ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Nwando Ebizie - The Swan (review)
  2. Natalie Beridze - Of Which One Knows (review)
  3. Associates - Sulk(40th Anniversary Edition) (review)
  4. Takuma Watanabe ——渡邊琢磨『ラストアフタヌーン』@ 河口湖円形ホール (news)
  5. THE PIANO ERA 2022 ——テリー・ライリーや高木正勝も出演、ピアノ音楽をテーマにした2日間のフェスティヴァル (news)
  6. Cornelius - 2022.7.30@Fuji Rock Festival (review)
  7. interview with Hudson Mohawke 待っていたよ、ハドソン・モホーク (interviews)
  8. Nick Cave & Warren Ellis ——ニック・ケイヴ&ウォーレン・エリスが音楽を手がける自然ドキュメンタリー映画上映 (news)
  9. Kangding Ray - ULTRACHROMA (review)
  10. ニュー・ダッド──あたらしい時代のあたらしいおっさん - 木津毅 (review)
  11. Tonalism ──LA発のアンビエント・イベントがPARCOで開催 (news)
  12. GemValleyMusiQ - Abu Wronq Wronq (review)
  13. Jeff Mills ──ジェフ・ミルズの来日公演が決定 (news)
  14. Ryoji Ikeda ──池田亮司が約10年ぶりのオリジナル・アルバムをリリース、渋谷WWW Xにて最新ライヴも (news)
  15. black midi - Hellfire (review)
  16. Whitearmor - In the Abyss: Music for Weddings (review)
  17. Columns 山本アキヲの思い出 (columns)
  18. Alva Noto & Ryuichi Sakamoto - Glass (review)
  19. Pine Barons ——フィラデルフィアのインディ・バンドが、フィッシュマンズのカヴァー・アルバムをリリース (news)
  20. interview with HASE-T 人生が変わるような音楽 (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Wool & The Pants- Wool In The Pool

Wool & The Pants

DiscoFunk DubJagataraPost Punk Jazz

Wool & The Pants

Wool In The Pool

Peoples Potential Unlimited ‎

Bandcamp

野田努   Nov 12,2019 UP
E王

 今年亡くなられた評論家・加藤典洋の、日本の音楽について著した『耳をふさいで、歌を聴く』には、次のような一文がある。「人に勧められ、促され、日本のロックを本格的に聴くようになり、聴くべきものを大量に送りつけられた時分、最初期に、これとこれを聴いてもらいたいと指定され、聴いたのが、この章で扱うじゃがたらと、フィッシュマンズであった」
 じゃがたらとフィッシュマンズの共通点でぱっと思い浮かぶのは、まあレゲエの影響とこだま和文の存在だろう。が、レゲエとはいえ、かたや寒々しい“Tango”、かたや胸きゅんな“ひこうき”。少なくとも表面的には、このふたつのバンドが重なるところはなかなか見いだせないというのが大方の印象じゃないだろうか。
 ところがである、最近になってぼくはフィッシュマンズがじゃがたらをカヴァーしたらこうなったのではないかと思える曲に出くわした。Wool & The Pantsの“Edo Akemi”という曲である。

 すでにインディ・シーンではここ1年話題になっている3人組のバンドで、“Edo Akemi”は1年前に出たアルバムの収録曲である。その1年前のアルバムが先日再プレスされたので(アナログ盤のみで、Spotifyでは聴けませんのよ〜。わりぃけど)、ぼくはレコード盤を買った。メディアとしてあるまじき遅さだが、自分たちが好きなものを好きなように書くのがエレキングの初心なので、まあ、許してちょ。
 それにしたってこの“Edo Akemi”、歌詞はじゃがたらの『南蛮渡来』に収録されている“でも・デモ・DEMO”だが、江戸アケミと同じ言葉を歌っていてもまったくそれとは別な回路をもって新鮮に響いている。ここには明らかに新しい解釈、新しい感性があり、その感性はじゃがたらの寒々しさをアクチュアルなサウンドによって継承されたなかにあり、しかもそれはフィッシュマンズの“Baby Blue”の切なさとは決して遠くはないところで鳴っている。奇跡のような曲である。

 せっこく生きてちょうだい
 せっこく生きてちょうだい
 見慣れた奴らにゃおさらばするのさ
 見慣れた奴らにゃおさらばするのさ

 これほど毒づいている言葉を、しかしWool & The Pantsはその抑揚のない歌(ルー・リードめいたぼそぼそとした歌)と絶妙なセンスのトラックによって、なにか新しい意味をリスナーの内部に誘発する。それがどういうことかというと、たとえば抗うこと、不機嫌なこと、場違いなこと、同調できないことを後押しすることで、逆説的に希望のようなものを立ち上げるということ、である。
 音楽性の面では、昨今の海外アーティストで言えば、King KruleやPuma Blueなんかとリンクするのだろうけれど、Wool & The Pantsはダブからの影響も色濃く、あたかもPuma Blueとマッシヴ・アタックの溝を埋めるかのようだ。つまり、ベースがでっかい。
 あるいはまた、“Bottom Of Tokyo”で聴ける、まるで冷凍室のディスコ・サウンドのごとき音響にも舌を巻いてしまう。深いフィルターのかかった“Kudo”ではBurialの領域にも接近し、「あんたの言葉、子供みたい〜」と歌う“Just Like A Baby Pt. 3”にいたってはドルッティ・コラムがトリップホップをやったかのようだ。さもなければ、ヤング・マーブル・ジャイアンツのジャズ/ファンク・ヴァージョンとでも言おうか、ファッション・インディとは一線を画す泥臭さも兼ね備えている。

 紙エレキングの「オルタナティヴ日本」特集でロスアプソンの山辺圭司とジェトセット下北店の中村義響のふたりが推薦していたので気にはなっていたのだが、ここまでキラーだとは思いませんでした。すいません。

野田努