ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Floating Points ストリングスと怒りと希望のテクノ (interviews)
  2. Columns Stereolab ステレオラブはなぜ偉大だったのか (columns)
  3. DJ Python - Derretirse (review)
  4. Ana Roxanne - ~​~​~ (review)
  5. Telefon Tel Aviv - Dreams Are Not Enough (review)
  6. まるで現実から自分だけが取り残されていくような感覚 ──Noahの新作が〈FLAU〉よりリリース (news)
  7. KASSAV’ ──ワールド・ミュージックの大物、カッサヴが31年ぶりの奇跡の来日 (news)
  8. 象は静かに座っている - (review)
  9. Gr◯un土 - (review)
  10. Politics 消費税廃止は本当に可能なのか? (3) (columns)
  11. interview with Dego 何もかもがトゥー・マッチ (interviews)
  12. interview with ZORN 労働者階級のアンチ・ヒーロー (interviews)
  13. Tohji ──いま若い世代から圧倒的な支持を集めるラッパーが、初のミックステープをリリース (news)
  14. Throbbing Gristle - Greatest Hits - Entertainment Through Pain (review)
  15. 10月25日@WWW X、LOW JACKのカセットテープ発売 (news)
  16. Lee "Scratch" Perry × Brian Eno × Adrian Sherwood ──レジェンドたちによるコラボ曲が公開、11月にはリー・ペリーのダブ盤が登場、エイドリアン・シャーウッド来日公演も (news)
  17. Politics 消費税廃止は本当に可能なのか? (1) (columns)
  18. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第9回 銃口の前で踊り続ける (columns)
  19. Throbbing Gristle - D.o.A. (最終報告書) (review)
  20. interview with Floating Points 物静かな熱意とジャズと (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Special Request- Soul Music

Special Request

ExperimentalIDMJungleTechno

Special Request

Soul Music

Houndstooth

Amazon iTunes

野田努   Aug 11,2014 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加
E王

 90年代はこまめにテクノを聴いていたけれど、2000年代になってからはどうもなー、いまひとつノリが合わず、ダブステップなんてようわからんし……などと開き直る人が僕のまわりにはわりといる。これは世代的もので、とくに庶民の分際で子供ができてしまったりすると、自分の趣味に使えるお金などほとんどないから無理もないのである。いかに家族にばれずにレコードを買うか、これは人生の深刻な問題だと、そんな話はまあどうでもいいのだが、とにかく90年代はテクノを聴いていたけれど、2000年代になってからはどうにもさっぱりという人に、僕はUKのポール・ウルフォードによるスペシャル・リクエスト名義のアルバム、『ソウル・ミュージック』を聴かせたいのである。
 〈ハウンズ・トゥース〉から昨年の暮れにリリースされた『ソウル・ミュージック』を簡単に説明すれば、ジャングル+“アナログ・バブルバス”+“ガール/ボーイ・ソング”+デトロイトのファンク。極論すれば、90年代初頭のエイフェックス・ツインとUKジャングルがこのアルバムではアップデートされている。90年代のテクノに思い入れがある人にとっては、おそらく感涙ものの作品だ。しかも、ゾンビーの92年復興運動と違って、『ソウル・ミュージック』はノスタルジーを感じさせない。このところ出すシングル出すシングルが話題になっている若手の注目株、テセラの思い切りの良いエネルギーとも確実に重なっている。

 CDは2枚組で、2枚目のCDは、そのテセラのヒット曲“ハックニー・パロット”のスペシャル・リクエストによるリミックスからはじまる。R&Bサンプルの、トゥー・マッチなエディティングと美的叙情性との奇妙な調和が印象的な“ハックニー・パロット”は、いちど聴いたら忘れられない曲で、今日のジャングルにおける大きな目印のひとつだ。〈R&S〉が引き抜きにかかるのも理解できる。
 2枚目のCDには、テセラに続いてラナ・デル・レイの曲のスペシャル・リクエスト自身による(ブートレッグ)リミックスも収録されている。このあたりの「やったれ」感、すなわち海賊文化的アティチュートも、UKジャングルのよき気風、一種のトレーマークとも言える。また、2枚目にはリミキサーとして〈ワークショップ〉のカッセム・モッセ、〈TTT〉のアンソニー・ネイプルス、デトロイトのアンソニー・シェイカー、〈PAN〉のリー・ギャンブル等々、魅力的な名前が記されている。
 いずれにせよ、今日のUKアンダーグラウンド・ミュージックの最良の部分が垣間見れる内容なのだが、それでも圧倒的なのはスリル満点の1枚目のほうだ。冒頭こそ“アナログ・バブルバス”直系のメロディアスなブレイクビート・テクノだが、アルバム後半にたたみかけるジャングルの、ジェットコースターめいた展開は迫力満点で、解体された音の断片(=ブレイクビート)が息つく暇もなく、シャープに、リズミックに再構築される様は、もう、ファンタスティックと言うほかない。ブリアルや「CMYK」、アンディ・ストットの次を探している人にも一聴の価値あり。

野田努