「DJ DON」と一致するもの

OG from Militant B - ele-king

チョコレートソウルサンデー 2014.12.30

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。
レゲエのバイブスを放つボムを日々現場に投下。
Militant Bでの活動の他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしても活躍中。

あけましておめでとうございます。
2015年もじゃんじゃんバリバリいくんでよろしくお願いします。
さて、、今回は前回と打って変わって甘甘歌物特集をお届け!!
窓の外は雪がちらつき、揺れる暖炉の炎を見ながら2人で毛布にくるまりココアを飲む。ニットのセータもオン(設定長っ!)そんな時に聴きたい曲を挙げてみました。カバー曲多めなので元曲を知ってる!ってなったりできて楽しいと思います。狙ってるあの子、愛するあの人と聴いてもらえたら幸いです。

1/6 吉祥寺cheeky "FORMATION新年会"
1/14 新宿open "PSYCHO RHYTHMIC"
1/24 青山蜂
1/31 京都metro
2/3 吉祥寺cheeky "FORMATION"
2/22 青山蜂

 90年代のドラムンベース・シーンが生んだスター、ゴールディー。彼のレーベル〈メタルヘッズ〉は今年で20年を迎える(1994年は、ドラムンベースが最初に爆発した年でもあった)。ワックス・ドクター、ディリンジャ、ドック・スコット、アレックス・リース、フォーテックなどなど、ハードコア〜ドラムンベース〜ダークコア/アートコア……、レイヴ・ミュージックをより音楽的に洗練させたこのレーベル(そして4ヒーローの〈リーンフォースト〉)があればこそ、今日のUKベース・ミュージックがあると言っても過言ではない。マーラ、アントールド、アコードなども〈メタルヘッズ〉からの影響を認めている。
 今週末、ゴールディーは盟友ドック・スコットと共に東京でプレイ。彼らがどのようなプレイをするのか是非体感してほしい。日本からはマコトやDX、テツジ・タナカなど、国内のドラムンベース・シーンの第一線で活躍するDJたちも出演。

DBS 18th Anniversary
"METALHEADZ HISTORY SESSIONS"

2014年12月20日
@代官山ユニット

OPEN/START 23:30
CHARGE:ADV 3,300YEN  DOOR 3,800YEN

feat.
GOLDIE x DOC SCOTT

with.
MAKOTO
TENDAI
MC CARDZ
MC LUCID

vj/laser: SO IN THE HOUSE
live painting: The Spilt Ink

SALOON:
DX x JUN
TETSUJI TANAKA x DJ MIYU
STITCH x PRETTY BWOY
DJ DON x JUNGLE ROCK
DUBTRO x HELKTRAM

info. 03.5459.8630 UNIT
www.unit-tokyo.com
https://www.dbs-tokyo.com

<UNIT>
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

Ticket outlets:NOW ON SALE!
PIA (0570-02-9999/P-code: 246-233)、 LAWSON (L-code: 78221)、
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/

渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
disk union CLUB MUSIC SHOP (5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

GOLDIE (aka RUFIGE KRU, Metalheadz, UK)
"KING OF DRUM & BASS"、ゴールディー。80年代にUK屈指のグラフィティ・アーティストとして名を馳せ、92年に4ヒーローのReinforcedからRUFIGE KRU名義でリリースを開始、ダークコアと呼ばれたハードコア・ブレイクビーツの新潮流を築く。94年にはレーベル、Metalheadzを始動。自身は95年にFFRRから1st.アルバム『TIMELESS』を発表、ドラム&ベースの金字塔となる。98年の『SATURNZ RETURN』はKRSワン、ノエル・ギャラガーらをゲストに迎え、ヒップホップ、ロックとのクロスオーヴァーを示す。その後はレーベル運営、DJ活動、俳優業に多忙を極めるが07年、RUFIGE KRU名義で『MALICE IN WONDERLAND』をMetalheadzから発表、08年に自伝的映画のサウンドトラックとなるアルバム『SINE TEMPUS』を配信で発表。09年にはRUFIGE KRU名義の『MEMOIRS OF AN AFTERLIFE』をリリース、またアートの分野でも個展を開催する等、英国が生んだ現代希有のアーティストとして精力的な活動を続けている。12年、Metalheadzの通算100リリースに渾身のシングル"Freedom"を発表。13年には新曲を含む初のコンピレーション『THE ALCHEMIST: THE BEST OF 1992-2012』をCD3枚組でリリース。そして今年7月、ロンドンの名門クラブ、Ministry of SoundからのヴィンテージMIXシリーズ『MASTERPIECE』の3枚組CDを発表している。
https://www.goldie.co.uk/
https://www.metalheadz.co.uk/
https://www.facebook.com/Goldie
https://twitter.com/MRGOLDIE

DOC SCOTT (aka NASTY HABITS, 31/Metalheadz, UK)
"King of the Rollers"と称される至高のDJ、ドック・スコットはダークコア、テックステップ、リキッドファンク等の潮流を生む革命的トラックの数々でドラム&ベース・シーンの頂点に君臨する最重要アーティストの一人である。14歳よりヒップホップDJを開始。その後、デトロイト・テクノ/シカゴ・アシッドハウスに触発され'91年から制作を始め、第1作"Surgery"がグルーヴライダーの支持で大ヒット、ハードコア・テクノ/レイヴ・シーンに頭角を現わす。華やかなレイヴ時代の終焉と暗い現代社会を反映したダークかつハードなサウンド、ダークコアを先駆けた彼は、ドック・スコット及びナスティ・ハビッツの名義で"Drumz"、"Dark Angel"、"Last Action Hero"等の傑作をReinforced、Metalheadzから送り出し、ドラム&ベースの革新に貢献する。'95年には自己のレーベル、31を設立し、"Shadow Boxing"に代表されるテックステップと呼ばれるサイバー・サウンドの急先鋒となり、オプティカル、ペンデュラムらの才能を逸早く見いだした。DJとしては伝説のMetalheadz Sunday Sessionsのレジデントをつとめ、シャープなミキシングと独自のプログラミング・スキルでクラウドを絶頂へ誘う、シーンの至宝である。実に7年ぶり、待望のDBS帰還!
https://www.facebook.com/DOCSCOTTOFFICIAL
https://twitter.com/docscott31
https://soundcloud.com/docscott31


 2014年は本当にたくさんのアーティストが日本にやってきましたが、最後にここ一番のビッグ・ネームがやってきます。年末にはUKダブの重鎮であり、数々のラヴァーズ・ロックのアンセムを世に送り込んで来たマッド・プロフェッサーが来日決定。今回の来日でマッド教授がプレイするのは今回だけなので、お見逃しなく。

 サウンド・スラッガーは2008年に代々木公演でスタートしたベース・カルチャーを体現したパーティで、「低音」をキーワードに、ダブ、ジャングル、ダブステップ、フットワークなどなど様々なジャンルを紹介してきたイベントです。数年前にスター・ラウンジに会場を移し、今回は代官山ユニットで開催です。

 当日はユニット内の3つの各フロアにサウンドシステムを追加し、日本からはPART2STYLE SOUND、1945 a.k.a KURANAKA、LEF!!!CREW!!といった日本のベース・カルチャーを語る上でかかせないメンツがマッド教授をお出迎え。

 もちろん、当日はアーティストのセッションやサウンド・クラッシュも開催決定。メイン・フロアで行なわれるEASS SPECIAL SESSIONでは、DJブースがなんとダンス・フロアに設置され、3組のDJたちはこの日のために用意された特製ヘッドフォンで現場に望みます。

 一体当日は何が起こるのか? 合い言葉は……
Let the bassline thump you in your chest (貴様の胸に低音をかませ)!!

SOUND SLUGGER feat. MAD PROFESSOR (LONDON, UK) 
日程 2014年12月26日
会場 代官山UNIT
開場 / 開演 23:00
料金 3.500円(advance)/ 4,000円(Door)
Information: 03-5459-8630 (UNIT)  www.unit-tokyo.com
イベント特設サイト  https://part2style.wix.com/ss1226

前売りチケット:
ぴあ (P: 249-779), ローソン (L: 73139), e+ (eplus.jp), disk union CLUB MUSIC SHOP (渋谷, 新宿, 下北沢), disk union (吉祥寺), TECHNIQUE, GLOCAL RECORDS, DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO, DUB STORE RECORD MART, 新宿ドゥースラー and UNIT

出演
Room1 @UNIT + EASTAUDIO SOUNDSYSTEM
MAD PROFESSOR (ARIWA UK)
PART2STYLE SOUND
1945 a.k.a KURANAKA
Reggaelation Independance
KEN2D SPECIAL feat. JA-GE&RUMI
LEF!!! CREW!!!
-EASS SPECIAL SESSION-
feat. BIM ONE PRODUCTION × HABANERO POSSE × SKYFISH

Room2 @UNICE + Nichi Soundsystem
Booty Tune
Broken Haze + Kan Takahiko
XLII (XXX$$$)
Nichi
SHINKARON
ExcaliBoys
Trekkie Trax
-JUNGLE Clash-
HAYATO 6GO vs JUNGLE ROCK vs TAKARADA MICHINOBU

Room3 @SALOON + STONEDVIBES SOUNDSYSTEM
DJ DRAGON (Dubway from BANGKOK)
SP the Stonedvibes
DX (Soi Productions)
DON (Duusraa)
VΔR$VS(GOODWEATHER)
MIDNIGHT ROCK vs Myojin Crew
Portal + JAQWA
International SOUND
-dub fi dub-
feat. MIDNIGHT ROCK × Myojin Crew × PART2STYLE SOUND  × SP THE STONEDVIBES and ???

Food 虎子食堂 / 新宿ドゥースラー

MAD PROFESSOR  (ARIWA SOUNDS, UK)  

 泣く子も黙るダブ・サイエンティスト、マッド・プロフェッサーは1979年にレーベル&スタジオ「アリワ」設立以来、UKレゲエ・ダブ・シーンの第一人者として、四半世紀以上に渡り最前線で活躍を続ける世界屈指のプロデューサー/アーティストである。彼の影響力は全てのダンス・ミュージックに及んでいると言っても過言ではない。その信者達は音楽ジャンルや国境を問わず、常にマッド教授の手腕を求め続けている。なかでもマッシヴ・アタックのセカンド・アルバムを全編ダブ・ミックスした『No Protection』は余りにも有名である。伝説のリズム・ユニット、スライ&ロビーとホーン・プレイヤー、ディーン・フレーザーをフィーチャーして制作された『The Dub Revolutionaries』は、2005年度グラミー賞にノミネイトされ話題となった。まだまだ快進撃中、止まることを知らないマッド教授である。ここ近年だけでも、伝説的なベテラン・シンガー、マックス・ロメオ、レゲエDJの始祖ユー・ロイ、レゲエ界の生き神様リー・ペリーに見出されたラヴァーズ・ロックの女王スーザン・カドガン、UKダンスホール・レゲエのベテラン・アーティスト、マッカBのニュー・アルバムをプロデュースしている。 自身のアルバムも『Bitter Sweet Dub』『Audio Illusions of Dub』『Roots of Dubstep』『Dubbing with Anansi』などをコンスタントにリリース。プロデュース作品は、リー・ペリーの手に依る金字塔アルバム『Heart of The Congos』で知られるThe CongosのCedric Mytonとのコラボ・アルバム『Cedric Congo meets Mad Professor』、カリスマ的ラスタ・シンガー LucianoとのDub Showcase『Deliverance』を制作、相変わらずのワーカホリックぶりを発揮している。最新テクノロジーと超絶ミキシング・テクニックを駆使して行われる、超重低音を轟かせる圧巻のダブ・ショーで存分にブッ飛ばされて下さい。

PART2STYLE SOUND

 日本人にしてヨーロッパのシーンをリードするベースミュージック・クルー!! PART2STYLE SOUND!!! ダンスホール・レゲエのサウンドシステム・スタイルを軸に、ジャングル、グライム、ダブステップ、トラップ等 ベース・ミュージック全般を幅広くプレイ。独自のセンスでチョイスし録られたスペシャル・ダブプレートや、エクスクルーシブな楽曲によるプレイも 特徴のひとつである。2011年より、海外のシーンを焦点にサウンドとしての活動を開始、ヨーロッパにおける数々の最重要ダンスはもちろん、世界最大のベース・ミュージック・フェス【OUTLOOK FESTIVAL】やヨーロッパのレゲエ・フェスで1位2位を争う【ROTOTOM SUNSPLASH】、【UPRISING REGGAE FESTIVAL】等ビッグ・フェスティバルでの活躍がきっかけとなり、ヨーロッパ・シーンで最も注目をあびる存在のひとつとなっている。【JAHTARI】、【MAFFI】、【DREAD SQUAD】等ヨーロッパ・レーベルからのリリースに続き、2012年秋に自身にて立ち上げた新レーベル”FUTURE RAGGA”の楽曲は、ヨーロッパ各地で話題沸騰、数々のビッグ・サウンドやラジオでヘビープレイされている。2013年には、日本初のGRIMEプロデューサー オンライン サウンド・クラッシュ【War Dub Japan Cup 2013】に、MaL × Nisi-p名義で参加。見事優勝を勝ち取り、国内においてもその存在感を示した。 毎月第1,3月曜20:00~21:00のPART2STYLE RADIO (BLOCK.FM)も必聴!!


