ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. New Order ──すでに話題のニュー・オーダー来日情報 (news)
  2. Tunes Of Negation ──音楽にまだ未開の領域はあるのか、シャックルトンの新プロジェクトがすごい! (news)
  3. KODAMA AND THE DUB STATION BAND - @六本木Varit (review)
  4. Laura Cannell - The Sky Untuned / Laura Cannell, Polly Wright - Sing As The Crow Flies (review)
  5. Floating Points ──フローティング・ポインツがDJセット音源を公開 (news)
  6. interview with Taylor McFerrin 僕らはジャズか? (interviews)
  7. Politics 反緊縮候補たちの参院選 (columns)
  8. yapoos ──地球最後のニューウェイヴ・バンド、ヤプーズが再始動する (news)
  9. Solange - When I Get Home (review)
  10. interview with Yutaka Hirose よみがえる1986年の環境音楽 (interviews)
  11. Floating Points ──フローティング・ポインツ、待望の新曲をレヴューします (news)
  12. Columns いまだ眩い最高の夜 ──ニュー・オーダーのライヴ盤『NOMC15』を聴きながら (columns)
  13. Random Access N.Y. vol. 118:2019年のNYで金延幸子の『み空』を聴く Sachiko Kanenobu ‘Misora’ listening party at red wing heritage (columns)
  14. interview with South Penguin サイケデリック新世代が追い求める「美しさ」とは (interviews)
  15. Khruangbin - 全てが君に微笑む / Khruangbin - Hasta El Cielo (review)
  16. Moodymann - Sinner (review)
  17. interview with New Order 我らがニュー・オーダー (interviews)
  18. interview with Vityazz インスト・バンドをなくしたい (interviews)
  19. interview with Phony Ppl NY発 新世代が奏でるソウルの真髄 (interviews)
  20. Jeff Mills ──ジェフ・ミルズが新たな試みをスタート、視覚×聴覚×空間! (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > GABI- Sympathy

GABI

ClassicalElectronicExperimental

GABI

Sympathy

Software

Tower HMV Amazon

デンシノオト   Jun 29,2015 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティン主宰の〈ソフトウェア〉からリリースされた声楽家/作曲家ガビ(ガブリエル・ハーベスト)『シンパシー』は、ダニエル・ロパティン自らがプロデュースを手がけた問題作である。エンジニアはティム・ヘッカーやベン・フロストとの仕事でも知られるポール・コーリー。

 ガビは、電化ハープ奏者のジーナ・パーキンスやターンテーブリストのマリナ・ローゼンフェルドらに師事したニューヨーク実験/即興音楽シーンの土壌を受け継ぐアーティストだが、作曲家としても素晴らしい。重力から解放されたかのような旋律は、彼女の澄んだ声との相乗効果もあり、耳を浄化してくれる。また、編曲も見事で、自身の声を中心に、ヴァイオリン、ヴィオラ、ピアノ、トロンボーン、ギター、打楽器をレイヤーすることで、美しいカーテンのようなサウンドを生みしている。ジュリア・ホルターやジュリアナ・バーウィックに近い音楽性ともいえるが、その作・編曲の手腕はオーセンティックでモダン。20世紀音楽のエッセンスを吸収しているように思えた。

 プロデュースを手がけたダニエル・ロパティンが、どこまで曲などに介入したのかはわからないが、「ア、ア、ア、ア」と刻まれるヴォイスなどはOPNのサウンドを想起するし、冷たい弦にはシンセ/ドローン的な人工性が宿っているようにも聴こえる。
 とはいえ、そのような「読み」は深読みのしすぎだろう。本作は『アール・プラス・セブン』(2013)的な世界観を展開してはいない。むしろ彼女の20世紀的なモダニズムを全面的に信頼しているように思える。ここに本作の重要性がある。なぜなら現代のエクスペリメンタル・ミュージックは、未来派やダダ、シュールリアリズムなど、20世紀初頭のモダニズムへと回帰しているからだ。ダーシャ・ラッシュ『スリープステップ』(2014)などを思い出してみよう。

 機械・工業化する社会への反映として生まれた未来派やダダ、シュールリアリズムなどの芸術運動が、情報と工学と人間の問題が交錯するインターネット以降の現代社会において、切実な問題として回帰=アップデートされたのは当然の帰結といえる。
そう考えると現代のダダイスト、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー=ダニエル・ロパティンが、彼女の音楽を送りだしたのもわかってくる。そう、「新しい」モダニズムを生きる彼女への「シンパシー=共鳴」なのだ。

デンシノオト