ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Nkisi ──新世代テクノの急先鋒、キシ来日直前インタヴュー (news)
  2. Ash Walker - Aquamarine (review)
  3. WXAXRXP Sessions ──〈Warp〉30周年を記念したシリーズ作品が発売、豪華面子が勢ぞろい (news)
  4. Kelela & Asmara - Aquaphoria (review)
  5. interview with Joe Armon-Jones 深化するUKジャズの躍動 (interviews)
  6. Headie One - Music x Road (review)
  7. Bon Iver ──ボン・イヴェールの来日公演が決定 (news)
  8. interview with (Sandy) Alex G 塩と砂糖の誘惑 (interviews)
  9. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  10. Laraaji ──ララージがまさかの再来日、ブライアン・イーノとの名作を再現 (news)
  11. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  12. interview with For Tracy Hyde シティ・ポップ・リヴァイヴァルから「シティ」を奪還する (interviews)
  13. Leo Svirsky - River Without Banks (review)
  14. Aphex Twin ──エイフェックス・ツイン最新公演のライヴ・ストリーミングが決定 (news)
  15. Nkisi - 7 Directions (review)
  16. Random Access N.Y. vol. 119:玄人インディ・ロック界の王子たち Deerhunter and Dirty Projectors @webster hall (columns)
  17. Squarepusher, Oneohtrix Point Never & Bibio ──〈Warp〉30周年イベントが開催決定! スクエアプッシャー、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー、ビビオが一挙来日 (news)
  18. interview with Yosuke Yamashita 誰にでも開かれた過激 (interviews)
  19. For Tracy Hyde - New Young City (review)
  20. interview with The Comet Is Coming ボリス・ジョンソンの名を言うだけで口が腐る (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Unknown Mortal Orchestra- Unknown Mortal Orchestra

Unknown Mortal Orchestra

Unknown Mortal Orchestra

Unknown Mortal Orchestra

Fat Possum Records

Amazon iTunes

橋元優歩   Jul 05,2011 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 ジャケット写真の建築物はユーゴスラヴィアのものだそうで、コミュニストたちの記念碑だという説明がある。それは現在では荒廃してしまって、未来のために構想されたものでありながら過去の遺物と化している。ネットで軽く検索したくらいでは英語の資料さえなく、実在するのかどうかも説明なしには判然としない。空間からも時間からもロストされたような謎めいた佇まい。「僕はそれがこの音楽に合うと思った」......アンノウン・モータル・オーケストラを率いるルーバン・ニールソンは、あるインタヴューでそのように語っている。「僕たちはそれを旅人の撮った写真みたいなイメージで使ったんだ」
 そうであるならばこの旅は時間をめぐる旅、いや、時間を失うための旅であろう。

 このプロジェクトが『ピッチフォーク』などのメディアに取り上げられた当初は、バンドキャンプにあげられたその他多くの無名バンドと同じように、数少ない音源と情報しか明かされていなかった。ニールソン本人はインフォをあげる時間がなかったし、そもそもバンドでもなかったからその必要を感じなかったとも述べているが、周知のとおり、実際はニュージーランドのインディ名門〈フライング・ナン〉を代表するエクスペリメンタルなノイズ・ポップ・バンド、ミント・チックスの中心メンバーである。あるブロガーからは、「このミステリアスな存在感がおもしろいから、誰のバンドなのかもう少し秘密にしておいたほうがいい」などといった意見も寄せられたそうだ。それが功を奏した部分も大いに あっただろう、アンノウン・モータル・オーケストラ(以下、UMO)は、現在本デビュー・フル・アルバムを発表したばかりだが、日本でもひたひたと注目を集めている。

 ミント・チックスを脱けたいという気持ちを固めてから、ニールソンはまずイラストを描いたりと音楽以外のことへ向かったようだが、そのうちそわそわと録音をはじめるようになった。それにあたって彼が購入したのは、オープンリール式のテープ・レコーダーや古いディクタフォンだ。アリエル・ピンクからアクやえぐみをとったような、独特だがトレンドを突いたローファイ感。ものすごくヴィンテージなサウンドで、曲自体は60'Sサイケデリックやファンク・ロックが基調になっている。スライ・ストーンの静かな狂気を、アリエル・ピンクやネオン・インディアンのぐにゃぐにゃとしてスキゾフレニックなポップ感覚に溶かし込んだ、ある意味でウルトラ・ドリーミーな音である。「違う時代からきた何か」のような音楽を目指したというニールソンのヴィジョンは、このアルバムに余すところなく映し出されている。
 「違う時代」というだけで特定の時代を志向しない態度は、彼がノスタルジーではなく、この時代への違和感や、もしかすると歴史や時間性からの疎外感を抱いていることを想像させる。

 軽快にスウィングするスネアがTレックスを思わせる冒頭の"ファニー・フレンズ"。これだけでロック・ファンの心はしっかりとつかまれるだろう。ファンキーでグラム・ロックのあでやかさを持った"バイシクル"も同様だ。締まったリズムとレトロな音質、ウッズを彷彿とさせるチャイルディッシュでエキセントリックなファルセット・ヴォイス、2011年現在の録音と思えないが、かといって埋もれていた逸盤というにはなにか新しい手触りやフィーリングがある。こうしたレトロ趣味というよりは、もっと巧妙に企まれた偽古典的な方法論は、玄人リスナーのツボをかならずや突くだろう。個人的には"ハウ・キャン・ユー・ラヴ・ミー"のダンサブルでスウィートなサイケ・ファンクを繰り返し聴いている。もちろん粒ぞろいで、飽きのこないアルバムだ。

橋元優歩