Tofubeats × Para One - ele-king


Tofubeats - First Album
ワーナーミュージック・ジャパン

Tower Amazon iTunes


Tofubeats - lost decade
tofubeats

Tower Amazon iTunes

 初のメジャー・デビュー・アルバム『First Album』をリリースし、12月にはツアーファイナルを迎えるtofubeats。あまりにも語ることの多いこのアルバムだが、そのなかで2枚組での限界価格という「お得感」にもこだわりを見せた彼に倣って、ele-kingでは新譜発売時に掲載したロング・インタヴューの「ボーナス・トラック」をお届けしよう。2013年9月に発売された弊誌『ele-king vol.13』(通称「tofubeats表紙号」)に収録された、tofubeats×パラ・ワン(Para One)対談をウェブでも公開! メジャー契約直前、環境が大きく変わろうとしているなかでtofubeatsが考えていたこと、そしてヒップホップとエレクトロニック・ミュージックとの接合点でラディカルな活動を見せ、90年代半ばのフランスのシーンをリードしたTTCのプロデュースでも知られるマルチ・クリエイター、パラ・ワンとの対話から見えてくる、彼の若きリスナー遍歴。


■tofubeats / トーフビーツ
1990年生まれ。神戸で活動するトラックメイカー/DJ。〈Maltine Records〉などのインターネット・レーベルの盛り上がりや、その周辺に浮上してきたシーンをはやくから象徴し、インディでありながら「水星 feat.オノマトペ大臣」というスマッシュ・ヒットを生んだ。
くるりをはじめとしたさまざまなアーティストのリミックスや、アイドル、CM等への楽曲提供などプロデューサーとして活躍の場を広げる他方、数多くのフェスやイヴェントにも出演、2013年にはアルバム『lost decade』をリリースする。同年〈ワーナーミュージック・ジャパン〉とサインし、森高千里らをゲストに迎えたEP「Don't Stop The Music」、藤井隆を迎えた「ディスコの神様 feat.藤井隆」といった話題盤を経て、2014年10月、メジャー・ファースト・フルとなる『First Album』を発表。先のふたりの他、新井ひとみ(東京女子流)、okadada、の子(神聖かまってちゃん)、PES(RIP SLYME)、BONNIE PINK、LIZ(MAD DECENT)、lyrical schoolら豪華なゲスト・アーティストを招いている。


他の人が用いる方法については、イミテーションじゃなくてちゃんとアンダースタンドしなければやらない。(tofubeats)

トーフくんは浜崎あゆみのリミックスではじめてパラ・ワンを知ったといっていましたね。

tofubeats(以下T):TTC(テテセ)のセカンドのほうが先だったんですが、その後myspaceであのリミックスを聴いて、「この曲をこうすればクラブ・ミュージックになるのか」っていう手法的な発見がありました。こんなふうにすれば、いまの自分をブレさせずにヒップホップから違うところへ行けるんじゃないかって。高校2年くらいのときのことですかね。

浜崎あゆみは日本のポップ・シンガーですけれども、そうしたアーティストのリミックスをパラ・ワンがやるというのは、TTCから聴いていたリスナーからすれば意外なものでもありました。ですがその結びつきによって、ヒップホップのシーンで窮屈な思いをしていたトーフくんはジャンルの檻から自由になったと。これについて何か思うところはありますか?

パラ・ワン(以下P):正直に言ってあのときはとても緊張していたんだ。ただ音楽家としては、TTCもそうだけれども、全然違う文脈のものの間にコネクションを作っていくという仕事をしているつもりだから、トーフビーツくんが違和感なくインスパイアされたと言ってくれるのはすごくうれしく思うよ。

「違う文脈のものの間に……」というのはトーフくんの活動と重なるところがあるよね。

T:そこからの影響が大きいんですよ。毎回自分のスタイルをリセットして変えていっていいんだって。

逆に、スタイルを変化させることにこだわりがあったりはしますか? ダンス・ミュージックにとってはモードに対応していくのもすごく大切なものだと思いますが。

P:つねに変わっていくべきだというスタンスでやっているわけではないけれど、ダンス・ミュージック自体は若者の音楽だと思っているから、ある一面においてはそれはサヴァイヴァル精神でもあるよ。柔軟でいなければダメだし、新しくて良いものは自分なりに消化しなきゃいけない。ただ、刺激的なアーティストに会ったりしてみても、その影響を自分の音として出力するには時間がかかるんだけどね。

気に入ったアーティストに話をきいてみたりするんですか?

P:曲作り自体が呼吸のようなもので、息を出しきったら吸わなきゃいけない。スタジオにこもりきりだとエゴを吐き出すばっかりで吸収がないよね。だからツアーをしたり人に会ったりインタヴューを読んだりするのは吸収と消化のチャンスだととらえているよ。

トーフくんのアルバムも曲によってアプローチが違うわけだけど、リスナーとして新しい音を聴いて、それをいかに自分流に消化するかということを繰り返しているように見えるんですよね。そこにはこだわりがありますか?

T:他の人が用いる方法については、イミテーションじゃなくてちゃんとアンダースタンドしなければやらない、ってふうに自分では決めています。新しいジャンルに取り組むにても「それっぽいもの」に終始してしまいたくはないですね。いまベッドのスプリング音がすごい流行っているみたいなんですよ。でもそういうものをいま日本でやることにどんな意味があるのかっていうところから、僕はきっちり考えますよ。今回パラ・ワンのリミックスにあたって、僕は炭酸飲料を開ける音を多用しているんですが、それも同様です。自分のなかでちゃんとボーダーを引いて、他人にわかってもらえなくてもいいけど他人に説明できるくらいにそれをやる意味を理解してなければ、やらない。

10年くらい前にTTCにインタヴューしたとき、テキは、サウスのラップがすごくおもしろいんだけど、それをいかに自分のスタイルとして消化するのかが大切だと言っていたんです。彼らには表面的なイミテートを良しとしないスタイルが一貫してあったことを思い出しました。

P:セカンド・アルバムを作っているときには魔法のような瞬間があった。みんなの関わり方やジャケットのアートワーク、いろいろなことを含めて、そのときその場所に魔法のように重なって、あるべきものであるべきものを作ることができたという感覚を持っています。原点になっているのはあのセカンドの頃だね。

T:当時とても未来っぽく感じました。アートワークにしてもほんとにブローされたものだと思った。高校生が聴くにはヤバすぎましたね(笑)。

P:ははは。

トーフくんの表現がヒップホップからダンス・ミュージックに広がっていったというのも、まさにTTCと同じですね。

T:そうそう! 「こんなことやれたらいいな」が全部ある、みたいな。日本だと、そういうことを迂闊にやると「ジャズをサンプリングしろ」みたいに言われる時代だったんですよ。まだまだヒップホップ後進国で、シーンのなかにいまのカニエの新譜みたいなアプローチを良しと言えるような人がほとんどいなかった。

P:僕自身ももともとはジャズやソウルなんかをサンプリングしたヒップホップをやっていて、DJプレミアとかピート・ロックとかを目指していたんだよね。DJメディに憧れたりもしたけど、TTCに出会って「お前は未来がわかってない」と言われてね(笑)。いまじゃなくてこれから最高と呼ばれるものをやれって。それで考え直したんだ。

トーフくんも、ジャズをサンプリングしろって言ってくるような人よりは、よっぽど自分のほうがフューチャリスティックだしオーセンティックだしって思ってるんじゃないですか?

T:ほんとそう思ってますよ! ただ、言ったら角が立つと思って黙っているだけです(笑)。いまのお話で勇気づけられました。これで間違ってないんだって。

P:TTCも最初は嫌われていて、僕自身も友だちから「これとにかくひどいから聴いてみて」って言われて彼らを聴かされたんだ。だけど僕はこれヤバいじゃんって思って。フランスのすごくコンサバな家庭に育ったものだから、ああいう音を聴いて前向きに進んでいく気持ちが湧いてきたんだ。だからヒップホップかそうじゃないかということは気にせずに前進していくのがいいんじゃないかな。斬新さしかないんじゃないかと思うよ。名盤はつねに新しいものだったからね。

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TTCのころから思っていることでもあるけど、ルールを壊すか、ルールを持たないのがルールなのかもね。(パラ・ワン)

パラ・ワンさんはTTCの1枚めから2枚めにいたるまでに、彼らとのディスカッションを通して築いたものが下地になっているということでしたが、トーフくんはどうですか? 仲間とのディスカッションから何かを得ることは?

T:それはもちろんあります。シーパンク論争とかね。僕がシーパンク的なものをあんまり用いなかったのは、みんなとのディスカッションのなかで「アンダースタンド」までいかなかったからです。でも教わったり教えたりっていうコミュニケーションはすごく普通にとっているし、とりたいですね。

では、DJやトラックメイカーとして自分のスタイルに取り入れるまでではないにしても、いま興味を持っている音楽やジャンルがあれば教えてください。

P:イギリスのシーンはいまおもしろいんじゃないかな。レーベルに注目して聴いているよ。〈ナンバーズ〉っていうレーベルのソフィってアーティストがパリでやったときは、イタロ・ディスコとR&Bとテクノと、ちょっと未来的なポップの要素が混ざっていて、すごくおもしろいことをやってるなって思った。あとは〈ラッキーミー〉。UKのシーンにはいま、ベースから流れてきたちょっとドロドロしたモードがあるんだけど、それに対してもうちょっとクリアな感じの音の要素がある。あと〈ナイト・スラッグス〉は近すぎて客観的に見れない部分はあるけれども、オーナーがダンス・フロアにヘンなシチュエーションを作ろうとがんばっているようなところがいいよね。

T:〈ナンバーズ〉は知らなかったけど、他はもちろん僕も気にしているレーベルばっかりですね。〈ラッキーミー〉なんかは、日本のビートメーカーはみんなチェックしていますよ。あとは、もともとディスコも好きなんですが、ちょっとレトロなものがUSから出てきてますね。ただ、みんなすぐディプロに見つかっちゃう!

なるほど。ところで、“リーン・オン・ミー”のMVですが、あのセンチメンタルなイメージも、まさにトーフくんと近いセンスを感じました。いかがですか?

T:あれはなんか、やったーって思いましたよ。そのあとに“エヴリィ・リトル・シング”のピッチフォーク・ヴァージョンが出て、個人的にはあのアルバムが“リーン~”のヴィジュアルで固まっちゃっていたので、すごく違和感を覚えました。

P:だからアンオフィシャルなんだけどね。

T:そう、そうなんだと思いました。だけど、逆に日本人の俺から見てあれがすごくしっくりきちゃったことに悔しさも感じましたけどね。行間の表現がすごく日本的だし。

男の子と女の子の距離感とかね。なぜああいうMVを? なぜ日本が舞台だったんです?

P:“エヴリィ・リトル・シング”のほうは、知り合いが勝手にやっちゃったもので、まあ、見て見ぬふりです(笑)。“リーン・オン・ミー”はすごくまよった。音楽は音楽、映画は映画、気持ちを伝えるものとしては分けて考えているんだ。ドローンを聴きながら3日間くらい悩んだんだよ。そしたら東京のイメージが頭に浮かんできた。2012年だったかな。ネットでも何でもシニカルな表現が多いような気がしていたから、絶対にそうじゃないもので、かつ冗談ぽいものでもないことをやらなくちゃっていう思いはあったんだ。そしてシンプルに気持ちが伝わるもの。ちょうど桜の季節だったから、自然のなかで起きている新しいこととともに新しい気持ちが生まれる瞬間を見ることができるんじゃないかと考えてね。

この機会にお互いに訊いてみたいことはありますか?

T:さっき学校っておっしゃってましたけど、レーベルをやるにあたって心がけていることはありますか?

P:TTCのころから思っていることでもあるけど、ルールを壊すか、ルールを持たないのがルールなのかもね。レーベルがダメになるのって大抵の場合は齢をとって若い人間を受け入れられなくなっていくことに原因がある。それに、子どもらしく興味を持っていろんなものを楽しめたらいいなと思うから、オープンマインドということも心がけているかな。あなたはどう? あなたはどこを目指していて、どんなものを消化しようとしているところなの?

