ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Jim O'Rourke & Takuro Okada ──年明け最初の注目公演、ジム・オルークと岡田拓郎による2マン・ライヴ
  2. André 3000 - New Blue Sun | アンドレ3000
  3. R.I.P. Shane MacGowan 追悼:シェイン・マガウアン
  4. Voodoo Club ——ロックンロールの夢よふたたび、暴動クラブ登場
  5. AMBIENT KYOTO 2023 ──好評につき会期延長が決定、コラボ・イベントもまもなく
  6. interview with Kazufumi Kodama どうしようもない「悲しみ」というものが、ずっとあるんですよ | こだま和文、『COVER曲集 ♪ともしび♪』について語る
  7. interview with Waajeed デトロイト・ハイテック・ジャズの思い出  | ──元スラム・ヴィレッジのプロデューサー、ワジード来日インタヴュー
  8. 蓮沼執太 - unpeople | Shuta Hasunuma
  9. シェイン 世界が愛する厄介者のうた -
  10. DETROIT LOVE TOKYO ──カール・クレイグ、ムーディーマン、DJホログラフィックが集う夢の一夜
  11. interview with Shinya Tsukamoto 「戦争が終わっても、ぜんぜん戦争は終わってないと思っていた人たちがたくさんいたことがわかったんですね」 | ──新作『ほかげ』をめぐる、塚本晋也インタヴュー
  12. Oneohtrix Point Never - Again
  13. AMBIENT KYOTO 2023最新情報 ──撮りおろしの作品動画が期間限定公開、コラボ・イベントも
  14. Galen & Paul - Can We Do Tomorrow Another Day? | ポール・シムノン、ギャレン・エアーズ
  15. Ryuichi Sakamoto ──坂本龍一、日本では初となる大規模個展が開催
  16. yeule - softscars | ユール
  17. Sleaford Mods ——スリーフォード・モッズがあの“ウェスト・エンド・ガールズ”をカヴァー
  18. Columns 〈AMBIENT KYOTO 2023〉現地レポート
  19. Columns ノエル・ギャラガー問題 (そして彼が優れている理由)
  20. interview with Shuta Hasunuma 蓮沼執太の考える音楽、そしてノイズ

Home >  Reviews >  Album Reviews > Duppy Gun Productions- Miltiply / Eath

Duppy Gun Productions

Duppy Gun Productions

Miltiply / Eath

Duppy Gun Productions

Amazon iTunes

Peaking Lights

Peaking Lights

936 Remixed

100% Silk

Amazon iTunes

野田 努   Feb 29,2012 UP

 またも昨年のリリースじゃないかと言うなかれ。下北沢ワルシャワで、最後に買ったレコードがこれ。12インチにしては値段が張るが、格好いいポスターが封入されている。というか、サン・アロウとゲド・ゲングラス(LAヴァンパイアズやロブドアをはじめ、さまざまなプロジェクトに参加している)というロサンジェルスの〈ノット・ノット・ファン(NNF)〉周辺のもっともドープな男たちがついにジャマイカと繋がったかという感無量な1枚だ。おまえら、やっぱそうだったのか、やっぱ......。謎が解けた。すっきりしたよ。(NNF)系の、ポカホーンティッドやサン・アロウの深いリヴァーブは、キング・タビーがいじくるつまみのようなものである。(NNF)が昨年リリースしたピーキング・ライツの『936』がUKでは評判となって、年末にエイドリアン・シャーウッドやディム・ファンクのリミックスまで収録したUK盤のEPが出るにいたったのもうなずける話だ。
 しかし連中の音楽は、ドープでスモーキーだが、踊りのためにあるとは思えない。リズミックな躍動感というものはあまりなく、ヨレヨレだ。自分の名前も思い出せないほどの酩酊状態のなかで演奏しているのかもしれない。そもそもジャマイカーのシンガーをフィーチャーしたからといって、これをダンスホールなどと言えるだろうか。これはボディ・ミュージックではない。明白なまでにヘッド・ミュージックである。ふざけているのか、真面目に追求しているのかよくわからないところが良い。ついにジャマイカに侵入したサン・アロウとゲド・ゲングラスは、1970年代にリー・ペリーが手がけた作品がルーツ・レゲエ/ダブの歴史的名作となっているコンゴスとの共作も果たし、そのリリースも控えていると聞くが、これは本当に楽しみ。

 ピーキング・ライツは年末のUK盤に続いて、2012年に入ると〈100%シルク〉からもリミックス盤を発表している。リミキサー陣はアイタル、エクサンダー・ハリス、インナーゲイズ、キューティクルといったレーベル・メイトでかためている。マリア・ミネルヴァが参加しなかったのが残念だが、ちょっとした〈100%シルク〉のショーケースで、もちろんダンス・トラック集なのだが、このレーベルの独自の展開を物語るように、音質やバランスが従来のそれとは異なっている。ハウスやテクノのDJは使いづらいとぼやくかもしれない。アイタルはロサンジェルス流のダブの流儀で、ベーシック・チャンネル系とは別の、ローファイ・インディ・サイケデリック・ダブ・ハウスとでも言おうか......。エクサンダー・ハリスは気だるいイタロ・ディスコ、インナーゲイズはコズミックなシカゴ・ハウス、キューティクルは25年の時間を経て結ぶばれたシカゴのアシッド・ハウスとロサンジェルスのインディ・シーンとの変異体だ。しかし......アメリカの白人のインディ・キッズもいまになってようやくシカゴ・ハウスの良さを理解し、受け入れたってことか。

 ちなみに下北沢ワルシャワはいま全品半額セール中で、夜にはヨルシャワという実験的なバーになっているという。飲みに行こう。

野田 努