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interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax

interview with Adrian Sherwood and Nightmares On Wax

UKダブ・“トーク”・セッション

――エイドリアン・シャーウッド×ナイトメアズ・オン・ワックス特別対談

取材:河村祐介    通訳:長谷川友美 Oct 08,2026 UP

 UKのダブ・ヒストリー、その起点にはもちろん第二次世界大戦後に、ウィンドラッシュ世代によってジャマイカからもたらされた、サウンドシステム・カルチャーの移入がある。そしてUKダブの現在まで続く、さまざまなジャンルとの融合ということを考えれば、もうふたつほど大きな転換期が存在する。ひとつは1980年前後、ルーツ・レゲエから学んだダブの要素が、ポスト・パンク〜ニューウェイヴの時代にレゲエ以外へ拡張されたこと。そしてもうひとつはレイヴ・カルチャーとサウンドシステム・カルチャーが結び付き、新たな低音の連続体(ブリープ、ジャングル、そしてダブステップ)が生まれたこと。前者の立役者は、もちろん〈ON-U Sound〉主宰のエイドリアン・シャーウッド。そして後者のブリープ・ハウスの文脈から登場し、また若干ダンス・カルチャーからは離れるがトリップホップやダウンテンポといったこれまたレイヴ以降のUKダブにおいて重要な要素を生み出してきたのがナイトメアズ・オン・ワックス(以下、NOW)だ。

 NOWの2006年作にして人気作『In A Space Outta Sound』、その20周年記念盤として今春、エイドリアン・シャーウッドによるダブ・ミックスというか、リワークといった方が相当しい『In A Space Outta Dub』がリリースされた。まさに上記のように脈々と続くUKダブの歴史そのものを感じさせるさまざまな要素がふたりの音楽的な感性によってミックスされ具現化した作品と言えるだろう。

 去る9月上旬、恒例となっているエイドリアン・シャーウッドによる来日ライヴ・ダブ・シリーズ〈DUB SESSIONS〉が、今年は『In A Space Outta Dub』のリリースを記念して、NOWを招聘しての開催となった。本稿はそんな〈DUB SESSIONS〉公演の直前におこなわれた対談だ。なんでも今回の作品の作業は、電話とメールなどのリモートにておこない、一切ふたりは会うことなく進んだため、この来日にてはじめての顔会わせとなったそうだ。とはいえ、取材場所に集まったふたりは、はじめての顔会わせとは思えないほど、長年の友人のように打ち解けた様子であった。

ベースで窓枠とか建物がガタガタ言うとか、そういうことに単純に驚いて興味が出たところからはじまって、追究していくうちに音楽の捉え方も進化してこういうサウンドが生まれていったということだよね。(エイドリアン)

■なんでも昨日のディナーがはじめて実際にお会いする機会だったんですね。お互いの印象は?

エイドリアン・シャーウッド(以下AS):あー、よくないね(Not good)。

ジョージ・エヴリン(以下GE):そう、よくなかった(Not good)。思ったよりも髪の毛もあるしさ(笑)。

■ハハハ(笑)。さっきから昨日初めてあったとは思えない感じですね。改めて『In A Space Outta Dub』ができてから結構時間がたっていると思いますが、ジョージさん的に感想は?

GE:作ってるときからいろいろな意見を交わしてオープンにできたのはとてもよかったね。こういうプロジェクトはやはりすべてが完成するまでに時間がかかるんだ。すべての作業が終わって、その後にマスターがあがってといういつものスケジュールなんだけど。今回はそれから少し時間をおいて、そこで初めて通して聴いたんだけどとにかくすばらしいと思ったよ。このプロジェクトがスタートするまで、それぞれアーティストとしてはもちろんお互い知っていたふたりなんだけど、それをひとつにまとめてくれたプロジェクトということで、すごいスペシャルな感じがしたね。完成から少し経って、こうしてリリースのときに取材を受けたりプロモーションがはじまったりするなかで改めてもう一回聴いたら、こんなにすごいスペシャルな作品だったんだということに改めて気づいたんだ。自分がやっていた音楽を改めてエイドリアンの世界観を通して、生命を与えてくれたっていう感じ、しかも美しくて、とてもエモーショナルなやり方で、新たな生命の息吹を与えてくれて……。

