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Home >  Interviews > interview with D.A.N. - 凍るような、燃えるような、平熱

interview with D.A.N.

interview with D.A.N.

凍るような、燃えるような、平熱

──ダン、インタヴュー

橋元優歩    Oct 05,2015 UP

メンバーの中の想像を超えたいんです。ベースだったらベースで。(市川)


D.A.N.
EP

SSWB / BAYON PRODUCTION

Tower HMV Amazon


D.A.N.
POOL

SSWB / BAYON PRODUCTION

ototoy iTunes

ElectronicIndie Rock

■バンドのなかでそれぞれご自身が何かいいものを作るっていうときに、具体的な行動としてはどういうことになります?

市川:ケミストリーを見せるというわけじゃないですけど、3人が集まって、いいところが出て、それがかけ合わさったときに、想像もできなかったようなものができて──それをいろんなひとに聴いてもらいたい。そのためにメンバーの中の想像を超えたいんです。ベースだったらベースで。最初大悟がひとりでデモを作るんですけど、そのときに大悟が想像しうるベースを弾いても意味がないというか……。そこの想像を超えて、かついいものじゃなきゃダメだと思っているし。でもつねにそこで納得できないというか、ずっと追求しながら作っています。

■めっちゃうねりますよね、ベース。冷たいなかの熱さって言ったときに、あのうねりは熱さの要因のひとつかなって思いますね。あの感じは、自分の好きな音楽が出てきている感じですか?

川上:そうですね。個々のパートは自分で考えてます。だから本当に3人で曲を作っていると思います。

桜木:いちばん重要なのは歌ですね。

■歌を最初に持ってくるんですか?

桜木:曲によるんですけど、基本は歌だと思ってます。

■そこは信念がありそうですね。熱いところっていう質問についてはどうですか?

桜木:熱いところが僕はわからなくて。

川上:すべてに情熱を注いでいる気持ちはあるので、どこがどうっていうのはないかな。

桜木:でも、じつは僕は自分のことをめちゃくちゃ冷たいと思っていて。

■パーソナリティがってことですか?

桜木:そうです。

■安直に評価するわけではないですけど、さっきおっしゃっていた昔好きだったというバンドは、どちらかというと熱い気もしますね。それは自分の冷たさが逆に呼び寄せるようなものだったんですかね?

桜木:うーん、熱さ……、難しいですね。

■たとえばドリーム・ポップだと、ベッドルームなんかがその背景になっていたりしますよね。でも、対するにこのアー写なんかは、すごくストリート感があります(※冬の涸れたプールで撮影されたもの)。

D.A.N. - POOL

でも、ストリートじゃなくて「そうかぁ、プールかぁ」と思って。ここにはすべてがある、ってくらいいい写真だと思いました。……で、これだって冬っぽさとプールっていう冷たいものの掛け合わせなのに、やっぱり先ほどからのお話も実際の音も、ただ冷たいっていうんじゃ説明できない熱を感じるんですよね。

音について言えば、削ったり、引き算したりっていう考え方なんですよ。(川上)

川上:音について言えば、削ったり、引き算したりっていう考え方なんですよ。ひとつひとつ音が重なっていく感じは熱さかもしれないですけど。エモさとか。ひとつひとつ音が増えていって、じりじり上げていく感じは。

桜木:アンサンブルが感情のコードというか重なりというか、それで自分の内面が高まったりするから。

川上:そこから音がひとつだけになるところとかも、繊細なものだというか……、ひとつひとつの音に意味があるかどうかを突き詰めてやっているので。

桜木:冷たさとか熱さというよりも、どちらかというと静と動という気がする。静と動と緩急、緊張と緩和とか、そっちな気がする。

■すごく心象風景というか世界があるバンドだなって思うんですね。すごくファンキーな部分もあったりしながらも、黒さというものとは別ものというか。それもウォー・ペイントと共通するかもしれないですね。あの感じが好きで……。ボディが先にあるような音楽っていうよりも、なんか精神みたいなものに触れて美しいなって思う感じ。
それぞれがそれぞれのパートに責任を持っているというお話でしたが、持って来るのがメロディなんですか?

桜木:はい。自分です。

■そのデモを聴きながら、自分がどうアプローチするかを決めるんですか?

市川:はい。

■完成したデモを示すわけじゃないってことですね?

