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もうホント、ノスタルジーだとかレトロだと言うのは止めて欲しい。21歳の僕にはこれは「新しい」のです!
1曲目の"トュゲザー・フォー・エヴァー"を聴いたときから胸騒ぎがはじまっていた。2曲目の"マイ・ロンサム"でジョニーが悲しげな声をはりあげているときには、もう居てもたってもいられなくなって家のなかでジャンプ。3曲目の"トュー・ビー・ヤング"のさわやかな夏の風情が僕を優しく包むときには、僕は叫んでいた。トュー・ウーンデッド・バーズ、最高!
ザ・ドラムスをはじめて聴いた2009年の夏を思い出す。あのときの僕は、まだ18歳のいま以上に煮え切らないガキだった。何も期待していなかった。何も夢はなかった。しかし、ザ・ドラムスを聴いた瞬間に外に飛び出し、全力で走った。いままでからっぽだったコップのなかが満たされ、欲望は溢れ出し、僕は自由になった。幸福感だった。まだ見たことのない、青い空と海が広がる異国の地へと想いを馳せながら、僕はただひとりで最高にハイになった。
もうあんなにもハイになることはないだろうと、20歳を越えた僕は思っていた。しかし、トュー・ウーンデッド・バーズのファースト・アルバム『トュー・ウーンデッド・バーズ』が待っていた。このアルバムを聴いて、またしても僕は外に飛び出し、全力で走った。まだ新しい場所がある。さわやかな夏の香りがにおってくる。それは無邪気で、ちょっと短気だけれど、ロマンティックで美しい音楽だ。希望に燃えている青春の輝き、これがロックンロールってもんだ!
トュー・ウーンデッド・バーズはイギリスはマーゲート出身の4ピースバンドで、メンバー構成は、ジョニー・デンジャー(ヴォーカル、ギター、オルガン)、トム・アーケル(ギター)、ジェイムズ・シャンド(ドラム)、そして紅一点ブロンドガール、アリー・ブラックグローヴ(ベース)だ。ザ・ビーチ・ボーイズ、ザ・ビートルズ、ザ・ドアーズからインスパイアを受けている。50年代~60年代のポップスのキャッチーさがあって、ギターのメロディーラインには懐かしさが漂っている。それらは新鮮に耳を突き抜ける。
彼らと一緒にヨーロッパをツアーでまわった、ザ・ドラムスのジェイコブはこのバンドについてこう話している。「ブライアン・ウィルソンやデビー・ハリーのようなアメリカン・ロックのレジェンドたちにも通じるニュアンスがこのアルバムには感じ取れる。さらに言えば、ザ・ビーチ・ボーイズ、ザ・ラモーンズ、そしてエルヴィス・プレスリーといったロック、ポップの基礎とも言うべき、それこそアメリカン・ポップのスピリットの現代における見事な解釈すら反映されてる」
このデビュー・アルバムは、決して青春は終わらないということを僕らに提示してくれる。いまトュー・ウーンデッド・バーズを聴け!
菊地佑樹