T:僕はついこの間メジャーと契約して、セールスを出さなきゃいけないアーティストになったわけです。ポップスとして、クラブ・リスナーとかではない人にも届けられないと契約が切れてしまう。自分のもともとの個性とそうした事情の間で悩んでいる時期ですね。それから、その傍らで日本のアイドルに曲を書いたりしていくことにもなると思いますが、そこに〈マーブル〉とかから受けている影響をどういうふうに落とし込んでいくか。海外の人たちにも「日本のポップがなんかヤバいぞ」って思われるようなところまでどうもっていくか。それが課題ですね。

補足すると、日本ではダンス・ミュージックがポピュラーではないんですよ。

T:それから、森高千里とか松田聖子のよさって海外の人に伝えるのは難しいかもしれないけど、ちゃんとしたハイブリッドなものを作れば、Jポップの良さを世界に説明することができると思う。まずは自分がちゃんとセールスを作って、なおかつ海外のレーベルに対しても納得させられるようなある程度のラインを作る、そういうコンテクストを作っていくことができるかどうかという挑戦ですね。そのためには〈マルチネ〉のような存在も必要だと思っています。

P:エキサイティングな話だね。でも、冗談抜きでできると思うよ。

T:あなたにまた会えるように、がんばりますよ。やるしかない!


Tofubeats - ele-king

 はたして自分はオリジナルなのか、それともコピーなのか、という程度の自意識くらいは持っていてほしいな、と、良くも悪くも若くて純粋なロック・バンドを見ていると思う。筆者がtofubeatsや大森靖子の生み出す音楽に惹かれるのは、結局のところ、彼ら・彼女らが自らのことを「オリジナルを持たない曖昧なコピー」として認識することから出発しているアーティストだからである。より正確に言うなら、「自分が曖昧なコピーであることにわざわざ自己言及せずにはいられないアーティストだから」だ。世代で括っていいのなら、そこには世代的なレベルでの共感がある。
 一方、こちらは「中の人」の素顔を知らないので世代の話は保留するが、〈粗悪興業〉による一連のリリースが、ポップ・アートの古典「一体何が今日の家庭をこれほどに変え、魅力あるものにしているのか」(1956)のオマージュになっているのも象徴的である。同作をもって「もし室内の床の上にあるテープレコーダーをパソコンにおきかえてよければ、今日のわれわれの日常そのものであろう」と評したのは美術史学者の前田富士男だが、まさにそれを具現化したようなアートワークを持つsoakubeatsのアルバムにはなんと、『Never Pay 4 Music』というタイトルが付いていたのだった!

 ここに通底するのは、いわゆる「貧しい芸術」の表現態度、つまり「あるもので間に合わせる」感性である。いや、正確には「あるもので間に合わせざるを得ない」環境だろうか。彼らはその行為を徹底的に突き詰めることによって、逆説的に、では彼ら・彼女らの手の中にはいったい「何ならあるのか」「何しかないのか」をレペゼンした。彼ら・彼女らにとってはそれがたまたまパソコンであり、インターネットであり、ハードオフであり、TSUTAYAさんであり、コピーされる音楽であり、それを焼くための安っぽいCD-Rだったのだろう。もちろん、こうした感性がVaporwaveとも完全にシンクロしていたのは言うまでもないし、本作にの子がヴォーカルとして参加している神聖かまってちゃんも同様だ。
 90年代以降の芸術を変革させたシミュレーショニズムの手法を、単なる「コピペ」という身体性で学んだ彼ら・彼女らが、表現者という、建前としては「オリジナル」の供給を迫られる立場に立ったときのプレッシャーを筆者はよく想像する。「学校に先生はいなかったでしょ」「オリジナルなんてどこにもないでしょ」と、大森靖子が炎上を覚悟して綴った言葉を実際に歌にするときの、微かな声の震え。あるいは、もろに弾き直しなフレーズをトレードマークにした“水星”でブレイクスルーしてしまったtofubeatsが、メジャーからのデビュー・アルバムをリリースするときにアップする全曲試聴とインスト盤。結局のところ、僕を感動させたのは彼ら・彼女らのそうした小さな戦争である。

 これは自戒だが、そうであるからこそ、作品そのものではなく、彼ら・彼女らの周囲で起きる事件/出来事に関心のウェイトを移してしまうのはリスナーが注意すべき落とし穴かもしれない。ちょうどそんなことを考えていたとき、Zeebraのこんなツイートが話題になっていた。「世の中には『人の知らないモノ好き』が沢山居る。彼らはその鋭い感性と情報収集能力で新しいモノを探す。ただ、あくまでも『人の知らないモノ』が好きなので、それが流行ると嫌になる…。こういうタイプのファンが多いアーティストは細々とやっていくしかなくなる。」(2014年11月27日投稿)
 もちろん、メジャーに進出したtofubeatsを含む上記のアーティストたちは、こうしたことがあり得る時代に音楽をやっていることをむしろ誰よりも理解しているだろうし、だからこそ、彼ら・彼女らは半ば実験と位置づけるような格好でメジャー・シーンへと参入していったのではないか。そして、その複雑な実験系の中で己を見失わないために、「芸術とは何か」という問いそれ自体を芸術とするのだと思う。あるいは、「音楽とは何か」という問いそれ自体を音楽とする。それは自意識の泥沼だが、そこを避ける道はないのだ。そして、tofubeatsの『First Album』はまさに、「ファースト・アルバムとは何か」という問いそれ自体をアルバムにしたようなファースト・アルバムとなった。

 まずおもしろいのは、このアルバムが「オリジナル・アルバムなのにリミックス・アルバムでもある」という性格を持っていることだ。“poolside”のようなお馴染みのラップ・チューンもRIP SLYMEのPESを招いてよりポップでアーバンに、先行シングル“Don’t Stop The Music”もより使いやすくすべく(?)、長めのイントロを用意してリアレンジされている。「本当は全部アルバム・ヴァージョンにしたかったんです」という発言にはさすがにちょっと気前が良すぎるのでは、という気がしないでもないが、オリジナル・ミックスという概念を曖昧に放棄してしまう彼の大胆さは、ハウス・ミュージックの伝統やサウンドクラウドのスピード感を意識してのことだろうか。
 中でも、“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”という“水星”と双璧を張るキラー・トラックは、《2012mix》という一つの完成形があるにも関わらず、“Don’t Stop The Music”と呼応させるべく、さらに積極的な改変が行われている(ちなみにこの曲の歌詞の具体的な内容については、筆者もインタヴュアーとして参加した磯部涼編『新しい音楽とことば』に詳しいので参照されたい)。こうなると、“おしえて検索”のアルバム・ヴァージョンも聴いてみたかったと言いたいところだが、他方、アブストラクトなジャージー・クラブである“Populuxe”や、さながらD/P/Iのジャージー・クラブ・リミックスのような“content ID”が耳をクールに楽しませてくれる。

 そういえば、目下大躍進中のプロデューサー、デビュー作『ゼン』も素晴らしかったアルカへの取材が紙版『ele-king vol.15』に掲載される予定なのだが、彼はそこであるJ-POPの女性シンガーの名前をお気に入りとして挙げている。というのは、まあ、ここでは余談だが、筆者は不躾にも「以前よりもミュージシャンが音楽から金銭的な利益を生むことが難しくなったと思いますか?」などという質問をぶつけたのだった。彼の回答はドライといえばドライだったが、そのくらいの危機意識と現状認識はtofubeatsや、彼と同世代のミュージシャンはニュートラルに持っているだろう、とも思った。だからこそ、ゴージャスなゲストに囲まれつつも、tofubeatsは無邪気に浮かれてはいない。
 たとえば、人気曲“No.1”系統のメロウな新作“衣替え”は本当にいい曲だ。とくに、頭12秒付近にあえて録音されているMPCのスイッチを弾く音(?)を合図に、リスナーがこのイントロにうっすらとしたノイズが被っていることに気付く仕掛けには思わず微笑を漏らした。これはおそらく、dj newtownの作曲工程を再現するかのようなメタ・レコーディングとして準備されたものなのだろう。そのノイズが次第に晴れ、音がクリアに立ちあがり、dj newtownはメジャー契約アーティストたるtofubeatsとなり、プロデューサーとしてあのBONNIE PINKをヴォーカルに迎える。『First Album』でもっとも感動的な瞬間といえば、夢が現実となっていく、この瞬間だ。

 「お金がないなりに数を聴こうとしたら必然的にハードオフに並ぶJ-POPになった」という主旨の、tofubeatsの発言が好きだ。筆者も同じような理由で、ロックのクラシックスを山ほどレンタルし、ヒップホップのミクステを山ほど落とし、現行のエクスペリメンタルを0~5ドルくらいで買い漁っている。そして、そういうリスナーがたくさんいることを知っている。『First Album』は、つまり、ただ単に「あるもので間に合わせる」というdj newtownの適応能力が、いや、この国の豊かな貧しさが生んだ、どこかで聴いたことがあるのに絶対に聴いたことがない、J-POPの最適解という幻の対岸(=プールサイド)を探すためのサウンドトラックだ。

OG from Militant B - ele-king

漆黒の大地を駆けろ!

ヴァイナルゾンビでありながらお祭り男OG。レゲエのバイブスを放つボムを日々現場に投下。Militant Bでの活動の他、現在はラッパーRUMIのライブDJとしても活躍中。3回目の登場ほぼゴリラのOGです。今回のランキングはダブ! ダブ! ダブ! 歌無し"ハーコーダブ"に焦点を絞って、70年代バンドサウンドから2014年産デジタルキラーなものまで幅広く挙げてみました。音の再構築、破壊と再生。大胆で繊細、最先端なレゲエミュージックを感じてみてください。REBELだろ?

11/4 吉祥寺cheeky "FORMATION"
11/7 山形tittytwister "LIVE AT HOPE"
11/8 秋田re:mix
11/12 新宿open "PSYCHO RHYTHMIC"
11/23 東高円寺grassroots
11/29 池袋bed "NEW TYPE DUB"
12/2 吉祥寺cheeky "FORMATION"
12/6 渋谷asia "IN TIME"
12/30 吉祥寺cheeky


DBS -MALA&COKI (Digital Mystikz) - ele-king

 みなさま、いよいよです。スーパー台風明けの今週末、マーラとコーキがデジタル・ミスティックズとして日本へやってきます! ダブステップをサウス・ロンドンで開発したオリジネーターが揃って来日するのは今回が初めて。日本での彼らのホームであるDBSでどのようなプレイを見せてくれるのでしょうか。前回のマーラとコーキのDBSでのDJプレイはこちらでチェックできます。

DBS presents "MALA IN JAPAN"

DBS 16th. Anniversary feat. COKI & SILKIE

 マーラとコーキがダブステップ最重要レーベル〈dmz〉からリリースを開始したのは2004年。リチャード・D・ジェームスも関わる〈リフレックス〉から、ふたりが参加したコンピレーション『グライム2』が発売されたのも実はこの年なんです。
 レーベル開始当初からロンドンのブリクストンで開かれる、〈dmz〉のパーティは現在も大変な人気を誇っています。キャッチ・コピーは「Come meditate on bass weight!」。ジェイムズ・ブレイクがデジタル・ミスティックズが出るイベントの常連だったことは有名なエピソードですね。先日来日した〈ナイト・スラッグス〉のボク・ボクも〈dmz〉から大きな影響を受けたプロデューサーのひとり。マーラとコーキがいない現在の音楽シーンを想像することは不可能です。
 日本を代表するプロデューサーであり、デジタル・ミスティックズのふたりと共にダブステップのシーンの形成に携わった〈バック・トゥ・チル〉のゴス・トラッドも当日は駆けつけます! 前回のピンチ来日時に素晴らしいDJを披露したシバライダーもプレイ!
 デジタル・ミスティックズの10年の節目にみんなで瞑想しようぜ!

