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Sculpture

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Rotary Signal Emitter

Dekorder

三田 格   Dec 03,2010 UP
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E王

 イギリスのVJで、アニメイション作家のルーベン・サザーランドがカメラのズームを使いながら「見る」ためのピクチャー・レコードをリリース(それがどのような映像効果をもたらすかはまだ試していない)。そのサウンドトラックとしてヴァイナルに刻まれている11曲が、しかし、そのような補助要素として終わらせてしまうにはあまりにもよくできていて、これをフライング・リザーズやエイフェックス・ツインの系譜に位置付けてみたいかなと。実験音楽といえば実験音楽だし、ポップスとはさすがにいえないものの、ファニーで思わず笑ってしまうセンスはポップ・ミュージックへと至る道程のどこかに位置し、さらなる発展を夢見ている途中だと思ってみたくなる。あるいは、そのように聴く誘惑から逃れられないとも。

 ライブラリー・ミュージックのイミテイションをつくるというローウェル・ブラームス『ミュージック・フォー・インソムニア』に一脈で通じるものがありつつ、そこで展開されている多様性とはまったく異なる意味で雑食性が強く、簡単にいえば音楽のジャンルというものが「ジャンルにとらわれない」という以上に整合性を持っていない。そこが実験音楽のように聴こえる理由ともいえるんだろうけれど、実験のための実験音楽ではないことが、そのための着地点からこれらの音楽を逸らしてしまうために、これらの音楽が音楽的な袋小路に陥る可能性を回避し、おそらくはアニメイションのための音楽という設定がこれらの音楽にポップ・ミュージックのような響きを帯びさせる要因をもたらしたのだろう。なんだか佐々木敦みたいな文章になってしまったけれど、実験的なロックや実験的なテクノが実験的な実験音楽とは共有するものがあっても、様式化された実験音楽とは重なるところがまったくないということを理解してもらうには最良のアルバムであり、新しい音楽をつくりたいという動機が音楽以外のところにあった方が新しい音楽は生まれやすいという(こともある)サンプルではないかと。
 そして、その結果が、この場合はある種のスラップスティック的な感覚を強く持った音楽になったということであり、それ自体は作家の個人史から自然と滲み出たものなんだろうと推測するだけである(それを目的としている音楽だとは、また、思えないからである)。

 昨年、『アンビエント・ミュージック 1969-2009』が思ったよりも売れた後で、その次に好き勝手なテーマでレコード・カタログがつくれるとしたら、ギャグやスラップスティックを基調としたそれがつくりたいなと考えていた時期がある。ディーヴォやパレ・シャンブール、ジャックオフィサーズやクイントロンといった辺りに無理やり道筋をつけて、またしても好きなようにアーカイヴを横断してみようと。ゼロ年代はとりわけそういうものが多く、ボーデンシュタンディッヒ2000やディック・エル・ディマシアドーのようにわかりやすいポイントにいた人はいいけれど、GCTTCATTであれ、ブレイン・サッキング・ピーニュナンナーズであれ、ジャンル分けという考え方のなかでは溺れてしまうものも多く、これは絶対に商品価値があるぞ......と思ったものの、もちろん5分で却下。『アンビエント・ミュージック』が売れたんだから、次は『裏アンビエント・ミュージック』をつくれという流れになってしまった。おかげでその反動はさらに膨れ上がり......いや。

三田 格