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デンシノオト   Dec 05,2017 UP
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 カナダのアンビエント・ポップ詩人ティーン・デイズ(ジェイミソン・アイザックのソロ・プロジェクト)。彼ほど2010年代初頭の空気をまとっている音楽家もいない。チルウェイヴ、そしてドリーム・ポップ。今は消え去ってしまった気高いベッドルーム・ポップの10年代的な結晶。
 そんな彼の音楽を繊細すぎる、と思う人もいるだろう。しかし時が経っても、ジャンルのブームが過ぎ去っても、もしくは彼の音楽が変化を遂げても(バンド編成になったり、ソロになったり)、その音楽の本質は変わらない。
 2010年に発表された初期のデジタル・リリース『My Bedroom Floor』、『Four More Years』(カセット版もあり)、2012年にリリースされたファースト・フル・アルバム『All Of Us, Together』、セカンド・フル『The Inner Mansions』、2013年にリリースされサード・フル『Glacier』まですべて一貫しているのだ。世界の片隅で夢のような音楽を紡ぐこと。めぐる季節のような音楽を生みだすこと。
 そして2017年初頭にリリースされた5作目『Themes For Dying Earth』は、そんなティーン・デイズの現時点での最高傑作といっても過言ではないアルバムだった。ショーン・キャリー(Sean Carey)、ダスティン・ウォング(Dustin Wong)、サウンド・オブ・セレス (Sound Of Ceres)、ナディア・ヒュレット(Nadia Hulett)などの多彩なゲストを招きながら制作された『Themes For Dying Earth』は、やわらかな空気のようなアンビエンスがトラックに横溢しつつも、なによりメロディが際立っていた。バンドからソロに回帰しつつも、よりパーソナルな曲や録音方法で制作されていても、どこか「外」に向かって開かれているような開放感があったのだ。
 そう、ティーン・デイズはトラックメイクが優れているだけではなく、まずもって曲が良い。彼は優れたソングライターなのだ。それが彼の音楽の普遍性の要因に思える。つい口ずさんでしまうような親しみやすさと、しかし通俗に流されない品の良さがある。

 対して、今年2作目(!)となる新作『Themes For A New Earth』は,「『Themes For Dying Earth』と対をなす作品」とアナウンスされているアルバムで、全編インストゥルメンタルだ。『Themes For Dying Earth』制作時のトラックというが、いわゆる「アウトテイク集」といった雰囲気はなく、1曲めから最終曲までの流れもスムーズで、アルバムとして見事に構成されている。彼のアンビエント・アーティストの資質が全面化している作品といえよう。
 とはいえ、冒頭の“Shibuya Again”(なんという曲名!)を経て始まる2曲め“On The Edge Of A New Age”は、アンビエントなサウンドのなか、明確なビートもコード進行もあり、歌声が入ればヴォーカル・トラックになってしまいそうなほど。細やかに色彩豊かに展開するポップ・アンビエント・サウンドは丁寧に仕上げられた工芸品のようだ。

 つづく3曲め“Kilika”も同様にポップなインスト曲で、ギターのミニマルなアルペジオとシンセ・メロディが心地よい。4曲め“River Walk”はビートレスなアンビエント曲。サイケデリックに揺らめくギターの音色が耳にやさしい。同じくアンビエントな5曲め“An Alpine Forest”をはさみ、6曲め“Wandering Through Kunsthal”ではミニマルなビートが鳴る。曲調にはソングライティングの痕跡を感じさせるものの、アンビエントなサウンドからは冬の予感のようなものを感じてしまう。どこかザ・ドゥルッティ・コラムを思わせもした。
 7曲め“Station”、8曲め“Echoes”、9曲め“Prophets”のラスト3曲では、ブライアン・イーノを尊敬しているというティーン・デイズならではのアンビエント・サウンドが展開される。アルバムのアートワークのように冬の海をイメージさせるような清冽な音世界。『Themes For Dying Earth』が春から夏の記憶なら、『Themes For A New Earth』は秋から冬の記憶だろうか。

 それにしても「滅びゆく地球」をテーマにした『Themes For Dying Earth』がポップ・ミュージックのフォームを展開していたのに対して、夢の結晶のように美しいアンビエント音響へと至る『Themes For A New Earth』が「新たな地球」をテーマにしている点が面白い。季節が変わり世界が静寂に満ちるとき惑星が新生する、とでもいうように。
 地球と季節。春から夏。秋から冬へ。季節とは小さな死の連鎖である。惑星は死に、そして再生する。ティーン・デイズの音楽もまた(表現方法が電子音楽であっても、バンド編成であっても)、めぐる季節のようなライフ・ミュージックなのだと思う。

 また、『Themes For Dying Earth』や、本作『Themes For A New Earth』を聴いていると、不意に80年代の〈クレプスキュール(Crépuscule)〉や、ルイ・フィリップ(Louis Philippe)がアルカディアンズ(The Arcadians)でリリースした『Mad Mad World』を思い出した(先に書いたドゥルッティ・コラムも)。やはり小さな絶望と儚い美を感じるからか。そういえばJefre Cantu-LedesmaがAlexis Georgopoulosとコンビを組んだ『Fragments Of A Season』も同じようなムードのアルバムだった。
 ノイズからアコースティックへ? 今はこういったアコースティックとエレクトロニックのあいだにあるようなやわらかい音が求められつつあるのかもしれない。

 ちなみにオリジナル盤のリリースは『Themes For Dying Earth』につづいてティーン・デイズ=Jamison Isaakの自主レーベル〈フローラ(FLORA)〉からだが、CD盤(枚数限定盤)は日本優良のレーベル〈プランチャ(Plancha)〉から、愛情に満ちたデザイン/プロダクトでリリースされたことも付け加えておきたい。

デンシノオト

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