DBS - A Red Bull Music Academy Special with MALA&COKI (Digital Mystikz)

日時:10月18日 (土) OPEN / START 23:30
会場:代官山UNIT
料金:前売3,000円 / 当日3,500円
出演:
MALA & COKI (Digital Mystikz)
GOTH-TRAD (deep-medi,BTC)
SIVARIDER
VJ:SO IN THE HOUSE

Saloon:
LAO
Ekali
DJ STITCH
TETSUJI TANAKA
KEN

MALA & COKI (DIGITAL MYSTIKZ)

ダブステップのパイオニア、DIGITAL MYSTIKZはサウス・ロンドン出身のMALAとCOKIの2人組。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼らは、独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。
'03年にBig Apple Recordsから"Pathways EP"をリリース、'04年には盟友のLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開していく。そして名門Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされ、脚光を浴びる。また'05年からDMZのクラブナイトを開催、ブリクストン、リーズでのレギュラーで着実に支持者を増やし、ヨーロッパ各国やアメリカにも波及する。
'06年にはSoul Jazzからの2枚のシングル・リリースでダブステップとDIGITAL MYSTIKZ の知名度を一気に高め、DMZの作品もロングセラーを続ける。また同年にMALAは個人レーベル、Deep Medi Musikを設立、以来自作の他にもGOTH-TRAD、KROMESTAR、SKREAM、SILKIE、CALIBRE、PINCHらの作品を続々と送り出し、シーンの最前線に立つ。一方のCOKIは'07年にBENGAと共作した"Night"をTempaから発表、キャッチーな同曲は'08年に爆発的ヒットとなり、ダブステップの一般的普及に大きく貢献する。
そして'10年にはDIGITAL MYSTIKZ 名義によるMALAの1st.アルバム『RETURN II SPACE』がアナログ3枚組でリリース、壮大なスケールでMALAのスピリチュアルな音宇宙を明示する。そしてCOKIも同年末、やはりDIGITAL MYSTIKZ 名義でアルバム『URBAN ETHICS』を発表(P-VINEより日本盤発売)、血肉となるレゲエへの愛情と野性味溢れる独自のサウンドを披露する。その後もDMZから"Don't Get It Twistes"、Tempaから"Boomba"等、コンスタントに良質なリリースを重ねつつ、11年から謎のホワイト・レーベルのAWDで著名アーティストのリワークを発表、そして12年、遂に自己のレーベル、Don't Get It Twistedを立ち上げ、"Bob's Pillow/Spooky"を発表。
MALAはGILLESの発案で'11年、彼と一緒にキューバを訪れる。そしてMALAは現地の音楽家とセッションを重ね、持ち帰った膨大なサンプル音源を再構築し、'12年9月、GILLESのBrownswoodからアルバム『MALA IN CUBA』を発表(Beatinkから日本盤発売)、キューバのルーツ・ミュージックとMALAのエクスペリメンタルなサウンドが融合し、ワールド・ミュージック/エレクトロニック・ミュージックを革新する。
"Come meditate on bass weight!"

前売り情報:
PIA (0570-02-9999/P-code: 241-304)、 LAWSON (L-code: 70720)
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/
渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS(090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD.
1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
TEL:03-5459-8630
www.unit-tokyo.com


アイタル・テックとパズルの世界へ! - ele-king

 東京で最先端なサウンドを最高な環境で体験できるパーティ、〈サウンドグラム〉。ディスタル、ループス・ハウント、そしてテセラなどなど、ユニークかつリリースのたびに注目を集める面々ばかりです。会場に持ち込まれるサウンドシステムもこのパーティの魅力のひとつで、低音で揺れるフロア、そこで聴くアンセムは一生記憶に残ることでしょう。4月のテセラ、最高でしたよ。
 今週末、サウンドグラムが大阪と東京で開催されます。今回は光が乱反射するようなエレクトロニカからフットワークまでを手掛けるアイタル・テックと、あらゆるベース・ミュージックを知りつくしているパズルが登場! 
 本当に何が新しいのかを現場で体感して考えてみませんか? 踊りまくりたい方も大歓迎です。今週末は〈サウンドグラム〉へ! 

■SOUNDGRAM TOKYO/OSAKA
ITAL TEK & PUZZLE Japan Tour

大阪公演
日時:10月11日(土) OPEN/START 22:00
会場:TRIANGLE
料金:ADV 2000yen+1D DOOR 2500yen+1D
出演:
Ryuei Kotoge (Daytripper Records), D.J.Fulltono (Booty Tune), CLOCK HAZARD TAKEOVER 3HOUR, CHELSEA JP (GRIME.JP), madmaid (irregular), utinaruteikoku (irregular), DISTEST, ZZZ, Saeki Seinosuke, KEITA KAWAKAMI, D.J.Kaoru Nakano, PPR aka Paperkraft, SHAKA­ITCHI, DJ AEONMALL, HSC, JaQwa, PortaL

東京公演
日時:10月12日(日曜祝日前) OPEN/START 23:00
会場:TOKYO GLAD & LOUNGE NEO
料金:ADV 3000yen DOOR 3500yen
出演:
Submerse (Project: Mooncircle, UK), 19­t Takeover (TECHNOMAN Utabi SKYFISH Cow'P Amjik), HABANERO POSSE, Mike Rhino (UK), D.J.Kuroki Kouichi VS Gonbuto, Chicago vs Detroit, D.J. APRIL, DJ DON, FRUITY, tesco suicide, Mismi, Nishikawacchi, JaQwa, PortaL HATEGRAPHICS (VJ), knzdp (VJ), XVIDEOS (VJ), GENOME (VJ), Shinjuku DUUSRAA (FOOD), zeroya (FOOD), Broad Axe Sound System (SOUNDSYSTEM)

*各公演にItal TekとPuzzeleは出演

ITAL TEK (Planet-Mu/Civil Music, UK)

イギリスのブライトンを拠点に活動する様々なジャンルをまたぐUKならではのエレクトロニックアーティスト。2007年にPlanet­MuのレーベルオーナーであるMike ParadinasがMyspaceにアップされていた楽曲を聴いて気に入ったのが始まりで「Blood Line EP」をリリース。翌年2008年には1stフルアルバム「cYCLiCAL」をリリース。IDMとDubstepの融合を見せたItal Tekならではの作品となった。2009年には自身のレーベルAtomic River Recordsを設立し、その後も順調に多くのリリースとライブ活動を行いジワジワとその名をイギリス国内から欧州へ、そして世界へと知らしめていく。2012年にリリースをした3rdアルバム「Nebula Dance」では自身の解釈世界観のフットワーク・サウンドで展開させ、多くのリスナーを驚かせた。2013年にはCivil Musicより3rdアルバムをアップデートさせたEPをリリース。同年のミニアルバムではフットワーク/ジャングル/エレクトロニカ/アンビエントと独自のスタイルを一歩前進させることなる。そして今年2014年にリリースされたCivil Musicからの2nd EPではよりディープでハイブリッドなサウンドとなり、デビューから現在までブレることの無い確固たるサウンドを披露し、Planet­Muの主要アーティストとして活動している。

PUZZLE (Leisure System, GER)

15年以上に及ぶDJと作曲の経験を持ち、現在はベルリンの世界的に有名なクラブ「Berghain」で行われている「Leisure System」のレジデントとして活動。またLeisure System Recordsの経営と並行して、世界最大級のクラブやSonar、Dimentiions、Arma 17、Redbull Music Academy、Nitsa等のフェスティバルでプレイしている。2012年にはObjektとAsiaツアーを行い、過去にはClark、Rustie、Jimmy Edgar、Machinedrum、Kuedo、Joy O、Blawanやその他多くのアーティストと同じステージで競演。 常に遊び心に富んだジャンルレスなMIXでフロアを狂喜に導く。


SUNS OF DUB JAPAN TOUR 2014 - ele-king

 ダブステッパーに限らず、ダブを愛するモノたるやオーガスタス・パブロの名前はマスト。家に最低3枚。これ常識。僕は、若い頃、パブロのライヴは2回とも行った。これ超自慢です。
 今週末、パブロの息子(お父上は1999年に亡くなられている)のアディス・パブロが来日します。名義は、SUNS OF DUB。西から東へ5都市でツアーを開催します。東京では、こだま和文さんが出演します。その低音で、台風なんか吹っ飛ばして。

<東京公演概要>

liquidroom presents
──PABLO & KODAMA──

オーガスタス・パブロ、そのダブの系譜を継ぎ、そして前進させる者たち

1973年のルーツ・ダブのクラシック中のクラシック『King Tubbys Meets Rockers Uptown』をはじめ、自身のメロディカ、そしてタビーによるミックスによってルーツ・ダブのスタイルを提示したオーガスタス・パブロ。自身のレーベル〈Rockers Internationl〉を中心に展開した、ストイックにラスタな、そのルーツ・スタイルは、1999年の没後も、ルーツ・ダブに限らず、さまざまなダ ブ/ベース・ミュージックに影響を与え続けている。その“系譜”を継ぐ”SUNS OF DUB、彼らがKATAにてライヴを行う。パブロの意志を引き継ぐメロディカ・マスター、ADDIS PABLOとセレクターのRAS JAMMYによるプロジェクト。〈Rockers Internationl〉を引き継ぎ、さらにはこれまでにディプロ率いるMajor LazerやToddla Tといった新世代のデジタル・ダンスホール系のアーティストとも共演するなど、現存のベース・ミュージックとの邂逅など、新たなスタイルの創出に余念がない。さらには、MUTE BEAT時代の名曲"Still Echo"にて、オーガスタス・パブロとの共演も果たし現在も日本のレゲエ・ダブ・シーンを牽引するトランペッター、こだま和文、そして“Apach”のカヴァー7インチをリリースしたばかりのトロンボーン奏者、KEN KEN率いるKEN2D SPECIAL、とダブを新たな解釈で突き進める、2アーティストのライヴも行われる。

featuring live
SUNS OF DUB(ROCKERS INTERNATIONAL)
 ADDIS PABLO(SON OF AUGUSTUS PABLO MELODICA MASTER)
 RAS JAMMY(ROCKERS INTERNATIONAL SELECTA)
feat. JAH BAMI
こだま和文 from DUB STATION
KEN2D SPECIAL(Reality Bites Recordings)

dj
Q a.k.a. INSIDEMAN(GRASSROOTS)
Yabby
SEIJI BIGBIRD/LITTLE TEMPO

2014.10.13 monday/holiday
KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
open/start 16:00 close 21:00
adv.(9.13(sat) on sale!!)* 2,000yen door 2,500yen
*PIA[P code 243-948]、LAWSON[L code 74932]、e+、DISK UNION(取扱店選定中)、Lighthouse Records、LOS APSON?、LIQUIDROOM

info LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net/

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▼SUNS OF DUB(ROCKERS INTERNATIONAL, Kingston, Jamaica)
ADDIS PABLO[Melodica], RAS JAMMY[Selecta]

ジャマイカの若獅子、アディス・パブロは99年に44歳の若さで亡くなったルーツ・ロック・レゲエ/ダブ・プロデューサー、メロディカ奏者の父、オーガスタス・パブロのスピリチュアルな音楽を21世紀に継承、発展させる新世代アーティストである。89年生まれのアディスはニュージャージーとジャマイカを行き来して過ごし、キーボードとメロディカを習得。2005年にはオーガスタス・パブロの追悼公演でステージに立ち、ロッカーズ・インターナショナルのヴェテラン・ミュージシャンや伝説的ギタリスト、アール・チナ・スミスと共演、これを機にソロ奏者としてダブ・レゲエの作曲を開始する。10年、アディスはトリニダードからジャマイカにやって来たラス・ジャミーと意気投合し、"サンズ・オブ・ダブ"として伝統的なロッカーズ・サウンドをニューエイジのフォーマットによるダブ・レゲエで提示するべく活動を共にする。11~12年の"For The Love Of Jah"、"13 Months in Zion"以降、100作以上をデジタル・リリース、またメジャー・レイザーのウォルシー・ファイアー、クロニックス、プロトジェイ、クライヴ・チン、マイキー・ジェネラル等、幅広いコラボレーションを展開している。13年には初のヴァイナル・レコード"Selassie Souljahz In Dub"を発表、ヨーロッパ・ツアーを成功させ、英BBCのデヴィッド・ロディガンの番組では「キング・タビー、オーガスタス・パブロ以来のベスト・ダブ・レコードの1枚」と評される。14年にはオランダのJahsolidrockからアディス・パブロ名義の1stアルバム『IN MY FATHERS HOUSE』がリリースされ、北米、ヨーロッパ各国のフェスティヴァル出演で賞賛を浴びている。サンズ・オブ・ダブはダブのニューウェイヴ、ドラム&ベース、ダブステップ、トラップ、ハウス等のクラブミュージックとの触媒として貢献する、ロッカーズ・インターナショナルの新世代である。
https://sunsofdub.com/
https://soundcloud.com/sunsofdub
https://www.facebook.com/sunsofdub
https://www.facebook.com/sunsofdub

▼こだま和文 from DUB STATION

1981年、ライブでダブを演奏する日本初のダブバンド「MUTE BEAT」結成。通算7枚のアルバムを発表。1990年からソロ活動を始める。ファースト・ソロアルバム「QUIET REGGAE」から2003年発表の「A SILENT PRAYER」まで、映画音楽やベスト盤を含め通算8枚のアルバムを発表。2005年にはKODAMA AND THE DUB STATION BANDとして 「IN THE STUDIO 」、2006年には「MORE」を発表している。プロデューサーとしての活動では、FISHMANSの1stアルバム「チャッピー・ドント・クライ」等で知られる。また、DJ KRUSH、UA、EGO-WRAPPIN’、LEE PERRY、RICO RODRIGUES等、国内外のアーティストとの共演、共作曲も多い。現在、ターン・テーブルDJをバックにした、ヒップホップ・サウンドシステム型のライブを中心に活動してしている。また水彩画、版画など、絵を描くアーティストでもある。著述家としても「スティル エコー」(1993)、「ノート・その日その日」(1996)、「空をあおいで」(2010)「いつの日かダブトランペッターと呼ばれるようになった」(2014)がある。

