ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns talking about Brian Eno’s new soundtrack 対談:ブライアン・イーノの新作『トップボーイ』の面白さをめぐって (columns)
  2. interview with African Head Charge 私は11歳で学校をやめてアフリカン・ドラムをはじめた | Mars89がアフリカン・ヘッド・チャージに話を聞く (interviews)
  3. Metamorphose ’23 ──Metamorphoseが11年ぶりの復活、レジェンドたちに混ざりGEZANや羊文学らも出演 (news)
  4. Odalie - Puissante Vulnérabilité | オダリー (review)
  5. Lawrence English & Lea Bertucci - Chthonic (review)
  6. 熊は、いない - (review)
  7. interview with Adrian Sherwood UKダブの巨匠にダブについて教えてもらう | エイドリアン・シャーウッド、インタヴュー (interviews)
  8. なのるなもない × YAMAAN ──ヒップホップとニューエイジ/アンビエントが交差する場所、注目のアルバムがリリース (news)
  9. PJ Harvey - I Inside The Old Year Dying (review)
  10. Columns アフリカは自分たちのゴスペルを創出する (columns)
  11. AMBIENT KYOTO 2023 ──京都がアンビエントに包まれる秋。開幕までいよいよ1週間、各アーティストの展示作品の内容が判明 (news)
  12. WAAJEED JAPAN TOUR 2023 ——元スラム・ヴィレッジ、ジャズ・テクノを追求するデトロイトからの使者、ワジードが来日 (news)
  13. interview with Loraine James 路上と夢想を往復する、「穏やかな対決」という名のアルバム | ロレイン・ジェイムス、インタヴュー (interviews)
  14. Tirzah - trip9love...? | ティルザ (review)
  15. Natalie Beridze - Of Which One Knows | ナタリー・ベリツェ (review)
  16. Oneohtrix Point Never ──ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、新作『Again』を携えての来日公演が決定 (news)
  17. 国葬の日 - (review)
  18. interview with Nanorunamonai 飽くなき魅惑のデイドリーマー | なのるなもない、アカシャの唇、降神 (interviews)
  19. 10月開催の「AMBIENT KYOTO 2023」、坂本龍一、コーネリアスほか出展アーティストを発表。テリー・ライリーのライヴもあり (news)
  20. KODAMA AND THE DUB STATION BAND ──待ってました御大! ついにカヴァー・アルバムがリリース、ライヴも (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Burial Hex- The Hierophant

Burial Hex

AmbientExperimental BeatNew AgeNew Romantic

Burial Hex

The Hierophant

Handmade Birds

倉本諒   Nov 06,2014 UP

 ウェブ・レヴュー3度めの登場、久方ぶりのフルレンス・アルバム。え? 何枚めかって? 今年でデビュー10周年、CDRやカセットを含むと過去音源は通算80以上にのぼるブリアル・ヘックスのどれがスタジオ・アルバム仕様なのか、と遡るのを想像するだけでしんどい……。
 これがラスト音源だぜ! といったアナウンスが流れているが、過去に何度か同じことを言われ、騙されているわけで、今回もにわかに信じがたい……が、たしかに内容は最後を締めくくるにふさわしいと、言わざるをえないだろう。

 以前のレヴューでの紹介と重複するのでハショりますが、ブリアル・ヘックス(埋葬された呪い)は地底深くに隠されたある種のエネルギー・サイクルであり、それはヒンドゥー教の宇宙論において循環するとされる4つの時期の最終段階、万物が破滅にいたる終末の状態を表すそうだ。カリ・ユガ(Kali Yuga)である。
 クレイ・ルビー(Cray Ruby)にとってこのプロジェクトが自身の内包するドゥーム・スケープ(終末のヴィジョンとでも形容しようか)の具現化であることは過去十年間揺らがないのだ。ドゥーム/ドローン・メタル、パワー・アンビエントが台頭していたゼロ年代半ばにそのキャリアをスタートさせたブリアル・ヘックスはその後のネオ・サイケ・フォーク・リヴァイヴァルへの流れへと先陣を切りながら、自身が形容するところのホラー・エレクトロニクスという形で、近年〈デスワルツ・レコーディング(Death Waltz Recordings)〉がヴァイナルでの再発をおこなうようなカルト・ホラー・ムーヴィーのサントラから触発されたようなファンタジー性の高いソング・ライティングをおこなってきた。

 本作、ザ・ハイエロファント(The Hierophant)のタイトルは花京院のスタンドでお馴染み? の教皇のタロット・カードである。ステーク・ヘクセン(Sutekh Hexen)のケヴィンによる強烈な牛ジャケ・デザイン。そもそも教皇のカードを星座の牡牛に対応させるのは黄金の夜明け団による解釈であり、さまざまなオカルティズムにディープに精通するクレイによる暗喩がいつもより多めにこのアルバムに収められていることを象徴しているようだ。
 収録される楽曲も過去音源と比較してもダントツでキャッチーである。パワー・エレクトロニクス感は一切鳴りを潜め、同郷のゾラ・ジーザスばりにポップなアプローチを試みたと言っていいだろう。

 ちなみに過去の地元繋がりの両者による以下のコラボレーションは秀逸。)

 ハイエロファントの楽曲は上記のようなブリアル・ヘックスのポップ・センスが全面的にフィーチャーされたアルバムだ。ニューロマな方向にエモ過ぎる展開、じつはけっこう凝っているキャッチーな打ち込みビート、ファンキーな手弾きベース、やり過ぎなほどゴシックなオーケストレーション、そしてわりと全面通してウィスパーしたり唱いあげるクレイ。大聖堂のステンドグラスに降り注ぐ神々しい光と冬山に隠された洞穴でおこなわれる血塗られた儀式が交互にフラッシュバックする初冬に相応しいゴスな一枚。

倉本諒