ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns Yves Tumor いま話題のアーティスト、イヴ・トゥモアとは何者か? (columns)
  2. Yves Tumor - Safe In The Hands Of Love (review)
  3. Aphex Twin - Collapse EP (review)
  4. tofubeats - RUN (review)
  5. Columns 坂本龍一の『BTTB』をいま聴いて、思うこと (columns)
  6. SPIRAL DELUXE ──ジェフ・ミルズ率いるエレクトロニック・ジャズ・カルテット、11月6日にライヴあり (news)
  7. interview with Cornelius 新作『Ripple Waves』を語る (interviews)
  8. interview with tofubeats 走る・走る・走る (interviews)
  9. Low - Double Negative (review)
  10. Thomas Fehlmann × The Field × Burnt Friedman ──新イベント《LIVE IN CONCERT》が始動 (news)
  11. Banksy ──バンクシーが1億5000万円で落札された自作を破壊 (news)
  12. Riton & Kah-Lo - Foreign Ororo (review)
  13. Yves Tumor ──イヴ・トゥモアが突如フル・アルバムをリリース (news)
  14. Baths / Geotic ──LAのビートメイカー、バス/ジオティックが来日 (news)
  15. interview with Yo La Tengo ヨ・ラ・テンゴ来日直前インタヴュー (interviews)
  16. 黙ってピアノを弾いてくれ - (review)
  17. Yves Tumor ──イヴ・トゥモアがニュー・シングルを発表 (news)
  18. interview with Phew 真ん中になにを置くか?──Phew、インタヴュー (interviews)
  19. Takehisa Kosugi ──50年代から現在に至る小杉武久の活動を紹介する展覧会が開催、トークや上映会も (news)
  20. KANDYTOWN ──キャンディタウンがついにメジャー・デビュー (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Stormzy- Gang Signs & Prayer

Stormzy

Grime

Stormzy

Gang Signs & Prayer

#Merky Records

Tower HMV Amazon iTunes

米澤慎太朗   Mar 30,2017 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 ロンドンのバッド・ボーイ、Stormzy のギャングスタ・ラップは強さと弱さを曝け出す。

 ロンドンの地下鉄のいたるところに、真っ黒の最後の晩餐のポスターを見る。〈#MERKY〉 という Stormzy 自身のレーベルから、『Gang Signs & Prayer』(以下、『#GSAP』)がリリースされ、巨大なジャケット・ポスターがロンドンの地下鉄のプラットフォームに貼られていた。しかし、そんな「メジャーな」アルバムのタイトルが「ギャング・サインと祈り」というのもかなり意味深である。
 Stormzy はリリースはミックステープ作品を除けば、5枚のシングルのみで、初のスタジオ・アルバムである。公園でラップしたビデオ“Shut Up”、Stormzy のお母さんまで登場する“Where You Know Me From”など凝ったミュージック・ビデオで人気を獲得してきた。そして発表された『#GSAP』は、彼の人生そのものを描こうとする野心に溢れている。

 アルバムの序盤、“First Things First”はこのアルバム全体のイントロにもなっている。

 一言あるカラード(意:有色の)のブラザー
 だが、スマッシュするぜ
 俺が銃をぶっ放そうとするときに逃げるんじゃねぇぞ、
 俺たちが祈りを捧げる前には、ギャング・サインがあったんだ

 A coloured brother with a bone to pick
 But I still get to gunning, don't be running when I bang mine
 Before we said our prayers, there was gang signs (Gang signs)

 ギャングが用いるハンドサインである「ギャング・サイン」と祈りがどのような関係を結んでいるか物語る。
 ギャングスタで暴力的な一面を見せる一方で、彼は自分の弱さも曝け出す。

 お前が彼女と喧嘩している間に、俺は鬱と戦ってたんだ

 You was fighting with your girl when I was fighting my depression, wait

 彼はこのラインで、単にマッチョなゲームや時間を無駄にすることに没頭するMCではないと宣言する。彼自身を曝け出すこと、そしてそれを克服したことをラップすることで、彼の本当の強さを獲得する。続く“Cold”、Ghetts(ゲッツ)をフィーチャーした“Bad Boys”、そしてグライムのヒットメイカー Sir Spyro のプロデュース・シングル曲“Big For Your Boots”は一貫して「俺の方が優れている」というテーマを、コミカルかつストレートにラップしている。MCの聞き取りやすさは、エンターテイナーとしての成長を示している。チキン・ショップでラップする姿は、リアルで面白くもある。

 6曲目のインタールード以降は、彼のストーリーがより前面に出る。Kehlani(ケラーニ)との“Cigarettes & Cush”では、Lily Allen のバック・コーラスとともに「俺が遅れて電話を取れなくてごめんね」と優しく謝り、“21 Gun Salute”では友の死にマリファナとともに祈りを捧げる。“100 Bags”ではお母さんへの愛と感謝を伝える。

 「ママは10万ポンドを見たことがなかったかもしれないけど、今の俺なら100個のバッグを買ってあげるよ」

 'Cause mummy ain't never seen a hundred bags Now I'm like 'Mum, buy a hundred bags'

 14曲目で伝説的なギャングなグライムMC Crazy Titch のシャウト(終身刑に服役中で、なんと7年ぶりに声を届けてくれた)から、Stormzy のヒット曲“Shut Up”になだれ込む。アルバムの最後に作られたという、“Lay Me Bare”では、

 銃を取り主張する、痛みを撃ち、恐怖を殺す
 死ぬ前には祈りの言葉を捧げる。

 Grab this gun and aim it there
 Shoot my pain and slay my fear Before I die, I say my prayer

 アルバムのタイトル「ギャング・サインと祈り」は、“First Things First”とのコントラストでさらに意味深いものとなる。ギャング・ライフとの決別、亡くなった古き仲間への祈り、鬱の克服、Stormzy は『#GSAP』でその全てをグライムというアートフォームで表現している。

米澤慎太朗