▼KEN2D SPECIAL(Reality Bites Recordings)
TRIAL PRODUCTIONのトロンボーン兼MCを務めるKEN KEN(トロンボーン&MC)によるソロDUBプロジェクトとしてスタート。現在はICHIHASHI DUBWISE(DUB mix)、Gulliver(guitar)の3人編成で活動中!BEASTIE BOYSからの影響を独自にREGGAE DUBにトランスフォーム!!!??したサウンドは、DUCK SOUP PRODUCTIONS、PART2STYLEから数々のアナログ7インチをリリースし、そのほとんどは即完売し入手困難なアイテム多数。2008年にはPART2STYLEから初のアルバム『Reality Bites』をリリースしイギリス国営放送BBCの番組など複数で紹介され、有名誌"WIRE"にレビューが載るなど注目を集めた。2013年自らのセルフ・レーベル<Reality Bites Recordings>を立ち上げ7枚目の7インチ・シングル「I Fought The Law」をリリース、あのDon LettsもBBCで即座にプレイ!前代未聞のド・オリジナル解釈で驚きのカバー曲を連発してるKEN2D SPECIALですが、今年2014年9月には8枚目の7インチEP、APACHEをリリース、こちらもまたKEN2D節炸裂してます!要チェック!!!!
https://m.facebook.com/profile.php?id=503540573038521&_rdr

▼Q a.k.a. INSIDEMAN(GRASSROOTS)
東京・東高円寺の桃源郷レゲエ・バーNATURAL MYSTIC育ち。レコードショップWAVEにてバイヤー経験の後に、NATURAL MYSTIC閉店後の97年同所にてGRASSROOTSをオープンする。「MUSIC LOVERS ONLY」を掲げ、バーであってバーでない、クラブであってクラブでない、人間交差点音楽酒場代表となる。INSIDEMAN名義でのMIX-CDは異才フィメール集団WAG.より『YGKG』、 POSSE KUTから『DEAR』、地下最重要レーベルBlack Smokerより『Back In The Dayz』などリリースしている。
https://insideman-q.blogspot.jp/
https://www.grassrootstribe.com/


interview with Tofubeats - ele-king

 この数年、若いアーティストに接してしばしば感じるのは、とにかくきちんと自分たちのことを説明する、ということだ。そして、そう感じる相手はたいてい25歳前後の人びとだったりする。乱暴な世代論を振り回すようで恐縮だが、彼らのことを「プレゼン世代」と呼んでみてもいいだろうか? これは三田格さんがずいぶん前にふと口にされた言葉で、どんな意味でどんな対象を指すものだったかは覚えていない。けれど、こちらのインタヴューや問いかけに対して「べつに……」と靴を見つめることもなく、「言うことはない、ただ感じてくれ」とそっくり返ったりもしない、むしろエントリーシートに書き込むような慎重さと戦略性でもって回答する、ある世代のアーティストたちには、そうした呼び方を当てはめてみたくなる。村上隆『芸術闘争論』ではないけれども、音や作品を神秘化しないできちんと説明していかなければ外に伝わらないという感覚が、はじめから骨身に沁みているとでも言おうか。あるいは、調子のよかった頃の日本の空気にかすりもしていない年齢の人たちにとっては、そうしたことは不況や世知辛さと結びついたひとつの倫理観として内面化されているのかもしれない。説明せずにわかってもらおうだなんて、貴様(=自分)何様だ──「プレゼン」とは、そんなことでは生きていけないぞという、したたかさと謙虚さのあらわれであるようにさえ思われる。


Tofubeats
First Album

ワーナーミュージック・ジャパン

J-PopHouseHip-Hop

初回限定盤
Tower Amazon


通常盤
Tower Amazon

 筆者にとってtofubeatsは、音楽のフィールドにおいて、そんな「プレゼン」をもっともシャープに、鮮やかに、また自身を被検体のようにして提示しているアーティストのひとりだ。彼が「説明」するのはなにも彼自身の音楽についてばかりではない。自身の出自でもある〈マルチネ・レコーズ〉などネット・レーベル界隈の動向、そして国内に限らないインターネット・アンダーグラウンドのトレンド、ハウスやテクノ、Jポップへの愛、音楽産業の現在と行く末、地元としての、あるいはニュータウンという特殊性を帯びた場所としての神戸、対東京というスタンス、80年代や90年代カルチャーへの憧憬の感覚……彼が「インターネット時代の寵児」と呼ばれるのは、ネット云々というよりも、ポスト・インターネットの情報空間において物事を効率よく整理・翻訳し、適材を適所にはめてプロダクトを生み出すことができるというプロデューサーとしての才を指してだろう。さまざまな文脈を縫い、串刺しながら、彼の饒舌な「説明」は、音やパフォーマンスとなり、ひいてはある世代やカルチャー自体を翻訳するものとなった。そのふるまいは、プレゼンせずにはやっていけない世知辛い時代を生きる20代にとって頼もしく輝かしいロールモデルとなろうし、彼らの感覚やその生活の悲喜こもごもを容れられる器であったからこそ、「水星」はスマッシュ・ヒットとなったのではないか。

 いま彼の饒舌とプレゼンは、ようやくメジャー・デビュー・アルバムというかたちでさらに大きなフィールドに手をかけようとしている。その名も「First Album」。以下読んでいただければわかるように、tofubeatsの「説明」は、ドメスティックな範囲を越えて、Jポップ=日本を世界へ伝えていくという大きな目標へ向かって一歩距離をつめた。彼にいま見えているものはどんなものだろうか。意外にもちょっとしたエクスキューズからはじまったこのインタヴューには、しゃべらないtofubeats──音楽をつくり聴くこそがただひとつの喜びだというtofubeatsの姿と、そんな彼に音楽についてしゃべらせてしまう状況の不幸さとを垣間見る思いもする。けれども不幸と言ってはすべてが不幸で終わってしまう。「景気がいいって、いいじゃないですか」と言うtofubeatsは、日本のプレゼンを通してそんな空気とたたかうつもりなのかもしれない。「音楽サイコー!」という偽らざる本心をあえて冒頭で宣言し、それを空転させないために、みずからツモって上がる覚悟の勝負を彼は仕掛ける。『First Album』はその遠大な取り組みの「first」だ。そして、それが世間や業界に対すると同時に「人生を進めるため」の勝負であり、音楽がサイコーであることを証明するための自らへの勝負でもあることに、心を動かされる。

■tofubeats / トーフビーツ
1990年生まれ。神戸で活動するトラックメイカー/DJ。〈Maltine Records〉などのインターネット・レーベルの盛り上がりや、その周辺に浮上してきたシーンをはやくから象徴し、インディでありながら「水星 feat.オノマトペ大臣」というスマッシュ・ヒットを生んだ。
くるりをはじめとしたさまざまなアーティストのリミックスや、アイドル、CM等への楽曲提供などプロデューサーとして活躍の場を広げる他方、数多くのフェスやイヴェントにも出演、2013年にはアルバム『lost decade』をリリースする。同年〈ワーナーミュージック・ジャパン〉とサインし、森高千里らをゲストに迎えたEP「Don't Stop The Music」、藤井隆を迎えた「ディスコの神様 feat.藤井隆」といった話題盤を経て、2014年10月、メジャー・ファースト・フルとなる『First Album』を発表。先のふたりの他、新井ひとみ(東京女子流)、okadada、の子(神聖かまってちゃん)、PES(RIP SLYME)、BONNIE PINK、LIZ(MAD DECENT)、lyrical schoolら豪華なゲスト・アーティストを招いている。


やっぱりポップになったんだなあと思いますね。

それこそ『lost decade』をリリースするころ、tofubeatsって人は、メジャーという場所にするっともぐりこんで、古くなった業界の論理とかルールを自分たちがおもしろいように書き換えようとしているんだなってふうに見えました。そういうモチヴェーションとか野心をビリビリと放出していましたよね。

TB:はい、はい。

それで、今回満を持してメジャーからのファースト・アルバム──その名も『ファースト・アルバム』がリリースされるわけですけども、ここに至って、何かを書き換えている手ごたえみたいなものはありますか?

TB:うーん、書き換えたところもあれば、折れたところもあるアルバムだというか。「折れる」というか、順応した部分もあるなと感じますね。前のアルバムは、スキットが入って17曲でフルだったんですけど、今回はスキットがなくて18曲、聴き味が重たくないものになっていると思います。けっして明るいアルバムではないんですけど、するりと聴いてもらえるんじゃないかなと。それを考えると、やっぱりポップになったんだなあと思いますね。数字のこととかを考えたんだなー、みたいな。

ああ、なるほど。

TB:そこからバランスを取るために、後半のような流れがあるかなと思いました。

ご自身のことなのに、言い回しからもう、すごく客観的な見方をされてますね。

TB:いや、すごく短期間でアルバムを制作しなければならなくて。そういう事情もあって、シングルにぶつけるアルバムの曲というのは、ほんとに1ヵ月くらいでガーっと作ることになったんですよ。すごくタイトでしたね。

それこそ、アルバムという単位はどうなんですか? tofubeatsはシングルで問題提起してきたアーティストだと思いますし、それこそツイッターのタイムラインで音楽を聴いていくような世代でもありますよね。アルバムにすると、問題を出し終わったものを集めるような感じがありませんか?

TB:そうですね、だから、本当は全部アルバム・ヴァージョンにしたかったんです。それが時間の関係でどうしても無理だったというのが正直なところですね。

アルバム・ヴァージョンにするというのは、たとえばどんな感じになります?

TB:“おしえて検索”とかって、もともとそういうふうにアルバム・ヴァージョンをつくる予定で、サビ前にジュークっぽいパートがあったりとかシーケンスが入ったりとか、いくつかの要素を忍び込ませてあったんですよ。で、アルバムになるとそこを全部808に変えたりとかできたなーと……。そういうアイディアはいくつかあったんですよね。それをかたちにする時間が足りなかったので、それならばもっとちゃんと新しい曲を入れたほうがいいなって思いました。


前はもっと、3~4ヵ月あったんで、「自分なくし」みたいなことを最後にできたんですよ。

でも、グッとパーソナルな、小品みたいな曲も入ったんじゃないですか?

TB:そうですね、時間が本当になかったから、自分を切り売りしていく方向になっていくというか……。

ははは。

TB:前はもっと、3~4ヵ月あったんで、「自分なくし」みたいなことを最後にできたんですよ。だから自分でも聴けるアルバムになっているんですけどね。

自分なくし! では“ひとり”みたいな曲は?

TB:もっと推敲したかったなというのはありますね。

へえー。ロックやフォークとの差というところかもしれないですけど、ある種の表現領域においてはパーソナルなものがゆるされるというか、自分の切り売りってけっして悪いことではないですよね?

TB:まあ、そうっすね。だから『First Love』(宇多田ヒカル)とかをすげえ聴いて、「パーソナルなこととか言ってもまあいっかー!」みたいな。……そのような気持ちになったきっかけが『First Love』の15周年記念盤(2014年発売)ですね。

おっと! なるほど、『First Love』と『ファースト・アルバム』。

TB:そのエディションで宇多田さんの手書きの歌詞とか見て、「まあ、これが日本でいちばん売れたんだったら、俺も(パーソナルな曲づくりを)やっちゃっていいか!」と。

ははっ。だから、なぜそこでそんなエクスキューズが必要なんですか(笑)。そういうところがすごくおもしろいですけれどもね。では、“ひとり”がパーソナルな曲だといっても、一周回った視点があるわけですね。

TB:これでもちゃんと、(自分のことを)言わないようにしてるんですよ。自分のことを書いてしまうと他人が共感できなくなるというんでしょうか……そういう目線は必要じゃないですか? 「自分のことのように書かなければなりません」というのが基本にあるにせよ。
 あと、思い入れがある曲は人前でやりにくいというか。なぜ僕が“No.1”をライヴであんなにやるかというと、思い入れがぜんぜんないからなんですよね。曲のテクノロジーとしてはすごく好きなんですけど。ある意味では健全なんだと思いますね。そういう曲は自分でも扱いやすいし、外に広まっても自分が傷つかない。

その「健全」の線引きが興味深いですね。わたしくらいの世代だと──まあ、一概に世代の問題と括れないですが、いわゆるロック、オルタナティヴが入口だったりすると、音楽が生々しい一人称と結びつくことにとくに違和感もないというか。そこを忌避する感覚に、やっぱりちょっと差を感じますね。

TB:なんか、そういうふうに思っちゃうんですよね。

なるほどー。


Jポップって、狭い点に絞って作っていくほど、最終的に大きな容れ物になるというか、いろんな人に受け入れられるものになっていくというか。

TB:あと、自分の作った曲ならば、どんなにクソな曲だったとしても、それを作っていたときのことを思い出すというか。だから、そういう個人性みたいなものはなにも意識しなくても出てくるから、あとで薄めるくらいがちょうどいいという気もするんです。
 実際、自分の中でも成功した曲というのは“水星”とか“No.1”とかなんですけど、あれは何にも考えないで作った曲でもあるんですよね。“LOST DECADE”とか思い入れがあるけど、だからこそライヴでもやんないし。

野田:逆にファンは“水星”みたいな曲に思い入れがあると思うんだよね。

TB:そうそう、だから「容れ物」になるってことなんですよね。空っぽの物を出すというのは。Jポップって、狭い点に絞って作っていくほど、最終的に大きな容れ物になるというか、いろんな人に受け入れられるものになっていくというか。「思い」みたいなものは、意識しなくても自分が作ったものであるかぎりは入ってしまうものだとも思いますし。

野田:たとえば「生々しい自分をさらけ出す」というような、ちょっと上の世代がやってきたことへのアンチ・テーゼだったりはしない?

