ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. The Clash ——ザ・クラッシュ、結成50周年記念ベストがリリース
  2. Carlos Souffront, PLO Man and 1-Drink ──ファッション・ブランド〈C.E〉が日本で1年ぶりのパーティ
  3. 別冊ele-king パンク50周年記念号──それは何だったのか、何でありえるのか
  4. Bicep ——バイセップが3つの新曲で、フリー・パーティ、レイヴ、サウンドシステム文化を主張する
  5. 『ユーザーズ・ヴォイス』〜VINYLVERSE愛用者と本音で語るレコード・トーク〜 第五回 映画から広がった、サウンドトラックとレコードの世界ユーザー・ネーム:nkk / 中川慧輔さん
  6. Robert Del Naja ──マッシヴ・アタックの3D、二度目の逮捕
  7. interview with Actress UKテクノ界の奇才が語るみずからの哲学 | ──アクトレス、インタヴュー
  8. Black Marble - Life in Small Spaces | ブラック・マーブル
  9. sugar plant ──2026年を締めくくるライヴが11月21日に開催
  10. Malaria! ——80年代初頭の西ベルリンから、ポスト・パンク/アヴァンギャルド・シーンを象徴する最重要バンド、マラリア!再発
  11. 細野晴臣 - Yours Sincerely | Haruomi Hosono
  12. Columns ♯17:もしもパンクがなかったら ——その基礎知識と『パンク50周年記念号』刊行のお知らせ
  13. 食品まつり a.k.a foodman - HIKARIGASASHIKOMU
  14. 野田 努
  15. Arca - XXXXX
  16. Horse Lords - Demand to Be Taken to Heaven Alive!  | ホース・ローズ
  17. Klara Lewis - Opening | クララ・ルイス
  18. Columns 9月のジャズ Jazz in September 2026
  19. ele-king vol.37 ボーズ・オブ・カナダ大研究/サイケ&ドリーミー特集
  20. AMBIENT KYOTO ──2027年春、レイ・ハラカミの展示が決定

Home >  Reviews >  Album Reviews > The Tenses- Howard

The Tenses

ExperimentalNoise

The Tenses

Howard

audioMER

Amazon

倉本諒   May 07,2014 UP

 ラフムス。羅府夢衆。嗚呼、なんて素敵な響きなのだろう。ロサンゼルスの夢追い人たちよ、僕らはみんなあなたの子どもだ。

 僕がロサンザルス・フリー・ミュージック・ソサエティー(LAFMS)をディグるきっかけとなったのは1971年創業の老舗中の老舗ともいえるLAのレコ屋、プーバー(Poo-Bah)だ。永久に売れることのないセールワゴンに積もる魔法の埃には、この店に踏み入る者に幸運をもたらす不思議な力が宿っているのだ。思い返せば僕も、まだ出会ってまもないマシューデイヴィッドのアンビエント・セットと慣れないメディカル・ウィードに完全にノックアウトされ、インストア・ライヴ中に店の床で爆睡してしまったのもココであるし(起きたらレコ屋ってすげーびっくりするよ)、後に同じ屋根の下で暮らすことになるショーン・マッカンやマシュー・サリヴァン、アレックス・グレイらと親交を深めたのもココであるし、先日も金欠を理由にはるか昔に頼まれた仕事をいまさら仕上げて持っていっても笑顔でメシと給与を施してくれたのもココである。プーバーの懐は果てしなく深く、広く、そしてゆるい。
 だから、入手困難であったLAFMSの音源の販売や再発など、彼らの徹底したDIY主義に共鳴し、プーバーが長年サポートしてきたことは必然に思えるのだ。

 LAFMSコレクティヴの中核を成すスメグマ(Smegma)のジュ・サック・リート・ミートとジャッキー・スチュワートによるベテラン奇才デュオ、テンシズ(Tences)のサウンドはスメグマのそれよりミニマルなセットアップのコンパクトなプロジェクトだ。ターンテーブル、テープ・マニュピュレーション、歪みまくるサーフ・ギターとコルネット等で丹念に築き上げられたこのレコード。映画や短波レディオ・ドラマからのサンプリングとループやサイレン等のノン・インストゥルメントのコラージュの上を縦横無尽に駆け巡るリンク・レイ的なギター・リフ、聴者がエコーマシンに乗ってカリフォルニアの空へどこまでも飛ばされてゆくサウンドはひたすらに享楽的だ。エクスペリメンタル=難解というイメージを抱くリスナーにこそこのレコードでトリップしていただきたい。誰かの敷いたレールの上でなく、誰かの模倣でもなく、自分たちのやり方で、独自の作品を創造するLAFMSのヴィジョンをあなたも夢見ることができるかもしれない。

 僕にとってのLAは羅府夢衆そのものとも言える。ローカル・アーティスト、インディペンデント・ギャラリー、レコ屋、DIYスタジオetc、町中の至るところにその夢は生きている。ジュ・サック・リート・ミートに週2、3で近所のカフェで遭遇したりもする。
 プーバーももちろん然り。LAFMSコレクティヴやレコード・コレクター、自宅のゴミ・レコードを店先に放置する地元のオッサンやオバハン、ルンペンにネコ、シャモジ等々……ありとあらゆる人種が交錯するこのレコ屋は、先日のジャパン・ツアーでも最高のアクトを披露してくれたラスGがバイヤーを務めるということもあり、〈ローエンド〉や〈ストーンズ・スロー〉周辺のLAビート・キッズも多く集う。野田編集長がよく呟く、LAのヒップホップは何故ビートが溶けるほどにサイケデリックなのか? という問いかけの答えのヒントはここにもあるかもしれない。

倉本諒