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Gang Gang Dance

Indie RockNew AgePsychedelic

Gang Gang Dance

Kazuashita

4AD / ビート

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デンシノオト   Aug 06,2018 UP
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 前作『Eye Contact』は2011年のリリースだから、本作は7年ぶりのアルバムとなる。ブライアン・デグロウ、リジー・ボウガツォス、ジョシュ・ダイアモンドらによるギャング・ギャング・ダンスの新作アルバムがついにリリースされた。
 思えば2005年の『God's Money』から2008年の『Saint Dymphna』までの彼らは、いわば「ゼロ年代初期から中期」という「ミニマル/トライバル」「音響/リズム」の時代を象徴するようなバンド=存在だった(あえて単純化していえばゼロ年代初期から中期とはポスト・パンク・リヴァイヴァルとエレクトロニカの時代である)。
 ポスト・パンク・リヴァイヴァル・ムーヴメントのなかでは比較的後発に入るGGDだが、ポスト・パンクからエレクトロニカ、トライバルからサイケデリック、ロックからポップまでをゴッタ煮にした雑食性に満ちた都市型のエクレクティック・サウンドは、ニューヨークの猥雑さと共に、ゼロ年代の特有の空気を存分に感じさせてくれた。特に2008年8月8日に、ボアダムスの EYE によって発案された「88 Boadrum」で指揮を任されたことは、90年代以降の「トライバル・サウンドの継承」という意味でも重要かもしれない。00年代のアート、音楽、トライバル、ノイズ、ミニマル、ポップが、シャーマニティックに結晶したわけだ。

 「88 Boadrum」から3年後、名門〈4AD〉からリリースされた『Eye Contact』は、GGDなりのテン年代宣言ともいえる刺激的なサウンドのアルバムだったわけだが、そこから先が長かった。
 むろん、そのあいだもメンバー個々人の活動は展開していた。デグロウはビーディージー名義のアルバム『SUM/ONE』を2013年に〈4AD〉からリリースしているし、ボウガツォスも2014年に MoMA において開催されたジョン・ケージ展に合わせて制作された「4分33秒」をテーマとするジョン・ケージのトリビュート・アルバム『There Will Never Be Silence』を刀根康尚らと合同制作している。ダイアモンドもライヴ活動や音楽制作を続けていた。

 とはいえ、GGDは沈黙していた。となると、この7年間は、時代を象徴していたバンドが、次の時代の変貌や変化に対応するために必要な時間だったのかもしれない。だがそんな憶測はとりあえずどうでもいいだろう。いま、この時代に彼らが再始動した意味は「音」にある。じっさいこの新作を聴くと、なるほどと思わせるものがある。

 一聴して分かるように新作『Kazuashita』は、ここ数年のモードであるニューエイジかつシネマティックなサウンドスケープを持った音楽性へと変貌を遂げた作品なのだ。そこに彼らのトライバルなリズムがうまく交錯しているのである。
 ノイズ成分は控えめになり、クリーンなサウンドが全面的に展開されている。聴きやすく、精密で、ビートも展開されているが、一方で、〈L.I.E.S.〉や〈Music From Memory〉などからアルバムをリリースする Terekke の瞑想的なアンビエント/ドローンも感じさせる仕上がりとなっていた(じじつ、バンドの休止期間中、デグロウはアンビエントやインド音楽などを聴き込んでいたという)。そのうえで彼らなりの「ポップ・ミュージック」を構築しているわけだ。

 冒頭の壮大な電子音楽トラック“( infirma terrae )”を経て、ミニマルなリズムとヴォーカルによるスペイシーな“J-TREE”が始まった瞬間に「GGD新生」を誰しも確信するだろう。そして80年代モードなエレクトロニック・ポップ“Lotus”、インターバル的な電子音トラック“( birth canal )”、ニューエイジ・アンビエントな音楽性から10年代的なマシン・ミニマルな電子トラックへと移行するタイトル・トラック“Kazuashita”などの見事なコンポジションには一気に耳を奪われてしまった。続く未来的なトライバル・リズムとコラージュ・ポップといった趣の6曲め“Young Boy (Marika In Amerika)”のサウンドも筆舌に尽くしがたい。

 そして、ヴォイスと電子音とビートがグリッチーに交錯し、立体的な音響空間のなかポスト・ヴェイパーなサウンドが生成する“Snake Dub”、ディック・ハイマンの初期電子音楽の名作『Moon Gas』やディック・ラージメーカーズなどの初期電子音楽を思わせつつも、ヴォーカル・レイヤーとサウンド・レイヤーを巧みに折り重ねることで2010年代後半のエクスペリメンタル・ポップ・ミュージックへと昇華する“Too Much, Too Soon”を経て、シンセ・ストリングスとヴォイス・コラージュによるインタールード的トラック“( novae terrae )”からオリジナル・アルバムのラスト曲“Salve On The Sorrow”までは、まさに映画音楽/音響のような壮大かつ繊細なサウンドスケープを展開していくのだ(日本盤CDにはボーナス・トラックとして“Siamese Locust”を収録)。

 アルバムを一気に聴きとおすとギャング・ギャング・ダンスが2010年代後半の時代のモードに見事に対応したことに驚いてしまった。ノイズな要素をクリーンなシンセ/電子音へと変化させることで、彼らは時代のモードに即したサウンドをまたも手に入れたわけだ。だが不思議と「時代に合わせました」という姑息な作為も感じない。「新しい音楽を作る」という必然性と好奇心があるからか。ニューヨークという都市に根ざした何か。
 参加アーティストをみれば、それが分かってくる。プロデュースはブライアン・デグロウ本人。ニューヨークのスタジオやアートスペースでレコーディング・セッションをおこなったらしい。そして「Boadrum」で知り合ったドラマーのライアン・ソーヤーや、アリエル・ピンクとのコラボレーションで知られるホルヘ・エルブレヒトらと共に本作を完成させたという(エルブレヒトはプロダクションの一部とミキシングを担当)。そしてアートワークにはアメリカの気鋭フォトグラファー、デヴィッド・ベンジャミン・シェリーの作品を起用しているのだ。

 ともあれ本作は聴きごたえのあるアルバムだ。細野晴臣や高田みどりら日本の80年代アンビエント音楽や、〈RVNG Intl.〉からリリースされている作品、〈Root Strata〉から出た KAGAMI『Kagami』などの現行ニューエイジ・シーンとも繋がるトラックは、まさに時代の空気を捉えている。そのうえGGDならではのリズムと音響を追求した独創性もある。まさにニューエイジ・リヴァイヴァル時代の空気(モード)を味わい尽くすかのように(拮抗するように?)、心から楽しんで聴き込める一作といえよう。

デンシノオト