ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Ehiorobo - Joltjacket (review)
  2. King Krule - You Heat Me Up, You Cool Me Down (review)
  3. Columns 断片化された生活のための音楽 ——UKインディーズ考 (columns)
  4. dj honda × ill-bosstino - KINGS CROSS (review)
  5. 年明けのダンス・ミュージック5枚 - (review)
  6. History of Fishmans ——久しぶりのフィッシュマンズのライヴ情報 (news)
  7. interview wuth Geoff Travis and Jeannette Lee 〈ラフ・トレード〉が語る、UKインディ・ロックの現在 (interviews)
  8. Makaya McCraven - Deciphering The Message (review)
  9. どんぐりず ──マッチョなシーンに風穴を開ける!? エレキング注目のラップ・ユニットが東京と大阪でライヴ (news)
  10. ELECTRONIC KUMOKO cloudchild ──サム・プレコップやカルロス・ニーニョらも参加するコンピがリリース (news)
  11. Parris - Soaked In Indigo Moonlight (review)
  12. Billy Wooten ──70年代ジャズ・ファンクの至宝、ビリー・ウッテンのTシャツ&7インチ・セットが発売 (news)
  13. Luke Wyatt & Dani Aphrodite ──ファッション・ブランドの〈C.E〉が2022年春夏コレクションに先駆けヴィデオを公開 (news)
  14. クリスチャン・マークレー - トランスレーティング[翻訳する] (review)
  15. Kaoliang Brothers - Kaoliang Brothers (review)
  16. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第3回 映画『金子文子と朴烈』が描かなかったこと (columns)
  17. interview with Jun Miyake ジャズ、ブラジル音楽、クラシックが交錯する時間の迷宮 (interviews)
  18. Cleo Sol - Mother (review)
  19. Ian Wellman - On The Darkest Day, You took My Hand and Swore It Will Be Okay (review)
  20. You'll Never Get To Heaven - Wave Your Moonlight Hat for the Snowfall Train (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Death Grips- The Money Store

Death Grips

Death Grips

The Money Store

Epic Records

Amazon iTunes

中里 友   Jul 06,2012 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 デス・グリップスは異様なまでに、攻撃的な破壊者だ。ハードコアとヒップホップの反抗精神による大胆不敵なアートフォーム......不気味なイラストのジャケット......〈Thirdworld〉と名付けられた怪しげなホームページ、フロントマンをつとめるステファン・バーネットの強烈なスタイル。怖いもの見たさという好奇心もたっぷり煽ってくれる。
 ドラマーのザック・ヒルを中心とするサクラメント出身のこの3人組は、2011年に発表したミックステープ『Exmilitary』や動画によって世間の注目を集めた。そして、結成1年半足らずでメジャーのエピックとの契約にいたっている。本作『ザ・マネー・ストア』リリースの直前にはビョークの「Biophilia」のリミックスにも参加している(このあたりはさすがビョーク)。

 ミックステープとして発表した『Exmilitary』はダウナーで呪術がかった作風だったが、『ザ・マネー・ストア』では痛快な弾けっぷりを見せている。トランシーで無軌道な享楽性の爆発だ。
 1曲目の"Got Get"。ドライヴの効いた攻撃的なビートを持ち、ソウルフルで、ラスティを彷彿とさせる陶酔的なサウンドで突っ走る。歌詞の内容は、何をしてもうまくいかない主人公が最後、自殺によって解放されるといったもの。"Fever"の破壊力も良い。乱れ飛ぶビートと増幅していくサイレン音の上に乗る、咆哮にも似た破天荒なフロウが耳につく曲だ。こちらはドラッグ常用者の幻覚・幻聴のパラノイアを歌っている。繰り返し歌われる「Diamond」という単語はキラキラに光って見えるドラッグを指しているわけだが、頽廃的な彼らの音楽を象徴する1曲だ。
 ほかにも、オールドスクールのエレクトロをハードにアレンジした"I've Seen Footage"、一時期のレネゲイド・サウンドウェイヴやパブリック・エネミーを思わせる騒々しさの"System Blower"、ブレイクコアからの影響を感じるオリエンタルなナンバー"Punk Weight"、ファクトリー・フロアにラップを付けたような"Hacker"など格好いい曲がたくさんある。ステファン・バーネットのラップには、オッド・フューチャーの猟奇性と〈アンチコン〉以降というべきしなやかさがある。野太い声質と荒々しいフロウにはN.W.A.からの影響を感じさせるキャッチーさがあるので、やかましいが耳なじみが良い。
 
 グループの中心人物、ザック・ヒルはボアダムスにも参加したことのある凄腕ドラマーで、実験的なロック・デュオ、ヘラを筆頭に、ほかにもエル・グループ・ヌーヴォ・デ・オマー・ロドリゲス・ロペス(El Grupo Nuevo de Omar Rodriguez Lopez)、ウェイヴスやスカーズ・オン・ブロードウェエイなどにも参加した経験を持つ。ザック・ヒルの新しい試みがデス・グリップスというわけだ。ストイックに技巧を見せるヘラに対してデス・グリップスは衝動的で、音楽的にはより拡張されている。ヒップホップとハードコアのなかにはフィールド・レコーディング、ノイズといった要素も注がれている。クソみたいな生活を送りながらパラノイアを歌い、ハイになる。ネガティヴで鬱屈した精神をエネルギーに反転させる。だいたい"パンクの重さ(Punk Weight)"なんていう曲もある......fuck that! これは毒、新しい劇薬だ。

悪魔の翼を与えられ、
夢の続きを彷徨う
"Got Get"



中里 友