TB:どうなんですかね? 好きなアーティストはあまりそういう感じではないかもしれないですね。BONNIE PINKさんとかすごく好きなんですけど、彼女がはたして自分のことをそんなに歌っているのかというと……わからないですからね。
 でもべつに自分をさらけ出すというような表現が嫌なわけではぜんぜんないです。むしろ、最近のアイドルとかの手法に対して思うところが大きいですね。「こんなに大変でした!」みたいに説明するのとかって、そんなに品のいいやり方じゃないなというか。まあまさにいまこのインタヴューがそうだ!ってのもあるんですが(笑)。

ストーリーはもとからあるものじゃないですか。

 最近そういう音楽が増えている気はしますかね。ストーリーを意図的に作ろうとしている。ストーリーはもとからあるものじゃないですか。たとえば僕だったら「インターネットから出てきました」「インターネットに救われました」みたいな(笑)。それは本当の話ではあるけど、自分から吹聴するものでもないというか、そういう部分での品のよさとか塩梅っていうのはあるじゃないですか。

たしかに、利用しているわけではないですよね。

TB:最近だと「インターネット時代の寵児」みたいによく書かれて、ダルいなーみたいな(笑)。

野田:はははは! それは書かれるよね。

TB:いや、書いてもいいですし間違ってるわけでもないですけど──新幹線がある時代に生まれたから東京まで来れる、みたいなもので、インターネットがあったからデビューできた、というところはありますからね。かといって僕はべつに〈マルチネ〉のスポークスマンでもないし。〈マルチネ〉だけがネットレーベルというわけでもない。

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冒頭で「音楽サイコー」とかって言ってますけど、あれは言わせてるんですよね、台本書いて。


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「インターネット時代の寵児」という言い方もそうなんですけど、トーフさんたちは、インターネットのなかにもストリートが存在してるんだということをいちはやく象徴したアーティストでもありますよね。そんな人たちにとってクラブとかハコでのライヴとか、具体的な場所を持ったイヴェントってどういうものだったんですか?

TB:状況のひとつっていうか、自分にとってはそこまで大きなものではないですね。家で音楽を聴く、電車で音楽を聴く、そういう中にクラブで音楽を聴くという状況もあるっていうような。自分の性格としては家が好きだし、家で聴くのが好きっていうところがあるんですけどね。関西ではもうDJほとんどやってないし。

野田:Seihoくんとやったりしてたじゃない?

TB:あれは1回だけですよ(昨年dancinthruthenights、sugar's campaign、PR0P0SEの3組で行われたイヴェント〈fashion show〉)。夕方の時間帯にやったやつで、そういうのもやっぱり楽しいんですけど……。
 最近は「音楽はライヴがいいよね」ってノリがありますよね。あれってライヴがいいというよりも、みんながiTunesとかでいろんなものを家で聴けるようになったから相対的にいいって感じられるだけであって、CDの売り上げが下がってライヴの質が上がるというようなことではぜんぜんないと思うんですよ。それも環境のひとつってことです。クラブに行ったらクラブの聴き方があるし、自分の曲でもクラブでかけるものはアレンジがちがう。

なるほど。『lost decade』も今作もそうですけど、パーティが終わるところからはじまりますよね。「バイバイ、ありがとう」っていう。あれは何か意図があるんですか?

TB:前回が終わりからはじまって、今回も終わりからはじめたかったんですけど、かつ外からはじめたくって。

外?

TB:前回は「わー」ってパーティが終わって、部屋で僕が「ふぅ……」って小芝居して、ってカットになるんですけど、今回は某野外フェスのときの録音なんですよ。で、そのまま曲に入っていくんです。

はい、はい。

TB:だから、家を出たってことを暗に示しているというか。……まあ、自分だけにわかることなんですけど。

あ、そうなんですね。

TB:デビューしたぞ、と。

なるほどー。

TB:だから、前回と同じなんですけど、家は出たぞと。

へえー。磯部涼さんのご著書を思い浮かべたりしたんですけどね、「音楽が終わって、人生が始まる」って。

TB:ああ、そういう気持ちもあるかもしれません。あとは、あそこで「音楽サイコー」とかって言ってますけど、あれは言わせてるんですよね、台本書いて。

おおっ、なるほど。私はあの「音楽サイコー」についてぜひ訊きたかったんです。

TB:このアルバムありきでやってますね。「こんなふうに言ってね」ってライヴ前に伝えて。

あの「音楽サイコー」ってなんなんですか?

TB:もう、メジャー行ってもやりたいことはそこっていうか。音楽がやりたくて、それをやるために最善の策は何かって考えて、いまはひとまずメジャーに行って、アルバムを出してみたりしているわけなんですけど、そういうことをわかってほしいというか。
 たとえば、僕は森高(千里)さんといっしょにやって、この曲を森高さんに食われたとは思ってないし、藤井(隆)さんもしかりで、僭越ながらそういうメジャーな仕事を通して音楽への入り口のひとつを作れたらって思います。あとは、いままで僕の音楽を聴いてきてくれた人たちも裏切りたくないとも思いますし。後半のインスト群とかオカダダさんとの曲とかもそうですね。大人が絡むことで煩雑さが増したりすることはあるんですけど、そういう中で最善のことをやってるよってところを見せたい。

うん、うん。

TB:1ヵ月半でアルバム作れっていうのも、無茶な話じゃないですか。もっと時間をかけたかったというのは断言しておきたいです。……でも、大変だったぶん、前のアルバムより直感的なものにはなってるかなと思いますね。前のはなんか、病気のときに作ってるなって感じがするんですよね(笑)。今回は畳み掛けるようなところがあります。昔の曲も入っているんですけど、限られた中ではよくやったほうなんじゃないかと。


シングルに毎回すごいカロリーを使ってるんですよ。“Don't Stop The Music”とか“ディスコの神様”とかは、すごく個人的にもプレッシャーがかかっていたんです。

野田:前のアルバムから1年以上経つから、もっとはやく出してもよかったんじゃないかって気もするけどね。

TB:そうですね。でもシングルに毎回すごいカロリーを使ってるんですよ。“Don't Stop The Music”とか“ディスコの神様”とかは、芸能の世界も絡むという意味でこれまで作ったことないものでしたし、何よりすごく個人的にプレッシャーがかかっていたんです。

野田:いつも自信たっぷりみたいに見えるけどねー。

TB:やっぱりメジャー・デビューということもあるし、そのわりに数字的にそれほど跳ね返りがあったわけでもなかったり。そんななかで「もうどうでもいいやー」って感じで“CAND\\\LAND”みたいな曲ができたのはよかったですけどね。あんまり気にしていてもしょうがないなって。

でも“CAND\\\LAND”って大事な曲ですよね。

TB:そうなんですよね。

どっちかというと、「音楽業界の仕組みを変えてやる」っていうよりも、「お茶の間にとんでもないものを流してやる」っていう方向で。

TB:そうそう(笑)。


パラパラとトリル(Trill)っていうのはやりたくて。

〈マッド・ディセント(Mad Decent)〉とパラパラ。

TB:2年前からパラパラとトリル(Trill)っていうのはやりたくて。トリルは作れたんですけど、パラパラはできなくて、勉強した結果やっと生まれたんですよ。幸いヴォーカルもリズムも間に合って、アルバムに入ることになりました。今回作った中でいちばんうれしかった曲ですね。締切の2日前にトラックダウン用のヴォーカル・データが届いて……それがイヴェントの会場の楽屋だったんですけど(〈音霊OTODAMA SEA STUDIO〉@鎌倉由比ヶ浜)、その場でトラックダウンして、その日にかけました(笑)。

へえー。アルバムの腰の位置で、重要な役割をもった曲だと思います。

TB:ていうかこの曲がなかったら、アルバムのイメージがだいぶ変わっちゃうんじゃないですか? だから相当慌てて、急いで入れてよかったです。

Jポップ革命であると同時に、Jポップによって外を変えるんだっていうような、tofubeatsの意志みたいなものが通ってますね。

TB:どっちかというとその後者を目指していて、「Jポップというコンテクストを説明するチャンスを与えてもらっている」と思ってますね。Jポップってめちゃくちゃいいものだって思うんですよ。BONNIEさんとかも世界的に売れるはずの人だと思っているんですけど、まだ誰もそれを説明できていなくて……というか、ピチカート(・ファイヴ)とかは、それを説明できていたからそのままKCRWとかにも出ていたわけで、そういうことがなんでいまないんだろうなって感じますね。彼らがKCRWの公開収録で日本語のまま歌を歌っていることがけっこう衝撃で。

アメリカ人とか海外の人に向けてその人たち用の曲を作るんじゃなくて、あくまで自分たちが日本人であるということを通していかないと。醤油を売るみたいな感じで、そのままを海外に売るというか。

 ああいうのを見て勇気づけられるところがあるし、宇多田さんがUtada名義でそこまでセールスを伸ばせなかったけど、アメリカ人とか海外の人に向けてその人たち用の曲を作るんじゃなくて、あくまで自分たちが日本人であるということを通していかないと。醤油を売るみたいな感じで、そのままを海外に売るというか、そういうことがちゃんとできたらいいなっていうのはずっと思っています。だから、BBCのレディオ1に出られたことで、それをちょっと証明できたかなと思います。好きなことをやっていれば大丈夫なんだなって思えました。Jポップから影響を受けたことを恥ずかしがらずにいていいんだと。

野田:なるほどね。ピチカートは本当に人気があったけど、半分オリエンタリズムとして受けてたところもあるからね。

TB:それでもいいんです。僕がR・ケリーを聴いていいなと思うように、R・ケリーが僕のを聴いていいなと思うことだってあると思ってるんですよ。

野田:日本人が海外でウケるときのパターンってふたつあると思っていて、三島由紀夫として売れるか、村上春樹として売れるか。

TB:三島由紀夫的な見方をされてもオッケーですよ。

野田:なるほどね(笑)。

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Jポップって、日本のポップスじゃなくて「J-POP」っていうひとつのジャンルなんだってことなんです。

TB:そもそも(ボーエン)bo enとかの話を聞いていると、Jポップっていうのは何かしら海外にないものをもっているんだろうなあと思わせられるんですよね。ボーエンなんて、曲をアップするときに「J-POP」ってタグをつけるわけですよ。ぜんぜんJポップじゃねえじゃんって思うんですけど、つまりはJポップって、日本のポップスじゃなくて「J-POP」っていうひとつのジャンルなんだってことなんです。
 宇多田ヒカルだってそうですよ。あれはR&Bじゃないんですっていう。

野田:まあ、R&Bだけどね。

TB:いやいや、ちがうんですよ。それっぽくなってますけど、あんなメロディであんなアレンジでっていうのはありえない。日本語で、プロデューサーにもあのメンツが集まらないとあんなふうにはならないってところがありますよ。

野田:いまフランスでJハウスっていうか、日本の90年代初頭のハウスを集めまくっているコレクターが増えているみたいだけどね。そこでは、たとえば宇多田ヒカルとかもすごく好んでかけられたりしている。でもその理由の一つはとても単純で、日本語で歌われているのがたまらないっていうんだよ。

TB:そうなんですよね。母音に合わせて作られる音楽の感じとか、そういうものがすごくいいと思うんですよね。

野田:これだけいろんな音楽がアーカイヴされているのに、外国人からみると日本はブラックボックスになっている。

TB:だからレッド・ブルだったか〈BOILER ROOM〉だったか、日本のレコードだけを1時間えんえん聴くっていう企画をやってましたよね。日本の音楽ばっかりを集めているコレクターの家で、まったく曲名とかも明かさないまま日本の音楽をかけつづけるんですよ。僕らは日本語もわかるし、「ああ、じゃがたらかかってるわー」とかって感じなんですけど、海外からしたらマジでブラックボックスで、コレクターは曲名すら出そうとしないし、レーベルだけ見せて、でもお前ら読めへんやろ日本語、みたいな感じでドヤ顔なんです。

野田:なるほどねー。


tomadが言っている言葉ですごく好きなのが、「動かずに旅をせよ」っていうもので。自分にとっては、音楽が、Jポップが、動かずに旅をするためにできることなので……。

日本が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とかの頃とはちがうかたちでおもしろがられたり参照し直されたりするタイミングなのかもしれませんが、その機運にパッケージを乗せてやろうというようなもくろみがあったりしますか?