桜木:僕はぜんぜんそういうのが作れなくて、曖昧な状態で渡すことが多いです。

■そうするとこの3人だからこそ、意味のある繋がりのなかで音ができていくということですね。

川上:バンドってそうじゃないですか。

■──ということをさんざん感じたんですね。

川上:本当に感じました。全部指示していたら3人の意味がないのでね。

やっぱりひとりひとりがすごく独立した表現者なんですよ。(桜木)

■なるほど。D.A.N.って、バンドというべきかユニットというべきかわからないんですけど、ひとりのアーティストのような不思議な感触があるんですよね。バンドで3ピースっていうと、それぞれの役割も決まっていれば音楽のフォームまで想像できそうな感じですけど、そこがすごくアメーバ状ですよね。

桜木:やっぱりひとりひとりがすごく独立した表現者なんですよ。自分が全部曲を作ってデモを投げても、自分でどうアクトするかだと思うから、こういうふうに演じてくださいって与えたところで、自分が持っていたイメージとちがうものが出てくる。それがおもしろいと思えるふたりなんですよ。

川上:指示してやってもらいたいんなら、スタジオ・ミュージシャンを呼んでシンガー・ソングライターとしてやればいいだけの話で。

桜木:あと、いまサポートで入っている小林うてなも、自分が尊敬できるひとです。

■たとえば2曲めなんて、それこそリズム・トラックが曲のメインだとも言えるじゃないですか? ああいうのは川上さん的に、何を投げられて何を打ち返したものなんですか?

川上:感覚的に打ち返しているだけですね。

桜木:“ナウ・イッツ・ダーク”は弾き語りで作ったんですよ。

川上:歌はかなりフォークだったんですけど、すごく変わりましたね。リズムの最初の「ドッツカ」は、僕がこうしたいってあれをずっとやってて、つまんないなってなって、じゃあ途中から変えようっていう感じです。後半でBPMが上がるんですけど。あそこに繋げるための間のところはかなり悩みました。「ドンツクツクツクタン」が出てくるまでだいぶかかりましたね。まぁ、でも全部僕が出てくるまで何も言うこともなく、あーだこーだ「これはちがうな」みたいな。でも、ふっと「あっ、それだ!」っていうのが来る。それが来るまで、ずっとスタジオに入るまでです。

「ドンツクツクツクタン」が出てくるまでだいぶかかりましたね。(川上)

桜木:僕らの曲作りって、量だと思っていて、とにかくたくさん出して、やる。そうすると自分が想像できなかったものがふっと出てくるタイミングがあったりとか、「これなんじゃないか?」みたいな。

川上:質がいいものをやるには量を出すしかない。

■あ、ほらまた出た。熱さっていうか、体育会系ではぜったいないのに、体育会系思想が出てきた。……こだわってすみません!

市川:おもしろいのが、たとえば僕が曲を作っているときに、輝のドラムだったり、大悟のギターだったり、自分のベースだったり、曲の展開で「あっ、絶対にいまのだ」ってなってると、ふたりも同じことを思っていたりとか。

川上:でもひとりでもダメだったら通らないですけどね。

市川:いま作っているやつもかなり時間がかかってます。

■なるほど。フォークを解体するっていうのは、ひとつの本質的な特徴なのかもしれないですね。たとえば、よく比較されるYogee New Wavesとかって、やっぱりフォークのスタイルって一応しっかりとあるわけじゃないですか。でも、なんかそういうふうに日本語が乗っているわけじゃない。かと言って、どうでもいいですってわけでもなくて、ちゃんと日本語がきこえる。
そういうことって、先にあるものを崩すところから生まれてくるのかなって感じもしましたね。

市川:大悟が持って来た曲のイメージとかを、みんなでまずはバラバラに解体して、それから再構築。

川上:けっこう曖昧だから、やりながら固まってくるみたいな。みんなで徐々に同じ方向に向いて来るみたいな感じですよね。性格も出ているでしょうね。パッと出してじっくり考えるみたいな。いろんなパターンも試すし、そういうのをやっているからこそ、予想だにしない展開も生まれると思います。

市川:セッションとかして、「いまの感じいいじゃん」ってなったときも、いったん大悟が家に持ち帰って曲に対するイメージみたいなものをつけて、またスタジオに持って来てみんなで聴いて。

川上:そこからまた考えるけどね(笑)。

市川:で、またそれを崩して、組み立てて。

川上:そうやってみんなが考えているって気持ちがあるんですよ。3人で戦っている感じがあって、俺だけで戦っているって感じはないですね。

3人で戦っている感じがあって、俺だけで戦っているって感じはないですね。(川上)

