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小川充   Jun 28,2017 UP
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 前回のレヴューで取り上げたムーンチャイルドは、女性シンガー1名、男性ミュージシャン2名という組み合わせだった。昔からこの編成のトリオは多く、UKでもワーキング・ウィーク、ヤング・ディサイプルズ、ポーティスヘッドなど、その時代時代でエポック・メイキングな活躍をしたアーティストにはこのパターンが多い。ハンナ・リード(ヴォーカル)、ダン・ロスマン(ギター)、ドット・メジャー(ドラムス)によるロンドン・グラマーも同じ3人組だ。グループ名どおりハンナとダンはロンドン生まれで、グラマー・スクールへ通っていたが、その後ノッティンガム大学に進学して、そこでドットと出会ってグループを結成したのが2010年。卒業後は2011年にロンドンへ出てきて、2012年末にYouTubeへアップした“ヘイ・ナウ”で一躍注目を集める。そして、“ウェスティング・マイ・ヤング・イヤーズ”、“ストロング”といったシングル曲が軒並みヒットする中、ディスクロージャーの楽曲“セトゥル”への参加を経て、2013年にファースト・アルバム『イフ・ユー・ウェイト』を発表。〈ミニストリー・オブ・サウンド〉傘下に自身の版権レーベルとして〈メタル&ダスト〉を立ち上げ、そこからリリースされた『イフ・ユー・ウェイト』は、『ガーディアン』、『NME』、『ピッチフォーク』など音楽誌やメディアでも高い評価を集め、UKアルバム・チャートでも初登場で第2位を獲得した。最終的に2014年度のトップ5のセールスを記録したこのアルバムは、UKのイヴォール・ノヴェロ・アワードなどの音楽賞を受賞している。

 女性シンガーを含む男女3人組の場合、その女性シンガーの歌声がグループの看板となることが多いのだが、ロンドン・グラマーの場合も同様にハンナの歌が売りで、彼女はアデルなどに続く逸材と目されている。英国のメディアが彼女のことを、フローレンス・ウェルチ(フローレンス・アンド・ザ・マシーン)、アニー・レノックス(ユーリズミックス)、ジュリー・クルーズなどと比較しているが、その憂いを帯びた美しくも力強い歌声は、R&Bシンガーやロック、またはポップ・シンガー的というより、どちらかと言えば英国のトラッドやフォークの系譜を受け継ぐ雰囲気を持っており、そうした意味でとても英国らしいシンガーである。そのハンナの歌を、ダンの哀愁に満ちたギター・サウンドがサポートするというのがロンドン・グラマーの音楽の核で、ドットのドラムはミドル~ダウンテンポ系のどっしりとしたビートを刻む。さらに重厚なピアノやストリングス、ブラス・サウンドが彩っており、アコースティックでフォーキーな質感の中にエレクトロニックな要素も忍ばせ、宇宙的とでも言うような広がりを感じさせるその音は、ゼロ7あたりを彷彿とさせるかもしれない。曲によってはダブステップやオルタナティヴR&B的なものもあるが、本質的には歴代の英国ロックの伝統に連なるダークでメランコリックな世界観を持つグループと言えるだろう。

 『イフ・ユー・ウェイト』から4年ぶりとなる新作『トゥルース・イズ・ア・ビューティフル・シング』も、基本は前作の路線を引き継ぐ作品集となっている。プロデューサーには、共にアデルを手掛けたポール・エプワースとグレッグ・カースティンのほか、ジョン・ホプキンスらが迎えられている。先行シングル“ルーティング・フォー・ユー”、続くシングル第2弾“ビッグ・ピクチャー”と、アルバム冒頭は美しいバラード系ナンバーにスポットが当てられている。第3弾シングルの表題曲も含め、これら静的で繊細なイメージの楽曲でのハンナの澄んだ歌声は本当に素晴らしい。一方、“ディファレント・ブリーズ”や“ノン・ビリーヴァー”といった比較的ビート感の強いナンバーにおいても、まずは彼女の歌の魅力をいかに引き出すかが、前作同様にアルバムの重点である。“ワイルド・アイド”や“ヘル・トゥ・ザ・ライアーズ”は、ややダブステップ的な味わいを持つ作品となっており、サブモーション・オーケストラあたりに通じるだろうか。ロンドン・グラマーの持ち味には、アコースティックな要素とエレクトリックな要素の調和もあり、それが発揮された好例だろう。また、サブモーション・オーケストラとの共通点では、教会音楽からの影響も挙げられる。まさに「チャーチ・ミックス」と題された“メイ・ザ・ベスト”、BBCのメイダ・ヴァレ・スタジオでのライヴ録音となる“ビター・スウィート・シンフォニー”に、それが見て取れる。そして、第4弾シングルの“オー・ウーマン・オー・マン”は、ゴスペル・ロック的な世界観とフォーキーなテイストが見事に結実した、アルバムのハイライト的なナンバー。反戦ソングの“リーヴ・ザ・ウォー・ウィズ・ミー”と共に、ロンドン・グラマーの強さが表われた曲だろう。強さと美しさが入り混じった“ホワット・ア・デイ”に見られるように、ロンドン・グラマーの魅力がさらにスケール・アップされたアルバムだ。

小川充