TB:tomadが言っている言葉ですごく好きなのが、「動かずに旅をせよ」っていうもので、BBCとかだって、いかに神戸から動かずに世界に音を届けるかっていうところで得た結果のひとつなんですよ。自分にとっては、音楽が、Jポップが、動かずに旅をするためにできることなので……。

野田:“インターネット時代の寵児”じゃない(笑)。

TB:いやいや(笑)、tomadとか師匠がいての僕なんで。

野田:あ、師匠って位置づけなの?

TB:や、もうなんていうか──

社長?

TB:あ、社長はありますけど、なんていうんだろう、困ったときに電話する人ではありますね。

ああー。

TB:人生に悩んだときに電話する人がふたりいて、──あ、3人かな、まずはマネージャーの杉生さん。あと、tomad、オカダダです。

杉生:全員ロクでもないじゃねーか。

TB:うん。あと、全員無職。

杉生:俺は無職じゃないし!

(tofu注:全員マネージャー、社長業とDJとして働いていますのでこれはジョークです。悪しからず。)

(一同笑)


やっぱりいい曲を作って出すことがうれしくてやっているわけですからね。バンドキャンプでこれまでにリリースしてきた曲って、僕いまだにすごく好きで。

まあ、そんなふうに「インターネットつないでヴァカンス」とか「wi-fiあったらどこでもいい」(“#eyezonu”)みたいなことをいちはやく体現してこられたわけですけれども、一方で、いまは状況がそれに追いついちゃってるところもあると思うんですね。そのなかで次にtofubeatsはどんな存在になっていくんですかね。

TB:ふつうにもっとミュージシャンになりたいというのはありますね。いまは、言ってるばっかりのヤツですからね(笑)。

野田:ははは!

いやいや、それが輝いてますから。

TB:言ってることとかスタンスとか、そんなんばっかりですから(笑)。でも。やっぱりいい曲を作って出すことがうれしくてやっているわけですからね。バンドキャンプでこれまでにリリースしてきた曲って、僕いまだにすごく好きで。ああいうときの気持ちをメジャーでもうちょっと出せないかなって思いますね。
 今回だと“衣替え”とかそれにちょっと近いです。

うんうん!

TB:でもBONNIEさんを呼ぶことによってちょっとコマーシャルになっていて、バランスがとれたかなって思います。ほんとに、音楽を作って人に聴いてもらうっていうのが好きなので、そのときどきでそれに適した状況に自分をもっていくってことですかね。


ゲームよりも人生を進めたい、って。

なるほどなあ。音楽っていうところでは、トーフさんにひとつ切ない姿勢みたいなものを感じるんですよ。冒頭の「音楽サイコー!」の話に戻りますけどね、あのちょっと薄っぺらなパーティ感とか、あるいは「音楽」に対する執拗な自己言及──「朝が来るまで終わる事の無いダンスを」とかもそうですけど、本当に音楽の真ん中で十全にそれを味わいきっている人は、そんなに音楽音楽って言わない気がするんですよ。じつは音楽に対して距離がある、みたいな。そこになにか非常に切実で切ない、リアルで生々しいものがあるように感じるんです。

TB:ああ……、でも音楽くらいしか本当に楽しいことがないというか。それ以外に楽しいことなんてあんのか、みたいな。

野田:じゃあ、けっこう素直な言葉なんだ?

TB:そうっすね、ゲームよりも人生を進めたい(※)って書いてますけど、ヒップホップってよくゲームってふうにたとえたりするじゃないですか。僕はそんなにおっきい枠では楽しめへんというか、そんな俯瞰できひんみたいなところがあるんです。音楽をやっていてそれをゲームだなんてふうには言えないです。

※「ゲームに良く例えるけど/本当は俺は人生を進めたい」(“20140803”)

ああ──

TB:だって音楽しかやったことがないし、それこそ中1のころから曲を作っていて。カヴァーとかコピー・バンドとかもしたことがなくて、でもそれのおかげで作った音楽をインターネットで他人に褒めてもらったりとか、それこそtomadとかとも友だちになれて、いまのこの状況があって……。音楽を作ったはいいけど、それを乗せてくれる電車のようなインターネットがなかったら、すべてがないですからね。

そうかもしれないですね。

TB:でも音楽を「流す」って言うように、音楽は流れもんで、つまりは無くなるものでもありますよね。それから、自分の好きなものが変わっていってしまうという、いい意味でも悪い意味でも切ないようなところがある。
 ドラマの最終回とかってむやみやたらによかったりするじゃないですか。でもJポップってそういうことのような気もするというか。そのために作られている音楽でもあるし。

最終回にJポップがめちゃくちゃ効いてくるっていうのは、ありますよね。

TB:軽薄であるがゆえによいみたいなところがありますよね。というか、そういうJポップが好きなのかな。でも軽薄であることがかなしいというような切なさもある……。

いい、切ない回答です。そんなに音楽が好きな人がなぜこんなに「音楽音楽」って言わなきゃいけないのか。

TB:だからそれは、さっき言ったように「説明しなきゃわかってもらえない」っていう。

野田:なるほどね。

音楽が昔ほど若者カルチャーの超真ん中ってわけじゃなかったりもしますしね。

TB:それは、ありますね。

野田:むしろ「インターネット」ってキーワードのほうが取り沙汰されてしまったりするしね。

そんなところに対する、「こんなに音楽がただ好きなのになあ」っていう感じが、ヒリヒリくるんですよ。ペラっとした「音楽サイコー」から。

TB:そうかもしれないです。結局、音楽を作っても音楽的なバックがあんまりないというか。先日初めてバンドで自分の音楽をやってもらったんですけど、あれって自分への音楽的なバックがあるものだなって思いますね。あとは音楽をやることでお金をもらって生活がよくなって機材を買ったりすることができるとか、それも音楽によるバックだと思います。
 でもたとえば自分の音楽が売れて、自分の顔をさして「めんどくさい」とか言われたりするようになったとしたら、それははたして音楽で得しているのか。そういう芸能的な部分での葛藤もあるにはありますね。メジャーでもし自分がうまくいくことがあれば、ちやほやされたいだけで音楽をやっている人と自分とは何かがちがうんだっていうことを証明したいなとは思いますね。──そういうのを否定したくはないですし、証明もまったくできていないんですけれども。

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藤井さんは本当に音楽が好きで、ただの音楽オタクで。みんなに知ってもらいたいなという部分もあります。僭越ですけれども。


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いやいや、藤井隆さんとの曲(“ディスコの神様”)なんて、まさにそういうところでつながっているんじゃないですか?

TB:そう、あの人も本っ当に音楽が好きな人なんですよね。

最初は、なにかコンセプチュアルに藤井隆というアイコンが引っぱり出されてきているのかなと思ったんですよ。tofubeatsだし。でも曲を聴いて実際に感じるのは、音楽つながりなんだなあというような。

TB:そうそう、藤井さんはすごくジョディ・ワトリーが好きで、しかも高校生のときに〈ブルーノート〉に観にいっていたりとかしてるわけなんですよ。前もスタジオで、「96年にオランダで買ったレコードが思い出せないんです。“エターナリー”って言ってる……」とかって突然言い出して、何を言ってるんだろうと思っていたんですけど、実際に探したらその曲があったりしたんですよね。本当に音楽が好きで、ただの音楽オタクで。そういうことをインタヴューとかの端々から感じていたからこそ、この人にオファーしようって思ったんです。

そういうキラキラとしたマジックが、メジャーというステージでは可能になるんだなというところはありますよね。

TB:それに、藤井さんがこんなに音楽が好きなんだっていうことを、これを通じてみんなに知ってもらいたいなという部分もあります。僭越ですけれども。

なるほど。すごく素敵な話ですよ。それに、遊び場がひとつ増えた、広がったというところもあるんじゃないですか?

TB:いやー……。そうですね、ほんとにBONNIEさんとか、藤井さんとか、〈ワーナー〉に来ないとできないことではあったので。

その一方で、ERAさんとかPUNPEEさんとか、前作のひとつのインディ感からは異なるものにもなっていると思いますが。

TB:それはでも、今度出るアナログとか、企画段階のリミックス盤とかには自分に近いところからブッキングしていて。
 とはいえ、アルバム自体はこのかたちでラッピングしておかないと、自分のやっていることがいっしょすぎてしまうし、そこはメジャーから出すということを意識しました。

野田:どんな人たちなの?

TB:BUSHMINDさん、STARRBURSTさん、(DJ・)HIGHSCHOOLさん、MASS-HOLEさん、ENDRUNさん、SH-BEATSさん、YOSHIMARLさんです。

野田:うわ、すごいね(笑)。


いっぱい曲が入っていれば、嫌な曲を消してもふつうのアルバムくらいの分量は残る。聴いている人が金額的に得なもの、というところでアルバムを考えています。

ところで、アルバムという単位についてもうちょっと掘り下げて訊いていいですか? いまは、タイムラインで1曲単位の消費、しかも1時間後に消えていてもおかしくないようなものを追ったりするわけじゃないですか。トーフさんはそういうところで生き生きと呼吸をしている人ですが、それに対してアルバムというのは、それこそ産業的に完成されたひとつのフォームでもありますよね。

TB:このアルバムについては、俺ならこう並べるってだけですけどね。あとは、いっぱい曲が入っていれば、嫌な曲を消してもふつうのアルバムくらいの分量は残る。このあたりの気持ちは『lost decade』のときと変わらないですね。聴いている人が金額的に得なもの、というところです。ただ、プレイリストありきでは作ってないですけどね。
 通常のメジャーのアルバムの作り方だったら、2曲めに自分のラップなんて絶対に入れずに“Don't Stop The Music”をもってくるわけですけれど、そういうことはやってないです。あと、CDで出しているのはあくまで〈ワーナー〉とサインしているからで、でもディスク2がついていて安い。

「安い」「お得」というのも、コンセプチュアルに仕組まれているように感じますね。

TB:でも、安いっていうのは会社の提案なんですよ。2枚組で2,400円って、頭おかしくなっちゃったのか? って思いました(笑)。

(一同笑)

真ん中にも思いきって4曲ほどインストが入っていたりするじゃないですか。

TB:あれはもう絶対に入れたくて。

“Populuxe”とかが好きです。

TB:あれは60年代のアメリカの、郊外開発のときのキーワードなんです。ニュータウンについていろいろ研究しているときにぶちあたった単語で、けっこう好きだったのでデモ曲のタイトルにしていたんですが、それをそのまま使いました。

どういう意味なんです?

TB:60年代に、郊外に一戸建てを買ってわりとリッチに暮らすっていうようなスタイルが流行って、そのころのひとつの価値観を表す言葉というか。ポップでデラックスっていうことなんです。成金というとまたちょっとニュアンスがちがいますけど。

ああ、なるほど。

TB:郊外での暮らしが、いわゆるサバーブっていう感じのものになっていって、レッチワースみたいな、田園都市の根幹を成す考え方と合流していくという。でも、曲に使用しているのは単純に単語が好きだからですね。曲自体はポリリズムがやりたかったというだけのものなんです。4拍子と5拍子の。菊地成孔とかもやってるから俺も、って。

野田:意識するの?