AS:(制するように)そんなに長く話したら通訳さんが訳すの大変だぞ。

■(訳し終えて)もし続きがあれば(笑)。

GE:いや、まぁ、ともかくとてもうれしい、名誉なコラボだったね。

AS:自分にとってもそうだね。この作品はすべてファイルの共有と電話やメールで制作して、音を作ったらフィードバックを送ってもらってというところで積み上げて作ってきた作品なんだ。自分自身はミュージシャンではないので、例えばダグ・ウィンビッシュにベースを弾いてもらったりして、またジョージからフィードバックをもらってということを繰り返していってという作業だったね。1曲だけ、制作中はどうしようかなと結構時間かかった曲もあったけどね。最終的にできあがったものを聴いて、とにかくふたりともハッピーにできてとてもいい作品に仕上がったと思うよ。

GE:このレコードの美しいところは、単なるリミックス・アルバムではないところだね。自分の作品に、新しいやり方、いわばエイドリアン・シャーウッドによる音の魔法を加えてもらって新しい表現として完成できたのが非常に気に入っているところなんだ。

■ちなみに完成までに時間がかかった曲とは?

AS:1曲目だね(“You Bliss”、原曲は “You Wish”)。元のアルバムのある種のアンセムのような雰囲気を持った曲で重要な曲なので、これはきちんと取りかからねばという。そんな気持ちも入っていたのでちょっと難航したんだと思う。

GE:でも、これこそ単なるリミックスという感じではなくて、エイドリアンがあの楽曲にさらなる深みを与えてくれたんだよ。

AS:それだけ重要な曲なので少しづつ変化を加えたりして作っていったんだ。コラボレーションという音楽の作り方をとるなら、なるべく意見をちゃんと交換しつつやりたいと思っていて。ただ、意見を言われても、それはそのまま言われたとおりにやるだけだとあまりいいものができないことが多いから、自分のやり方やアイディアも反映して作っていく。それができた今回のやり方はベストだと思う。

■さきほども出ましたが、最近の〈ON-U〉を支えるさまざまなアーティストが参加していますね。やはり本作で一際存在感があるのはダグ・ウィンビッシュのベースラインかなと思います。もともとNOWの音楽性にはダブ、いわばベースラインの要素が大きいので、より印象的でした。

AS:とにかくダギーはスペシャルなベーシストだ。もちろん長いことずっと活動をともにしてきてる親友でもある。じつは、9月は彼の誕生月でもあって、このあと日本でダグと合流して、少しの間、休暇を一緒に過ごすんだ。彼はベーシストなので、もちろんすばらしいベースラインを演奏するんだけど、やっぱりそれだけではないなにかを表現して、作品にそれを宿してくれる稀有な存在でもあるんだ。彼はファンクからレゲエまで、とにかくなんでも演奏できる。彼はアメリカ人だけど、もともとカリビアンのルーツもあって、バハマに住んでいたこともあったり、そのあたりの要素が入ってるのかもしれない。彼はあんなに長いキャリアを持ったアーティストなのに、いまだに3時間は毎日練習している非常にプロフェッショナルな人でもあるんだ。もちろん他にも好きなベーシスト、いいベーシストはいて、さまざまなセッションで一緒にやるのも好きなんだけど、やっぱり自分が関わる作品で、ここぞというときには、ダギーのようなセッション・マンとやることにしているんだよ。

GE:そういえばダグ・ウィンビッシュとは、1998年にニューヨークのスタジオでレコーディング・セッションで一緒になったことがあるんだ。エイドリアンと今回の作業で二度目に電話したときにエイドリアンのところにちょうどダグが来ていて、そこで20年以上ぶりに話をしたんだ。そんな長い時間を経て、一緒に音楽を作れたのはとても名誉なことで、スペシャルなことだと思っている。こういったアルバム、言ってしまえば過去の作品を作り直すというのはチャレンジすることや難しいところもあるけど、このアルバムに関して言えば自由で、開かれたセッションから成っていたんだ。それもあって、だから制作中は、どうにか作らなきゃいけないとか、どうにか自分たちを鼓舞して、努力して作る、といった雰囲気で作ったものではないんだ。そのラフな感じもあるけど、それでも作品としてのフィーリングは大事にして作ることができたね。

取材:河村祐介(2026年10月08日)

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Profile

河村祐介/Yusuke Kawamura河村祐介/Yusuke Kawamura
1981年生まれ。渋谷区幡ヶ谷出身。2004年~2009年『remix』編集部、LIQUIDROOM勤務やふらふらとフリーを経て、2013年より、OTOTOY編集部所属。その他、テクノ、ダブ方面などを中心にプラプラと書いたりしています。監修本に『DUB入門――ルーツからニューウェイヴ、テクノ、ベース・ミュージックへ』(2024年)がある。

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