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Anstam

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三田 格   Dec 05,2011 UP

 テクノとダブステップの架け橋となったモードセレクターの3作目にはあまりいい部分を感じることはできなかったけれど(がんばれ、トム・ヨーク!)、彼らが主宰するモンキータウン傘下の〈50ウェポンズ〉からデビュー・アルバムを放ったラース&ヤン・シュトゥーヴェにはUKベースに対するドイツからの最良のアンサーを感じ取ることができた。すでにレイディオヘッドのリミックス・アルバムにも起用されていたので、その感触に触れた人も少なからずではないかと思うけれど、イージーにいうと、これはブラック・ストロボのダブステップ・ヴァージョンであり、ジャーマン・トランスをベース・ミュージックに様変わりさせたアップ・トゥ・デイト・ヴァージョンだといえる(ブラック・ストロボといってもシングルだけが好きだった人に朗報です。つーか、12年待ちましたよ!)。

 重いベースをローリングさせ、コケ脅かしのフレーズを散りばめながら、しっかりとハットでステップを導いていく。何もここまで重々しくしなくてもいいだろうと思うほど全世界を暗闇に閉ざし、リン・ドラムを徘徊させるオープニングから一気に人びとをダンサー・イン・ザ・ダークへと変換させる。09年にリリースされた3連作シングルではインダストリアル趣味がもう少し剥き出しになっていたものを、ここではかなり洗練されたフォームに移し変えられ、よりダンス・ミュージックとしての機能がアップされたことで、その対比は皮肉なほど明確に感じられる。残念なのは40分ちょっとしかこの人工庭園では遊ばせてもらえないことで、まったく正反対のことをラスティが『グラス・スウォーズ』で延々と展開していたことはたしか。いずれもフィクショナルな想像力の展開としては相当な力量の持ち主といえる。足して2で割ったらパフュームには......ならないか(ギャラクシアスもがんばろー)。

 それにしても重い。このようなドイツに特有の重さというのは、一体、なんなのか、カンにもDAFにもデットマンにも認められるものだし、2年前にグトルン・グートとAGFが結成したグライエ・グート・フラクションもIDMスタイルのマラリア!といった過剰なヘヴィネスが最初から最後まで漲っていて、とにかくカッコよかった。そのリミックス・アルバムがなぜかいま頃になって完成。10人のゲスト・リミキサーを迎えながら、やはり独特の重々しさは統一されている。

 GGF自身もカウントすると、まずはリミキサーの男女比が4:8と圧倒的に女性で占められ、グルジアに戻ったTBAことナタリー・ベリツェやバーバラ・モーゲンシュテルン以外はほぼニュー・フェイスといった布陣(変わったところではクロスタウン・レベルズからテック-ハウスのリリースがあったジェニファー・カーディーニも)。男性4人はシングル・カットされたパレ・シャンブール"ヴィア・バウエン・アイエ・ノイエ・シュタット"のカヴァーからアルヴァ・ノト(Aサイド)とヴォルフガング・フォイト(Bサイド)を採録した以外にミカ・ファイニオによる重々しいアンビエント・リミックスと、ソウルフィクションによるダブ・テクノ。男女でとくに出来に差があるわけでもなく、個人的には(意外と長い人のようだけれど)ディー・パティンネン・テイル2のドンナ・ネーダによる歪んだダブ・ミックスに最も興味はそそられたものの、どれもがGGFの美意識を損ねることなく、独特の世界観を補強する仕上がりで、とてもリミックス・アルバムとは思えない完成度といえる。単に重いだけでなくセクシーなところがGGFはいい。

三田 格