■バンドだから、ひとつにはアンサンブルっていう戦い方があると思うんですけど、皆さんにはもうちょっと、曲とかコンセプトっていう戦い方を感じますね。

川上:技術だけあってもぜんぜんよくないじゃんっていうのもたくさんあるし、そういう問題じゃないと思うから。

桜木:技術に関しては、それは手段だから。それよりは目的が最優先で。

■そのあたりは、ミュージシャンシップというよりは、もっとアーティスト性みたいなものを感じさせるバンドだなって思います。
せっかくいま歌詞の話も出てきたので、お訊ねするんですが、「ジャパニーズ・ミニマル・メロウ」と謳っていますけど、ここで「ジャパニーズ」ってわざわざ言うのって、みなさんにとって大事なことなんですか?

川上:「ミニマル・メロウ」をオウガ(・ユー・アスホール)さんが先に言っていまして、「先に言われた!」っていうのが僕たちの中にあったんです。

桜木:まさに僕らのもやもやを簡単に形にしてくれたと思って。

川上:「作品のインフォメーションを作るから何か送って」って言われて、僕たちは「ジャパニーズってつけるか」って思って。まぁ、日本語で歌っていることは意識していると思います。

もともと僕は、D.A.N.をはじめる前からずっと、海外でライヴをしたいとか生活をしたいとか、世界規模で音楽をやりたいと思っていたんですよ。(桜木)

■1曲めとかはクラウトロックっぽい反復性はありますよね。どちらもイメージ的に近くはないですが、共通性があるのかもしれないですね。……しかし、「先に言われた感」があったと。

桜木:すごく悔しかった。

■なるほど(笑)。皆さんの音楽って、とくに邦楽って感じでも洋楽って感じでもなくて、すごく自然に海外の音楽を聴いてきた経験が溶け込んできたものだなって感じるんですよ。だから、なんでそういう言い方をわざわざするんだろうなって。ということは「ジャパニーズ」ってことにこだわりがあるのかなと、ちょっと思ったんです。

桜木:もともと僕は、D.A.N.をはじめる前からずっと、海外でライヴをしたいとか生活をしたいとか、世界規模で音楽をやりたいと思っていたんですよ。YMOとかもリスペクトして。自分のその日本人っていうアイデンティティがなければ、どんなに海外志向なサウンドを出したところで外国人からしてみたら、「そんなのいくらでもあるじゃん?」って思われちゃうというか。

■シニカル。でも、そうですね。

川上:だからこそ、日本人としてのっていうところを大事にしたい。

桜木:たぶん、日本人が無理に歌う英詞って、あっちのひとにしたらすごく気持ち悪いと思うんですよね。だったら素直に日本語で歌った方がおもしろいじゃんって思う。

■ある意味ではすごくイエロー・モンキーであるということを、自覚し過ぎるくらいしてるんですかね。

市川:表現的にも、英語と日本語どっちが喋れるといったら日本語だと思って。だったら日本語で表現した方がより伝わりやすいし、自分が思っている表現ができる。

川上:自分たちも意味を感じながらできるし。

自分の歌詞はサウンドがいちばん大事で。(桜木)

■D.A.N.をパッと聴いたときに、いかにも英語で歌っていそうな感じじゃないですか? そんなことありません?

桜木:もともと僕は英語で歌っていたんです。

■そうなんですか。その詩は誰が?

桜木:自分でデタラメな英語を書いていたんですよ。それがすごく恥ずかしかったというか、自分は何をやっているんだってなりました。これじゃ意味ないって。

■といって、意味とかメッセージ性を押し出すものかといえば、ぜんぜんそういうフォーク性もないしね。

桜木:自分の歌詞はサウンドがいちばん大事で。言葉の響きだったりとか、イントネーションとかリズムとか、サウンドに寄り添う形で。それがいちばん重要なんですけど。あとは耳に入ってきたときに、おもしろいワードだったりとか、そういうものを意識してます。ただ、歌詞に関しては自分はまだ冒険中というか。

■歌詞ではないですけど、1曲めはギンズバーグを引用していますよね。あれはビートニクへの何かしら思いがあるんですか?

