ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Young Girl - The Night Mayor / V.A. - A Little Night Music:Aural Apparitions from the Geographic North (review)
  2. 校了しました ──松山晋也による魂の1冊『別冊ele-king カン大全──永遠の未来派』、予定どおり10/31発売 (news)
  3. BIM - Boston Bag (review)
  4. Autechre - Sign (review)
  5. New Order ──ニュー・オーダー来日公演は2022年の1月に決定 (news)
  6. 11月7日、川崎の工業地帯での野外パーティ、Bonna Potあり (news)
  7. LITTLE CREATURES ──デビュー30周年の節目にニュー・アルバムをリリース (news)
  8. The Bug ──ザ・バグの最強ダンスホール沼サウンドが〈Hyperdub〉からリリース (news)
  9. ギーク母さんの21世紀女児カルチャー観察記 ピンクに塗れ!~現代女児のキラデコ事情~ 第4回:馬に恋する女の子たち (columns)
  10. Vityazz ──新世代ジャズ・ユニットのヴィチアスが配信イベントを開始 (news)
  11. Vladislav Delay / Sly Dunbar / Robbie Shakespeare - 500 Push-Up (review)
  12. Can × VIVA Strange Boutique ──カンのアートワークを元にデザインした限定のスウェットからMA-1ジャケットなどなど発売 (news)
  13. Nightmares On Wax ──あの歴史的名盤『Smokers Delight』の25周年記念12インチ発売、そしてなんともサイケデリックな短編映画を公開 (news)
  14. Siavash Amini - A Mimesis Of Nothingness (review)
  15. CAN ──クラウトロックの巨星、CANの全18タイトルがリイシュー (news)
  16. interview with Saito テクノ夫婦 (interviews)
  17. Aphex Twin ──エイフェックス・ツインが現在の状況を警告 (news)
  18. interview with A Certain Ratio/Jez Kerr マンチェスター、ポストパンク・ファンクの伝説 (interviews)
  19. Nubya Garcia - Source (review)
  20. Sufjan Stevens - The Ascension (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Peaking Lights- The Fifth State Of Consciousness

Peaking Lights

DiscoDubGarageSynth-pop

Peaking Lights

The Fifth State Of Consciousness

Two Flowers

Tower HMV Amazon iTunes

小川充   Aug 10,2017 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 アーロン・コイエとインドラ・ドゥニの夫婦ユニットのピーキング・ライツは、2011年発表の『936』で知名度を大きく上げたが、その頃の評価というのは、アメリカ西海岸に1960年代から根付くヒッピー・カルチャーやサイケデリック・サウンドを現代に引き継ぐ存在、というものだった。2006年頃にサン・フランシスコで出会ったふたりは、ピーキング・ライツを結成して2008年にデビュー。当時はアブストラクトでフリーフォームな実験的サウンドをやっており、アメリカ各地を転々と移動しながら活動していた。その後、2011年に出発地であるウェスト・コーストに戻り、ロサンゼルスに拠点を固めて発表したのが『936』である。セカンド・アルバムにあたるこの作品は、デビュー時から一貫したチープなロー・ファイ・サウンドを基軸とするが、新しいテイストとしてシューゲイズに感化されたサイケデリックでコズミックな要素が露わとなり、ピーキング・ライツの音楽性を大きくアピールする傑作アルバムとなる。『936』発表時はちょうどチルウェイヴが盛り上がっていた頃でもあり、そうした側面からUS西海岸のサイケデリック・サウンドと結び付けて取り上げられることも多かった。翌2012年には、アリエル・ピンクやウォッシュト・アウトらも作品を出す〈メキシカン・サマー〉から『ルシファー』をリリース。『936』のでロー・ファイなサイケ・ダブとシンセ・ポップの融合を継承し、彼らの世界観を決定づけた。

 『936』や『ルシファー』には、サイケ・ロック、ソフト・ロック、シューゲイズ、アシッド・フォーク、フォークトロニカ、バレアリック、クラウトロック、アフロ、ミニマル・ミュージック、シンセ・ポップ、ニュー・ウェイヴ、シンセ・ポップ、イタロ・ディスコ、イタロ・コズミック、アーリー・シカゴ・ハウス、ルーツ・ダブ、ディスコ・ダブ、デジタル・ダンスホールなど、実にさまざまな音楽の痕跡が見つけられる。そうした要素が混然一体となり、どちらかと言えばメディテーショナルで幻覚的なサウンドだったのだが、2014年にリリースした『コズミック・ロジック』は、リズムやサウンドの輪郭が明瞭となってきた。フライング・リザーズへのオマージュ曲から、カーペンターズがカナダのプログレ・バンドのクラトゥを題材とした作品もあり、全体としてはポップな方向性が打ち出されていた。彼らが持つ音楽性の中でも、ニュー・ウェイヴ・ディスコやシンセ・ポップをより意識したものとなり、トム・トム・クラブを彷彿とさせる曲から、100%シルクのようなインディ・ダンス~ハウスに通じる楽曲も収められていた。こうした変化については、当時彼らがLAに新築したスタジオでの録音で、そうした録音環境の違いによるところもあったのかも知れない。『コズミック・ロジック』から3年ぶりの新作『ザ・フィフス・ステイト・オブ・コンシャスネス』も、そのドリームファズ・スタジオでの録音だ。

 『ザ・フィフス・ステイト・オブ・コンシャスネス』のサウンドは、基本的には『コズミック・ロジック』でのシンセ・ポップ路線に則り、と言うよりさらに強化したものだ。チープな味わいのアナログ・シンセと、インドラの幼女の歌声のようなヘタウマ・ヴォーカルという組み合わせは、もはやピーキング・ライツのトレードマークとなっているが、冒頭の“ドリーミング・アウトサイド”に見られるように、1980年代のテイストが今まで以上に色濃くなっている。そして、“スウィートネス・イズント・ファー・アウェイ”や“エクリプス・オブ・ザ・ハート”はじめ、レゲエやダブのテイストが強いところも本作の特徴にあげられる。このあたりはグレイス・ジョーンズやグウェン・ガスリーを筆頭に、1980年代初頭のニューヨークのディスコ~ガラージ・サウンドの特徴でもあり、『ザ・フィフス・ステイト・オブ・コンシャスネス』における影響の中でもとても重要な要素だ。スライ&ロビー的なレゲエとガラージ・サウンドが邂逅したような“コヨーテ・ゴースト・メロディーズ”では、タイトルどおりコヨーテの鳴き声を模すなど、ユーモア感覚も心憎い。ダンサブルという点では“エヴリータイム・アイ・シー・ザ・ライト”や“ワイルド・パラダイス”が挙げられる。ザ・クラッシュやトム・トム・クラブなど、ダブやアフロをモチーフとするニュー・ウェイヴ・ディスコの現代版と言えよう。昔のサウンドとの比較でいくと、“ラヴ・キャン・ムーヴ・マウンテンズ”はさしずめブロンディだろうか。“プット・ダウン・ユア・ガイズ”あたりは、いかにもラリー・レヴァンがパラダイス・ガレージで好んでプレイしていたようなナンバーで、この曲や“クウェ・ドゥ・ボン”での強烈なダブ・エフェクトも印象に残る。ピーキング・ライツが今までの西海岸のサイケ・サウンドから、ダブやレゲエを切り口にNYのダンス・サウンド方面へ路線を変更した、そんな象徴とも言えるアルバムとなった。