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Album Reviews

Friendly Fires

Friendly Fires

Pala

XL Recordings/ホステス

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野田 努   May 24,2011 UP
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E王

 「黄金時代を感じるには生まれときが遅すぎた」、このように歌いはじめる"リヴ・ゾーズ・デイズ・トゥナイト"は、セカンド・サマー・オブ・ラヴを知らない世代が初めて1989年の夏について歌った歌である。「トビ(rush)も逃したし、良い時代(better days)も知らない/僕は君の経験した時代を感じることができない/君の貴重な過去に触れることもできない」、とまあ、なんとも実直な憧憬が歌われている。そしてフレンドリー・ファイアーズのエド・マクファーレンはその曲のサビを次のように繰り返すのである。「それでも僕はあなたがたのその日々を今夜生きてみせるよ。僕には手が届かない歴史だと言うけれど、それでも僕はそれらの日々を今夜生きてみせる」
 これほど前向きに、レイヴ・カルチャーを知らない世代がそのファンタジーを歌ったことはない。"リヴ・ゾーズ・デイズ・トゥナイト"は過去を調べているが、あくまでも現在についての歌である。「僕をアンダーグラウンドにとどめる亡霊と向き合って/みんなが話している最良のものをいただこう/僕は待っているけど外は寒いから/夜には君をしっかりと抱くんだよ/君の愛を感じるために」
 興味深いことに、5月19日付けの『ガーディアン』では、フランキー・ナックルズの"ユア・ラヴ"(注)の記事が組まれている。「永遠にレイヴさせる歌」というわけで、この曲にはいまだ素晴らしい魅力があり、現在もジ・XXのような若いバンドにまで支持されている......などといった事情が記されているが、真実を言えばこの曲は明らかにある時期に飽きられ、忘れられていたのである。しかし......たしかにここ数年で蘇ったのだ。そして、この1987年のシカゴ・ハウスのクラシックのリヴァイヴァルをうながしたのがフレンドリー・ファイアーズなのだ。"ユア・ラヴ"は、このバンドの2006年のデビュー・シングルでカヴァーされている。渋谷のディスクユニオンの2Fのインディ・ロックのコーナーと4Fのクラブのコーナーを往復するリスナーが果たしてどれほどいるのか知らないが、つまりUKではいまそれが起きているのである。

 さて、2008年のファースト・アルバム『フレンドリー・ファイアーズ』で80年代のニューウェイヴとイビサの快楽をミックスしたこのバンドは、そしてセカンド・アルバムにあたる本作『パラ』においてより情熱的に、さらに思いを深めながら、ダンス・カルチャーとその"夏"をテーマにしている。音楽的にはUKのエレクトロ・ポップの伝統芸を引き継ぎながら、オーソドックスな構成のキャッチーな歌をダンサブルな演奏をバックに歌っている。「裏庭で一本のテープを見つけた/泥だらけの青いカセットだけど/そのホコリの奥ではリールがまわりはじめて/土のなかに保存されたもうひとつの記憶が再生される」"ブルー・カセット"
 『パラ』にひとつ問題があるとしたら、これほどクラブ・カルチャーを扱いながら、ダブステップないしはミニマル・テクノといった現在稼働中である音がまったく関わっていないという点にある。レトロ趣味に終始しているのだ。この音はアンダーワールドでもなければケミカル・ブラザースでもない、ワム!の"クラブ・トロピカーナ"でありアニマル・ナイト・ライフの"ラヴ・イズ・ジャスト・ア・グレート・プリテンダー"なのだ。明らかに彼らは享楽の季節としての80年代をうらやましがっている。
 「塵が降ってくる/彼らは行進していった/地下に眠るレコードたちとともに/階段を上がる/クラブから出てライトにキスする/君の愛が欲しい/街に出る/君の面影を心抱いて世界はふたたび回り出す/しかし君は決して僕のものにならない」"チャイム"
 こうした若い世代の複雑な感情の吐露に享楽の時代を経験した僕はまだうまく応えることができない。当たり前だが、戸惑いを感じるのである。そして、彼ら自身もそれが素直に喜べることではないことも理解している。「君の愛、それは幻/僕が生きるすべては君の嘘/僕は混乱している/トリップしている/僕は傷つき、参っている/寒いし、負けているというのに、この気持ちは強まるばかりだ」"プル・ミー・バック・トゥ・アース"
 な、なんていう告白なのだろう。君の世代にだって面白い音楽がたくさんあるじゃないか、思わずそう言いたくなってくる。ただ......ダンスはあっても、愛と笑顔の夏は手の届かないところに行ってしまったのかもしれない......とは僕も思う。個人的な快楽だけはあっても、集団として理想とするヴィジョンはない。パーティの最後にキング牧師の演説や"パワー・トゥ・ザ・ピープル"をかけるようなDJが、いまさらいるのだろうか。それとも少年たちの愛の歌を聴きながら、潮風に混じったハウスのビートを感じていたあの日々は蘇るのだろうか。「僕はその日々を生きるんだ」と、エド・マクファーレンは何度も何度も繰り返すのだ。「君が持っていた愛を感じる/我慢はしない/僕は今夜、あの日々を生きるんだ」
 なおアルバムのタイトルは、メスカリンやLSDの研究でも有名なオルダス・ハクスリーのユートピア小説『島』から取られている。


(注)正確に言えば、この曲のもうひとりの主人公はジェイミー・プリシプルである。多くの人が「フランキー・ナックルズの」を書いているが、これではプリシプルがあまりにも可哀想。蛇足として、使われたドラムマシンはデリック・メイのものだと言われている。

野田 努