桜木:僕はYoutubeで見ていてサンプリングしたんですけど、あれはリズムがおもしろかった。だからなんとなくサンプラーに入れてて、スタジオでセッションしているときに、適当に流したらおもしろかったから使った。

川上:あの曲は最初にビートができてギターが乗って、「あたまに(リーディングを)入れたらおもしろいんじゃん?」ってなって流して。

桜木:ちょっとポエトリー・ラップみたいなのもおもしろいなと思って。ビートと言葉の揺らぎがいいと思ったから。

市川:あのことばの意味を出したいというよりは、言葉のフローじゃないですけど、流れがいいねってなって、決まっただけなんです。だから、わざわざ意味として主張したいものはないですね。

■なるほど、あれはビートなんですね。ビートニクというより(笑)。チェコかどっかのライヴ音源みたいですけど、わたしもあの詩をぜんぜん知らなくて、でも「ガーナ」って曲名でしょう? これって何なんだろうと思って(笑)。

川上:「ガーナってどうよ?」って言ったら「いいじゃん。響きおもしろいね」みたいになって(笑)。

桜木:曲名はあだ名なんです。

川上:曲名はみんなでぽっと決めますね。

■なんかすごくコンセプチュアルなのに、そこはすごい感覚的っていう(笑)。いいですね。

川上:僕はアフリカといえばガーナだと思ったので。

市川:“ガーナ”の音は土着的だし、「ガーナっぽいね」って言ってたらガーナになりました(笑)。

■カンみたいなのがありつつ、ガーナで、チェコでビートニクみたいな(笑)。

桜木:ガーナって言っている前はバスキアって言っていたんですよ。それで、「バスキアってタイトルは恥ずかしい」と(笑)。

■あはは!

川上:セッションの終わりくらいに、バスキアって呼ぶのが恥ずかしくて、仮でガーナって呼んでいたらガーナになった(笑)。

人生、楽しいですけどね。(市川)

■その柔構造がいいですね。個人的には、曲がメッセージを発しているとお説教を受けているみたいな気持ちになっちゃうので、いやぁ、なんて心地よい詰まりすぎない音楽なんだろうって、D.A.N.にはすごく思うんですよね。そういうひとたちなんでしょうね。

川上:そうだと思います。

■世代で括る気はないんですけど、一応ゆとりと言われているひとたちよりもちょい下ですよね。

桜木:がっつりゆとりです。

川上:さとり世代って言われているんだよね(笑)。

市川:人生、楽しいですけどね。

■日本がこのあと右肩上がりになることなんて絶対にないってわかっているんだけど、最初からそういうところに生まれたからわりとハッピー、みたいなね。

桜木:そういう意味か。なるほど。

川上:「恵まれてる国だから」みたいなとこですよね。

■そうそう。私もそういう雰囲気はすごくわかるので、なるほどなと思うんですけど。
さて、このバンドにおけるソウルってところも訊きたかったんですけど、ヴォーカルとかもソウルフルに思えて、じつはあれは黒いって感じじゃないですよね。むしろトム・ヨークとかね、あのファルセットはそういう感じがするんですけど。なんか原点にファンキーなものとかソウルなものとかあるんですか?

川上:いろいろ好きなんですけどね。

桜木:ファルセットですか?

■新しいR&Bの流れとかもあるじゃないですか?

桜木:うん。それはものすごく影響を受けてます。

■なるほど。

川上:ディアンジェロの歌い方とかね。

■音楽はどこで買っているんですか?

桜木:友だちのパソコンからデータでもらっているかな(笑)。

川上:彼はけっこう掘ってる。

■レコード屋さんとか行きますか?

桜木:僕がわりとふたりに流していることが多いかな。下北沢のオトノマドってレコード屋さんとかですね。

■どういうものが置いてあるんですか?

川上:「見たことねぇ!」みたいなのばかりでおもしろい。

桜木:フォークとかもあるし、ソウルやファンクもあるし。フュージョンとかジャズとか、ブリストルとか。あとエレクトロとかアンビエントもあるし。クラウトの実験的なものだったりとか。中古もあるし、新品もあるし。

市川:セレクトショップみたいなね。

桜木:そことかはわりと見たりしていますね。あとは友だちに「最近何を聴いてんの?」って聴いたりとか、そういうのですね。

■なるほど。やっぱり根本はインディ・リスナーなわけですね。そしてそういうところに、D.A.N.も置かれる音だと思いますよ。アルバムも楽しみにしています。

取材:橋元優歩(2015年10月05日)

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