ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. R.I.P. 鮎川誠 | シーナ&ロケッツ (news)
  2. R.I.P.鮎川誠 | シーナ&ロケッツ (news)
  3. Weldon Irvine ——ブラック・ミュージックの宝石、ウェルドン・アーヴィンの原盤権・著作権を〈Pヴァイン〉が取得し、リイシューを開始します (news)
  4. R.I.P. Tom Verlaine 追悼:トム・ヴァーレイン (news)
  5. Rainbow Disco Club 2023 ——今年はジェフ・ミルズ登場、ほか豪華キャストで開催 (news)
  6. Joesef - Permanent Damage | ジョーセフ (review)
  7. Yves Tumor ──現代のきらびやかなアイコン、イヴ・トゥモアがニュー・アルバムを送り出す (news)
  8. Loraine James - Building Something Beautiful For Me (review)
  9. interview with Young Fathers 日本はもっとヤング・ファーザーズを聴くべき | アロイシャス・マサコイ (interviews)
  10. Columns 高橋幸宏 音楽の歴史 (columns)
  11. John Cale - Mercy | ジョン・ケイル (review)
  12. R.I.P. Yukihiro Takahashi 追悼:高橋幸宏 (news)
  13. Meemo Comma ——ミーモ・カーマの新作には90年代がいっぱい (news)
  14. Boys Age - Music For Micro Fishing (review)
  15. Rainbow Disco Club 2023 ——今年はジェフ・ミルズ登場、ほか豪華キャストで開催決定 (news)
  16. Ben Frost - Broken Spectre | ベン・フロスト (review)
  17. 坂本龍一 - 12 (review)
  18. R.I.P. Terry Hall 追悼:テリー・ホール (news)
  19. Rob Mazurek ──シカゴ・ジャズ・シーンの重要人物ロブ・マズレクが新作をリリース (news)
  20. イニシェリン島の精霊 - (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Wool & The Pants- Wool In The Pool

Wool & The Pants

DiscoFunk DubJagataraPost Punk Jazz

Wool & The Pants

Wool In The Pool

Peoples Potential Unlimited ‎

Bandcamp

野田努   Nov 12,2019 UP
E王

 今年亡くなられた評論家・加藤典洋の、日本の音楽について著した『耳をふさいで、歌を聴く』には、次のような一文がある。「人に勧められ、促され、日本のロックを本格的に聴くようになり、聴くべきものを大量に送りつけられた時分、最初期に、これとこれを聴いてもらいたいと指定され、聴いたのが、この章で扱うじゃがたらと、フィッシュマンズであった」
 じゃがたらとフィッシュマンズの共通点でぱっと思い浮かぶのは、まあレゲエの影響とこだま和文の存在だろう。が、レゲエとはいえ、かたや寒々しい“Tango”、かたや胸きゅんな“ひこうき”。少なくとも表面的には、このふたつのバンドが重なるところはなかなか見いだせないというのが大方の印象じゃないだろうか。
 ところがである、最近になってぼくはフィッシュマンズがじゃがたらをカヴァーしたらこうなったのではないかと思える曲に出くわした。Wool & The Pantsの“Edo Akemi”という曲である。

 すでにインディ・シーンではここ1年話題になっている3人組のバンドで、“Edo Akemi”は1年前に出たアルバムの収録曲である。その1年前のアルバムが先日再プレスされたので(アナログ盤のみで、Spotifyでは聴けませんのよ〜。わりぃけど)、ぼくはレコード盤を買った。メディアとしてあるまじき遅さだが、自分たちが好きなものを好きなように書くのがエレキングの初心なので、まあ、許してちょ。
 それにしたってこの“Edo Akemi”、歌詞はじゃがたらの『南蛮渡来』に収録されている“でも・デモ・DEMO”だが、江戸アケミと同じ言葉を歌っていてもまったくそれとは別な回路をもって新鮮に響いている。ここには明らかに新しい解釈、新しい感性があり、その感性はじゃがたらの寒々しさをアクチュアルなサウンドによって継承されたなかにあり、しかもそれはフィッシュマンズの“Baby Blue”の切なさとは決して遠くはないところで鳴っている。奇跡のような曲である。

 せっこく生きてちょうだい
 せっこく生きてちょうだい
 見慣れた奴らにゃおさらばするのさ
 見慣れた奴らにゃおさらばするのさ

 これほど毒づいている言葉を、しかしWool & The Pantsはその抑揚のない歌(ルー・リードめいたぼそぼそとした歌)と絶妙なセンスのトラックによって、なにか新しい意味をリスナーの内部に誘発する。それがどういうことかというと、たとえば抗うこと、不機嫌なこと、場違いなこと、同調できないことを後押しすることで、逆説的に希望のようなものを立ち上げるということ、である。
 音楽性の面では、昨今の海外アーティストで言えば、King KruleやPuma Blueなんかとリンクするのだろうけれど、Wool & The Pantsはダブからの影響も色濃く、あたかもPuma Blueとマッシヴ・アタックの溝を埋めるかのようだ。つまり、ベースがでっかい。
 あるいはまた、“Bottom Of Tokyo”で聴ける、まるで冷凍室のディスコ・サウンドのごとき音響にも舌を巻いてしまう。深いフィルターのかかった“Kudo”ではBurialの領域にも接近し、「あんたの言葉、子供みたい〜」と歌う“Just Like A Baby Pt. 3”にいたってはドルッティ・コラムがトリップホップをやったかのようだ。さもなければ、ヤング・マーブル・ジャイアンツのジャズ/ファンク・ヴァージョンとでも言おうか、ファッション・インディとは一線を画す泥臭さも兼ね備えている。

 紙エレキングの「オルタナティヴ日本」特集でロスアプソンの山辺圭司とジェトセット下北店の中村義響のふたりが推薦していたので気にはなっていたのだが、ここまでキラーだとは思いませんでした。すいません。

野田努