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大久保潤   Nov 11,2013 UP
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 ぼくが4半世紀にわたって応援している広島カープが16年ぶりのAクラス入り、初のクライマックスシリーズ進出! というのに大いに盛り上がっているあいだに、関西インディーズ・シーンの裏番長ナスカ・カーが11年ぶりの新譜をリリースした。

 そもそもナスカ・カーは90年代前半に、中屋浩市(最近では非常階段や関連ユニットでの活躍で知られる)、吉田ヤスシ、Dj タトルの3人で結成(経緯はこちらにくわしい)。当初は特撮番組などのサンプリングを駆使して緻密に構成されたエレクトロ?バンドであり、「西の電気グルーヴ」と称された(「東のX、西のCOLOR」の引用だろうか)。当時、高円寺20000Vの壁に貼られた印象的なチラシの数々を記憶している人もいるだろう。
 吉田・タトルの脱退後も中屋を中心にバンドは継続、ディープ・パープルばりの回数に及ぶメンバー・チェンジを経て制作された今作はその名も『最新録音盤』。次作が出ない限りは永久にこれが最新になるわけで、これが最後のアルバムになるかもしれないという覚悟がタイトルからも感じられる。これがなんと、サンプリングゼロ、ほぼバンド演奏のロック・アルバムとなった。11年前の前作(アルバム・タイトルは無し。CDの背の部分には「CDお買い上げありがとうございます!」と書かれているが、これがタイトルというわけではないと思う……)では現アメリコの西岡由美子(現・大谷由美子)がヴォーカルだったのだが、現在では中屋が自らヴォーカルを担当。
 元メルト・バナナで、現在は奇形児、前野健太とソープランダーズ、石橋英子withもう死んだ人たち、ジム・オルークのレッド・ゼツリンやマエバリ・ヴァレンタイン、EP-4等々数々のバンドに参加しているマルチプレイヤーの須藤俊明が半分以上の楽曲でギター、ピアノ等を演奏、共同プロデュースとして名を連ねているほか、ゆかりのある顔ぶれが多数ゲスト参加している(というか、ゲストなのかメンバーなのか線引が曖昧なようで、例えば須藤は中ジャケではしっかりメンバーとして写真も掲載されているにも関わらず、自身のブログでは「ゲスト参加」と表現してたりする)。
 ジャケットにウィリアム・ブレイクの引用が印刷されているほか、帯、トレー、裏ジャケに併記された日本語・英語タイトルの数々など、サウンド以外の部分における情報過多なサンプリングぶりは健在だ。
 元マドモアゼル・ショートヘア!のホダカナオミをヴォーカルに迎えた呪術的なヘヴィ・サイケナンバー“ドアを開けろ”からはじまり、打ち込み+生楽器による重量級ハード・ロックが中心(曲によってはツインドラムだったりする)となっている。「地デジのテレビはもう必要ない」と連呼し「衛星放送と契約だ」と締める“N.O.T.V.”などは、「うちにはスカパー!があればいい」と言い切った野田編集長も共感するところではなかろうか。
 ホダカのコーラスをフィーチャーしたドリーミーな“ハロー・グッバイ”、ブッダマシーンを使用した涅槃サイケ“天国への道”(昨年中屋が体験した臨死体験に触発されてるのだろうか)、ファズベースとドラムが怖-COA-を思わせる“ラン・ベイビー・ラン”など、熱いハード・ロックに混じって収録されたインタールード的な小曲もいいアクセントになっている。
 ガバキックに乗せた“嫌われ者のパンク2013”、中間のインプロ部分が大胆な“インプロヴィゼーション・アナーキー2013”など、関西ノーウェイヴの始祖・ウルトラビデのカヴァーという形による関西パンク源流への言及など、近年の非常階段での活動も併せて考えると興味深い。
 最後の“斬る!斬る!!斬る!!!”はスラッジコア的な重いリフの反復からギターとシンセによるノイズになだれ込んで終了。20年にわたる活動の総決算にふさわしい濃厚な油っこさと熱量を持った、中屋の愛する天下一品のこってりラーメンのようなアルバムである。これが最後とか言わずに、カープがリーグ優勝する前に次作をお願いしたい。

大久保潤