ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. The Ephemeron Loop - Psychonautic Escapism (review)
  2. interview with Shintaro Sakamoto 坂本慎太郎、新作『物語のように』について語る (interviews)
  3. interview with Kikagaku Moyo 無国籍ロウファイ・サイケデリア (interviews)
  4. COMPUMA ——初のソロ名義のアルバム、『A View』のリリースを発表 (news)
  5. Spiritualized - Everything Was Beautiful (review)
  6. Oneohtrix Point Never - Returnal (review)
  7. Sam Gendel & Antonia Cytrynowicz ──LAのプロデューサー、サム・ゲンデルと11歳の新人アントニア・サイトリノウィックスによる共作 (news)
  8. Pervenche ──東京のギター・ポップ・バンド、ペルヴァンシュが20年越しのセカンド・アルバム (news)
  9. Terao Saho ──寺尾紗穂のニュー・アルバム『余白のメロディ』がリリース (news)
  10. Ghostly Kisses - Heaven, Wait (review)
  11. 遊佐春菜 - Another Story Of Dystopia Romance (review)
  12. Cate Le Bon - Pompeii (review)
  13. Yutaka Hirose ——アンビエント作家、広瀬豊の36年ぶりの新作『ノスタルジア』がリリース (news)
  14. MONJU ──ISSUGI、仙人掌、Mr.PUGからなるユニットが13年半ぶりに新作を発表 (news)
  15. Bobby Hamilton, Orang-Utan and Lemuria ──「VINYL GOES AROUND」から貴重な3アイテム (news)
  16. FEBB ──幻の3rdアルバムがリリース (news)
  17. Boris ──活動30周年記念アルバム第2弾がリリース (news)
  18. Jazzanova - Strata Records (The Sound Of Detroit Reimagined By Jazzanova) (review)
  19. Funkadelic - Maggot Brain (review)
  20. Thundercat ──ついにサンダーキャットの来日公演が皮切り、最速ライヴ・レポートが公開 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Coco Bryce- Boesoek

Coco Bryce

Coco Bryce

Boesoek

Fremdtunes

Amazon iTunes

三田 格   Feb 28,2011 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 下北沢のスーパーでイチゴを買おうと思ったら、棚の後ろ側で何やら蠢いているものがいる。それはヒモに繋がれたブルドッグで、よく見ると不器用にイチゴを食べている。屋外に並べられたイチゴのパッケージから大きなイチゴを銜え出して、好きなだけ食べていたらしい。犬ってイチゴを食べるのかーと感心していたら、少しずつお客さんが集まってきてアハハと笑い声が上がり、ひとり、おばさんだけが店の人に知らせに行った。しばらく店内にいたけれど、「店の前に犬をつないでいるお客さ~ん」というような呼び出しはなかったので、もしかしてほったらかしだったりしたのかしら。さすがにイチゴはほかの店で買うことにして、僕は踏み切りを渡ってジェット・セットに辿り着く。本当はイチゴではなくてココ・ブライスのファースト・アルバムを買いに来たのである。下北沢というところは何をしに来たのか目的を見失いやすい街である。

 目的を思い出して買うことができたココ・ブライスは期待以上の出来だった(目的を思い出すことができて本当によかった。ある意味で、それはブルドッグのおかげである。皆さんもイチゴを食べるブルドッグを見たら、自分がいま、何をするためにそこにいるのかよく思い出してみましょう。あなたはもしかすると月から転生してきた戦士だったのかもしれないのです。亜梨子! 紫苑!)
 スクウィーの背後にクレーム・オーガニゼイションなどのダッチ・エレクトロがあったことは復刊エレキングにも書いた通り(P10)。北欧で地道に続けられてきた試行錯誤とダブステップとの交錯からメサクやダニエル・サヴィオといった才能が浮上し、現在もその裾野は計り知れないものになりつつある。裏を返していえば、この辺りから生まれてくる音楽は線引きが日を追って難しくなり(あるいは無意味になり)、とくにフライング・ロータス周辺とビートが混ざり合うようになってからは何が飛び出してくるのかまったく見当がつかなくなってきた(昨年の僕のベスト・シングルはホヴァトロン「レッツ・ゲット・ウェット」だったりするけれど、これなんか、スクウィーかどうかはギリギリで、そのようなわかりにくさのなかにフロントラインであることが感じられるともいえる)。
 そのような趨勢のなかでココ・ブライスに強く感じられることはヒップホップの要素が増大し、結果的にエレクトロに揺り戻している......ように聴こえることだろう。過剰な要素を太いビートでまとめて行く手際は線が細くなりやすいスクウィーとは対照的で、チップチューンを多用しながらもゴージャスな印象を残すところが大きく違う。エイフェックス・ツインがURをリミックスしたら......というのはさすがに大袈裟だけど、変態じみた骨太のサウンドをイメージしてもらう助けにはなるかもしれない。あるいはスクウィー版ドリアン・コンセプトか。
 まだまだ出てくると思う。この辺りからは。ブルドッグの目の前にあった無数のイチゴのように。

三田 格