TB:いえ、意識するわけじゃないんですが。でもJAZZDOMMUNISTERSを聴いていて、本当に菊地成孔さんのラップはいいなあって思って。あのアルバム、僕はすごく好きで。というか菊地さんのラップが好きなんですよ。やっぱりラッパーってパーソナリティなんだなってことをヒリヒリ感じました。もう、そいつがおもしろいかどうかってのが大きいなって。

そういえば、これも素朴に気になっていたんですが、トーフさんって二次元カルチャー的な入口が意外にないですよね。アニメとか、あるいはニコニコ動画、ボカロみたいな文脈がない。

TB:それは意識的にやってますね。日本のものを世界に明け渡すにあたって、ニコ動にアップしていたら外国人は見ないので。

なるほど。言語の問題を措いても、特性ともいうべき独特の閉鎖性がありますよね。弾幕が流れて画像がブロックされますし(笑)。

TB:あとは、ボーカロイド周辺の雰囲気があまり自分の肌には合ってないみたいで。思っている以上にクローズドなものがあるのかなと思います。いってみれば、シカゴ・ハウスとかよりもずっとハードコアなんじゃないですか? 初音ミクを使わなきゃいけないっていうのは。


707って使わなきゃいけないものだったけど、そこからいろんな発明が生まれてきたわけじゃないですか。でも初音ミクはどう彼女を運用していくかみたいな部分が大きい気がします。

野田:なんで(笑)?

TB:いや、それこそいちばん病んでいたころのデトロイト・テクノくらい開いていないというか。

野田:909を使わなきゃいけない、っていう?

TB:キャラなわけだから、「初音ミクはこんなこと言わない」みたいな次元も生まれてきたりするわけですよね。アイディアで何かが入れ替わっていくのではなくて、キャラクターとしての閉鎖性とプラグインとしての機能の制限が複雑に絡み合っているみたいに見えて、自分からするとちょっと面倒くさいというか。そもそもキャラに思い入れがなければ参入しにくいですし。最終的にその閉じまくった複雑さが海外でパーンとウケたりもしてますが、自分には向いていないなって思いますね。
 707って使わなきゃいけないものだったけど、そこからいろんな発明が生まれてきたわけじゃないですか。でも初音ミクって、それを使って発明をしたりしようというものではない。どちらかというと、どう彼女を運用していくかみたいな部分が大きい気がします。

予算をかけて作れた時代の音楽が好きなんだなって自分で思います。そしてそういう人たちの音楽はブックオフにあるんです。

なるほど、では反対に、昔ながらでメガな受け皿について。単に個人的なルーツなのかもしれないんですけど、BONNIEさんだったり森高さんだったりって、「芸能」とか「テレビ」とかに象徴される種類の豊かさが反映されたものだと思うんですね。そのへんはわざわざフォーカスしたものなんですか?

TB:半分意識的で半分そうじゃないかもしれませんね。BONNIEさんとか、予算をかけて作れた時代の音楽が好きなんだなって自分で思います。そしてそういう人たちの音楽はブックオフにあるんです。

なるほど(笑)。

TB:だから僕が出会いやすかった。ということに尽きます。BONNIE PINKさんとか、1万円札を持っていけば全部かえる揃うと思います。言い方は最悪に聞こえるかもしれませんが。森高さんも全部ブックオフだし、藤井さんもそうだし、今回お呼びしているなかで、誰ひとりとしてリアルタイムで正規盤を買っている人はいないです。残念ながら。

(一同笑)

TB:だから今回はじめて還元ができるという言い方もできるかもしれないですね。

では、それなりに素直に自分の背景でもあるわけですよね。

TB:そうですね。あとは、景気がいいっていうのはいいなって思います。そんな時代の音楽に憧れている部分はありますね。

いかにお金をかけないかっていう工夫合戦が、ある種の音楽を進化させてきた側面もありますけどね。

TB:それもあると思います。でも、だからこそ「音楽、音楽」って言わなきゃいけないのかもしれない。

ああ、なるほど。

TB:ハイプなものではまったくなくなってますから。音楽は。

今日なんかは、テレビの収録もあったわけですよね。テレビ出演につながってくるというのは、トーフさんにとって大きいことですか?

TB:まあ、大きいことですねー。ありがたいです。営業の方とかも、こんなやつをテレビに出させてくれて。でも一方で、それで数が動くことの切なさみたいなものもありますね。知名度っていうのはそんなところで上がっていくんだなって。

いまだテレビは大きいんですね。

TB:まずは聴いてもらうところからはじめなきゃいけないので、それは本当にありがたいんですが。ただ、自分が本当に音楽が好きなので、音楽を好きじゃない人に届けるという概念があまりよくわかんないです。実際出ると反響はあるんですけどね。
 やっぱりそういうことを感じるために神戸にいるという部分もあります。世のなかそんなに信用できないなっていうことを、神戸にいるとよく感じられるというか。

ははは! ここにいると麻痺するんですかね?

TB:そんな気がします。あとはスピードを遅らせたい。結局は「中の人」になっていっちゃうだろうし、就職もしないで音楽をやる仕事に入ってきてしまったので、きっと他の人からずれていくと思うんです。それを遅らせたいという気持ちはありますね。


何の手も借りない、自立したポップス──それはもしかしたらポップスと言わないのかもしれないですけどね──そんなものになれたらいいなって思うんですよね。

方向としても、さらにプロデューサーという感じになっていくんですかね? いまやっていることもコンセプターとしての気質みたいな部分もそうかと思いますが。

TB:プロデューサー側になれたらいいなと思うんですけどね。繰り返しになりますけど、音楽を作って、聴いてもらうことがうれしいわけなので。でも本音を言うと、自分でいいなと思える曲ができた瞬間がいちばんうれしいです。それ以上はないですよね。

なるほど。でもそのあたりが次のステップということになっていくわけですね。

TB:そうですね。あまり内向的にならないようにしようと思います(笑)。

ははは! そこは、内向的になってもいいんじゃないですか?

TB:いや、もっとEDMくらいの開き方をしていかなきゃぐらいに思ってますよ(笑)。

野田:EDMにはならなくていいけど、ポップスは目指してほしいよね。

TB:いまは、何かに寄りかからなくていいポップスをやっている人がいないですから。AKBもEXILEも、何か別のものとポップスを掛け合わせたものじゃないですか。何の手も借りない、自立したポップス──それはもしかしたらポップスと言わないのかもしれないですけどね──そんなものになれたらいいなって思うんですよね。ポップスとしてひとつで立ってるもの。

よくわかりますよ。

TB:がんばるって言うしかないんですけどね! よく言われんですよ、「〈マルチネ〉の人柱」って。僕が突入していくと、みんながそこにつづいてくれるわけです。いちばん若いので、鉄砲玉として働きますよ。

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いや、ほんとに、“Shangri-La”のときのインタヴューを読んで“No.1”を作ったんですよ、僕は。

野田:20年前にはたくさんいたタイプだと思うんだよね。いまは少ないけど。

TB:そうそう、そう思います。マリンさんとか寺田創一さんとかテイトウワさんとか、そういう人たちにシンパシーを感じるんですよ。

野田:まあ、こうやって話していると思うけど、すごく石野(卓球)とかに似てるよね。デビューした頃の。アマチュア時代にいちばん人気があったのが“N.O.”っていう曲なんだけど、それは石野が唯一自分の本心を吐露している曲なんだよね。

TB:ああー! でも、そうですね。

野田:でも、彼はそれをメジャーで出すこともライヴで演奏することも嫌がったし、レコーディングし直すことも拒否してるんだよ。それはやっぱり、自分のことを正直に歌っているから。

TB:ああー! なんですかその話。それ聞いて、今日すごいよかった!

野田:言ってることいっしょでしょう。

TB:いや、すごくわかります! “Shangri-La”とかはなんも考えてないっていう感じがするんですよ。

野田:そう、あれはエンターテインメントで芸なのね。

TB:いや、ほんとに、“Shangri-La”のときのインタヴューを読んで“No.1”を作ったんですよ、僕は。たしか、“Shangri-La”の歌詞を考えるためにスタジオを借りたけど、歌詞が出てこなくて、「瀧がトロフィーって言ったんだよね」みたいなことを言っていて……。「トロフィー」って言葉は歌詞には入れなかったけど、いちばん売れた曲だからあれは「トロフィー」だったんだな、っていうような話で。で、そうか、縁起のいい言葉を曲名にすればいい曲になるんだなって思って、先に“No.1”というタイトルを決めてから作りはじめたのがあの曲なんです!

野田:はははは!

TB:だからいまの話をきいてちょっとビビったっすね。

野田:正直な自分は出したくないっていう考え方は、すごくあるよね。

TB:そういうのは人の考えであれ嫌だから、今回のアルバムも、会社から“朝が来るまで終わる事の無いダンスを”を入れませんかって提案されたとき、快諾はしたんですが、思うところはあって。たまたま『WIRED』の原稿とかでそのことについて説明することができたのでよかったですが、もし何の説明もなくこの出したら、すごくやるのが嫌になっただろうなって思います。
 何度かその曲を人前でやる機会をもらったんですが、なんか、風営法の問題が盛り上がっているときにすごく運動で使われたんですよね。結構ショックでしたね。


自分が大事に作った曲が自分の手を離れていくっていう感覚はわかりました。アルバムを出すというのはそういう理由かもしれませんね。出ちゃったんだから、どうとられてもしょうがない。

そうなんですか? 意図はどうあれ、アンセミックにも響くような大きさのある曲ではありますよね。

TB:たしかに、自分が大事に作った曲が自分の手を離れていくっていう感覚はわかりました。こういうことかあって。でも世の中にあんまり期待しないっていうところもあるので、ポジティヴな意味で諦めていますけどね。……アルバムを出すというのはそういう理由かもしれませんね。出ちゃったんだから、どうとられてもしょうがない、諦めるというような。

野田:でも、なんで風営法のキャンペーンに使われるのがダメなの?

TB:いや、風営法のために作ったものじゃないからですよ。僕は反対というわけでもなかったし。でもこの曲のおかげで風営法反対の公演とかへの出演依頼がめちゃくちゃ来たんですよね。

へえー!

TB:風営法に反対だっていうことを一回も言ったことがなかったのに。それで勝手にキャンペーン・ソングみたいになってるのがつらかったので、クリエイティブ・コモンズをつけてフリー・ダウンロードにしたんですよ。もう、知らぬ存ぜぬということで。音楽はそういうものから自由だからいいのに。

野田:政治に利用されるのが不本意だったのね。

TB:ダンス・ミュージックってそういうものじゃないじゃないですか。「イエーイ!」みたいな……あ、そうでもないか(笑)。

(一同笑)

TB:でも、505っていいなみたいな、そういう気持ちを僕は大事にしたいんですよ。「505に宿ってるソウル」とかじゃなくて、もっと「いいよねー」みたいなところを。だから、“ディスコの神様”みたいなものが売れたら、とても景気がいいじゃないですか。
 SMAPではじめてオリコンの1位を獲った曲が“Hey Hey おおきに毎度あり”なんですよ。その話がめっちゃ好きなんです。あんな歌詞のものがオリコンの1位っていう──あんな、っていうのは1周まわって最高だっていうような意味なんですけど。あんな曲が1位を獲るというのは、つくづく景気のいい時代だったんだなって。

505っていいなみたいな、そういう気持ちを僕は大事にしたいんですよ。

さっき言っていたような、空っぽのものがいいと思う理由は、そのへんにもありますね。しかもそれが受け入れられているのはある意味で健全だと思います。みんな薄っぺらいラヴ・ソングがどうこうって揶揄したりしてますけど、薄っぺらいラヴ・ソングが売れていることがどんだけいいことかって話ですよ。

野田:まあ、でも、景気がよかった頃ってメガ・ヒットはないんだよね。みんなが平均的に売れていたってだけで。むしろ景気が悪くなってからミリオンが出るようになる。

TB:それは、言われてみればそうですかね。“らいおんハート”とか“世界に一つだけの花”とかの頃はもう不景気だって思うっす。

でも、tofubeatsの仕事というのは、自分がバーっと売れればいいという種のことではないですよね。

TB:自分の曲が育ってほしいなって思いますね。

そうですね。それが種を生むというか、ひとつの状況を準備できたらっていう。でも、そんなふうに何かを引き受けてやるぞっていうのが、メジャーになるということかもしれないですね。

TB:そうですね、プロ野球選手になったって感じです。プロの二軍の人よりうまいアマチュアの人ってぜったいいるはずじゃないですか。でもプロはプロって看板はらなきゃいけない。僕にしたって僕よりいい曲書く人なんていっぱいいるわけです。

でも、音楽って、ぜんぜんなにも引き受けなくてもいいものじゃないですか。

TB:そうかもしれないですけど、引き受けること以外にメジャーがやれることって、いまそんなにないなって思います。

野田:本来ならそういうプロ意識って、こんなふうに公言しなくてもよかったものなはずなんだけどね。でも公言しなければならないくらい、一種のアマチュアリズムがはびこっている部分はあるんじゃないかな。

そうですね。今日は非常に心強い言葉がきけました。

野田:でも10年後ぜんぜんちがうことを言ってるかもしれないよ(笑)。

TB:歌は世につれ……ですよ。そこは変わっていけばいいと思います(笑)。


次回は紙ele-kingに掲載された過去のインタヴューをお届けします!



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