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Digital Mystikz

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Return II Space

DMZ

テツジ・タナカ   Oct 06,2010 UP
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 澱みがかったロンドンの冬の空のように暗く重い音楽がまたここに生み出さた。DMZとしては久しぶりの帰還であるそれは......デジタル・ミスティックズ(マーラとコーキのデュオによる)、待望のデビュー・アルバムだ。

 DMZ=マーラ、コーキ、ローファーの3人が目指したベースサウンドは、セレブリティー・カルチャーへの拒絶、そしてクロイドンにおける彼らの音楽体験を基礎としたピュアかつオーガニックな、サブベースがメインのいわばアンチ・トレブル・サウンドである。生まれるべくして生まれた彼らオリジネーターの妙技の産物だ。
 つまり、UKアンダーグラウンドがジャングル、ドラムンベース、UKガラージ全盛だだった頃、彼らは遊び仲間とともにビッグ・アップル・レコーズでヴァイナルを漁り、数々のジャングル・レイヴやクラブ・パーティに通い詰める日々を送っている。そうしたなかで研磨された感性がレーベル・ポリシーへと結びつき、DMZはFWD>>と並ぶ重要なパーティへと発展したのである。ダーク・ガラージを発展させたハーフ・ステップ・ウォブリー・サウンドの生みの親であるローファー、力強いメロディラインと野太くダビーなベースラインをフォーカスとしたオールドスクール・ステップを基調とするデジタル・ミスティックズ......、〈DMZ〉からのリリースは、2004年の「Twisup」以来いくつもの名曲をシーンに残している。

 おそらくマーラが主体となったであろうこのアルバムは、音楽シーンがデジタル=MP3に支配されているなか、時代にそぐわないフォーマットを選んでいる。さすがマーラというか、デジタル・ミスティックズのデビューアルバムなのに......セールス上、大丈夫なのか? と心配してしまう、アナログ盤のみのリリースである......。
 レゲエやダブにもひと際インスパイヤーされているマーラが、レゲエ・セレクターの象徴であり、いまや消えつつあるダブプレート文化を守ろうとするのは当然のことかもしれない。いずれにしても、DMZの強固なアナログ主義というポリシーが伝わってくる。たしかに、ジャー・シャカや名だたるレゲエ・セレクターがパソコンやデータでDJをする姿を見たら誰もがドン引きするだろう。そうした伝説的なレゲエのセレクターに近い雰囲気をマーラは持っている。そのDJプレイは何度も見たことがあるし、筆者もDBSで共演したことがあるが、マーラのレゲエ・スピリッツを受け継いだDJスタイルにいつも驚嘆させらる。

 ミドルレンジの広がり方がアナログに最適な音質にミックスされている。なるほど、音を聴けばヴァイナルのみで出した理由がわかる。ヴァイナルに最適な中和のとれた音色ヴァランスだ。
 また、タイトルの『Return II Space』の通り、秀逸なジャケットのデザインそのままのブラックホールに吸い込まれるかのような深いスペーシーなムードがあり、灰色のコンクリートのような無機質な感覚がある。ダブ志向の彼が、新たな到達点として発表するスペース・オデッセイとでも言えばいいのか。ジェフ・ミルズやLTJブケムとはまた別の、新しい宇宙観がダブステップと言うフィルターを通して具現化されている。これもダブステップの副産物であり、その変異体のひとつである。

テツジ・タナカ