド・シーンで最もフレッシュなリリースといえば、ブルックリンに拠点を置き、Anthony Naples や DJ Phython、Beta Librae たちと一緒に肩を並べてきた Galcher Lustwerk のLP『Information』を真っ先に挙げたい。

 そもそも Galcher Lustwerk が世界から注目されるようになったきっかけまで話を遡ると、2013年に発表した初めてのミックス「100% Galcher」が決定的だろう。エクスペリメンタルなダンス・ミュージックをはじめ、エレクトロニック・サウンドに関連するさまざまなアーティストのミックスに焦点を当てた実験的なプロジェクト「Blowing Up The Workshop」のために未発表音源を集めて制作した「100% Galcher」は、オンライン・マガジン「FACT」の「2013年ベスト・アルバム50」では4位、「Resident Advisor(以下、RA)」の「2013年ミックス/コンピレーション・トップ30」ではオンライン・ミックス部門で堂々1位を獲得し、“無名の新人が自身の音源のみでミックスを公開するのは2013年のベスト・サプライズだった”と「RA」から絶賛された。ディープ・ハウスのようなドラムマシンに独自のスモーキーなヴォーカルをかけ合わせたサウンドは、平たく言うと控えめなヒップハウスのようで、ありそうでなかったオリジナリティーにほかならない。Galcher Lustwerk はそれほど鮮烈なデビューを果たしたのだ。


2012年のトラックを集めたプロモミックス「100% Galcher」

 そして、同年 Young Male と DJ Richard が主宰するブルックリンの〈White Material〉からヴァイナル・デビューとなるEP「Tape 22」をリリースするやいなやその新鮮なサウンドが世界のダンス・ミュージック・リスナーの心をつかみ、2015年に立ち上げた Galcher Lustwerk 自身のレーベル〈Lustwerk Music〉から立て続けに、「100% Galcher」のシングルカットとなるEP「Parlay」と「I Neva Seen」、〈White Material〉の Alvin Aronson とのプロジェクト「Studio OST」名義でLP『Scene (2012-2015)』をリリース。その意欲的な活動とユニークなサウンド・スタイルで、Galcher Lustwerk という存在を揺るぎないものにしていった。

 話を本題に戻すと、今年11月にリリースされたばかりの最新作『Information』は、2017年〈White Material〉からのデビューLP『Dark Bliss』、翌年2018年〈Lustwerk Music〉からのセカンドLP『200% Galcher』に次ぐ、待望のサード・アルバム。しかも、Matthew Dear や Gold PandaTychoShigeto などのアーティストをダンス・ミュージック・シーンに輩出してきたミシガンの名門〈Ghostly International〉のデビュー作品だ。Galcher Lustwerk は〈Lustwerk Music〉のホームページにこうコメントを寄せる。
 「アメリカはミッドウェスト、クリーヴランド出身の自分が〈Ghostly International〉と一緒に作品を出すのであれば、最もミッドウェスト的な“フックの強い”トラックを選び出すことがしっくりくると思う。このアルバムでは、ほかのクリーヴランドのプロデューサーが作る曲のなかで聴いたビターウィートな質感を表現したかったんだ」。

 その言葉の通り、『Information』は、Galcher Lustwerk ならではのスタイルが顕在しながらもよりライヴ感のあるドラムとジャズ・サックスを含んだ、これまで以上にダイナミックなサウンドを生み出している。

 このラインでブルックリンのアンダーグラウンド・シーンを紹介したなら、前編からの一連で登場した〈L.I.E.S. Records〉や〈Proibito〉、さらには Maxmillion Dunbar が主宰するワシントンD.C.の〈Future Times〉など10年代のアメリカで重要なレーベルからリリースのある“Huerco S.”こと Brian Leeds についても特筆すべきだと思うけれど、彼は、2018年に自身のレーベル〈West Mineral〉を立ち上げるとともにブルックリンからベルリンへ拠点を移した。アンビエントやドローン、エスニックに通ずるエクスペリメンタルなエレクトロニック・サウンドを発表してきた〈West Mineral〉では、Brian Leeds の故郷であるカンザスのアーティストを中心にフィーチャー。20年代が始まろうとする今、Brian Leeds はもはや「NYサウンド」というこの本題にはくくりにくい存在となってしまったが、拠点をベルリンに移した今でもNYで培ってきた大もとのスタンスは変わらないはず。

 もちろんほかにここで紹介しきれなかった新世代アーティストもたくさんいるが、実は今回取り上げた DJ Python と Beta Librae、Galcher Lustwerk は、DJ/プロデューサーの Aurora Halal が主宰するNYで数少ない野外レイヴ・パーティ「Sustain-Release」の国外初となるサテライト・イベント「S-R Meets Tokyo」のために来年1月に来日を予定している。そもそも、「NY」とか「新しい世代」とか、日常的になじみの薄い字面だけでハードルの高さを感じる人もなかにはいるかもしれない。だけど、一度彼らを見てみたら、きっと好きになると思う人たちの顔も目に浮かぶ。

Sustain-Release presents “S-R Meets Tokyo”

2020年1月25日(土)東京・Contact
OPEN 22:00

出演
Aurora Halal (NY)
Galcher Lustwerk (NY)
Wata Igarashi (Midgar | The Bunker NY)

DJ Python (NY)
Beta Librae (NY)
AKIRAM EN
JR Chaparro

Mari Sakurai
Ultrafog
Kotsu (CYK | UNTITLED)
Romy Mats (解体新書)
Celter (Eclipse)

料金
BEFORE 11PM ¥2500 | UNDER 23 ¥2500 | ADVANCE ¥2500 | GH S MEMBERS ¥3500 | W/F ¥3500 | DOOR ¥4000
詳細:https://www.contacttokyo.com/schedule/sustain-release-presents-s-r-meets-tokyo/

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462